【悪魔の門】 しからばこぞりて血に堕ちよ
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■シリーズシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 95 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月22日〜03月28日
リプレイ公開日:2007年03月31日
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●オープニング
●碑文
『門の向こうに扉は四つある
一は煉獄
ニは地獄
三を飛ばして
四は死地
選べば己ずと玄室は繋がり
選ばずとも道は開く
門番は永遠に立つ
濁った海で泳ぐ死人は形無き陽炎の灯火
暗き地下に潜る小人は眠る目覚めを待つ
地下深く永遠の剣音が響く時
悪魔も人も血に堕ちるだろう』
「・・・・相変わらず、はっきりしない文だな。扉が四つある。一つだけ当たりで、あとは大変ってことなのか?」
ややクラシックな色合いの眼帯を左目にかけたその女は、解読した文面をみながら呆れたのか、そうこぼした。女の名をリュミエール、学者である。
トレードマークは眼帯は彼女なりのファッションで、気分によって後ろ髪を纏めているリボンともに色々変えているようだ。それに意味があるのかどうか、問うてはいけない。ファッションとはスタイルである。本人とってポリシーなのであって、場の雰囲気を読んでいる限りは問題は無いものだ。彼女が読んでいるかは別として・・・・。
「んー、こういうときはカード占いだな」
そう言うと、気晴らしなのだろうか、タロットカードを取り出し占いはじめた彼女。
引いたカードは
「法王。慈悲かぁ。何か、いいことありそうかも。よーしギルド行っちゃうよ」
その勢いでリュミエールは「悪魔の門」の調査隊を再度派遣するためギルドに走り出すのだった。
●遺跡
「我々だけでは危険。そう言う事ですか」
紫紺のローブを羽織った女は、黒ずくめの男に返す。いつ見ても危うい何かを目の前の男から彼女は感じていた。嫌悪する対象として十分な理由を持つとはいえ、その実力と行動力は侮れない。何よりも、この遺跡の存在を発見示したのはこの男なのだ。
「その通りだ。騎士殿はやぼ用と聞いたが?」
「あの方は、過去の誓いを守っていらっしゃるのでしょう」
それを聞いた黒い男は、皮肉を込めて吐き捨てる。
「ふん、滅びを求めながら、人助けか・・・・文字通り愚者だな。まあ、いいさ。だが、さすがに二人では、死に行くようなものだろう」
「その点に関しては、貴方が望むかは分かりませんが、一人呼んでおきました」
「手際が良いねえ。さすがは疾風」
「お褒めいただき恐縮です。どうやら噂をすれば」
現れた者、示す数理は5。
※リュミエール−Files
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●これまでの概要
前回までの報告書を参照のこと。
●今回の捕捉分
ブラッドリングが一つ配布されます。パーティーで相談の上で配布する人を決定してください。
個人提供が不公平だと思う場合は、お金で均等配分します。なお、権利は前回参加者限定です。
どうやら先に進む扉が四つあるようです。分散するも一つを選ぶも意思しだいでしょう。
扉に左から順に彫られているらしい模様は。
○蛇の絡まった杖を持つ若い男
○雄牛に乗った豊満な女
○月を仰ぐ清楚な修道女
○王冠をかぶった牡羊
のようです。何の意味かは分かりません。
●関連事項
今回、こちらはほぼ独立となります。冒険隊側の影響を多少受ける可能性もあります。
※登場人物
○リュミエール・テッセン
眼帯とポニーテールがトレードマークの女学者さん。
研究以外のことは全てガサツにこなす、ずれたレデーです。
彼女は、いつものように村で研究をしています。言語分野については最強さんなので
分からない壁画や文字。などを記述して帰ってくると分析してくれます。
○赤毛のアレク
少年冒険隊のリーダー。
今回、冒険隊とは活動範囲が違うため。リュミエールとの繋ぎ役としてのみ登場です。
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●リプレイ本文
●開会式
はてさて、今までこの遺跡周辺でも色々なことがありました。
