♯少年冒険隊シンフォニー♭ 『岐路』♪
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■シリーズシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 95 C
参加人数:10人
サポート参加人数:4人
冒険期間:09月03日〜09月11日
リプレイ公開日:2007年09月11日
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●オープニング
●記憶
遠い日。
抗うより、受け入れることを選んだあの日。
投げ出した身体。
視線は無言で苛む。
苦痛に耐えかね、ばらばらになりそうな心をかき集めた。
けれど、足りない。
足りない。
必死になって探す、此処にはないと嘲笑侮蔑の中で掻き毟り割れた爪からにじみ、叩く拳は痛む記憶は
「虫けらは所詮、虫けら。尊い血の中にも差別はある。可愛い君。憎いかね、憎いなら恨め、淀んだ底を這る獣達の泣声。その狂おしき叫びこそ私の悦び。息子よ、いい子だ。いい子だから、もっと綺麗に鳴きなさい。か弱く美しい、その堕ちた姿。それだけがお前の価値」
影が覆う。
何度繰り返せば、逃れられるのだろうか? どれだけ時を経ても記憶が刺す。
「一緒に行こう、ゲオルグ」
差し出された手を振り払い。
「逃げることが悪いわけではないのよ、逃げなさい。それで貴方が救われるのなら神も許してくれるでしょう」
温もりを失い。
「裏切るのだね、可愛い君。残念だ、残念だよ。何が大事だ、何が大事だ。この女か、見ろ、見るがいい。生き続ける限り救われる事の無いままに刻め、それこそが烙印」
また、血だ。
誓いは、果たすためにあるもの。
後悔はない。
自らの手で苦しみに終止符を打つ勇気もなかった。臆病で卑怯な男だ。
ならば、せめて復讐を望みに生きるだけ。
この手に掴むのが染まる赤でしかないとしても、鮮血で何もかも覆いつくし、自分。いや、世界の全てを今度こそ、今度こそ消し去ってみせる。
夏が終る。
戻ることはできない。
●ソナタ
夜に映えるは月。
月に映えるは闇。
翳す光は淡く地に落ちる情景の中で、黒を纏いし男は言った。
「あれが供物だ」
羽ばたきは月光より出で答える
「ならば、余興として付き合おう。恩を売っておくのも悪くはない」
無が満ち。
後に、血の匂いが辺りを覆う。
★★★
「あの、お花ありますか?」
所用でキエフの表通りを歩いていたアレクは、街角で見かけた花売りにそう訪ねた。
「あるけど・・・・・・」
継ぎはぎ、擦り切れて泥だらけの服を着た少年。それを不審げに見つめる花売りの視線を受け、アレクはこびりついた汚れを掃い。
「お金ならあります」
どこか恥ずかしそう言って、金貨を見せる。
金貨を見た花売りは急に態度を変え、一揃いの大きな花束をアレクに渡した。
不釣合いなほどの大きさの花束を抱え通りを進む彼に、一人の青少年が声をかけた
「よ、アレク! 早速花束とはマメだねー感心、感心。でも、随分とドキツイのばっかだな。こうなんていうかね、白とかじゃないとあの人には似合わないだろ」
振り返った先に友人の姿を確認したアレクは笑顔で言った。
「ジル! そうなの、お花ならなんでもよいとおもった」
「そういうとこは、子供だよな。ま、そのほうが健全で世の中のためには良いけど」
「? ボクには何をいってるか、わかんない」
「よしよし、いい子、いい子。それよりもだ」
ジルは、一瞬表情を曇らした後言った。
「俺たちにとって逃げることのできない出来事が起きました」
★★★
生けられ飾られた花を見つめ、ニーナは、
「これ邪魔デス」
一本折った。
「せっかく、生けたのに! なんで折るの」
「アレクの美的センスは疑いありデス」
確かに、適当に挿してるだけにも見えなくはないが、アレクはアレクなりに頑張ったのだろう、ニーナの行動を見てしょげているようだ。
「あんまりいじめるなよ。リーダーは尊重するものだ」
「いつも、好き放題してるジルが言うと説得力が欠片もないデス」
そう言って、ニーナはジルに冷たい視線向ける。
「お前いつから、そんなに毒舌になったんだ」
「今日は不機嫌、女の子色々あるのデス」
「そうか、そのあたり複雑な事情はいい。とにかく今回の・・・・・・」
ジルは、話し出した。
冒険へGO
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●目的
