●リプレイ本文
四度目となったガンツの依頼、いつもの顔ぶれが再び集まった。
「そろそろガンツの名前も売れてきたんじゃないか?」
「皆と作った作品が好評でな。いずれはイギリス一、いや、世界一を目指すぜ! 今回もヨロシク頼む」
ナイトのシュナイアス・ハーミル(ea1131)の言葉に、笑顔のガンツ。
「精霊の調査の為なら、魔物退治でも荷物運びでも喜んでやってやるさ」
精霊生態学研究者を生業とするウィザードのロット・グレナム(ea0923)。面倒くさがりの彼がヤル気満々だ。
「真冬の海の寒さとも戦わねばならぬからな」
岩を積んだ荷車に、予め薪も積んでおくナイトのシャルグ・ザーン(ea0827)。
早速、出現だ。
今回は海辺の村を目指すとあって、荷車は冒険者達の馬によって引かれている。
道中も護衛役である事を忘れず、上空から周囲を警戒しているクレリックのギルス・シャハウ(ea5876)。地上を行く冒険者達も各自警戒している。
そして無事、村へと到着。少し閑散とした印象がある。
守り神の情報を聞こうと村長宅へ立ち寄ると、近頃、海岸の岩場に出没する巨大蟹に被害を受けているのことだった。
「僕達が来たからには、蟹達はみんな食材ですよ」
退治を請け負うギルス。また、村の怪我人には『リカバー』で治療して回る事を約束する。
「守り神に危害は絶対に加えない。精霊研究家のあいつが絶対許さんだろうしな」
ロットをチラッと見てファイターのリ・ル(ea3888)が誓う。それにロットが頷く。
「有り難いことです。守り神様への捧げ物をお預けしておきます。きっと皆様の前に姿を現す事でしょう」
村長から捧げ物の魚介類の入った箱を預かり、冒険者達は海岸へと向かった。
「おあつらえ向きの事件が起きてるとはツイてるぜ。‥‥おっと、不謹慎だったかな」
早くも守り神に会えそうな予感にニヤついてしまうガンツ。
「以前の蟹依頼を取り損ねたからな。今回はちょうどいいぜ」
手を鳴らす浪人の陸奥勇人(ea3329)。冒険者ギルドでの依頼は基本的に早い者勝ちである。
「山のもの、空のものときて、海産物か。腹‥‥、いや腕が鳴るぜ」
すでに食う気満々のリル。
「予測通り海で戦う事になりましたわね。でもまぁ、水中に潜らないといけないような状況にならなかったのは幸運でしたわね」
苦笑するナイトのミルク・カルーア(ea2128)。
「大蟹‥‥か。まさかジャパンじゃなくてイギリスでお目にかかると思わなかったね」
漁師の知識もある浪人の御山閃夏(ea3098)。
「むう、流石に冬の海であるな。まるでレイスに命を吸い取られた時のごとき寒さであるぞ」
海岸に到着すると、焚き火やテントの準備にかかるシャルグ。気付け用に発泡酒も提供。
「いろいろ気が利くな。助かるぜ」
その手際の良さに感心するガンツ。
リルもテントを準備。道中もギルスと一緒に寝ており、仲が良さそうだ。
「まぁ足場の悪さは仕方ねぇとして、潮の満ち引きなんてのもあるだろ? 戦ってる間に波に飲まれるのはさすがに御免だ」
岩場周辺をチェックする勇人。
きっちり防寒具を着こみ、予備のメイス二本を焚き火の近くに置いておく閃夏。寒さにやられないよう皆、防寒具やそれに代わる物を身に着けている。
そして『強烈な匂いの保存食』を口に咥え、囮役になる勇人。このまま食えば、案外病みつきになるかも知れない。
「まぁ、ガンツの狙いは蟹じゃないからな。防御に徹する必要もなし、楽と言えば楽か」
『オーラエリベイション』と、ラージクレイモアに『オーラパワー』を掛けておくシュナイアス。
同じく、四種のオーラを発動しておくシャルグ。
『リトルフライ』で浮遊しておくロット。
シャカシャカ‥‥
やがて、匂いに釣られたのかビッグクラブが岩場から出現!
「ここは私達に任せて」
ガンツの護衛に専念するミルク。
「さあ来い、ディナーめ」
寒さ凌ぎに発泡酒を一口貰い、チェーンホイップを唸らせるリル。
「精霊の調査の為だ‥‥大人しく痺れてろ!」
浮遊しつつ、『ライトニングサンダーボルト』を撃つロット!
そうして戦う最中。
更にもう一匹ビッグクラブが出現!
いや、更にもう一匹!
「お前の相手はこっちだ、その硬い殻が何処までもつか試してやるぜ!」
一匹を引きつける勇人。
「また心配させるのは御免だからね」
もう一匹をマークすると、パリーイングダガー二刀流に『ダブルブロック』を交えて確実にビッグクラブの鋏を受け流す閃夏。
「この硬さは‥‥、ちっとばかり骨だな。いや、甲羅か」
打撃の要領で鞭を叩きつけたリルが、そんなことを言う。
「オーラショット!」
ガンツから離れず、ビッグクラブとの距離を保って援護するミルク。
生命の危機を感じたビッグクラブが慌てて逃走しようとする。退路を断とうとするシャルグを素早く迂回するが、
「おっと、悪いけどお前に退路は無いぞ!」
高速詠唱で『ライトニングサンダーボルト』を進路上に撃ち、進路を変えさせるロット!
