【Divina Commedia∴Inferno】
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■シリーズシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:15 G 38 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:11月27日〜12月09日
リプレイ公開日:2007年12月05日
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●オープニング
★Stella
矢は放たれた。
もはや戻る事はない。
穿つ矛先になるも、惑い果てるも、世は夜の夢にて、儚き一風の砂塵。
●愚者
男がその場所に行くのは二つ目的がある。
一つ、敵対する勢力を削ぐための駒を確保。
一つ、終曲の伴奏、その準備をするため。
「イレーネ、ここで待て」
傍らにひかえた紫のローブを羽織った女は、伏せていた睫毛を瞬かせると応えを返した。
「御意」
鉛色の空は重い。
丘の上に立つ教会の向こうには、黒雲が早足で駆けてくる姿が見えた。
男が扉に進む途中、礼拝堂で鐘が鳴る。その音を聞き、男は懐かしさを感じつつ痛みも覚えた。
だが、例え扉の向こうに待っている返答がなんであれ、彼は刃を掲げ、自分の意思を貫くだろう。
自由は、自らの手で切り開く。
幼き日の誓いは、願いを経て、力と変わり、逃げる必要もない。
旧友は己に負け堕ち、自らとは違う道を歩んでいる。
「遠い記憶か・・・・・・」
呟いた言葉は風に乗って消える。
──鐘は鳴り、響く音が静寂を破った。
●狼
ヴォルニフ領主の館で、狼を指揮する大斧操るドワーフ・バルタザールは、主の命令を聞き、驚く。
「では、あえてこの地を血で汚すと」
「源にて浄化するのが禊というものだよ。いずれにせよ、あの男は必ず来る、昔から律儀で融通の利かない奴だった」
「しかし、決定打をこちらで抑えているのではありませんか」
「剣のことか? あのような物が無くても、その気になれば、遅かれ早かれ奴は来た。ようは切っ掛け、背を押してもらう何かさ。臆病者め、子供の時と何も変わっていない。だが、厄介は厄介。よって先手を打たせてもらった」
「今後、いかがなさるおつもりで」
「餌は二つある、箱と」
「あの者だ」
彼が指差した先には、戒めを受け、無言のままこちらを睨む少女の姿がある。反抗の意思気品にも似たそれを見たバルタザールは瞳に哀れみの色が浮かべるが、すぐに消えた。
「流血の婚礼の準備だ。らしいとは思わないかねバルタザール。いずれにせよ、あちらから何か仕掛けてくるだろう。その舞踏にひとまず付き合うとしよう」
・・・・・・彼は笑った。
●眼帯
「はじめから、そうすればよいのにね。愚か者とはよく言ったものだ」
助けて欲しいと願わなければ、誰も助けてはくれない。リュミエールは、愚者から届いた手紙の文面を見てそう思った。
Divina Commedia
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●目的
仄されてきたことですが、愚者の目的はヴォルニ領主を倒すことです。
領主を倒すためには、彼の近衛である三つの部隊をなんらかの手段で排除、もしくは足止めする必要があります。
愚者自身は傭兵隊も配下にいますので、一部隊程度ならば彼一人で十分でしょう。
けれど、三部隊はやはり厳しいかもしれません。よって愚者は婉曲的ですが助力を求めています。
この件に関連して、前回の情報収集の結果から、近衛部隊の一部が駐留している場所は判明しています。部隊は朱色の鎧の騎士、純粋な戦闘集団でかなり強力です。
他の主力ニ部隊については、詳細は不明、どちらも少数のようです。
それと、こちら側には冒険隊が見つけてきた箱があります。その箱をどうするか?
