ガンツの護衛5『オーガワラ?』

■シリーズシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 95 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月07日〜02月14日

リプレイ公開日:2005年02月09日

●オープニング

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 近頃ギルフォードで有名になりつつある彫刻家のガンツという男の工房。
「‥‥完成だ!」
 冒険者達の協力を得て作られた海辺の村の守り神『サーペント』の彫刻は本物に近い迫力を醸し出していた。
 ガンツが満足そうにしていると、ノックの音が聞こえてきた。
 どうやら客人らしい。
「貴方が広場にある冒険者達の彫刻をしたガンツ様ですね? 私、このギルフォードの領主であられる男爵様の使いで参りました」
 ガンツは男爵邸に呼ばれ、紅茶男爵直々に『ある彫刻』の依頼をされたのだった。
 その依頼を引き受けることにしたガンツは、キャメロットへと旅立ったのである。

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? ギルフォードの彫刻家ガンツが依頼に来てるぞ」
 冒険者ギルドのおやっさんが依頼人のガンツを呼ぶ。
「実は紅茶男爵様からの依頼でよ、ジャパンに伝わる『オーガワラ』だか何だかってぇ彫刻をする事になったんだ。何でも、オーガをモデルにした彫刻で、飾っておくと魔除けになるらしいんだ。で、最近モンスターをモデルに彫刻してる俺に依頼が来たってワケよ。やるからには本物をモデルにしようと思ってな」
「『オーガワラ』って何だ? それを作らせようとする男爵様も男爵様だが、直接オーガを見に行こうって彫刻家もな‥‥ツッコミ所が多すぎだ」
 呆れ気味に笑うおやっさん。
「まあ、オーガなら、ひとつ心当たりがある。キャメロットから三日ほどの所にある森でオーガの集団を見た者がいるんだ。まだ被害らしい被害報告も無いし、依頼にもなってないんだがな」
「オーガの集団!? てことはモデル選び放題か! 詳しく教えてくれ!」
「ああ‥‥どうやら、5・6体のオーガの集団らしくてな、しかも半分くらいオーガ戦士なんじゃないかって話だ」
 喜々として尋ねるガンツに、知っている情報を話すおやっさん。
「今回も報酬と道中の食費は俺が出すから、護衛と荷運びを頼むぜ!」
 頭を下げるガンツ。今回も材料となる岩が荷車に積まれて冒険者ギルド入り口に置かれている。
 おやっさんは肩をすくめて苦笑しつつ、冒険者達を見るのだった。

●今回の参加者

 ea0923 ロット・グレナム(30歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1131 シュナイアス・ハーミル(33歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2128 ミルク・カルーア(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3098 御山 閃夏(31歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea3970 ボルジャー・タックワイズ(37歳・♂・ファイター・パラ・ビザンチン帝国)
 ea5876 ギルス・シャハウ(29歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)

●リプレイ本文

 さてさて、『オーガワラ』なる彫刻を作るのに協力することになった冒険者達。
「オーガ達め、おいらがやっつけてやる! あ、でも、今回はやっつけるだけじゃ駄目なんだっけ?」
「ボルジャーさんは初参加ですね。よろしくおねがいします〜」
 ガンツの依頼では新顔のファイター、ボルジャー・タックワイズ(ea3970)に、礼儀正しく挨拶するクレリックのギルス・シャハウ(ea5876)。
「簡単に言ってくれるけど、オーガが5、6体でそのうち半数はオーガ戦士って‥‥それはかなりの戦力だぞ‥‥」
 いつものテンションに戻っているウィザードのロット・グレナム(ea0923)。
「エキサイティングにも程があるぜ。へたすりゃオーガ戦士とタイマンだ」
 苦笑しつつも、ヤル気満々なファイターのリ・ル(ea3888)。
(「前オーガ戦士と戦った時は、たった1体相手に随分苦労させられたな‥‥。今の俺なら‥‥どうだ? 俺は強くなっているのか?」)
 そんな事を考えているナイトのシュナイアス・ハーミル(ea1131)。彼は、ガンツの評判をキャメロットで聞いてみたが、ギルフォードの外での知名度はまだまだ低いようだった。
「オーガワラ‥‥おおがわら? ‥‥や、山鬼がモチーフってことは‥‥」
 呟く浪人の御山閃夏(ea3098)。胸はサラシで固定されている。
「正しくはオニガワラだ。ジャパンじゃ屋根に粘土を固めて焼いた『瓦』を葺くが、こっちで言う教会で飾る厄除けみたいなもんさ。恐い鬼の面を飾って災いを遠ざる縁起物だな」
「そうだったと思う、兄さんから聞いたことは有るけど詳しくは覚えてない」
 浪人の陸奥勇人(ea3329)に相槌を打つ閃夏。
「そ、そうなのか。ジャパン出身者が居てくれて助かったぜ。後世まで赤っ恥を残す所だった」
 頭を掻くガンツ。
「その辺を踏まえて、運ぶ岩の大きさは抑え目にして貰えると助かるぜ」
 そう苦笑する勇人だが、
「ただ、依頼人の男爵も勘違いに気付いていないかもしれませんわね」
 依頼通りにオーガを彫刻にした『オーガワラ』と本来の意味での『鬼瓦』の両方を作った方が良いのではないかとガンツに提案するナイトのミルク・カルーア(ea2128)。
「そうだな、ここはもう一つ、小さめの岩も注文するかな」
 結局、荷物が増えることになってしまった。更にミルクの提案で彫刻を保護するための大量の布を用意し、出発するのだった。

