【美食行進曲】鉛色の憂鬱
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■シリーズシナリオ
担当:やなぎきいち
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 50 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:05月02日〜05月07日
リプレイ公開日:2007年05月15日
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●オープニング
●揺らぐ湖面
キエフ湖と呼ばれる湖がある。キエフから北に位置するセベナージに向かう途中、ドニエプル川の川幅が対岸も霞むほど極端に広いあたりのことだ。周囲には漁業を生業にするものも多い。
冷涼な空気に日々晒され冷えた湖面は月光を受けてきらきらとダイヤモンドダストの輝きを湛えていている。時折り波打つ湖面は漁船を揺らし、揺りかご代わりにした名も知れぬ鳥が羽を休めていた。
───ガタン! バキバキッ!!
突如船を突き上げて響いた破壊音。びくりと身を震わせた鳥は、逃げるように棲家へと帰っていく。
そして夜には再び静寂が戻った。
思い出したように草から毀れた露が、静かな湖面に波紋を作り。
湖面と共に揺らいだ月光に照らされた大きな魚影を、見た者はいない。
一瞬だけ月光を遮った、鉛色の小さな影のことも‥‥
●依頼書
冒険者ギルドにひょんな依頼が持ち込まれたのは、その翌日のことだった。ばたばたと駆け込んできた依頼人に大した興味も抱けぬまま、良く言えば他人行儀な社交辞令、悪く言えばつまらなさそうに挨拶を述べたのは駆け出しギルド員。
「でかい魚を釣って欲しいんだ!」
「‥‥大物の貴族の身辺調査か何かですか?」
首を傾げたのも致し方ない‥‥と言っては彼の肩を持ちすぎているだろうか。しかし実際のところ、ここ数日というものギルドに持ち込まれた依頼に込み入った調査依頼が多いのだ。ぼんくらなこのギルド員ですら、何か大きなうねりを感じるほどに。
とはいえ、この依頼人が持ち込んだのはどうやらそういった類の仕事ではなく、言葉の通り、『でかい魚』を釣る仕事のようだ。上がりかけたモチベーションが急速に下降したのがありありと解ったらしく、背後を通りかかったヒゲを三つあみにしたドワーフのギルド員に椅子の足を蹴られた。
「また、何故そんな仕事を‥‥」
「俺はキエフ湖のほとりで漁師をしてるんだが、最近魚が暴れて‥‥船が壊されたり、魚網が破られたりして困ってるんだ」
「そんなに大きな魚が?」
首を傾げるギルド員に、依頼人はどこか呆れたような、けれど必死な表情で小さく答えた。
「キエフ湖には、大ナマズがいるんだ。大きなものになると5mも超える。犬や人間を飲み込むこともあるが、自分から漁船に体当たりしてくるような獰猛な奴じゃない‥‥はずなんだが‥‥」
「それは‥‥釣り上げるのも一仕事ですね‥‥」
頭を抱える依頼人。確かに、そんな獰猛な魚がいたら漁どころではなかろう。とっくにギルドへ討伐依頼がなされているはずである。
「あとな、大きな声じゃ言えないが‥‥チョウザメもいるんだ」
「チョウむぐぅ!?」
咄嗟に後ろからドワーフのギルド員が口をふさいだ。依頼人が声を潜めているのにギルド員が声を張り上げるなんてとんでもない。力任せに塞がれた鼻と口から息ができず真っ赤になって苦しむギルド員が哀れで、依頼人は「手を離してやってください」とドワーフのギルド員に懇願した。
「知ってる奴は少ないが、俺と仲間が漁場にしている辺りにはチョウザメがいるんだ。こいつも、2mを超えるような大きさのものがいるから、その気になれば漁船くらい壊せるだろうな」