意思と判断がゆだねられます。
現在、光の結果と今までの情報収集から、領主の元には危険因子が二つあります。
封印を解く箱とナターシャという少女です。
これについて、どうするかも要点の一つとなります。
●ヴォルグ
朱色の騎士が陣を張っている場所は平地です。雪はそれほど積もっていません。
彼らの数は現在30〜50騎程度のようです、愚者と協力すれば倒せない数ではないです。
ただ、油断するとお星様が見えます。
主に騎士と戦士が主力のようです。
平地ですので、遮るものは何もありません。馬が駆回ることができるくらいの広さです。
●ヴォルニフ
領主の館の位置は調べれば分かります。
といっても、無意味に突撃しても意味はないかもしれませんが・・・・・・。
●その他
※登場人物
○リュミエール・テッセン
眼帯とポニーテールがトレードマークの女学者さん。
言語学のエキスパートです。かなりガサツ。
※移動距離については、ヴォルニフまでは徒歩で三日ほどです。陣地はそこから西に一日ほど。
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●リプレイ本文
●愚者
木枯らしは通り過ぎ、また冬がやってくる。
彼は、紅潮した頬に手をやると何気なく夜空を仰いだ。
この先に待つのは名を持たぬ者、彼にとって縁あれどまみえることのなかった。
先に進んだシシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)はすでに彼と話を始めているのだろうか? マクシーム・ボスホロフ(eb7876)は緊張もあるが、寒さに耐え切れず暖をとることを願い、急ぎ場を目指した。
眼帯の学者リュミエールによって設けられた話し合いの席は、簡素で質素のようだ。彼女が倹約という言葉を知らず散財ばかりするため、そこまで気を回す準備も費用もないのかもしれない。
着いたマクシームの前にこぢんまりとしたテーブルがあり、四人座席についていた。リュミエールは一人立っているようだ。
「こちらが、愚者の騎士。愚かで自由を求める方です」
そう、リュミエールがどこかおどけて紹介した。
座っている男は素顔をさらしてはいない。被った仮面から見える口元のあたりからするに、若者というほどでは無いだろう。
男の隣には紫色のローブをまとった女がいる。綺麗な黒髪が目立つが、どこか憂いを帯びた女で美しく冷たい感じを同時に受ける。その隣の年老いた老紳士はマクシームを見て笑顔で迎えた。
入ってきたマクシームに気付いたシシルは、黙って視線で挨拶する。マクシームも無言で挨拶を返し、用意された席につくと老紳士に聞いた。
「宜しければお答え頂きたい。 あなたの主の行いは神の教えに反するものなのか?
もしくは一見反しているように見えても最終的には合致するものなのだろうか?」
マクシームの問いかけに、メティオスという名の老紳士は答えた。
「神というものは、時に試練を与えるものです。彼の行っていることは道に反することではありますが、同時に道に沿ったものでもあります。神は全ての正しさを決めるものではなく道を指し示す。それこそが教えであり、選ぶことは人の意思。そう私は信じたい、これで答えになっておりますかな」
メティオスの言っていることは、欺瞞にも聞こえるし真理を説いているようにも聞こえる。信仰とはそういうものなのかもしれないな、マクシームはそう思って黙り、次にシシルが愚者に問いはじめた。
なお、愚者から得られた情報は、末尾にまとめてある。
●約束
寒い・・・・・・な。
エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)はそう思い両手に息を吹きかけた。
「女、息災で何より」
かけられた声に聞き覚えはある。振り返った先には、蒼い鎧の騎士。因縁というよりそこにあるのは、運命というものだろう。
「相変わらずだね」