 道中、陽気に合唱するボルジャー&リル。
「「こんどの相手はオーガがいっぱい。パラの戦士はやっつける〜。
 オーガは石にならないけれど、石に彫られて石になる〜♪」」
 休憩時間には一緒に稽古したり。
「この前はできなかったけど今度はできるかな? 勝負だ!!」
 模擬戦を始めてしまう。ギルスが居るから少々の怪我なら大丈夫だ。リルはギルスの荷物を運んだり、寝床を共有したりと仲が良い。
「いつか俺が倒してやるぜ、師匠」
 模擬戦はわずかにボルジャーが勝ったようだが、実力は互角で何度もやれば結果は変わるだろう。

 ルート上で最も近い村に立ち寄って情報収集をし、件の森へと入る冒険者達。荷車のままでは移動できない所もあったが、
「俺達の岩運びも、堂に入ってきただろう」
 仲間達と協力して岩を担ぐリル。これまでで随分と手慣れたものである。
 隊列の後ろ側を歩き、定期的に『ブレスセンサー』で索敵するロットや、上空から周囲を警戒するギルスなど、護衛任務もしっかりこなしている。
 やがて、少し開けた所にキャンプを設営する冒険者達。
 焚き火の煙で誘き出し兼、暖をとるリル。
 勇人、ボルジャー、ギルスの三名は囮役兼オーガ捜索に出たのだった。

「「「ウガッ!」」」
 勇人が『強烈な匂いの保存食』をツマミにしていたのが良かったのか、程なくしてオーガの集団と遭遇する囮役達。オーガ3体、オーガ戦士3体の情報通りの編成だ。
「鬼さんこちら〜、手の鳴る方へ〜♪」
「鬼さんこちら。手の鳴る方へってな!」
 『ホーリーフィールド』を張りつつ、誘導するギルス。
 勇人とボルジャーもそれに倣う。これは仲間達への合図にもなっており、この間に戦闘準備を調えているはずだ。
 見事、キャンプまで誘き出すと、左右に展開する囮役。そして!
「まずは先手を取らせてもらうぞ!」
 高速詠唱『ライトニングサンダーボルト』で、並んでいたオーガ達に叩き込むロット!
「「「ウガーッ!!」」」
 正しく鬼の形相で襲いかかってくるオーガ達!
「こいつぁ、甲乙付けがたいな」
「鬼瓦は顔だけなので顔の厳つさで選び、オーガワラは肉体のたくましさで選んだらどうかしら?」
 モデル選びをするガンツとミルク。今回も彼女は彫刻の助手がメインだ。
「そうだな。とりあえず、そっちの貧相なのは片付けていいぜ」
 普通のオーガ3体はお呼びじゃないらしい。
「さぁて、退屈させてくれるなよ」
 オーガ2体を相手取る勇人。
「さぁこい!! パラの戦士が相手だ!!」
 残りのオーガと対峙するボルジャー。
 『オーラエリベイション』と『オーラパワー』をすでに掛けていたシュナイアスと、
「山鬼戦士か。差し向かいでやるとかなりきつい相手だね」
 閃夏、リルが各々オーガ戦士と対峙する。モデルが決定するまでは無闇に攻撃せず、防御に徹しておく。
「白き神よ、その使徒に仇なす者を退けたまえ」
 ガンツの元へと移動したギルスは『ホーリーフィールド』を掛け、護衛に当たる。

「ウガッ!」
 見事な回避術でオーガの攻撃を避け、日本刀三連斬りを喰らわせるボルジャー。
「一匹ずつ確実に‥‥っと」
 『リトルフライ』で浮遊しつつ、ボルジャーを巻き込まない角度から高速詠唱『ライトニングサンダーボルト』で援護するロット。
「一発で終わりだと思うなよ!」
 更に高速詠唱でもう一発!
 見事な連携攻撃であっさりオーガを1体倒した所で、
「ソイツの面構えが気に入った! なるべく俺の方を向くようにしてくれ!」
 ガンツが指差したのはシュナイアスの相手だった。
 少しジャイアントソードを掲げて了解の合図とするシュナイアス。
「それから、そっちはなるべく傷つけないよう時間を稼いでくれ!」
 続いて、閃夏の相手を指差し、彫刻に打ち込み始めるガンツ。
「これなら、凌げなくは無い!」
 パリーイングダガーとシールドソードの二刀流による『ダブルブロック』でオーガ戦士の攻撃を完全に防御する閃夏。
「久々の二刀流だ、達人技の冴えを味わいやがれ」
 モデルから落選したオーガ戦士には、リルの日本刀とパリーイングダガーによる『ダブルアタック』が炸裂!

