●リプレイ本文
ギルフォード紅茶男爵本邸へとやってきた冒険者達を執事を伴った男爵が出迎える。
「小さき者達の伝道師、ギルスです。用事でギルフォードに来たときに、ここの噂を耳にしたんです。ズゥンビがいっぱいなんて、放っとけないです〜」
新たに探索に加わる事になったクレリックのギルス・シャハウ(ea5876)が挨拶する。
「依頼内容は依頼書の通りだ。成果を期待しているぞ」
冒険者達を激励する紅茶男爵。
「食料も準備してくれるし財宝の所有権も認めてくれる。冒険者風情に領主自ら紅茶もご馳走してくれるし、紅茶男爵って太っ腹よね。好感度アップね」
「ワガハイには出来ないことをやってのける冒険者に対し、敬意を払う事は当然であろう?」
レンジャーのイフェリア・エルトランス(ea5592)に笑顔で返す紅茶男爵。
そして、執事が前回作った地図の写しを渡す。
その地図から探索ルートを検討し、迷宮へと踏み込む冒険者達であった。
隊列を組み、迷宮を進む。
「探索か‥‥今度は中にあるものに注意して進まないとな」
物音に注意しつつ後列を行くファイターのマナウス・ドラッケン(ea0021)。バックパックを整理して必要時にアイテムを取り出しやすいよう工夫している。
同じく後列を行く忍者の九重玉藻(ea3117)。背後からの奇襲に特に注意している。
「ようやく本格的な迷宮探索ね。今のところ出現した魔物はオーガ系のアンデッドばかり。迷い込んでアンデッド化したとは考えにくいし、オーガ達にこれだけの迷宮を作り上げる技術もないわよね」
ランタンを片手に前列を行くイフェリア。迷宮内の罠の発見と解除が主な役割である。
まず彼女が天井の煤の状態を見て、過去に人の通りが無かったかを確認してみるが、それらしい形跡は今の所発見できず、入口周辺から徐々に調査を進める冒険者達。
「番人として配置されているのだろうか。それをこれから探っていくわけだが」
二列目を行くナイトのフィルト・ロードワード(ea0337)。モンスターとの遭遇時、即座に前衛を交代できるようにしている。
「文字や紋章など、何か情報がないか探してみた方が良いわね」
相槌を打つイフェリア。
「何でアンデッドが居るのか手がかりが見つかるといいよね。自分の意志とは関係なくずっと動き続けるのって悲しいもん」
三列目を行くクレリックのレフェツィア・セヴェナ(ea0356)。仲間達からはレツィアと愛称で呼ばれている。
「‥‥」
同じく三列目を行くクレリックのマリー・エルリック(ea1402)。無表情で不思議な雰囲気を持っている。隠密行動も修得している彼女は罠をはじめ、壁や床の模様などにも注意している。
「今の場所はどの辺かな‥‥。この上にはギルフォードの街があるなんて、信じられないよね」
罠や敵を警戒しつつ、前列を行くバードのミル・ファウ(ea0974)。
隊列の中ほどを壁や天井には触らないように飛んでいるギルス。要所要所で『デティクトアンデット』を唱えて警戒している。
シフール達の荷物は、余裕のある者が分担して運んでいる。
手の空いているレツィアにランタンを渡しておくマナウス。油はフィルトも提供しており、探索時間はランタンの油交換で大雑把に計っている。
「わぁ‥‥と。ありがとう☆」
転ばないよう足元に注意していてさえ、何もない所で転びそうになるレツィア。灯り持ちとしては少し不安だが、仲間達に支えられながら探索を続ける。
「神の試練です‥‥」
その度に聖書でツッコミを入れるマリーであった。
分岐点の度に筆記用具で目印をつけ、地図に書き込んでいくマナウス、ミル、マリー。
探索中、何度もゴブリンなどのズゥンビと遭遇したが、それほど苦戦することなく、これを撃退する。『リカバー』と応急手当を使い分けるなどして戦力を温存しつつ進むのだった。
「こんなに不死者が出てくる迷宮なんて、おかしいね」
ギルスの宗教的な伝承知識でも思い当たることは無いようだ。
また、侵入者を排除する目的と思われる罠の類もあったが、回避できる罠には目印をつけ、必要に応じて解除することで探索時間を有効に使えるよう考慮するイフェリア。
こうして、各自の技能を有効活用して探索を続け、一日目は報告を兼ねて地上に戻った冒険者達。探索地図は入り口付近がかなり埋まっていた。
再び、地図を見合わせ、探索を続ける冒険者達。
「戻れるものなら、毎日地上で休んだ方が楽に決まってるけど‥‥。戻るに戻れない事もあるだろうし、時間的に戻れない可能性も覚悟しておかないとね」
ミルの言葉通り、二日目は少し奥まで探索した事もあって、迷宮内の一室でキャンプを張る冒険者達。
「これで魔物が近づいてくれば判りますわよ」
周囲に鳴子を張り巡らせておく玉藻。見張りを三班に分けて睡眠をとる。
「何かあったら蹴っ飛ばして起こしてくれ。あぁその場合、蹴ったらすぐに離れた方がいいぞ」
ニヤリと笑うフィルト。その毛布に潜り込んで一緒に眠るギルス。
幸運にも襲撃される事無く、休息を取ることが出来た。
迷宮探索も三日目。