「‥‥でかい魚を釣ってほしいんだ、ですか‥‥」
依頼人の言葉を反芻し、羊皮紙にペンを走らせた。
「それにしても、なんで突然暴れだしたんだろうな‥‥どちらにしてもおとなしいはずなんだが‥‥」
依頼人の呟きは、依頼書のどこにも、記されることはなかった──‥‥
●リプレイ本文
●レストラン・コーイヌール
冒険者の長所といえば、第一に対応と思考の柔軟性が挙げられよう。準備中の札が掛かったレストラン・コーイヌールの店内でもう一人の依頼人キーラ・アンハートと言葉を交わす冒険者たちは、彼の計画の協力者たちでもある。
「なるほど、今回は漁師とのコネづくりというわけか」
噂を聞いてこの作戦に加わったマクシーム・ボスホロフ(eb7876)もその例に漏れず、キーラの計画に乗り気のようである。
「チョウザメか‥‥食べたことがないな。美味いのか? いや、キーラ殿がコネを築こうとしているのだから美味いのだろうな」
ヌアージュ・ダスティ(eb4366)がまだ見ぬ魚たちに想いを馳せる。
「3mだか5mだか知らんが、それだけあればさぞかし食いでがあるのだろうな‥‥」
じゅるり。こぼれかけた涎を慌てて拭い、うっとりと目を細めた。
「崔那さん、調べてきたわよ」
そこへ手を振りながらコーイヌールの扉を開けたのがフィーナ・アクトラスだ。情報収集を依頼した友人、藺崔那(eb5183)に朗らかに声を掛ける。
「大ナマズは他のナマズと同じで淡白みたい。食べるならやっぱりチョウザメね、王宮料理に使われてるところもあるし」
「華国ではフカヒレっていって珍重するんだよ。手に入らないときはサメで代用するけど‥‥って、違う! そういう情報じゃなくって!!」
「わかってるわよ。ここだけの話なんだけどね、実は卵の塩漬けがとても美味しいらしいのよ。漁師さんの特権みたいなものね‥‥市場には出回っていないけれど」
「そうじゃなくて!」
「朝起きたら船が壊れていた‥‥ということは、船を壊した巨大魚は夜行性なのでしょうか」
「ナマズの方はね」
キリル・ファミーリヤ(eb5612)の呟きに頷くフィーナ。そういう情報が欲しかったんだよ、とむくれた頭をぽむぽむと叩いたフィーナに「子ども扱いするなぁっ!」と一撃見舞い、崔那は荒く鼻息をこぼす。些細な喧嘩を中止させたのはコーイヌールの主、キーラ・アンハートだった。
「先日の牧場からいい仔牛肉が届いたんだ。ホースラディッシュのソースで食べてみてくれ」
「わーい、いただきまーす!」
率先して頬張ったカルル・ゲラー(eb3530)はその味にほにゃんと柔らかい頬を緩めた。
「‥‥全然違いますねぇ‥‥。この柔らかさと温かさが保存食でも味わえるといいのに」
うっとりと夢見心地で難しいことを簡単に言ってのけたルンルン・フレール(eb5885)の言葉は、冒険者にとってある種、永遠の命題でもあろう。そして料理人にとっても。
「英気を養ったところで、美味い物にありつく‥‥いや、違った違った、関わるために一苦労してくるとするか」
「ヌアージュさん、ソースが」
「おお? すまんな、キリル殿」
パンでソースまできっちり食べ尽くしたヌアージュの頬に飛んだソースを拭いキリルは小さく笑った。
「‥‥大ナマズやチョウザメがこの時期に良く暴れるのであれば、過去にも似たような依頼が多く提示されてもおかしくはないのですが‥‥」
そうでないということは原因が他にあるというのでしょうか、とカーチャことエカテリーナ・イヴァリス(eb5631)が悩む。
「毎年のことなら漁師のほうで対策をしているだろう。冒険者を雇うのは、決して安くないからな」
「おいらもそう思う。きっと今回だけ、何か原因があるんだよ」
漁や猟を生業にしている者にとって収穫はそのまま生活に繋がる。そういう点では損得に対し敏感だ。実体験を交えたマクシームの言葉にイルコフスキー・ネフコス(eb8684)も頷いた。その原因が何であるかは、まだ判らないが‥‥。
