模倣せし鬼2〜包囲作戦

■シリーズシナリオ


担当:立川司郎

対応レベル:7〜11lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 55 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月12日〜04月18日

リプレイ公開日:2005年04月19日

●オープニング

 上等な布で作られたローブを羽織り、少女がちょこん、とギルドのカウンター前の椅子に座っていた。彼女の馬は、ギルドの玄関前に置いたままである。仕付けがいいのか逃げはしないが、手綱は放置しっぱなし‥‥。誰かが繋いでくれるとでも思っているのに違いない。
 そもそもこの少女、セレスティンには“自分で馬を厩に連れて行く”という習慣は無い。
 自分はせずとも、侍女がする。これがセレス・ルール。
 ほっそりとした体躯のギルド員は、少女をしげしげと見つけながら声をかけた。
「‥‥で、次の手は見つかりましたか?」
「急かさないで。‥‥先の調査では、7日ごとに殺害されていると判明したの。それより数日前には、別の人間が一人誘拐される‥‥。1日目に誘拐されたA氏、4日目にそれより前に捕まったB氏が殺害されており、8日目にはC氏が誘拐される。‥‥この繰り返しね」
 しかし、それに当てはまらない者も居る。これらは、やはり7日ごとに殺害されては居るが、誘拐された様子はない。こちらは、体に痣のある遺体の方だ。
「‥‥ともかく、7日ごとに事件が起こるのは確かなのよね。だから、あの公園で待ち伏せをしてみようと思うの。何かが起こるに違いないわ」

1A誘拐


4A殺害、B誘拐





10B殺害、C誘拐

 少女が書き記す所によると、こうなるらしい。
「バラバラ遺体だけを引っ張り出すと、こうなる。だから、数日後公園で再び遺体が発見されるはず。‥‥その前日に見張っていれば、犯人は来ると思わない?」
「‥‥それはそうですけど、あんまり首を突っ込んじゃいけませんよ。そういう事は彼らに任せてですねぇ‥‥」
「大丈夫よ、今“あの人達”忙しいから。ジェラールの騎士叙勲が近いのよ」
 ジェラールが誰なのかギルド員には分からなかったが、黙っておいた。帰ってきた冒険者達は、何やら含みのある顔をして報告書を出していたから。報告書には、そのあとが見ては取れなかったが。
「でも、小さな子が一人うろうろするのは危険ですよ。ただでさえ怪盗だの伯爵だのと騒いでいる所だっていうのに‥‥あんまりパリを一人で往復するべきじゃないです。あの馬が速いのは分かっていますが」
「分かったわ。じゃあ、ここから帰る道の、わたくしの護衛もお願いしようかしら。それでいいんでしょ?」
 あんたの護衛なんだけど‥‥とギルド員は言いたい気持ちを、ぐっとこらえた。
 あの子は誰も信じない。誰も頼れない。そう聞いた。
 だったら‥‥何故、自分の身が危ないという時に殺人事件の解決などをギルドに依頼に来るのだろうか? ここまで来るのには1日がかりだろうに。
 城で会食会の話ばかりしている后ではなく、世継ぎの心配ばかりしている宰相でもなく、ましてや地位を維持する事に執念する騎士でもなく。
 あの少女の目には、領民に対する責任感と愛情がある気がしたのだった。

●今回の参加者

 ea0907 ニルナ・ヒュッケバイン(34歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1987 ベイン・ヴァル(38歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea3147 エルフェニア・ヴァーンライト(19歳・♀・ナイト・エルフ・ノルマン王国)
 ea3677 グリュンヒルダ・ウィンダム(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea3692 ジラルティーデ・ガブリエ(33歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3855 ゼフィリア・リシアンサス(28歳・♀・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 ea4817 ヴェリタス・ディエクエス(39歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7210 姚 天羅(33歳・♂・ファイター・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

