【異国の忍】博愛
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■シリーズシナリオ
担当:やなぎきいち
対応レベル:5〜9lv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:11月17日〜11月22日
リプレイ公開日:2005年11月26日
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●オープニング
●冒険者ギルドINパリ
「雛のひなちゃん、かーわいー♪」
命を奪うことに何の躊躇いも覚えず凶器を振るう少女──雛菊。
警戒心を解かせる、その柔らかい笑顔すら彼女にとっては武器に他ならなかった。
けれど、心が凍り付いているわけではない。こうして人形を愛で、友と心を交わすこともできる。
例えデビルであろうとも、友と認めたのなら雛菊は懸命に守ろうとするだろう。
だからこそ、雛菊を想う者たちの心は乱れ、揺れた。
「‥‥‥」
憂い顔の冒険者たち、けれど雛菊の前では心からの笑顔を作る。
──本当の雛菊はどんな少女なのか。
答えが見えている、けれど霧に包まれ‥‥愛するがゆえに見失いつつある答え。
未だ雛菊に纏わり付く黒き髪のシフール『茉莉』の存在も、冒険者たちにとっては悩ましかった。
そんな折、エルフのギルド員リュナーティア・アイヴァンがいつもの微笑みで声を掛けた。
「雛菊さん、依頼があるのですけれどお受けになられます?」
「雛のおしごと〜? 雛、今日はひなちゃんと遊ぶから駄目なのねー」
「雛菊さんのひなちゃんと一緒のお仕事でも、駄目ですか?」
──ひなちゃんと一緒!!
雛菊の目が輝いた!!
「ひなちゃんも、一緒〜? 雛も一緒〜?」
「もちろん一緒ですよ」
そう言って雛菊の髪を撫で、リュナーティアは依頼について簡単に説明した。
パリから1日ほど歩いた町にある小さな孤児院。その院長から『子供たちに人形劇を見せてほしい』という依頼があったという。
演目は決まっておらず、既存の話でも、オリジナルの話でも構わない。
ただし、条件がいくつかある。
ひとつ、見る子供たちに配慮する内容であること。下は乳飲み子から上は12歳程度。
ひとつ、子供たちの情操教育のためにも、ほのぼのと円満に解決するストーリーか勧善懲悪でなければならない。
そして何より、子供が楽しめる話でなくてはならない。
また、孤児院の財政は厳しく、報酬としては食費と少し‥‥そう、ちま1体の材料費分くらいしか出せない。
「あまり条件の良い依頼ではありませんけれどね」
けれど、雛菊が好きそうな依頼だと──掲示する前に雛菊へ声をかけてみたのだと、美麗な面立ちに笑みを浮かべた。
「雛、誰と行こっかな〜☆ ちまにゃんと、おーかちゃんと、ええっと〜‥‥」
指折り数えるぷにぷににこにこの雛菊は、やっぱりいつもの雛菊。
そして色々と思惑を抱いているとは露知らず、友人たちを誘って孤児院へと赴くのであった。
●リプレイ本文
●孤児院は遠く近く。
「ふわぁ、いい匂いなの〜」
立ち上る香りに雛菊は目を細めた。匂いの元はウェルナー・シドラドム(eb0342)とヴィクトル・アルビレオ(ea6738)‥‥二人の男が焚き火で焼き上げる、子供たち用の焼き菓子だ。
バターとミルクと溶き卵、少量のはちみつをかき混ぜた液体に多めの小麦粉を混ぜ合わせ、どろりとした生地を作ると木の棒に貼り付ける。焚き火を利用して遠火で焼き‥‥ほんのり甘い、柔らかいパンのようなもの。それが香りを立ち上らせていた。
目を輝かせているのはヴィクトルの膝に陣取った雛菊だけではなく、ローサ・アルヴィート(ea5766)や宮崎桜花(eb1052)、セフィナ・プランティエ(ea8539)も同じ様子。興味のない素振りをしている王娘(ea8989)も、視線が時折り‥‥いや、かなりの頻度で菓子に注がれている。
