【カマ城2】ご存知! カマ太郎侍!

■シリーズシナリオ


担当:U.C

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 24 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月19日〜10月25日

リプレイ公開日:2004年10月28日

●オープニング

 ──夜。
 家路へと急ぐケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)の前に、突如としてそいつは現れた。
 ぽん、ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽん。
 どこかから聞こえてくる鼓の音と、物悲しい笛の音。
 と同時に、自作らしい不恰好な般若の面を被った筋肉漢が現れ、くるくると回り出す。

 ひとぉつ‥‥人の世の、生き尻を啜り。
 ふたぁつ‥‥不埒なカマ行三昧。
 みぃっつ‥‥醜い浮世のカマを、擁護してくれようカマ太郎!

 掲げていた薄布を投げ捨て、ついでに服も脱ぎ捨てるその漢。
 下から現れたのは、褌一丁の筋肉ボディだ。褌の垂れの部分には『カマ一筋』と立派な文字で書かれている。
 さらに、その背後から同じく般若の面と褌装備のゴブリン達がバタバタと走ってくる。そいつらの褌には『下っぱ』の文字。
「ひぃぃぃ〜〜〜!!」
 腰を抜かし、その場にへたり込むケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)。
 毎度の事ながら、誰も助けは来なかった‥‥。

 ‥‥カマが城を構えた地での依頼遂行、ご苦労だった。
 諸君等の活躍により、見事カマの1人は退治されたのだが、彼奴等めの行動は相変わらず活発だ。ここはひとつ、間髪いれず次なるカマを打ち滅ぼしてきてもらいたい。
 その次なる相手だが、カマ太郎侍と呼ばれる浪人者だ。
 いつも自作の般若の面を装備しており、太鼓と笛の音を伴って現れるという。
 さらに、配下として、同じ格好のゴブリンも7〜8体程連れているそうだ。
 前回と同じく、頂上に奴等の本拠である城のハリボテが建っている丘に出向けば、向こうから出陣して来るだろう。そこを叩くのだ。徹底的に、完膚なきまでに。
 男性陣は、特に心と身体を完全な状態に回復させて望んで欲しい。
 そうでなくとも、今回もおそらくボロボ‥‥いや、言うまい。
 では、とにかくよろしく頼む。
 カマを倒し、イギリス全男性の平穏と安寧を守るのだ!

●今回の参加者

 ea0717 オーガ・シン(60歳・♂・レンジャー・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea0926 紅 天華(20歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 ea0966 クリス・シュナイツァー(21歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea2624 矛転 盾(37歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea3203 アルト・エスペランサ(24歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3991 閃我 絶狼(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4756 朱 華玉(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