冒険隊の宿敵である、MR・AFが関わっていると思われる事件が発生しました。
その場所に行って、可能ならば今までの借りを返してください。
依頼自体は、ジルの依頼です。
●場所
キエフから二日ほど行った開拓村付近です。
すでに出ている依頼とリンクした場所です。あちらの行動と状況によっては
かなり危険になっている可能性もありますので、ご注意ください。
●用意したほうが良いもの
戦闘用が良いと思います。
●関連事項
【Divina Commedia∴Purgatorio】の選択結果によって、村の状態が変わります。
●その他
出発するまで一日程度ありますので、自由行動も多少できます。
※登場人物
■アレクセイ・マシモノフ 人・12歳・♂
ファイター。
実力は子供のわりに強いかな程度。
前向きですが迷いも感じる日々。
■ジル・ベルティーニ ハーフエルフ・17歳・♂
かなりの実力をもつレンジャー。
最近ちょっと暗いようですが・・・・・・。
■ニーナ・ニーム エルフ・10歳・♀
風魔法使いの女の子。ウインドスラッシュ・レジストコールド、ライトニングサンダーボルトが使えます。
脳内は、結構まともなお花畑のようだ・・・・わがままです。
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●リプレイ本文
●タクト
訪れる出来事の連続は、一つの結末へと向かって駆け、刻まれた記憶は忘れえぬ想いとして空に昇る。
言葉にならない何かをもう一度言葉にしよう。
例え、それが・・・・・・。
抱いた想いを込めて女は叫ぶ。
「に、逃げろ」
だが、夢想など何処にも無い。
あるのは、ただ現実だけだ。
空を衝撃が走る、強い衝動を伴った感情の渦を巻き込んだ何かは有無も言わせぬほどの力で叩きつけられた。
その前に飛ぶ小さな帽子、身体は転がるように後方に吹き飛び石壁に当たり止まった。
抱き起こした女を前に血を吐いた少女は虚ろに力なく笑った。
「ごめんなさい」
吐息は弱く、涙は重い。失うことなどが無い永遠がある。そう信じるのが人の愚かさなら。
「ち、治療を」
振り返った先にいるのは、誰でもない。血に染まった黒衣を翻し、男は言い、拳を下ろす。
「死に行くものに手向けなどいらぬ、終わりだ。逝って詫びろ、己の弱さにな」
影は巨大で厚く、闇は深く忍び寄り、女は自らを失った。
もはや、ここにあるのは無と狂乱の調べだけ。
もうどこにも──光は無い。
●出発前
リディア・ヴィクトーリヤ(eb5874)は図書館で調べ物をしている。
この前の冒険で手に入れた古代魔法語を解析するためのようだ。
しかし、彼女の言語力では単語を理解するのが精一杯である。
どこかにそれを解読できる人物がいないか? 彼女はちょうど立ち寄ったギルドで皇茗花(eb5604)と会った。
「それならば、リュミエール殿に頼むのが良いだろう」
茗花は、リュミエールを簡単にリディアに紹介した。
「そうですか、眼帯を付けた、いかれ女学者様ですか」
「いや、別にいかれてはいないと思う。ちょうど窓口だし、聞いてみよう」
半ば眠りかけていた中年ギルド員は、訪れた二人の話を聞くと。
「リュミエール? ・・・・・・ああ、バカ娘のことか」
「娘さんですか?」
リディアの問いにギルド員は、にこりともせず言った。
「そうだよ、何なら話をつけてやるよ、今はいないけどな。何か用事があるなら頼んでおくが」
「可能であれば、頼んで欲しい。私のことは知っているはず」
茗花がそう言うとギルド員は。、
「ひとまず、聞いておこう。で、何をあいつに頼むんだね」
リディアは、先日手に入れた古代魔法語の書き写したものを、中年ギルド員に託すのだった。
シャリオラ・ハイアット(eb5076)は、珍しくアレクと一緒に歩いている。
「シャリオラさんと、どこか行くのは、ひさしぶりだね」
無邪気なアレクの態度に、なぜか動揺するシャリオラ、これから彼女はアレクに、
ナウなヤングに馬鹿ウケの女性向けの流行などをレクチャー。
ハイソでトレンディーかつモダンな文化を教授。
だが、そんな彼らを待ち受けていたのは過酷な運命だった・・・・・・。
「ねえ、シャリオラさん。なんでみんなちゃんと服着てないの?」
今期のキエフの流行は、どうやら変態だ。
この一部だけという噂もあるが、どうやらこの場は教育上あまりよろしくない地域らしい。遠くのほうのちっちゃく。
『わくわく』
という字も見えるが、あまり気にしてはいけない。
「こ、ここは違います。帰りますよ」