人の幸せとは何か? 簡単に語りきれないものですが、どうやら今回一つのセレモニーがやってきたようです。
「ってことで、ロイさんとエリヴィラさん、並んで並んで。節目の行事だよ」
白クレリックであるイルコフスキー・ネフコス(eb8684)は簡易祭壇の前にロイ・ファクト(eb5887)とエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)を案内した。
(エリたんついに・・・・この時が)
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)は自らの妄想が実現したことに感動を覚えていた。シャリオラ・ハイアット(eb5076)という強敵をうち破り、人生最大の転機がついに・・・・。
「おめでとう」
皇茗花(eb5604)はシーフル便で手に入れたらしい、まるごとはーと姿で祝う。
「お二人ともお幸せに」
キルト・マーガッヅ(eb1118)は、その二人を見て寂しい気持ちに襲われたが拍手で迎える。
「とにかく喜ばしいことだ」
大蔵南洋(ec0244)。下町さんからの紹介でやって来た怖い顔のお侍さん。いきなりこの展開では驚くのも無理はないだろう。
「ふ、俺には場違いかな」
確かに、レイブン・シュルト(eb5584)にとってはちょっと成り行きのような気もする。
「血痕指輪、贈呈、贈呈ー」
ジュラ・オ・コネル(eb5763)今回は普通のいでたちのようだ、きっと隠し芸は次のパーティーに備えているのだろう。
「それでは、誓いの指輪の交換を」
イルコフスキーの言葉のあと、戸惑ったようにロイがエリヴィラにその指輪を
「ちょとまった! そこの二人」
やってまいりました、嫉妬の女神。そんなに簡単に事が進むわけも無いのです。
「その子は渡さん、鬼のシャリオラの名にかけて」
いつからそんな名前がついたのでしょうか? ともかくシャリオラは聴衆の面前からエリヴィラを攫うと森の遺跡へと逃げて行ったのでした。
あっけに取られて茫然としている皆をよそにロイはそれを追って・・・・。
夜闇に染み入る光。
なんだか妙な重さを感じて彼女は目を覚ました。張ったテントの内部、隣で寝ていたはずのシャリオラ。その頭がいつのまにか胸のあたりにある。
夢、夢かあ・・・・。
彼女エリヴィラは、昨日の月夜の晩、妖精の粉を振りまいた時の出来事を思い出そうとしていた。あの時、ロイの手から手渡されたのは、この指輪。
それをじっと眺めると、なぜかエリヴィラは溜息をついた。
●悪魔の門
地下二階の巨大な扉。
この階の門をくぐった冒険者たちを迎えたは四つのレリーフが彫られた扉たちだった。
「ここに来るのも何回目でしょうか?」
シシルは、お馴染みとなりつつある遺跡地下への階段を下りつつ、隣のキルトに言った
「私は初めてですわよ」
「あ、そうでした。そろそろ謎が解けてもいい頃だと思うんですけどね」
キルトはシシルに頷いたあと、自分の考えに沈んだ。
「で、どれが地獄なんだろうね?」
リュミエールから手渡された聖なる箱を預かったイルコフスキーは周囲にそれとなく聞いた。
「予測では、この清楚な修道女だと思いますよ」
ここぞとばかり、シャリオラがその扉を指す。
「しかし、地獄に続いてるのだろう? 危険は無いのか」
ロイのまともな意見を聞かぬしてシャリオラは続ける
「危険に挑むことこそ、我々の本分です!」
シャリオラの妙な強気な態度に、たじろぐ面々
「行ってみれば分かるだろう。ここが危険なのはいつものこと」
茗花は良識派のようだ。まるごと愛好以外は。
「けど、なんでこれが地獄に続いてるのか分かるの?」
ジュラの問いに
「聞いた碑文の数字と推測を当てはめた結果ではないだろうか」
と、大蔵は言った。
その横で、謎解きなんて分からない。それより少し残った粉をどうしようと悩んでいるのはエリヴィラ。
ともかくその扉をメンバー選んだ。先にあるのは、はたして? 天国、また地獄。
●地獄の扉
警戒する中で扉は開かれた。
扉の先には危険らしいもの感じられず何事も無く進む彼ら。
シシルは、今回こそステインエアワードのスクロールを使用し、この道を先行したものがいないか確かめた。するとどうやら先行したものがいるらしい。
その内容は。
「数時間ほど前に、ここを数人の人影が灯りをもって歩いて行ったから空気が汚れた」
そのようなことで、この道を誰が進んだことが分かった。