「お互い変わらずか、あの男はどうした?」
「今、街に行ってる」
二人の間に沈黙が流れる。冬の夜、空気は透明だ。その透明さは何も寄せ付けない、風が吹いて粉雪が舞う。先に口を開いたのはエリヴィラだった。
「過去のことはいいよ。ただ」
「ただ、なんだ?」
「裏切るのは、許さないから」
エリヴィラの眼差しは愚者を刺す、輝きを流すし、愚者は数歩踏み出したあと厳かに言った。
「安心するがいい、約束は破らぬ。それが・・・・・・我の誓いだ」
その響きの中にエリヴィラは真実を感じ取った。
●ヴォルニフ
戦いに赴く前、ヴォルニフに滞在していた時のことである
集った宿屋の自分の部屋から何気なく階下に下りた所所楽柳(eb2918) は目の前に光景に唖然とした。
最初に目に入ったのはニセ・アンリィ(eb5758)。彼はジャイアントだ。ということで大きい。
そのニセはすで酔ってテーブルに突っ伏している。彼の寝言はどこか獣じみていて、何を言いたいのかよく分からない。ヴガァイやら、ダバ、ウホホなどを、いびきと一緒に発しているようだ。その様子をから起こすと暴れだしそうなため、そっとしておくことに決めた。
さらに視線を移すとロイ・ファクト(eb5887)という男がいた。難しい顔している。どうやら何事か調べているようだ。
柳は、ここで一計を案じた。古典的な愛情確認の方法、彼女からするとそれは半分罠でもあるが、それを試してみたのだ。
「だれーだ?」
ロイは急に両手で塞がれた視線に驚いた。背のあたりには柔らかなものも感じる。
このようなことをするのは一人しか思い浮かばないが、いささか背に当たっている感触は、大きいような気もする、そして声が低いような気もした。
少しの間悩んだロイは決意すると言った。
「エリヴィラ? か」
獲物が罠にかかったことを確信した柳は、ロイを解放すると言った。
「僕だよ、僕。想い人の声を忘れてるなんてひどいよ。ロイさん」
「・・・・・・」
硬直、黙ってしまったロイを見て、柳は勝ち誇った表情を浮かべた。
(若いっていいわね)
シェリル・オレアリス(eb4803)は、ふと思った。
彼女は人妻というある種の人々に素晴らしい響きをもたらす熟女。しかし、目の前で繰り広げられている風景に忘れ去ってしまった青春の思い出も感じる。
場に少々変わった空気が流れた。
その時、その場に外から入ってきた女いる。酒場にいた仲間を一瞥して軽く会釈したあとルカ・インテリジェンス(eb5195)は、手ごろな席にすわり届いた手紙を調べはじめた。
(ハロルドもやるようになった、上出来、上出来)
ルカの前にある報告書にはハロルドという男からの報告書があった。
11月末
ヴォルニ領の魔法兵団について調べる。
主力は炎の術師、一通り揃ってはいる。二十名はいない。
一部がそちらに向かったという情報もある。
注意されたし。
(魔法兵が来る・・・・・・危険ね、まあいいわ、死の緊張感がない戦争なんてつまらない)
ルカは無言のまま考えに耽った、いずれこれはパーティーに報告する必要はあるだろう。
「Mr.クライアント、話があるの」
彼女はリュミエールに情報について報告するとすぐさま現地に偵察に向かった。
ロイと柳は、ロイがヴォルニフで調査したことについて話をしている。
「部隊については、一つは蝶が関係しているらしい」
ロイは昼間調べてきた事を、柳に言った。
「蝶?」
「それしか分からない、蝶の紋章だ」
柳が聞いて考えていると、また新たな客が来訪した。
「寒い、寒いです」
「シシルさんは、ただでさえ細いもんね。幸せ太りはないのかな」
「そういうエリたんも、最近ちょっと太ったんじゃないですか」
お互いの体をつついている二人。どちらも、ほどほどの体型である。
「二名様ご到着っと、そうそう」
シシルとエリヴィラの到着を見た柳はロイに囁いた。
(さっきのことは黙ってるよ)
ロイの動きが止まった。不自然なその動きにシシルが何事か気付いた。