●キエフ湖の怪
キエフ湖の湖面は僅かに波立っていた。対岸が遠くに霞んで見えるのは天候の具合だけでもなさそうである。桟橋に繋がれた舟は2隻、これが冒険者の足となる。カーチャの提案で、ルンルン、キリル、ヌアージュ、カルルが1隻、崔那、イルコフスキー、マクシーム、カーチャが1隻、と二手に別れる事となった。
「あとは漁師さんに乗っていただければ‥‥」
「待って、カーチャさん。4人乗りだよ、僕らが全員乗ったら漁師さんにお願いはできないんじゃない?」
てきぱきと指示をしていたカーチャは崔那の指摘に肩を落とした。すっかり忘れてしまっていた──舟が4人乗りであることを。無理をすればもう1人乗れないこともないが、誰かが舟から落ちる可能性を考えると余裕は残しておきたいというのが冒険者の総意。
「大丈夫だ、舟は漕げば進むからな」
漁は自信がないが漕ぐだけなら何とかなる、そう肩を叩いたヌアージュに癒されつつカーチャはこくりと頷いた。新たに一撃喰らった気がするのは秘密。
さて、ナマズが夜行性であっても舟を攻撃したのがナマズとは限らない以上、昼間も湖に出た方が良いだろう──そう判断し2隻の舟は湖上へと漕ぎ出した。
おおよその目分量で配分された二組だが、冒険者のみの重さで考えると少々偏りがあった。具体的に書くのは少々女性陣の目が怖いのでぼかすことをお許し願いたい。装備やら荷物(流石にテントや寝袋は持ち込まなかったことは注記しておく)が加わると実に平均的となり、結果的に崔那がバックパックを置いた分だけ彼女の舟がキリル一人分くらい軽くなっていた。乗り込んだ者たちの漕ぎ手としての力量を考えれば妥当なところだろう。
「いいか、1、2、1、2、タイミングよく漕ぐのだぞ? 1、2、1、2」
漁場に着くまでは皆で一緒に櫂を漕ぐ。気持ちの昂ぶりは来るべきモンスターとのバトルというより、巨大魚との戦いとその後の美食に対するもののようだ。ヌアージュの掛け声に一糸乱れぬ櫂裁きで、といっても左右の漕ぎ手のバランスが悪くくるくると同じ場所を回ったり蛇行したりしながら進む。マクシームがダウジング・ペンデュラムで絞ったのポイントに到着する頃には、漕ぐことに対してだけはコツが掴めた。
「カルルさん、第1投。振りかぶって──投げましたぁっ! 大きい!!」
「る、ルンルンさん静かにしてくださいっ。逃げてしまいますよ」
「はっ! そうですね、ごめんなさぁい」
キリルの言葉にしゅんとしたルンルンは、それでも目を輝かせてカルルの投げた釣り針を目で追う──ヒット!!
「うわあ、おいらの帽子ぃ!?」
「ひゃあ、ごめんねっ!」
イルコフスキーの白い帽子を釣り上げた!!
そこでぐっと我慢するのが大人の対応だろうが‥‥そこはパラ、イルコフスキーの対応はカルルのそれとそっくりだった。
「ねえ、崔那さん! おいらのカタキを討ってよ、何か釣って! セーラ様も応援してくれるから!!」
「‥‥セーラ様のご加護はもうあったみたいだよ」
「え?」
イルコフスキーの問いに答える余裕はなかった。崔那の手に加わっていた感触。それは次の瞬間、強烈な引きになった!!
「カーチャさん!」
「はい!」
二人の腕が逃すまじと釣り竿を握る。ラーンの投網を準備するマクシームへ、ルンルンがロープを投げた!
「括ってください、僕らが漕ぎます!」
キリルの叫びに頷き、操船に集中する。転覆さえしなければ勝機はある、戦うことになったとしてもチョウザメは肉食ではないのだから命懸けではないだろう。
「1、2、1、2!」
ヌアージュの掛け声に合わせて櫂が動く中、ミシミシと竿が悲鳴を上げる。限界か、と諦めかけたその時。
「来たあっ!!」
「任せろ!!」
投網ではなく漁師に借りた網を取り出し飛び跳ねたチョウザメを掬う!
