●リプレイ本文
『承前』
その発端がなんであれ、起きる出来事というものは、たいてい見えない糸でつながれている。
だが、糸の先で踊る人形たちがその結末を知ることができるのは、踊り終わった後だ。
この舞台で踊る配役達に、糸を繰るものを知ることができるかどうか?
これより先は、彼らが自らの手によって切り開くもの、道先案内が語ることではない。
やってくるものがなんであれ、今はただ新たな舞台の幕をあげよう。
ナタリーが出発したあと、挨拶に教会を訪れた。
セツィナ・アラソォンジュ(ea0066)
フォックス・ブリッド(eb5375)
クロエ・アズナヴール(eb9405)
ロザリー・ベルモンド(ec1019)
ヤグラ・マーガッヅ(ec1023)
マリオン・ブラッドレイ(ec1500)
らは、ナタリーの留守を知ると彼女の行く先について調べた。
その場所については予想よりも早く特定されたが、西にある村、そんな漠然としたものでしかない。
なお、この村は特にメンバーが認識していない場所のようだ。
「方向的には同じですわね、いやな予感がします」
ロザリーが不安げな様子でヤグラに話しかける。今回の依頼も、どうやら西にある村でおきている事件と、ギルドで新たに説明された。
「西は、あまり良い方角ではありませんから」
ヤグラはやや俯きがちの視線を地に向けると、湧き出した疑念を振り払うかのようにロザリーに向いて微笑んだ。
無言のまま、二人の会話を聞いていたクロエは、言葉を告げるよりも踵を返し、馬に向かった。
「連続誘拐とは穏やかではないうえに・・・・・・場合によってはナタリーも関わっていそうとは厄介極まりないですね」
独白するセツィナを見たマリオンは。
「靴を借りておいてよかった! これも天才のなせる閃きよ」
なぜか自画自賛する。
セツィナは、このマリオンの言動に対してどう対処しようか、一瞬迷ったが。
「私は、貴方にあれこれ言うために存在しているわけではありません。今回は何も言いませんよ」
どこか不満げなマリオンを置いて、セツィナはその場を後にした。
「ナタリーちゃん、カムバック!」
花束をもって叫んでいるフォックス。知らないうちに、だいぶ性格が変わってしまった気もする。
こうして、彼らは依頼を遂行すると同時にナタリーを探すことになった。
一方。
リン・シュトラウス(eb7760)
ニーシュ・ド・アポリネール(ec1053)
アスタルテ・ヘリウッド(ec1103)
ソリュート・クルルディアス(ec1544)
は、そのような出来事があったことなども知らず、目的地に向かっている。
出発前、ニーシュはルーテに言った。
「足のあたりがむずむずしますね」
ルーテの脳裏に何かが閃いた。
「・・・・・・近づかないで」
たじろぐルーテ、その態度にニーシュは愕然とした。
(いつものルーテさんなら、こんなこと笑って許してくれるのに)
心の声は想像である。
「ル、ルーテさん、冷たい」
「冷たいっていうか、移るでしょそれ」
「二人とも喧嘩ですか?」
楽しそう? な光景を見た、リンがやって来た。
「あの男に、近づかないほうがいいわよ」
「え、なぜですか?」
ルーテはそれとなく、リンに耳打ちした。
「暑いと色々たいへんですよね」
しみじみ頷いているリン。
「ともかく、私は先にいきますよニーシュさん。あれは、裸足で歩くのも一つの手ですよ」
本気なのかは伺い知れないが狐目の女は、狐目の男にそう言うのだった。
こうして、彼らは出発した。
さて、思惑どおり事が運ぶかどうか・・・・・・。
青い空に雲は浮ぶ。
照り返す陽射しの中を少女は歩いていた。
「神父様?」
やや遅れがちになる後方の神父を気遣って振り返る少女、逆光が金の髪に反射して輝いている。
眩しさに目を細めた神父は、息切れをしながらも。
「歳は取りたくないものだな。それにしても、元気でなによりだ、ナタリー」
聞いたナタリーは目を伏せてあと、瞳を瞬かせ。
「泣いているだけは、もうやめました」
力強く言った。
「やれやれ、一つ乗り越えると強くなるものだな。だが、前のほうが扱いやすくて良かったかもしれん」
「それ、ひどいと思います」
「冗談、冗談だ」
「嘘をついてはいけない。いつもそう言っているのに」
「これは一本とられたかな」
ナタリーが笑った。
神父も釣られて笑った。
『道先1』
闇はある。
その闇が何を目的としているかは別として、二つの人影は道を進む。
その二人を追う者いて、何も知らぬままに進む者もいる。
答えがでる時は・・・・・・いまだ来ず。
彼女が、影を見つけたのは、街道を馬乗り走っている時だった。
あきらかに尋常ではない声の後、静けさが覆う。
警戒しつつ弓を構える小柄な女の前に現れたのは、人相風体が明らかに不自然で怪しい何者かの集団だ。
(ヤバ、よりにもよって私一人の時に、なんでこんなところに。村はもう少し先でしょう?)