 銀色の髪の少女と、彼女のやや後ろに立つ長身の青年。少女の風貌は、どこにでも居るエルフのそれで、長身の青年は目深にフードを被っていて、人かエルフの判別もつかない。
 時折側を通り過ぎるのは、食品や衣服などを持ち込む商人であったり、騎士であったり。騎士の数は多くは無かった。
「この周辺の領地は、皆シャンティイの国力の庇護下にあります。ですから、騎士隊は十数名と、多くも無く少なくも無く‥‥といった所ですね。ですが、ここ最近城内の勢力争いに煽られて、騎士の数も増えつつあります」
 すう、と少女は見上げた。赤い髪が、こちらを見下ろしている。
「奴等の目的は、今はこのクレルモンの支配権だな。次の領主が誰になるか、それによって次の自分の地位が決定する」
 小さな人影が、目に映る。フードに手をやり、ベイン・ヴァル(ea1987)は歩き出した。
 少女は、城の外壁の向こうから、門の脇を通り過ぎてこちらにやってくる。
 裏口から出てきたのであろうか。騎士達は、軽く視線を向けたが、何も言わずに見送る。少女と騎士の様子を見ると、エルフェニア・ヴァーンライト(ea3147)もベインに続いて歩き出した。

 市場に足を踏み入れると、人の視線が彼女に集中した。それもそのはず、普段はここに居るはずのない人物なのだから。それでも、彼女‥‥セレスティンを連れて歩いているゼフィリア・リシアンサス(ea3855)は、平然としている。
 年格好からして、お姉さんといった感じだ。
 ゼフィリアも、人の視線を浴びるのは慣れている。ゼフィリアの瞳は左目が碧、右目は紅の色をしている。だからその分、人目を引きやすい。
「何処に行くの、ゼフィリア?」
 セレスは、ゼフィリアに声をかける。ゼフィリアは笑顔でセレスと視線を合わせる。
「今日は、ジラさんに頼まれていたものを買いに来たんですよ‥‥こんなのとか、どうですか?」
 ゼフィリアは、淡い水色の服を取ってみせた。市場でできあがった衣服がそう多く売られているものではない。古着であったり、自分で仕立てたりするものだが、セレスはそういった事情は全く知らない。
「セレスさん。こうして暮らしている人たちは、騎士や領主さまとは違う布地や装飾品を身につけなければならないんですよ。だから、セレスさんも町に出る時はそうした方がいいんじゃないかとジラさんが言っていましたよ」
「何故? わたくしは好きな服を着ているわ。どうして皆好きな服を着ないの?」
「ええと‥‥みなさん、質素な生活をしていらっしゃるからです。ですから、セレスさんも質素な服を着た方が、町の中に居ても‥‥ほら、誰もセレスさんだと気づかないでしょう?」
 確か、何だったかジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)が理由を言っていた気がするが、思い出せない。付け加えると、庶民が好きな服を着ないのは、着ようにも着られないからなのだが、それを突っ込む者はここには居ない‥‥。
「セレスさんは、お母さんとこうして町を歩いたりした事はないんですか?」
 市場に売られている食べ物や服飾品などを見て回りながら、ゼフィリアがセレスに聞いた。セレスの表情が、やや曇ったのに気づく。
「‥‥無いわ。わたくしはお城の中で生まれたもの。お母様は、わたくしが小さい頃にお亡くなりになってしまった。もうすぐ、わたくしに弟か妹が授かるのだと仰っていたわ。でも、お母様も弟も妹も、わたくしの所に戻って来なかった」
 ゼフィリアは、黙ってセレスを見下ろす。セレスの表情は、母を悲しむ少女のそれではない。もっと、遠くて高い所を見ている‥‥そんな視線だった。
「わかっているわ、わたくしは庶民の子には見えないものね。あなた達が色々と詮索しているのも知っているの」
 庶民の子とは違う、毎日手入れされた美しい髪。清潔で柔らかく、傷一つない白い肌。
 ゼフィリアは、自分の手をじっと見ているセレスの手の側に、自分の手を差し出した。
 ほら、私も同じ手ですね。
 くす、とゼフィリアは笑った。