「‥‥巨大魚、ですか?」
「大きくなれば2〜3mにはなるでしょうが‥‥でも、チョウザメには違いありませんよ」
カーチャの呟きにキリルが微笑んだ。それでも1m半は優にある大型の魚だ。
「や‥‥やった! やったー!!」
誰からともなく声が飛び交い、飛び上がりそうになって慌てて抱き合った。舟がバランスを崩したけれど、転覆は免れて。下に伸びる不思議な口から針を外し、崔那は大の字に寝転んだ。
「つ、疲れた〜!」
「お疲れ様、崔那さん。まだ本命は釣り上げてないし、一度戻って休もうよ」
この状態でもう一戦、というのは少々無謀か。夜間までの長丁場であることも考慮し、イルコフスキーの言葉どおり一度岸まで戻ることになった──戻るためにも必要な労力に気を取られ、そんな冒険者を見つめる悪意の視線には気付かぬまま。
●真夜中の怪
「1、2、1、2」
昼間と同じ単純作業。慣れない操船と巨大魚との格闘で疲れていたところに、安らかな夜の闇。そして涼やかな風と穏やかな波が心地良い。
(「しまった‥‥眠い」)
後悔先に立たず。単調な作業とそれらの見事なコラボレーションに屈さぬよう、大きな声で1、2、1、2と声を出したヌアージュに視線が集中する。
「静かにしてください。魚が逃げます」
冷たく通るカーチャの声が叱咤した。小さく謝るが、どうしたって睡魔は去らぬつもりのようだ。
「この辺りか」
マクシームが船を止めた。ぽちゃん、と小さな音がして、幾つかの釣り糸が水に沈む。
(「むむ‥‥!」)
防寒服の温もりが睡魔に力を与え、捨てると寒い。頬を抓ったり、目を瞬いたり、ヌアージュも釣り人に負けず忙しい。意識が深い闇の底に引きずり込まれそうになった、その時。
「うわ!」
カルルの悲鳴! 飛び起きたヌアージュが目にしたのは、大きくしなる釣竿!!
「カルルさん!」
ルンルンとキリルの手が伸びる! もう一隻から投じられたロープを船縁に結びつけつつ、一気に覚めた目を湖面に走らせる。
「何で急に暴れだしたんですか?」
ルンルンのテレパシーに一縷の望みをかけて、イルコフスキーはじっと見守る。キエフ湖には餌も豊富で、稀に「腹が減って人間を食った」という事件はあるが、今回はそういった風情ではない。しかし、怪我や何らかの原因があるのなら取り除いてやれるのではないか──そんな、どこか甘いことを考えていた2人に降りかかったのは、現実の雷だった。
『ニンゲン‥‥コロス‥‥』
不鮮明なイメージのオブラートに包まれた、明確な悪意。
『ニンゲン』は人間ではなく、エルフやパラなども全て含んでいるようだ。しかし問題はそこではない。
「そんな悪意を、どうして魚が‥‥」
「どういうことです?」
心のどこかで淡い期待を抱いていたカーチャ、マクシームの疑問に問い掛けた。
「魚や虫は生存本能が強く、彼らの知能ではそれ以上のことは考えられない」
例えば巣を追われかけて反撃することはあれど、いつまでも復讐を考えて付回すことはないということだ。
「ということは──」
そのとき、鯰が跳ね、飛沫が上がった!!
「神様、おいらたちを守って!」
イルコフスキーのホーリーフィールドが巨大魚の突進を阻む壁にならんと舟を包む。2度目の詠唱が2隻目の舟を包んだ次の刹那、ホーリーフィールドがあっさりと砕けた!
「危ない!」
暗い水面から巨体が跳ね、余波で揺れる舟にしがみつく。転覆すればホーリーフィールドは守ってくれない。波はイルコフスキーの集中を邪魔し、更なる結界は張られぬまま──力負けしたカルルが宙に投げ出された!!