順調に進んでいるのだが、すでに数えるのも嫌になるほどの未探索分岐点が大量に地図に書き込まれ、依頼期間内の完全踏破は絶望的になっていた。
そんな中、他とは微妙に違う装飾のされた扉を発見する。
「いる、いる、何かいるよ〜」
『デティクトアンデット』で扉の向こうに複数のアンデッドの存在を感知したギルスが小声で仲間達に伝える。
扉に仕掛けられていた罠を解除したイフェリアの合図で、戦闘準備をする冒険者達。
『オーラパワー』を自分と仲間達の武器に掛けるフィルト。それまでの遭遇戦で使用していたシールドソードではなく、ロングソードを装備しておく。
「頑張れ‥‥負けるな‥‥力の限り‥‥」
『グットラック』を掛けておくマリーとレツィア。
『疾走の術』を掛けておく玉藻。
準備を調え、踏み込むと同時に、
「お行きなさい! エリザベス!」
高笑いと共に『大ガマの術』でエリザベスを召喚する玉藻。
部屋には複数のズゥンビ化したオークとオーク戦士。そして、小さな宝箱が安置されていた。
「今回はオークのズゥンビと‥‥。オーガ系のモンスターが下から順に出てきてる感じよね」
呟くミル。
「興の為に面白いものを見せよう‥‥ジャパンの志士だかがやっていた『ヒラヅキ』というものだ。見様見真似だが‥‥参る」
日本刀を構え、防御姿勢から『カウンターアタック』狙いの体勢になるマナウス。共に前衛に立つフィルト。
「相も変わらず、戦闘能力は皆無なわけだし‥‥。囮役くらいはこなさないとね」
回避行動に専念し、そよ風のようにオークズゥンビの攻撃を避けるミル。
「神の力の元に‥‥朽ちよ‥‥」
『ピュアリファイ』によってズゥンビを消滅させていくマリー。射程は短いがミルと連携してうまく使っている。回避術も修得しているので、いざという時にも対処することが可能だ。
「‥‥ホーリー!」
聖なる力で攻撃するレツィア。
次々と『シューティングPAEX』でオークズゥンビの足関節を射抜いていくイフェリア。移動力を奪い、後衛に接近されるのを防いでいる。
「エリザベス! 彼らを守るのが役目ですわよ!」
エリザベスをオーク戦士ズゥンビに向かわせ、仲間達の盾となるよう指示する玉藻。自らはオークズゥンビを担当し、手裏剣での牽制攻撃に徹している。
「神様がじ〜っと見ています。がんばってくださいね」
負傷者には即座に『リカバー』を掛けるギルス。必要に応じて効果を調整している。
「我が神セーラの名において‥‥今‥‥奇跡の力を‥‥リカバー」
さらにマリーとレツィア、三人のクレリックによる盤石の体制で、確実に回復しつつ敵を倒していく冒険者達。
「これでどうだ!」
『カウンターアタック』狙いでは回避の難しい攻撃を『デッドorアライブ』で軽減してのコンボを叩き込むマナウス。また一体オークズゥンビが崩れ去る。
「父と子と精霊の御名において、汝を束縛するよ」
ギルスが『コアギュレイト』でオーク戦士ズゥンビの動きを封じ、
「これがウーゼル流の剣技だ!」
それを逃さず、『チャージング』を仕掛けていくフィルト。これによって反撃を受けることなくオーク戦士ズゥンビを倒したのだった。
こうして、オークズゥンビを全滅させ、その場に残されたのは小さな宝箱。
イフェリア、玉藻、マリーらが入念に罠を調べ、作業は『グットラック』を掛けることで解除することに成功する。
中から出てきたのは、ちょっとしたアクセサリーやポーションなどの財宝と、用途不明の『鉄製の鍵』と『謎の文字の書かれたプレート』であった。
「僕はこれを貰って良いかな?」
「私もこれを頂きますわ」
銀のネックレスを手に取るレツィアと玉藻。玉藻は他にも手がかりがないかと部屋と宝箱を更に調べている。
「鉱石関係の物が出たら‥‥興味があるので欲しかったのですが‥‥これで‥‥。アンチドートできるけど‥‥」
解毒剤[鉱物]を手に取るマリー。
「シフール用のアイテムってなかなか無いよねぇ」
同じ解毒剤[鉱物]を貰っておくミル。コボルトズゥンビも出現するこの迷宮では役に立つ可能性はある。
「武具の類があれば欲しい所だったが、この『鍵』に期待するか‥‥。と言っても、今回の探索はここらが潮時だな」
ポーションを一本受け取りつつフィルト。
こうして、財宝を分け合い、謎の鍵とプレートを手に入れた冒険者達は報告のため地上に戻った。充分な成果と言えるだろう。
「おかえり諸君。今、ティータイムの準備をしている所だ。迷宮での話を聞かせてくれたまえ」
冒険者達をねぎらう紅茶男爵。
「これを発見したのだが」
「ほほう、これは興味深いな。解読はこちらでしておこう。何か分かったら、また依頼を出すとしよう」
マナウスからプレートと鍵を受け取る紅茶男爵。
「実は紅茶は結構楽しみにしてたのよね。楽しみだわ」
そう言って、迷宮での話を始めるイフェリア。
「神様はいつでも、ギルフォードの街をじ〜っと見守っていますからね、じ〜っと」
「そう言って貰えると嬉しいぞ。これからも宜しく頼む」
ニッコリ笑うギルスに紅茶男爵も笑顔で返す。
果たしてプレートには何が書かれているのだろうか。鍵の使い道は‥‥?
それに期待しつつ、冒険者達はキャメロットへと帰還するのであった。