「本当はサブレでも作れれば良かったんですけどね」
そう言ってウェルナーはしょんぼりと肩を落とす。ちま劇場の準備が予想以上に難航したため道中での作業となったのだ。しかし、少女たちの輝く瞳を見ていると、こんな夜営も良いかと、自然と笑みが零れてしまうのだ。穏やかな空間はとても居心地が良い。
「雛菊、味見をしてくれるか?」
膝に抱いた雛菊へ、焼けたばかりの菓子を握らせ‥‥ようとし、いくつかに千切った。じぃぃ〜っと手元を見つめる視線に気付いたから。
「よろしいのですか? ‥‥ありがとうございます」
頬に桜を散らして受け取ったのはセフィナ。次いで、ローサが薔薇色の目を煌かせる。
「ありがと、顔に似合わず優しいね」
「セフィナ、その一言が婚期を遅らせているのだと思う」
「うっさいよ、にゃんにゃん!!」
「にゃんにゃんと呼ぶな!」
野に生きる猫のように激しく威嚇しながら、柔らかい欠片をヴィクトルから受け取るにゃんにゃん──もとい、娘。
そんな賑やかな二人をさらりと放置し、内に抱えた灼熱の嫉妬心を宥めすかしながら桜花はにっこりと雛菊へ微笑んだ。
「一緒に食べようね、雛ちゃん」
「はーい、なの! ‥‥あっ」
勢い良く振り上げた手から菓子の残る木の棒が勢い良くすっぽ抜けた!!
「気をつけなさいね、雛菊」
あわや地面へダイビングしそうになる菓子をひょいっと救い、九重玉藻(ea3117)は艶やかな笑みを浮かべた。
逃げ出した菓子をその手に取り戻した雛菊は、玉藻と菓子を交互に見比べる。
「私はいいから、フィニィにわけてあげたら?」
突然話を振られ、フィニィ・フォルテン(ea9114)は首を横に振る。
「いえ、雛菊さんの分を戴くわけには‥‥」
「じゃあフィニィちゃんにはあたしが分けたげるっ☆」
返事を待たずに千切った菓子を放り込む‥‥
──つまらなそうに欠伸を噛み殺す茉莉を横目に、この穏やかな幸せが長く続くよう、誰もが祈っていた。
●THE・ちま劇場☆
ヴィクトル‥‥は怖がられるのでウェルナーが子供たちへ焼き菓子を配りました。ほんのり甘いそれは子供たちの心を擽って、菓子で釣られ大人しくイスに腰掛けました。
リュート「バリウス」を爪弾いて、フィニィが物語を歌うように語りだします。
『昔々、ある所にちまの兄妹が仲良くくらしておりました』
ひなちゃんとちま兄様の登場です。二人は仲良く手を繋いでいて、とっても大きなパンを持っていました。
「今日はどこでお弁当を食べようか?」
「お花畑がいいなのー」
『そこへ、意地悪デビルが現れました』
現れたのはちまとは明らかに違う、なんだか恐ろしい目をした黒い人形です!
「そのパンをこの梨の種と交換しないか? パンは食べたら終わりだが、梨なら旨い実がどっさり実るぞ」
ひなちゃんとちま兄様は相談して、1つのパンを二人で分けるより、沢山の梨をわけることにしました。
『二人はパンと交換して手に入れた種を一生懸命育てました。愛情を受けてすくすく育った樹はやがて沢山の梨が実りましたが、ちまの二人にはとても手が届きません』
「食べたぁい」
「うーん‥‥」
ちま兄様は梨の樹を見上げてうーんと背伸びをしてみました‥‥届きません。
ちまひなちゃんはエイッとジャンプをしました‥‥ポテッと転びました。
ちま兄様は樹に登ろうとしました‥‥樹を抱え込めません。
『そんな所へ再び、あの意地悪デビルが現れました』
「おお、良く実ったじゃないか。よし、私が取ってやろう」
デビルは空が飛べます。簡単に梨の実をもいで、どんどん食べてしまいます。
「ひなも〜!」
「ひとり占めはずるいよ」
「うるさい」
デビルがペイッと叩くと、ちま兄様はぺしゃんと潰れてしてしまいました。そう、意地悪デビルはとっても大きいのです!