それに連携し、『ホーリーフィールド』を掛け、岩場への逃げ道を塞ぐギルス。
逃げてきたビッグクラブの鋏によって結界が破られるが、
「父と子と精霊の御名において、汝を拘束するよ」
すかさず『コアギュレイト』で動きを止める。
「逃さぬっ!」
そこへ『チャージング+スマッシュEX』で特攻してきたシャルグの一撃が炸裂する!
まず一匹撃破!
「なぁるほど、何となく動きの癖が読めてきた。ならこいつでどうだっ」
持ち前の回避術を駆使し、ライトハルバードを叩き込んでいく勇人!
そして仲間達が集結してくる!
「俺の技量じゃ成功率はかなり低いか‥‥けど、分の悪い賭けは嫌いじゃない‥‥」
角度を調節して射線を確保し、威力を高めた『ライトニングサンダーボルト』を撃つロット! 見事発動!
「BukuBuku‥‥」
泡を吹いて逃亡しようとするビッグクラブ!
「おっと、お前に逃げられちゃ晩飯抜きになっちまうぜ」
逃亡しようとしたビッグクラブに、リルが鞭を絡みつかせる事に成功!
「お前らに用は無いんだが‥‥運が無かったな」
ラージクレイモアの凄まじい重量を活かした『スマッシュ』でトドメを刺すシュナイアス!
「神様と精霊がじ〜っと見ています。がんばってください」
攻撃に重点を置いていたため一撃受けたシュナイアスに『リカバー』を掛けるギルス。
最後のビッグクラブを足止めし続けていた閃夏の元へ、仲間達が集まる!
「それだけ余ってるなら、多少減っても構わねぇだろ。その足頂くぜ!」
確実に仕留めるため、連携して攻撃を加える勇人!
冒険者達に包囲され、どうにか逃亡しようと鋏を振るうビッグクラブ!
それを『オーラシールド』で受けたシャルグの『カウンターアタック+スマッシュEX』がトドメとなった。
「BukuBuku‥‥」
泡を吹き、絶命するビッグクラブ。
「いつもは彫刻に夢中で気付かなかったんだが、見事なもんだなぁ」
拍手するガンツ。
こうして冒険者達は三匹のビッグクラブを倒すことに成功した。
間もなく、海から巨大な姿が現れた。
「蛟を直接見れるなんて思わなかった‥‥」
「あれがサーペントであるか。守り神と呼ばれるだけの事はある高貴なる姿であるな」
「なるほど守り神ってだけのことはあるぜ。中々の風格だな」
口々に感想を述べる閃夏、シャルグ、勇人。
「‥‥惜しいな。こいつと戦えればいい修行になっただろうに‥‥」
少し本音が出るシュナイアス。勿論依頼の内容はわきまえている。
「伝説の守り神ですか。まさかコアギュレイトかけろなんて‥‥なしですよね」
一応尋ねるギルスに、
「ああ‥‥無用だ」
サーペントの姿に見とれていたガンツが答える。沸々とイメージが沸き上がってくる。
『リトルフライ』でサーペントの目前へと浮遊していくロット。そして、シフールのギルスも共に行く。
「なぁ、あんたに頼みがあるんだ。そこにいるガンツの彫刻のモデルになって欲しい。こうやって直に精霊を見て彫られた彫刻を見れば、多くの人が精霊に興味を持ってくれるだろう。それで、精霊の正しい知識が広まれば精霊と人間の間に起きる諍いも減る‥‥俺はそう考えてる。だから、協力して欲しい‥‥頼む」
「あなたの恩恵を忘れないために、そのお姿を神像として残しておきたいのです」
言いたい事は伝わると信じて呼び掛けるロット、ギルス。
サーペントが少し笑ったような気がした。そして、海岸に近づくと、首を伸ばして捧げ物を口にする。
無心にサーペントを彫刻するガンツ。
それをサポートするミルクは、サーペントの姿をスケッチしておく。早々にサーペントが去ってしまった場合や、彫刻を仕上げる時にもスケッチがあれば役立つはずだ。
また精霊生態学研究者としてレポートを書き留めておくロット。
彫刻の音が響き続けた。
「Wooooー」
やがてサーペントは、一声鳴くと海へ消えていった。その声は感謝の言葉だったに違いない。
その後、身は多いが少し大味な蟹鍋を食べ、村へと報告に戻った冒険者達。
まだ荒削りな守り神の彫刻を村人達が拝んでいる。
「神様と海の精霊は、みなさんをじ〜っと見守っていますからね、じ〜っと」
ニッコリ笑うギルス。
「じっくりと最高の作品に仕上げるぜ」
そう約束したガンツは、冒険者達と共に帰路に着いた。
「いやぁ、今回もなかなかエキサイティングだったぜ」
「また次の作品にも力を貸してくれよな!」
リルの言葉に、ガンツは最高の笑みを浮かべて、冒険者達と握手を交わしていくのだった。
いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。