 リアンコートの‥‥。
 と、レイモンドは小さく口にすると、柔らかなその表情をヒルダへと向けた。グリュンヒルダ・ウィンダム(ea3677)が運良くレイモンドに面会出来たのは、以前レイモンドと城内で食事を共にした事を、城の騎士や侍女達が覚えていたからである。
「また、やっかいごとに首を突っ込んでしまったものですね」
 ヒルダは黙って頭を下げる。レイモンドをしてやっかいごと、と言わせるクレルモンとは‥‥。
「少し調べたのならば分かるでしょう。あそこは、今私が手を出す訳にいかない所なのです」
「機は熟してない、と? しかし、事件の裏には‥‥」
「フゥの樹が絡んでいるならば、私も興味があります。全てが終わったら、私に知らせをください。ただ、城内の事にはあまり干渉しないように‥‥。おそらく、悪魔崇拝とは繋がってはいないでしょう。利用くらいはするかもしれませんから、注意は必要ですが」
 利用出来るような組織でしょうか。ヒルダの問いに、レイモンドは眉をすう、と寄せて苦笑を浮かべた。

 昼間の喧噪とうってかわり、日が暮れると人の気配が遠のいた。
 夜になると殺人鬼が現れる事を、町の人たちはよく知っている。この時間に彷徨く者は、よほど酔狂な者か‥‥それともどうしても出歩かねばならない用のある者しか居ない。
 路上に響く馬の蹄の音に、すうっと姚天羅(ea7210)が明かりを掲げる。光の向こうに、白い騎馬から降りるヒルダの姿があった。
「申し訳ありません。メテオールの倉庫から問題の絵画を探し出すのに手間取ってしまって‥‥」
「レイモンド様とお会い出来たの?」
 セレスがヒルダに聞くと、ヒルダは馬の鞍からあるものを取り出して、差し出した。
「レイモンド様からの贈り物、銀の短剣です」
 セレスはじっと短剣を見つめている。
 ベインはその様子を黙って見ていたが、彼女にそっとマントを羽織らせてやった。ベインが着るには小さなマントであるが、セレスには丁度いい。ジラは、ベインの行為を見て少し意外そうに、若干表情を変えた。
 どうやら、同じ事を考えていたようだ。
「今度から、それを着て来るといい」
 マントに似合うような、珍しく質素な服を着ている。明るい所に出ると目立つ風貌であるのには違いないが、ジラが買った服は役に立っているようだ。
「その格好ならば、そう目立つような事はあるまい。‥‥だが、ここからは我らの仕事だ。お前は城に戻れ」
「‥‥いや、いいだろう」
 そう言ったのはジラだった。
「ただし、変装していて頂けるならば、だが」
 ジラは手を伸ばすと、セレスの髪を軽く革ひもで縛ってやった。それで上からベインのくれたマントを羽織っていれば、少年らしく見え‥‥なくもない。
 セレスの変装を見て喜んでいるゼフィリアと、自分の格好をじろじろ見ているセレスに眉を寄せると、ベインは小さくジラに問いかけた。
「何故連れて行くと言った」
「いい機会だからだ」
 セレスの様子に思い出すものがあるジラは、深くため息をついた。