ロソギヌス・ジブリーノレ(ea0258)/ ニミュエ・ユーノ(ea2446)/ ルア・セピロス(ea3168

●リプレイ本文

「ひとぉつ、人の世の生き尻をすす──はぶぁっ!!」
 丘の上に現れ、ふんぞり返って名乗りを上げようとしたカマ──カマ太郎侍の頭に、小型の釜が命中。顔に付けていた般若の面が割れ、白目を剥いてその場に筋肉漢が崩れていく。
「かっかっか。見事じゃな、ヤヒチよ。おぬしはピンチで助けに来るのがパターンじゃが‥‥まあ、たまにはいきなり登場も良いじゃろうて」
 オーガ・シン(ea0717)が白髭を撫でながら満足そうに笑っている。
「確信した‥‥やっぱりジャパンの男にまともなのはいない‥‥ところでヤヒチって誰?」
 釜を投げた姿勢のまま、ルア・セピロスが疲れた表情で呟いていた。
 その服の裾をちょいちょい、と引き、
「ヤヒチは‥‥撃つとボーナス得点、なの」
 なんだか良く分からない事を教えるエルフ少女、レン・ウィンドフェザー(ea4509)。
「ええと‥‥俺は確かスケさん、なのだよな? それでいいんだよな?」
 と、閃我絶狼(ea3991)が尋ねると、
「かっかっか。その通りぢゃ。そしてわしがエチゴのちりめん問屋のご隠居さんで、これは権力を失った老人が、過去の栄光を取り戻す為に、地方都市の領主を蹴落としていくという話じゃ。それで行くぞい」
 シンが、相変わらずの笑顔でこたえる。
 それを聞いて、シンはノルマン出身なのにたいした知識だな、などと感心しながら頷く絶狼である。色々間違っているが、ツッコむ者は今日も今日とて誰もいない。
 そして、一番間違っていると思われる奴も、がばっと身を起こして復活を遂げていた。
「んもぉ〜! 名乗りの途中で攻撃するなんて反則よん! そんなワルイコちゃんは、片っ端から捕まえてチョメチョメしちゃうんだからぁ〜!!」
 ぷりぷりお尻を振りながら、怒りを表現するカマ太郎侍。
「‥‥なるほど、あれが次の方、ですか。では早速我が主人に相応しいかどうか、審査させて頂きましょう」
 それをじっと見つめながら、審査表を手にした矛転盾(ea2624)が目を光らせていた。
「というわけで、さあロソ子様、先にお伝えしましたように、カマ太郎侍様に斬りかかっていってくださいませ。上手くいきましたら晩御飯はおごって差し上げます」
 そう告げると、傍らにいたロソギヌス・ジブリーノレの襟首をひょいと子猫みたいに掴み上げ、無造作にカマの方へと蹴りこんだ。
 盾から借りた刀を構え、今夜はローストビーフを塊のまま食べますよー、とか叫んで飛んでいった彼女だが、あっさり迎撃され、取り巻きのカマゴブリン軍団にけちょんけちょんに踏まれている。
「ほーっほっほっほ! 前回は少々手違いがありましたけど、今日は大丈夫でしてよ! 華麗なるこの私、月下の乙女ニミュエ・ユーノの実力、とくとご覧あそばせ!!」
 大きな岩の上に仁王立ちになったニミュエ・ユーノが、高笑いしていた。
 その背後に近づいてきた一頭の馬が、おもむろにすぱこーんと彼女を蹴り飛ばす。
 またですのこの馬鹿馬ーーー!! とかいう声が尾を引いて飛び、どっかーんとカマ軍団と吹き飛ばした。
「‥‥紳士淑女の国と聞いていたのだが‥‥紳士がカマで、淑女が‥‥姐、なのか‥‥? なるほど、奥が深いものなのだな‥‥」
 その光景を眺めつつ、紅天華(ea0926)が重々しく頷いている。とりあえず従姉妹のユーノを助けようとかフォローするつもりはないようだ。
「さて、では頃合かの。スケさん、カクさん、ヤッてしまいなさい!」
 ご老公、シンが杖をトン、と打ち鳴らし、命じる。
「了解です! カマに対する際に必要なのは、槍をも弾く重装備と、決して挫けぬ心意気! そして恐れを忘れる不思議な魔法! 僕はそれを確信しました! 今までの僕は羊だった! 羊は今、素敵な魔法で脱皮して、何者をも恐れない狼さんになるの! ああ、自由って素敵! 僕のココロは今、とってもフリーダム!」
 酒瓶片手のクリス・シュナイツァー(ea0966)が、目をキラキラさせつつくるくる回って素敵に登場。なんだこいつは、と目をぱちくりさせる絶狼の口にもミラクルドリンク(ただのお酒)の瓶の先っちょをぶちこんで中身をごっごごっごと飲ませると、素敵なオトモダチがもう1人素敵に誕生した。
「ミラクルツイン★くろーす!」
 かけ声と共に2人は腕を組み、スキップしながらくるくる回って変身を開始。
「マジカルー! ケミカルー! トロピカルー! とってもハッピーになるお飲み物で、24時間働ける体になぁ〜れっ★」
 ‥‥そして2人は、虚飾の仮面をかなぐり捨て、華麗な蝶へと生まれ変わった!
 ぽんぽんぽーんと衣服が飛び、垂れの部分に『漢』と書かれた褌を装備し、顔にはあだるてぃな感じのエクセレントマスカレードを装着した愛の戦士の姿となる。
 科学的に分析すれば『脱ぎ上戸』という言葉で説明がつく現象ではあるが、そんな理屈はこの際どーでもいい。
 見事、と素直な賞賛の言葉を口にして、天華と盾はパチパチと拍手を贈っていた。人の真なる姿は、他人に感動を励起させるものである。間違いない。
「‥‥こんかいレンは、うらかたさんなの♪」
 黒子の衣装に身を包んだレンが、先に竹篭を吊るした竿を振り、中の紙吹雪を雪のように散らせている。演出効果もバッチリだ。
「‥‥」
 無言でルアが2人を必殺の弓で狙っていたが、矢がもったいないと思い直していた。
「ああ‥‥」
 そして、そんな仲間達に背を向け、切なげな吐息を漏らす乙女が1人。
 ‥‥いけない、こんな調子の依頼で活躍して、その報告書をあの人に見られたら、きっと誤解されてしまうに違いない。どうしようあたし‥‥。