ルーテは冷静にその集団の様子を伺い追った。
追った先にあったのはどうやら彼らの根城のようだ。
ルーテは迷った。
しかし、一人で危険にあえて踏み込み失敗して意味がない。ルーテはそう判断して、仲間に場所を教えることを優先させる。
とはいえ、ここから離れるのも得策でもないような気がした彼女は、少し離れた場所より愛犬のセイバーに手紙を持たせ、連絡に向かわせた。
しばらく時は経つ。
村についたソリュートは誘拐犯についての特徴を調べていた。彼女の調査により分かったことは。
彼らは、ある一箇所を中心にして出没している。
争った形跡はあまりない。
無作為のように見えて明確な意思のようなものも感じる。
たいがい誘拐されるのは、一般的に標準以上の容姿をもつ者らしい。
「人買いなら売りやすい者を攫うのは普通。ただ何かしっくりこないのは、なぜでしょうね」
ソリュートは、呟いた。
「痒い」
目的地にたどり着いたニーシュを迎えたのは、村人ではなく。
「ヴォン、ヴォン」
「セイバー? わざわざ迎えご苦労さまです。して、主の小さい貴婦人は?」
なにやら、首のあたりに手紙のようなものを見つけた彼は読み
「これは! 後発を待つべきか、それとも先についた者だけで何かしら行動を起こすべきか、それが問題だ」
『道先2』
言及する前に剣を振るうことが必要だと女は思った。
構え、突き、穿つ。
煌きは宙に放たれ白光が直を描いて貫く、ほつれた髪は優雅に風と共に走り、血が舞う。
衝撃を耐え切った影の主は振り上げた大剣を掲げ、上段より一気に振り下ろす、風を切る音を聞きつつも女は、受けるでもなくただ避ける。
大地を叩いた剣を戻すよりも早く、駆け抜ける馬より振るわれた斬撃が影を襲った。
剣の主である仮面の女は馬上から、地にいる女に声をかけた。
「大丈夫ですか? ロザリー君」
「ええ、これくらいなんでもありませんわ。間に合っただけでも幸運」
ロザリーの視線の先にあるのは、ナタリーと神父の姿だ。
「囮どころか、真正面から狙って来ているじゃない! せっかくこの私が、かわいい囮になってあげようと思ってたのに」
マリオンは、相変わらずだ。さすがに一言釘を刺さないと気がすまなくなったのかセツィナは言った。
「多分貴方ではなくて、ナタリーを狙ってきているのは明白ですが」
「私があの子に可愛らしさで負けてるってことなの、信じられない」
「・・・・・・そういう言動が『信じられない』を演出してることを理解したほうが良いと思いますが」
緊張感がまったくない二人の様子を見たヤグラは。
「あの、二人とも、今は遊んでいる場合では自分はないと思うのですが、やはり数で苦戦してるように見えるので、魔法というものを使ってみてはどうでしょうか?」
おずおずと進言する。
聞いたマリオンは正気? に戻り。
「言われなくても焼き尽くすわよ、さあ黒焼き、黒こげよ」
「私はあの大きな戦士を狙うとしましょうか」
二人は詠唱を始めた。
その頃、フォックスは、なぜかナタリーの傍にいる。
「フォックスさん? 」
「この場を守るのが役目です。生きがい、目的、答え」
ナタリーの傍が超絶的に一番危険場所ともいえるが、騎士気分の彼はあまり気にしていないようだ。
さきほどから怪我をしてはナタリーに回復してもらっているあたり、彼が満足そうなので良いのだろう。
『道先3』
「どこかに行きましたね?」
リンが根城から出て行った人影を見て言った。
一時的にルーテに合流した三人は、セイバーに後発組への手紙を託した。
「どうやら、見た感じあれが主力のようですね。きっと獲物を襲いに行くところでしょう。後をついていくのも一つの手ですが? どうしますか」
ソリュートが言った。
「待つよりも、一つの手段かもしれないですね」
ニーシュが答える。
「この場所を制圧するのもいいんじゃない? 帰って来たところを不意打ちとかできそうだし」
ルーテが言った。
「でも、誰かが襲われることを分かっていて見逃すはどうでしょうか? 出来るならば助けたほうが良いと思います」
リンが言った。
「そうですね。依頼の目標を達成するだけなら、見過ごして叩くのも良いでしょうが、何分後味は悪い。私は後を追うことを支持します」
ニーシュが言った。
「じゃ、きまりー。ともかくいそごー!」
こうして彼らは、影の後を追った。