 勇人と、加勢したボルジャーとロットに連携によって、残るオーガ2体もすぐに倒される。
 そして、リルに加勢する三人。
「刹那で見切る。戦いってのはこうでねぇとな!!」
 やはり普通のオーガでは物足りなかったのか、生き生きしている勇人。
 すでにリルの攻撃でダメージを受けていたオーガ戦士も、彼らの加勢で一気に倒される。
 残るオーガ戦士はモデルを務める2体だけだ。
「ウガッ!」
 勿論、オーガ戦士にモデルとしての自覚は無いだろうが‥‥。
 それを受けと『デッドorアライブ』を使い分けて凌ぎ続けるシュナイアス。
「お前はメインディッシュなんだよ、出番はまだだ」
 彼に加勢し、オーガ戦士の攻撃を分散させるリル。ボルジャーもそれに加わる。
 勇人は閃夏の方に加勢し、ロットはいつでも援護できるよう様子見だ。
 ここまで来れば、前衛を交代しながら時間を稼ぐ事が出来る。
「ガンツ。何だったら誰にオーガと戦って欲しいか決めてくれ」
 ニッと笑う勇人。そんな軽口を叩く余裕さえ生まれてきていた。
 そして。
「父と子と精霊の御名において、モデルさんナイスポーズ!」
 ギルスの『コアギュレイト』によって、物凄い形相のままピタリと止まるオーガ戦士!
「最高だぜ!」
 親指を立て、ハンマーを掲げてみせるガンツ。

 『鬼瓦』と『オーガワラ』の二つの作品のため、いつもより時間がかかったが、冒険者達はガンツの要求に応え、見事に戦い続けた。
「有り難う、もうイメージは完璧だぜ!」
 ガンツの許しが出た刹那!
「ウガーッ!」
 オーガ戦士の攻撃がシュナイアスを捉えた!
 しかし!
「これで立っていられるか!?」
 逆に『デッドorアライブ+カウンターアタック+スマッシュ』を叩き込んでいたのだ!
 軽傷で済ませたシュナイアスに対し、まだ無傷だったオーガ戦士が一撃で戦闘不能になる恐るべき破壊力!
「神様とガンツさんがじ〜っと見ています。ナイスポーズでがんばってください」
 ギルスが近寄って『リカバー』を掛ける。
「まぁまぁの威力だ‥‥デスカウンターとでも名づけるか」
 そう呟いて、もう1体のオーガ戦士へと向かうシュナイアス。

 そして最後のオーガ戦士。
 ガンツと彫刻の側を離れないようにしつつ、『オーラショット』で援護するミルク。
「さて、これで終わりだ‥‥」
 上空から『ライトニングサンダーボルト』を撃つロット。
「ごくろうさん。お休み」
 リルと閃夏の『ダブルアタック』など、ボコボコに袋叩きにされたのだった。

 戦闘が終わってからも、ガンツの彫刻の音は鳴り響いていた。
「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ!!
 パラッパパラッパ! おいらはファイター!!」
 陽気に歌い踊っているボルジャー。なんとなくガンツの彫刻する音と合っている気もする。
「神様と紅茶男爵は、あなたの力作をじ〜っと待っていますからね、じ〜っと」
 ニッコリ笑うギルスであった。

 こうして大雑把に出来上がった彫刻は、まだ仕上げ前だが物凄い迫力があった。
「やるねぇ。この迫力なら本物にも負けねぇぜ」
 ついでに長屋に飾る鬼瓦を頼んでみる勇人だが、
「ダチの頼みだが悪いな。モデルを直接見て彫り始めないと魂が入らねぇんだ」
「そうだな。流儀を曲げさせるわけにもいかねぇ。忘れてくれ」
 彫刻家魂溢れるガンツに明るく言う勇人。さあ、あとは彫刻を運んで帰るだけだ。
「今回はハードだったな。次は一体どうなるんだ」
 楽しそうに尋ねるリル。
「今まで色々な相手と戦ってきましたが、ここまで来るとドラゴンの彫刻を彫りたいとか言われそうですわね」
 エスカレートする依頼に対し、苦労と面白さの両方を感じているミルク。
「はっはっは、そのつもりだぜ、相棒。以心伝心ってヤツか?」
 豪快に笑うガンツ。どうやら本気‥‥らしい。