 意中の人の顔を思い浮かべ、仕事意識と多感な少女の想いの狭間で身を焦がすのは、朱華玉(ea4756)である。
 が‥‥ふと自分の荷物を見て、これだ! と閃いた。
 マントで全身を包み、水晶のティアラを頭に乗せ、顔はアゲハ蝶の姿形をしたマスカレードで隠して、さらに額にコカトリスの瞳をくっつけてみる。
 うん、よし、これならいける!
 拳を握って確信する華玉。
「カマの巣窟に舞う紅い影、キャメロットからの刺客、私の名はカマ狩り烈風ジェストX(ばつ)さん!! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よーーーっ!!」
 マントを翻して高らかに名乗りを上げる華玉‥‥いや、ジェストXさん。
 新たなるスーパーヒロインが、今ここに誕生した。
「ご、ご老公様‥‥おと、おと、おとっつぁんの仇を‥‥ぐふっ」
 ヨレヨレになって戻ってきたロソギヌスが、シンに訴える。顔にはゴブリンの足型がくっきりとついていた。すぐに盾が襟首を掴んで、再びゴブリン集団へと放り込む。
「うむ、そろそろよかろう、スケさんカクさん!」
「はーい、桃尻一丁、はいりまーす♪」
「よろこんでー♪」
 褌仮面半裸ブラザーズのクリスと絶狼が、シンの言葉に応じて、ついに最終兵器の発動準備を始める。
 その、封印された禁断の兵器の正体とは!
「‥‥なんだかカマってゴキブリみたいです。叩いても叩いても出現します。きっと王様の統治に問題があるんです。誰かがんばって政権打倒して下さいぃ‥‥」
 円卓の騎士が聞いたら問答無用で斬首するであろう台詞を疲れきった表情で呟く1人の少年、その名はアルト・エスペランサ(ea3203)。
 彼はなんだかもう、見る人が見たら大絶賛間違いなしの超絶的技法でがんじがらめに縛られ、その場に転がされていた。ズボンは半分ずり下げられて、天使の桃尻が半分顔を覗かせている。
「あう‥‥僕は今確信しました。僕の敵はカマだけじゃなく味方もなんですね‥‥あう、こんなのおかしいです。誰か僕に優しくしてよ!」
 空に向かって叫ぶ少年。
 が、その声にこたえたのは天空の神々ではなく、すぐ隣にいた金髪の愛らしい破壊神であった。
「だいじょうぶ、なの。おかしい、というか、『犯しい』のはいつものことだし、みんなやさしくも、やらしくもしてくれるの」
 ニッコリと微笑んだレンの顔は、まさに穢れを知らぬエンジェルそのものだ。内容はともかく。
「あああ‥‥逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ‥‥というか、毎度毎度逃げる隙なんか一片もありゃしません‥‥あう、お母さん実家に帰っても良いですか。毎日が崖っぷちすぎです。既に崖から落ちている気すらします‥‥」
「というわけで、桃尻充填120%! 発射ーーー!」
「あ゛〜〜〜!!」
 クリスと絶狼がアルト君を抱え上げ、カマへと放り出す。
 大空に弧を描いた桃尻は、吸い込まれるようにしてカマ太郎侍の顔面にクリティカルヒット。
「ああん、これだからイギリスって大好き〜〜〜!!」
 ダメージというより、むしろ大喜びの声を上げてカマはアルト君ともども吹っ飛んだ。
「今だ! 突撃ーーー!」
 残りの面々も突進開始。
 天華の放ったブラックホーリーが、カマとか、ゴブリンとか、ユーノとかに次々に命中する。
「む‥‥なぜ姐に当たるのだ? これは邪悪なる者には効かぬはずだが‥‥」
 首を捻る彼女であったが、まあ姐の事だから大丈夫だろうと、心配は頭からしていない。
「この世にカマがいる限り、囮の尻を盾に正してみせる! 行くわよ! ゼンテッ●ス流連打掌”御鎚”!」
 ジェストXさんが、ボロボロになっているのに何故か尻だけは綺麗なアルト君を掴んで振り回している。
「かっかっかっ! もうどうなってもしらんぞい! 目覚めよカマ共、爺の美技に悶え果てるがよいわ! そぉ〜れ、菊花散華ぢゃ!」
 シンのシューティングPAが、カマの尻へ。
 乱戦のどまんなかでゴブリン達と共に火の付いた松明を振り回し、ファイヤーリンボーダンス頂上決戦をしていたクリスと絶狼の尻にも、容赦なく矢が突き立った。
「‥‥♪」
 その光景を、いつものようにレンが生き生きとスケッチしている。たまに構図に変化を付ける意味で、グラビティーキャノンを撃つ事も忘れなかった。もちろん敵味方平等なのは言うまでもない。
「失礼いたします。誠に申し訳ございませんが早急にこの度の面接を終わらせる必要が生じました。では、そういう事で‥‥」
 つかつかとカマ太郎侍に近づいた盾が、丁寧な一礼と共にバーストアタック。
 服が弾け、すっぽんぽんになったカマに、味方の攻撃が集中し‥‥あとは大勝利であった。

「‥‥あの城の中に、今までとはケタ違いの主力(あるじぢから)を感じました。次が楽しみでございますね」
 城を見ながら呟く盾。肩には、たぶんロソギヌス、と思われる残骸を担いでいる。
「カマを一人みたら三十人はいると思えと街の者が言っておったが‥‥本当に次から、次に湧き出てくるものなのだな」
 馬の背に、今回もまた燃え尽きた従姉妹を乗せた天華が、感心したように頷いている。
「はぁ、はぁ‥‥す、すみません、怖くなって逃げ出したらちょうどジェストXさんが通りかかって‥‥」
 華玉がどこからともなく走ってきて、皆にそう告げた。謎のヒロイン、ジェストXさん‥‥その正体は果たして‥‥?
「かっかっか。いや、皆見事ぢゃったぞ。次もこの調子で行くぞい!」
 尻に矢を突き立てて眠る敵味方から、その矢を引っこ抜いて回収しつつ、シンが好々爺の顔で笑っていた。
 空は、今日も見事なジャパン晴れ‥‥いや、イギリス晴れ。
 実に天晴れな勝利であった。

■ END ■