その頃森里霧子という、なぜかロシアに来てしまった女性もまた、わくわくというピンクワールドに迷い込んでいたのだが、彼女は言葉意味がよく分からなかったので、その世界を満喫するはめになったようだ。
「これがロシアなの?」
それは、きっと大いなる勘違いです。
さて、その場を後にしたシャリオラ達は、マイア・アルバトフ(eb8120)という行き遅れと遭遇した。
「珍しいわね、シャリオラ君。子どものお守りなんて」
マイアの問いにシャリオラは答える。
「たまには、そういう偽善者ぶったことをするのも、神の使徒の務めですよ」
「そういうものなの?」
「そういうものです。貴女も神の下僕ならたまには、慈善活動をしましょう。ともかく今日は行き遅れに愛の極意を伝授、さあとっとと嫁にいっちゃえ。です」
よく考えると、シャリオラは年齢的には小娘範疇なので、本当にそれらしいことを上手く伝授できるのか心配だが、ともかくこの場は任せたぞ、シャリオラ・ハイアット。
その頃、ディディエ・ベルナール(eb8703)とセシリア・ティレット(eb4721)はお花を見ていた。
「アレク君が、花ですか〜不穏ですね」
ディディエが冗談なのかよく分からないが、それこそ不穏当なことを言った。
「急にどうしたんでしょう」
「子どもの考えることですからね、そうだ、お返しにこの花束とかどうですか〜」
どこから持ってきたかよく分からないが、なぜかディディエの手には都合よく新しい花束がある。
「大事なのは生ける前の水揚げと生けた後の水切りですよ〜それから日差しの強い場所に飾るのは駄目ですからね」
ディディエにレクチャーされ、セシリーはその花束を受け取った。
名指しされたアレクは、いまだシャリオラ指導の元、マイアと共にナウイレッスンをチェキラ中なので放置。
キール・マーガッヅ(eb5663)は相変わらず一匹狼のような行動をしている。
弟子であるジルはちょっとした所用で出かけているため、地味に情報収集をしている彼。
それでは、彼が集めた情報をまとめておこう。
Q、目的の村はヴォルニ領なのか?
A、どうやらそのようです。
Q、最近誘拐のあったと言われている開拓村は、一つの村なのか(その場合、今回の目的地と同一か)
A、一つではありません。今回の目的地とは正確に言うと違いますが、比較的近所です。
Q、それとも近隣の開拓村も併せ複数の村が被害にあっていたのか
A、報告によるとそのような気配があります。ギルドにもたらされた情報から推測するに、誘拐についてはかなり広範囲で行われていたようです。そしてそれは、ヴォルニ領内でのみ起きている感があります。
キールの情報収集を終る。
ベアトリス・イアサント(eb9400)は、こと御酒が大好きトリスさんは。
「ぁー・・・・・何かどっかの村でデビルが暴れているらしいな。まぁいいや、行きゃ解るだろ。しかし、なんでこんないい天気なのに、仕事なんてしねえとだめなんだ。よし、昼寝だな昼寝。出発するまできゅうけー」
そういうと、青空を眺めつつ一休みした。
リン・シュトラウス(eb7760)はシリアスだ。
そして。
ケイト・フォーミル(eb0516)はややコメディだ。
ニーナは、不機嫌である。なぜ不機嫌なのか? 色々理由があるのだが、その要素を説明している余裕と時間があまりない。
ニーナは寂しがりやのところもあるし、気分屋のところもある。先日ジルが彼女用のおやつをつまみ食いしたという事実も密かに関わっている気もする。色々女の子は大変なのだ。
ともかく不機嫌なニーナをあやすために、リンは愛の歌を歌った。
対して、ケイトは慌てふためいた。
そこに茗花から託されたぬいぐるみをもったリディアが現れる。
そして、リディアの観測なのだが、それが当たっていたかどうかは・・・・・・ひみつだ。
抱きかかえたケイトの胸から暴れて走り出したニーナは、捕まえようとするケイトの手から逃れ、くまを持っていたリディアからぬいぐるみを奪うと猛然とリディアが今さっき入ってきたドアに向かって膨れっ面で駆け出す。
そんなことがおきているなど露知らず花束をもったセシリーと、ナウメンになったマイアたち一行はその場所に向かっていた。
ちょうどセシリーが扉に差し掛かった時、急に現れたニーナに驚いた彼女は花束を離しす。なんとかばらばらにならず上手く飛んで行った花束を見たアレクが必死に飛びつき。
「取った!」
「やるわね、さすが男の子」
転がりながも花束を捕らえたアレクを見て、マイアは思わず呟く。