『道先4』
振りぬいた刀から血を払い拭いた男は、その衝動に耐え切ったことを理解した。
「相変わらず、苦労してるわね。ニーシュにしては頑張った、褒めてあげる」
「ルーテさんに褒めていただけるとは、光栄の至り、これも血の宿命のようなものですので」
そんな二人のもとに。
「あの、セイバーをつれて来ました」
ナタリーがやって来た。
「きた! おねーさんとあそぼー」
ルーテは、自分と同じくらいの背の少女に抱きついた。
「これでは、どっちが子供かわかりませんね。お久しぶりですねナタリー、元気でしたか?」
「元気です。ニーシュさんは?」
「足が痒い以外は特に」
「は! ナタリー。ニーシュに近づいてダメ」
ルーテはナタリーをニーシュに近づかせない、ニーシュはちょっとがっかりした。
その後。
「今日こそはっきりさせないと、皆聞いて! 私とこの子、どっちがヒロインに相応しい。どうなのよ」
マリオンは、自分に酔っているような発言をした。指差した先にいるナタリーは戸惑っている。
「マリオン君、ついに残暑に負けてしまいましたか」
クロエが仮面を半分だけ外して言った。
「マリオンさん、可哀想に熱がおありなのですね」
ロザリーは嘆息した。
「良かったら、夏バテに効く料理を作りましょうか?」
ヤグラはニコヤカな笑顔で言う。
「何、何よ。そうだ、そこの新顔、そうリンだったわね。どうなのよ?」
マリオンは、矛先をリンに変えた。
「え、あの、私。ほら、童顔だから、子供なのでよく分からないです」
よく分からない理由だ。
「じゃあ、狐目とちびっ子、あと、親衛隊、どうなのよ」
一応説明すると内訳は狐目「ニーシュとソリュート」、ちびっ子「ルーテ」、親衛隊「フォックス」のようだ。
「マリオンさん、人生というものは、ままならないものです。明日に向かって歩いてください」
ニーシュが諭すように言った。
「そうね、最適ヒロインは私かな、なんちってー。ダメ? ダメかな」
ルーテはおどけて誤魔化した。
「・・・・・・ノーコメント。如何でしょうか?」
ソリュートは大人の反応だ。
「比べる必要などない!」
親衛隊という呼称からして、聞くのは間違っていた。
「何よ! 失礼ね」
憤るマリオンの背を叩く男が一人。
「これで気が済みましたか? さあ、お家に帰りますよ」
「哀れみに満ちた視線はやめなさいセツィナ。私は、まだ負けたわけじゃないんだから」
何の勝負なのかはシラナイが、マリオンにはこれからも頑張って欲しいものだ。
『終』
主力を壊滅させた冒険者たちは、次にすでに発見していた根城を叩いた。
すでに相手に抵抗するだけの力もなく、誘拐団は壊滅する。
一部の予測どおり、魅了系の魔法を使うもの存在していたようだ。
だが、すでに誘拐された人物がどこにいったのかは定かではなく、生き残った誘拐犯も数度経由して指令を受けていたらしく、直接的な人物に繋がる証言は得られなかった。
明らかなのは、今回彼らがナタリーを狙っていた感もあるのだが、それほど本気ではなかったような感触を感じることだ。
そこにどのような意思があるのかは別として、依頼はほぼ問題なく遂行された。
なお、今回の依頼主についての詳細は、伏せられたようだ。
爽やかな風が吹いた。
少女は、その中で一人地平線の向こうを見つめている。
「ナタリーさん」
振り向いた先にリンがいる。
「これを、きっとそれも愛の形の一つです」
差し出されたロザリオを受け取り、見たナタリーはどこか懐かしい気分を包まれた。
「このロザリオは?」
「深い事情はよく分かりません。けれど、きっとナタリーさんに縁があるものだと思います。受け取ってもらえますか?」
「はい」
手渡されたロザリオをナタリーはそっと胸に添えた。
ナタリーは歩き出す。
その先に待つ黒衣の女は、何も言わず立っている。
「クロエさん、似合うかな」
はにかみ、少し照れながらナタリーはロザリオについて聞いた。
「ええ、とても。さあ、ロザリー君が待っていますよ」
遠くの方で手を振るロザリーの姿が見える。
二人は手を繋ぎ歩いて行った。
どこかで、歌が奏でられている。
一輪の花がそこにあった。
誰かに捧げられたその花は、風に流され飛んで行く。
曇っていた空。
雲の谷間から太陽が顔出すと道を照らし出すと。
光が一面に降り注いだ。
続