「何かあったんですか? あったんですよね」
意味ありげな沈黙が覆う。
「それについては、私が説明するわね」
シェリルはいらぬ世話、先ほどの出来事について説明しだした。
「というわけなのよ、若さって罪よね」
エリヴィラが俯いた。みんな触れられない。ダゥー、ダゥァイなど、ニセの寝言が場の雰囲気を読まず後ろに流れる中で、氷のような空気が辺りを包んでいた。
遅れて、階下に下りてきたイルコフスキー・ネフコス(eb8684)は瞬間悟る。
危険だ。
彼は愛を説くものではある。しかし愛の形は説けたとしても、この空気を変えるの困難だろう。
イルコフスキーはどう話しかけようか迷い。
「おいら、お腹すいた」
パラとしての愛嬌で、その場を和ませようとしてみた。
「そ、そうです。ご飯にしましょう」
シシルがここぞとばかり、なんとかしようと試みた。ロイは悪いことをしたとはあまり思っていないらしく、言い訳さえ口にしない。柳は気まずそうだ。
(神様助けて)
さらに、イルコフスキーは神に祈ってみたが、神様も色恋沙汰が苦手らしく天啓はなかった。
「ただいま到着」
そこに間の悪い男、マクシームが登場し。
「なんだ、何かあったのかい?」
間の悪い質問をした。
マクシームは向けられている視線の先エリヴィラに気付き、手を一つ叩くと。
「いや、おじさん、ちょっとトイレ」
逃げた。
全てを観察していたアーデルハイト・シュトラウス(eb5856)は、彼女なりの見解に達した。
(これが恋なのね)
「大変ね、お大事に」
エリヴィラにそう声を掛けると彼女は悠然と去っていった。アーデルハイトにとって、恋はまだどこか縁遠いもののようだ。
それからのち、色々のことがあったすえ、二人はなんとか平常状態に戻る。
この出来事についてルカがマクシームとイルコフスキーに後から聞いたのは
「あの時は、危険だと思った。戦いに行く前に死闘が起きるところだった」
「神様、おいら、大きさの違いよく分からないや」
その言葉からルカは何があったのか想像したが不明だった。
●戦闘
ヴォルニ西で行われた戦闘についての報告書。
ルカの偵察によって得られた情報によって、敵に伏兵がないと察知したメンバー。
月に映る彼女の一撃が戦闘の開始を告げる。
愚者の部隊を使い近衛についての陽動をかける作戦は成功を収めた。しかし、問題が発生した。
当初晴れだった戦場に降雪が訪れた。シェリルはこれに対して、天候を操ることを決行する。
さらに数度目の陽動のさい、戦士と侮っていた彼らに逆隙をつかれる事態がおきた。
これにより味方本体に近衛騎士団が突撃をかけられるが、ニセの突撃でその危機は一旦回避する。彼の前には血に染まった朱色の鎧がいくつも重ねられたという。
かくして、形勢は一時的に愚者・冒険者連合軍に有利に運ぶように見えたが・・・・・・。
陽動作戦を続行し、近衛の部隊の士気が減じつつある中、またもや雲行きが怪しくなる。
到着した戦車と紅の兵隊によって・・・・・・。
戦車を駆るバルタザールが引連れてきた部隊は少数であったが、強力だった。彼らは愚者の部隊を魔法によって一時的に行動不能にしたあと、近衛本体を愚者に向け、次は冒険者たちに牙をむいた。
繰り出される魔法攻撃の前に、柳がまず倒れ後方に送られた。
イルコフスキーの回復魔法も底をつき、マクシームとその配下である弓兵の矢も尽きたころ。
戦車の前にジャイアントとドワーフが対峙しドワーフは叫んだ。
「血をみることしかできぬ獣よ、消えろ」
ニセは駆ける戦車にひかれ吹き飛ばされた、怪我は軽くはない。さらに向かってくるところへ
「お行儀の良い戦い方は得意じゃない、あまり手間をかけさせないで」
アーデルハイトの駆るユニコーンが走りより擁護した結果、ニセは難を脱した。
シシルを守っていたエリヴィラも、魔法攻撃の前にダメージは大きい。シシルの魔法により彼女たちの前に敵はすでにないが、危険な状態にはかわりない。