 月が見下ろす中、明かり一つを手にエルフェニアとニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)が出発した。それぞれ、別々に‥‥。エルフェニアは十五、ニルナは二十三だが、どちらも女性だ。その上二人とも武器といえるものはほとんど持っていない。
 姚も気にしていたが、明日はバラバラ遺体が発見される日‥‥要するに、今日出没するのは遺体をバラバラにする殺人鬼であるはずである。
 姚は袖口にダガーを隠しながら、それを確認するように問う。
「ここで殺害されるのならば、相当量の出血があるはずだ」
「傷口は鮮やかだった。ここで切ったというならば、そうとう手慣れているのだろうな」
 とヴェリタス・ディエクエス(ea4817)が見まわす。被害者は悲鳴を上げていたのに、犯人は捕まっていない。しかもその間に遺体をバラバラにしているのならば、その手口は鮮やかだ。
「見つけたら、一人で戦おうとせずに合図を出してください」
 ヒルダは一人ずつ警笛を渡すと、配置を確認した。緑地帯の現場付近にヴェリタスと姚。緑地帯から市街地の方へ向かう道にゼフィリアとジラ、セレスは彼らとともに潜伏する。そして城の方角に向かう道にはヒルダとベインが潜む。
 各自が散っていくと、緑地帯は静けさを取り戻した。

 ゆらり、とニルナの持つランタンが揺れる。ここと市街地を行き来しつつ、犯人が現れるのを待つ。エルフェニアとは出くわさないようにしているが、それでも狭いエリアで囮になっているのだから、時折エルフェニアの明かりを見つけて驚く事があった。
 月が高く高く上がっていくのを見上げ、ニルナは目を細めた。
 さて、女性の夜歩きに釣られて出てきてくれるのかどうか‥‥。
 ニルナがふと視線を戻した‥‥その視線の先、いや目の前に人が立っていた。
 マントを羽織り、顔に‥‥何か仮面のようなものをつけている。ニルナが懐に手をやったと同時に剣は抜かれていた。すさまじい速度だ。
 避ける‥‥という行動を思いつくよりも速く、剣が到達していた。たとえニルナがぬいていたとしても、到底間に合わない程に。
 死‥‥?
 ニルナの背中が、冷たい地面の感触を受ける。誰かが見下ろしていた。
「‥‥運が良かったな。運は大切にしなよ‥‥くくっ」
 男の声は、遠ざかっていった。何だろう、あれは‥‥。翼の生えた獅子の‥‥印が、体に‥‥。
 振るえる手を胸元にやると、シルバーナイフの感触が指に当たった。柄の部分に傷が入っているが、柔らかい胸の肉でクッションとなったのも幸いしてか、折れてはいないようだった。
 しかし声が出ない。
「‥‥ニルナさん!」
 少女の声が、どこからか聞こえた。エルフェニアの声だろうか。うっすらと目を開けると、彼女が自分の傷口に手をやっていた。
「どうすれば‥‥」
 エルフェニアの目が、辛そうに自分を見ている。
「大丈‥‥ぶ‥‥自分‥‥で」
 何とかニルナは自分にリカバーをかけるが、効果が薄すぎるのか、効き目が感じられない。仕方ない、やはり警笛を吹いて仲間に知らせるしか無い。
「エルフェ‥‥うっ、あ、後ろ‥‥」
 振り向いたエルフェニアの視線がゆっくりと、上に向けられる。落ちた影の持ち主を捜すように。
 黒いマントに覆われた影は、ぶつぶつと何か呟いていた。
「血‥‥が‥‥」
 ガタガタと振るえている。エルフェニアはニルナを庇うように立った。
 どこからか足音が聞こえる。仲間が駆けつけてくれたのかもしれない。男は気づいていないようだった。空に浮かんだまま、呆然と見下ろしていた。
「血が‥‥嫌だ、血が‥‥母さんが‥‥」
「下がってください!」
 女性の声が響いたと思うと、きらりと何かが光った。
 ヒルダの投げたナイフは、呆然としている男の腕に突き刺さる。悲鳴を上げ、男が地面へと転がり落ちてきた。素早く剣を抜き、ベイン、そして駆けつけた姚とヴェリタスが取り囲む。
 男は言葉にならない悲鳴のようなものを上げながら、手をこちらにかざした。
 男の体が淡い光に包まれ、稲妻が地面を駆け抜けた。光は目の前にいたベイン、そしてヒルダを巻き込み、更に後ろに居たヴェリタスさえもなぎ倒した。
 かろうじて避けた姚は、体勢を立て直しつつダガーを放つ。ヒルダに続きダガーは男を捕らえ、手から血を滴らせる。
 男は自分の手からしたたる血を見て、更に動揺を見せた。
「血が‥‥血がぁぁぁ!」
 立て続けに男が、すさまじい暴風を巻き起こした。ヴェリタスがコアギュレイトを放つも、男はそれを抵抗してはねのける。
「手に負えんな‥‥しかし生かして捕らえねばならんぞ」
 ヴェリタスが言うと、暴風に耐えながらベインがこくりと頷く。
 錯乱状態にある男は、何か呟きながら二歩三歩、と後ずさりをしている。体は、やや青白く光っていた。
 と、横に居たジラがゆっくりと駆けだした。徐々にスピードを上げ、剣を構える。黒いマントを身につけている為か、それとも血で錯乱しているのか、男は気づかない。
 ヴェリタスとベインに合図を出し、斬りかかった。
 青白い光に包まれた体を剣が触れた、とヴェリタスの剣から衝撃が伝う。ショックで取り落とした剣が、からりと落ちた。ヴェリタスは痺れたままの手を押さえ、後ろに下がる。
 ずるり、と男の体が崩れる。剣ごと男に突撃したジラの剣が、男を貫いていた。