「うわぁっ!!」
「カルルさん!」
咄嗟に伸ばしたキリルの手を掠め、カルルは落下していく──甲殻類ですら砕く細かな牙がずらりと並んだ鯰の、口の中へ。
「皆、掴まって!」
崔那の言葉に、反射的に手近な物に掴まった皆の目の前で、船縁を蹴った崔那が湖面へ飛び降りた!
「キミが喰らうのはこっちだよッ!!」
落ちるカルルより、船縁を蹴った分だけ勢いがあった。勢いをつけ全身の力を込めた崔那の蹴りが、側面から巨大鯰へとヒットした! 水中へ退避する鯰の上で大きな水柱が2つ立った。水中の鯰相手では風の精霊魔法であるブレスセンサーの効果は無かったが、水中に落ちた二人に対しては効果がある。ルンルンのスクロールとヌアージュの目が、暗闇の二人を見つけ、救助のロープを投げた。
二人を目掛けて鯰が迫る。しかし、ロープが二人を引き上げるほうが早い!!
「風邪を引くぞ、これを使うといい」
「ああああありががが」
こんなこともあろうかとヌアージュが用意していた毛布に包まり、カルルは両手で身体を抱き締めてがたがたと震える。しかし他に毛布を持っているのはキリルとルンルン。崔那の舟には毛布は無い。
「えっと、使ってくださいっ」
くるくる丸めた毛布をえいやっと放るのはルンルンの役目。受け取ろうと手を伸ばしたマクシームの耳に、小さな声が届いた。
「殺セ、人間、殺セ」
「いいいい、ちちちち」
「カルルさん、暖まるのが先ですよー」
めっ、と叱るルンルンにぶんぶんと首を振ったカルルが右手を突き出した。正確には、そこに嵌っている指輪を。
「な──」
宝石の中で、蝶が忙しなく羽ばたいていた。
「近くにデビルがいます!!」
緊張が走る。想定していない事態──デビルに通じるような魔力を帯びた品や銀の品が船上にどれだけあっただろうか。渡された毛布に包まらず、崔那が舳先で目を凝らす。自分の嵌めたマジックグローブが数少ないアイテムだと気付いたのだ。
「この指輪も効けばいいのですが」
変形するかもしれないが、効果があればそれでいい。マジックパワーリングを利き腕の指にしっかりと嵌めて、キリルは拳を握った。
「いた、あそこだ!!」
ヌアージュの褐色の指先が示す湖上に、鉛色の悪魔──インプが2匹飛んでいた。
「神様、おいらたちの敵に愛の鞭をくれてやってよ!!」
イルコフスキーの発した白い光がインプを貫く!
「投げられるもの、投げられるもの‥‥」
「一応、これも魔法の品です」
キリルが手渡したソレをルンルンが投げた!! 同時に、マクシームも投げた!!
「かかった、引くぞ!!」
「1、2、1、2!」
最早口癖のようになった掛け声が双方の舟から飛び出した。ラーンの投網に絡まったインプへ、キリルが尋ねる。
「何故、ここに、何を、して」
切れ切れなのは掛け声に合わせて投網を巻き上げながらだから。
「暇だから、な、遊んで、ヤッタ! だけ!」
「魚に、襲わセた! だけ!」
‥‥インプはリズムに吊られただけ。
「こんな種が入り込んでたら、そりゃ鯰も暴れるよね」
にんまりと笑った崔那の一撃を皮切りに、容赦のない攻撃がインプを塵に変えるのに時間は掛からなかった。
●カルルくんの日記
にゃっす! 今日はキエフ湖で釣りをしたよ〜♪
まさか夜の湖を泳いだり、デビルと戦ったりするとは思わなかったなぁ。
でも、漁師さんたちがきゃびあって呼んでるチョウザメの卵は、これから塩漬けにするからまだ食べれないんだって〜。残念!! だけどチョウザメの調理はいーっぱい食べちった♪ 美味しかったなぁ〜、思い出すだけでもよだ‥‥(滲んでいて読めない)‥‥
せめて今日の夢でまた食べられますようにっ。