ロイは一人、雪上に立っていた。彼もまた満身創痍だ。
「お互い気力だけだな、男」
声をかけた主を彼は知っていたが、あえて彼は答えなかった。
その後、戦闘は両者痛みわけの形で終わる。
だが、愚者の目的は達したといってもよいだろう、近衛兵のほぼ過半数の動きを止めたのだから。
この戦いにおいて、勝者というものがいるのならば、それはより多く立っているもののことを指すのかもしれない。イルコフスキーは後にそう回想する。
いくつもの命が失われた。幸いメンバーに死者はなかったが、柳は生死の境を彷徨った。
あくる日、柳が目を覚ました時、泣いているエリヴィラが最初に目に入った。
「柳さん、あたし・・・・・・この前のことをまだ謝ってないから」
「大丈夫だよ。僕はまだ見届けてないからね」
柳はそう呟いて──笑った。
続
●ヴォルニに関係する情報
以下、愚者より聞いた情報をまとめたものである。
【歴史】
ヴォルニ領はキエフより西に位置する。
武断的な家風を重んじる貴族が治める地で、特にこれまで大きな問題はなかった。
ヴォルニは先代領主の治世に隆盛を極めたと言っても良い、名君と呼ばれた先代領主に子息は二人おり、兄はハーフエルフ・弟は人間だった。
ロシアの慣習により、跡継ぎは兄と決められる。アレクサンドルと名づけられた兄はやや偏屈で変わったところはあったがヴォルニフで育ち、弟はテオドールと名づけられた。弟はヴォルニの辺境に送られた。
しばらくして、先代は亡くなる。後継者争いなど初めから無い、跡を継いだアレクサンドルは、ヴォルニの中心都市ヴォルニフに弟を呼んだ。
笑えない喜劇が始まるのはここからだ。
父の死後、ヴォルニフにテオドールを呼んだアレクサンドルは、すぐさま被っていた仮面を脱ぐ。彼にとって政治や権力など遊びの道具でしかなかったようだ。自分の欲望の赴くまま生きるのが望みだったのかもしれない。
アレクサンドルは、まず引き取った奴隷を芸術と称する行為のために利用した。中でもっとも美形であったハーフエルフの少年は彼の養子とされ、惨憺たる芸術の贄となった。
その魔手は、テオドールにも及んだようだが、何が起きたのかは分からない。
その後、次第に表沙汰になりはじめたアレクサンドルの所業を見たヴォルニの有力貴族達は、テオドールを一時的に担ぎ反乱を起こす準備を始めた。
だが、あえなく事は露見し、計画を知ったアレクサンドルは彼なりの手段で制裁を加える。
敗残のテオドールは、当時ヴォルニ戦士隊の隊長をしていた男とヴォルニの魔法兵団、団長の娘と共にその場から落ち延びる。途中、追撃を受けたさい戦士隊長はテオドール庇い命を落とした。
その後、テオドールの消息は不明となり、魔法兵団の娘は辺境の森に身を隠したとも言われている。
【箱について】
かつて、ヴォルニ家には一対の武具があった。一つは愚者が手にしている魔剣である。
元はヴォルニ家の始祖がデビルを退治封印するために使用したらしいが定かではない。
箱の中身はどうやら宝石のようだ。武具がその宝石を装着することで一つの段階を経る、完全に封を解くには、もう一つ鍵があるようだが、愚者はそれが何かなのかは知らない。
武具の一方は、いまだヴォルニ家が家宝として所持している。
宝石については、ある出来事が起きた結果、強力な力は悲劇しか生まないと悟ったヴォルニの始祖が遺跡に封印したとも言うが、詳しくは不明である。
愚者自身、この情報を知っているということは、彼がヴォルニ家の関係者であると同義である。
だが、彼は一切それについては答えなかった。
【アスガルズ家について】
アスガルズ家は、ヴォルニ魔法兵団の片翼、神聖兵団をかつて率いていた。
反乱のさいテオドールについたため、ヴォルニに存在していたアスガルズ家由来の者は全て秘密裏に粛清された。
反乱当時の長は女性。
この件とナターシャ・アスガルズとの関係性は不明、関わりはあると考えられる。
なお、他については諸般の事情から省略した。