そして昼寝にも飽きたトリスは、酒瓶を片手にふらりとその場にやってきた。マイアは 目ざとく酒を見つけてせびるが、シャリオラとリディアに止められた。
ケイトはその一瞬をついてニーナを捕まえる。
その後、花束の様子を見に来たディディエと、ジルを伴いやって来たキールが揃い、ようやく彼らは出発することになった。
●メヌエット
一つしか望むことが出来ないのなら、どちらも選べない。
ジルは番えた矢を放せず見ているしかなかった。
戦況はどちらに有利かは、すでに見ることもなく分かっている。
今だ立っているもののほうが少ないここで、彼は譲られた銀の矢を目標に向かって射していた。
ところどころ焼け焦げた何かと裂かれた大地の傷は、魔法の傷跡だろう。その呪の主はどちらもすでに地に這い気を失っている。
黒衣の男の声は、聞きなれた物だが、違う何かを感じさせる調子だ。後方には翼の音がする。その音の背後にはさらに違う何かがいるような気もするし、何もいないのかもしれない。
復讐に燃える翼は容赦をしない。その傍らに立つ、黒衣の男も冷たく言う。
「弱者は死ぬ、それだけだ」
リンは、自らの詩が彼の心にもう届かないことを知った。凍りついた心を溶かす術はきっと無い。
指し示した先にあるのは、繋がる連鎖だとしても、彼をその鎖から解く手段は、一つしかない。
剣を支えに立っているセシリーの傍らにはボロボロになったアレクの姿が見える。
自らを失い暴走したケイトと瀕死になり倒れたニーナは倒れている。
クレリックは、みずからを守るのだけで精一杯だ。軽口を叩き、笑う余裕もなくなったマイアとトリスは何時になく、真剣な様子でケイトとニーナの治療に向かうおうとするが近づけない。
茗花は敵の侵攻を必死に抑えていたが・・・・・・シャリオラは飛んできた翼の術中に落ちた。
落ちたシャリオラを盾とした敵を二射は撃つ、的を違えれば、当然彼女を射ることになるだろう。
「ジル、自分を信じろ」
キールは自らにいい聞かせるようにその言葉を口にして。
そして、彼らはその手を離した。
●ロンド
終った物語の終焉を笑顔で語ることはできない。
だが、誰も欠けることはなかった。
「油断したわけではないですよ〜。ただ、予想より強かった、それだけです」
ディディエがいつもと変わらない調子で言った。確かに事前準備も調査も問題はない。
あえていうのならば。
「陰険を通り越して凶悪になったんじゃ、ホント笑えないわよ。腐れ縁も腐れ縁、今回のはちょっとムカツクかもね」
マイアは溜息をついた。
アレクはセシリーに聞いた。
「ね、あれで本当に幸せなの? ボク 」
「私も分かりません・・・・・・」
リディアは何事か考えていたようだったが、言った。
「きっとそういう生き方しか出来ない人もいるのですよ。それが幸せかどうかは別として」
「しっかし、初陣でこれはないよな」
トリスは、悪酔いをしている。あまりの出番のなさにやりきれないこの想いは酒にして晴らすしかない。
呑みながら、「AF許すまじ」そんな強い思いがわいてくるきた。
「あの、お昼から呑むと」
あまりの、のみっぷりにアレクが一応注意した。
「いいの、酒は友達だぜ」
その後、マイアとトリス、そしてシャリオラが酒場に篭ったのは言うまでもない。
正気に戻ったケイトはニーナを看病している。
「す、すまん。ニーナ、自分としたことが、ふ、不甲斐ない」
ケイトの言葉を聞いたニーナは何も言わず頷き微笑むと眠りにつく。
傍らには茗花が贈った熊のぬいぐるみが、不安そうにニーナを見つめていた。
キールはジルに聞く。
「ああ、なりたいのか? あれが憎しみに囚われたものの末路だ」
ジルはキールの言葉を聞いて言った。
「キールさん、俺やっぱり、まだよく分からないんだ。ああなったのは、誰のせいでもない自分のせいだろうけど、それでも」
割り切れないものがあると、少年言った。
割り切らなければいけないものがあると女は感じる。
(彼が戻ることはできないのでしょうか)
リンが、聞きたかった言葉の答えが返ってくることは、きっとないだろう。彼を救う手立ては、きっと一つしかない。
愛だけでは救えないもの、この世界にはあるのかもしれない。
彼女は、ささやかだが、一曲手向ける。
奏でた音は、鎮魂よりも郷愁に似た曲で、胸に沁みる。
戦いは終り、傷跡は残る。
夜闇の中に音は響く。
月に照らし出された、銀の矢はひしゃげて鈍く輝いている。
どこかで酔った女たちの声がする。
その声の主たちの明るさとは裏腹に、夜は静かに更けて行き。
村は、静けさに包まれて行った。
続