 名前を呼んだヒルダの言葉に、男が反応した。しかし自分の名前に対する反応では無いようだ。
「こんな男が遺体をバラバラにしたとは思えんな」
 姚は、隙無く周囲を監視しながら言った。
 ニルナは、ゼフィリアとセレスが付き添って教会に連れて行ったようだ。ヴェリタスとベインやヒルダの傷を癒してやりながら、話を聞いていた。
「イングリートとハルトマン‥‥これはリアンコートの領主の息子の名前です。領主は悪魔崇拝団体、フゥの樹と関連があるとされています。名前に聞き覚えがありますね?」
 ヒルダの強い口調を受け、男は視線を泳がせた。
「し、知らない‥‥僕はそんなの関係ないよ‥‥」
「知らないと‥‥では、人々を殺していたのは誰か、教えてもらおうか」
 ヴェリタスに問われ、男は口ごもった。
「それ、それは‥‥血が」
「もう血の話はいい。殺したのか殺さないのか、それだけ喋ってくれ」
 姚が厳しい口調で言う。
「こ、殺した‥‥かもしれない」
 姚は肩をすくめて、背を向けた。話に付き合っていられない。この調子だと、朝までかかってしまうだろう。しかしヴェリタスは、冷静な口調で語りかけた。
「君が痣のついた遺体の犯人。‥‥そしてもう一人は、ニルナを襲った男だな。君達はフゥの樹と関係がある」
「あいつ‥‥そうだ、シシリーが勝負をしようって言うから‥‥」
「勝負?」
「勝ったら、神父に悪魔にしてもらえるって言うから‥‥僕、それが本当なら‥‥母さんを悪魔にしてもらって生き返らせようと思って‥‥」
「‥‥死人は生き返らない」
 姚は冷たく言うと、ヒルダとベインの所に歩いていった。
「どうする。騎士団に突き出すのか?」
「そうしなければならんだろうな」
 ベインは渡すつもりのようである。どうする、と姚がヴェリタスに問う。他の者も、聞いた所によると騎士団に渡すという方向で意見は一致していた。
「騎士団は点数稼ぎの為に利用したいだけだ。突き出したら、さも自分達が捕まえたように言うだろうな」
「いいさ。‥‥セレス嬢に任せよう」
 ヴェリタスの言葉にベインは反論しようとしたが、黙っておいた。ジラも心配があるようだったし、むろん自分も心配だ。
「セレスに騎士が御せるとは思えないがな」
 二人の気持ちを察したのか、姚が言った。
(担当:立川司郎)