そういえば後ろのほうで、後ろ向きまるごとジュラが大蔵に対してまるごとパワーをみせつけていたようだ。免疫がない彼はまともにそれの相手をしていたらしい。しかし、顔の怖さで対抗していた気もする。
ジュラという少女は大人しいとずっと思っていた。いつから楽しい道化師になったのかは知らない、もうあの日々はもう帰ってこないのだろうか? いや過去の感傷はよそう。
さて、預かった箱を大事そうにイルコフスキーは抱えている。
「これと神様は何か関係あるのかな?」
「何か、関係あるとよいですわね」
キルトはイルコフスキーから色々、前の話を聞いたようだ。
その時だった。
「お客さんのようだ」
レイブンの声、そして現れたのは・・・・。
朧に浮いたそれはもはや命無き者。
大蔵は後衛で品物比礼を振りはじめる。その魔力によって陽炎は進むことかなわない。剣を抜いたロイ、エリヴィラ、レイブンら前衛はすかさず走り始めるが、狭い通路のためなかなかたどり着かない。だが、品物比礼の力により無事問題なく対峙した。
イルコフスキーは邪を滅するか、障壁を張るか迷ったが、茗花に障壁を張ることを任せ、ひとまずジュラと供に後衛の防衛拠点を築くことに決めた。キルトは直線攻撃を避け、高い天井を利用し宙に一度浮いたあとそこから風の刃を撃つ。シャリオラとシシルはこの状態では魔法の使用は困難と見たのか、隙を突くことを狙う。
戦闘は思ったよりも苦戦せず決着した。
「地獄というわりには、それほどの脅威でもないな」
抜いた剣を収めたロイは、隣に立つエリヴィラに言う。
「苦戦するよりはいいよ。もしかしてロイさんはあの人たちと戦いたいの?」
ロイは一瞬、あの騎士との戦いを思い浮かべたが
「無駄に命を落とす必要もない。それに俺には守る者も出来たからな」
そう言って後方へ去った。
地獄は続く。
道は緩やかな下り坂、進めば進むほど重苦しい空気が纏わりついてくる。このまま、どこまで行けば底にたどり着くのだろう。心のどこかでそう思い始めたころ。底に着いた。
●5
「愚者の騎士御一行とお見受けいたす。それがしはジャパンの浪人大蔵南洋。この度遺跡に潜むものを調査せよとの依頼を受けこちらに参った」
この緊張感の中でその挨拶、あっけにとられた影たち。しかしその中の一人、黒で統一された衣服、僧侶とおぼしき男が一部パーティーメンバーを見ると言った。
「どこかで見たことがあると思えばお前たちか、ようこそ地獄の底に。それで今さら何の用だ?」
黒い彼は嘲笑う。見る限り敵はどうやら三人のようだ。例の騎士は居ない。数で勝っている上で、あの騎士が居ないのならば、勝算がないわけでもないだろう。だが、元々パーティーメンバーは彼らと戦うことを是としているわけではない。
ジュラがそれについて何事か話しかけようと前に進んだとき
「無駄な時間を費やしている暇はありません。そこの冒険者たちは我々と敵対する気はないようです。ならば先に進むのが得策でしょう」
その女の声を聞いて、キルトは何か記憶にひっかかるものがある、これは。
「だが、俺はそろそろ退屈の極地でね、ちょっと遊びたいところだな」
男の次の言葉を待つこともなく、闇の中を暗き輝きが走る。その標的はエリヴィラだ。黒い光に包まれたエリヴィラは異常な消耗を感じ倒れこむ。
「一匹排除完了。さて、次はどれだね」
回復に向かうイルコフスキーと茗花。
「遊びも大概にして欲しいものです。あなた達に恨みはありませんが・・・・」
ローブの女は詠唱を始める。
目的を退却と決めたメンバー、倒れたエリヴィラを守るように前衛を務めるロイ、同じく大蔵やレイヴンも盾になるが、それを崩そうとするのは風だ。
吹き荒ぶ風の洗礼。とっさにキルトが応じ応酬し風を緩和するが、そう何度も続けるわけにも行かないだろう。シャリオラとシシルは援護に魔法攻撃を繰り返し、ジュラはそれの擁護をする。
だが、彼女たちもいつまでも残っているわけには行かない。
状況を察したイルコフスキーは障壁結界を張り、
「時間稼ぎを」
そのイルコフスキーの声に、茗花の治療によってなんとか傷を回復したエリヴィラは、牽制する前衛を振りかえり、ふらつきつつも退却する。
茗花はさらに結界を張り、二重に盾を作ると前衛の退却を促す。ジュラ、キルト、シシル、シャリオラらも後退を始め。
残るは
「ナイト気取りか? 坊主」
ロイだけだ。皆の安全を確認した彼は、次にどうやって自分も逃げるべきか考えつつも目の前の男に切るべきか迷っていた。今、この男を切り伏せてところで、何の意味もないことは分かっていた。
けれど・・・・握った束の行方をどうするか? 彼が決断する前に。
「無駄な争いは神の愛に反します。帰りなさい、君の仲間の下へ」
最後に現れた汚れ無き僧衣を着た人物は、自らの仲間を諭すと同時に、ロイを向いて優しく微笑んだ。
●野営
ともかく、なんとか無事逃げおおせたメンバー。
今回の調査結果のまとめと休息を兼ねて野営をしているようだ。
ジュラが嬉しそうにシャリオラに寄ってきた。
「シャリオラさん、この箱をさわってみよう」
ジュラの差し出したのは、悪魔は触れないという例の箱である。
「な、なんですか、私が悪魔だと疑ってるわけ?」
にこやかなジュラ、シャリオラは潔癖を証明するため箱を触ると、ぴくり
「え、そんな! いくら私が反抗的だからって」
以下、その様子を見たパーティーの発言順不同です。
「やっぱり、最近おかしいと思っていました」
「おいらはノーコメント」
「仲間に悪魔がいるとは、ロシアは広いな」
「シャリオラさん。だからロイさんに冷たいんだ」
「俺はとんでもない依頼に参加してしまった」
「マクシームめ、そんな話は聞いていない」
「・・・・ふん」
「私は、きっと誤解だと思いますわ」
「ち、ちがいます」
シャリオラの弁明。これはジュラがひそかに脇腹を小突いたのに反応した。そういうオチなので、シャリオラの正体がデビルな・・・・わけないよね?
その後シャリオラはロイを呼び出し、エリヴィラとの関係を問いただしたという話もある。しかしその内容と答えはきっと本人たちの胸の中にあるので、もし興味がある場合は、何があったのかを聞いてみるのも良いだろう。
「結局この本は、無駄だったのかな」
イルコフスキーは、禍々しい感じの本を取り出してめくっている。有名な悪魔の名前が色々掲載されているようだ。
「イルイル殿、その本は」
「これは、悪魔を解説した本だよ。おいらとか茗花さんには似合わない本だけど、持って来て損はないかな、そう思って」
興味を持った茗花がイルコフスキーと二人で、その本の悪魔の解説を見ているときだった。
「お二人とも、何をやっている」
野太い声に振り向いた二人が見たのは
「あ、悪魔!」
「どうして、こんなところに!」
叫ぶなり本を投げ出して逃げだす二人。
「・・・・・・」
残された大蔵南洋、顔の怖さは天下一品のようである。
●夢幻の如き底
帰還した彼らを迎えたリュミエールは、その後調査資料を元に研究を重ねた。その結果判明した事実を彼女は報告するべく、今回探索にしたメンバーを自分の研究施設、ただの家ともいうが、そこに招くのだった。
いつもとは違う真剣な表情と声でリュミエールは言った。
「粉は補充しておいたよ」
・・・・・・もう一度、最初から。
いつもとは違う真剣な表情と声でリュミエールは言った
「これまでの解析結果から二つのことが分かったよ。名前の通り、あの遺跡の最下層には悪魔が封印されているようだ。そしてもう一つ封じられた武具がある。どちらが凶悪かというと後者のようだな。悪魔は武具によって同時に封印された付属品でしかないようだ」
一端そこで言葉を切った彼女は、机の上の書物に目をやった後。
「俺の想像が正しいのならば、愚者の騎士は武具を求めて、この遺跡にきっと来ている。そして当然の帰結だが、彼がそれを手に入れれば悪魔もまた同時に目覚める。もしこれが真実ならば、次に打つ手はきっと一つしかない、簡単な足し算引き算だよ。我々が彼らに勝っている条件はこの箱だ。これがこちらにある限り、迂闊にあちらも手出しは出来ない。この箱の中身は、武具の真の封印を解く鍵のようなものらしい」
杯の水を飲み干した彼女は続ける。
「俺は、世の中のために何それするような善人ではないさ。ただ、愚者と同じくらい悪魔のカードも嫌いだ。どうする? 別に放置しておいても大丈夫、問題ないさ。愚者が武具を手に入れて一匹悪魔が世に放たれるだけだ。冒険者にとっては仕事が増えてお得かもな」
皮肉交じり呟いた彼女は、試すように。
「死ぬかも知れない。無理にとは言わないよ、命は惜しいものな。でも、一度だけ聞くよ」
夢幻の如き底にて、彼は待つだろう。
刃を交え血の海に倒れるも、己の力にて切り伏せるも、また運命の必定。
道は別れ選択もできる。だが、選ぶのは誰でもない自らの意思。
リュミエールは、全員を見回し最後に言った。
「次の依頼は・・・・」
続