「兄様、元気出してなの〜っ」
ひなちゃんの泣き声に、お友達が心配して集まってきました。
「ひなちゃん、どうしたの〜?」
桜花ちゃんが心配そうに尋ねると、めしょりと泣きながらひなちゃんはデビルに意地悪されてちま兄様が怪我をしてしまったのだと伝えました。ちまサイズの丸ごと猫かぶりを来たちまにゃん‥‥ねこにゃんはプンプン!
「許せないにゃ!」
「そんな悪い子はお仕置きしなくちゃだめね」
ポニーテールの可愛いポニテたまちゃんがキラリン☆ と目を光らせます。
「ね? そのお手伝いをさせて♪」
ろーさちゃんがぱっちりウィンクしました。本当はちまはお人形なので、じっとみているとウィンクしっぱなしなのは秘密です。
『意地悪デビルを懲らしめるため、ちまたちは意地悪デビルを探し始めました』
「ウサギさんに聞いてみましょう♪ ウサギさんウサギさん、おっきくて真っ黒い、意地悪デビルをしりませんか?」
歌いながら尋ねるふぃにぃちゃんに、イースター・ラビットのウサギさんは意地悪デビルの飛ぶ音が聞こえる方向を教えてくれました。
「ウサギさん、ありがと〜♪ ひなちゃん、いってみよ〜」
てちてちぽてぽて。
ちまたちが歩いていくと、空の高いところをふわふわ飛んでいる意地悪デビルを見つけました。
「きゃーーーー♪」
空飛ぶデビルもふぃにぃちゃんの声に耳がキーン!! 頭がくらくらして、空から落っこちてしまいました。
そこへ、とてててて〜っとたまちゃんが走ってきました!
「くらいなさーいっ! えいっ!」
たまちゃんの『ちまタックル』は食らうとほんわか幸せ気分になるのです。でもデビルに幸せ気分は毒のようで、何だかフラフラし始めました。すかさず、うぇるなー君が鋭い嘴でデビルのお尻を啄ばみます!
「どうだっ!」
「いてっ!」
ぴょんと飛び上がったデビルへ、ねこにゃんの『にゃんこスラッシュ』!!
「ぎゃー!」
「悪が栄えたためしはないんだにゃ!」
「そろそろあたしの出番ね、ふふふっ☆」
こっそりと罠を仕掛け始めるろーさちゃんを無視して、おうかちゃんは顔をバリバリ引っ掻かれた意地悪デビルに全力攻撃『ちまチョップ』!
「お仕置きです、えい!!」
──ぽふっ。
「〜〜!!」
引っ掻かれた顔面には、ちまのふんわりチョップも痛かったみたい。
ふらふらしたデビルは、ドシン!! とローサの準備していた落とし穴に落っこちてしまいました!
「いて、いてて、いててて!」
落とし穴の中には森で拾ってきた栗のイガがてんこ盛り!
「あ‥‥あ、あ〜!」
落とし穴を覗き込んだせふぃなちゃん、抱えた大きな十字架の重さでデビルの上に落っこちてしまいました!
「あら‥‥ごめんあそばせ!」
いきおいのついたちまの重さと、大きくて重い十字架で、デビルは冒険者に降参しました。
「参った、参った〜!」
「これに懲りたら‥‥」
「ほーほほほほ!! また意地悪したら、次はもっと酷い目にあわせますわ!」
「‥‥きめ台詞、あたしなのにー!」
ろーさちゃんが悔しそうに地団太を踏みました。
『落とし穴から飛んだデビルと一緒に出てきたセフィナがちま兄様の怪我も治して、最後は皆で梨をお腹一杯食べたのでした、おしまい!』
梨を囲んでちまたちのきめポーズ!!
孤児院の子供たちも大喜びで、翌日、名残を惜しみながら孤児院を後にした。
●謎は藪の中に。
「あの‥‥」
ウェルナーがヴィクトルを手招いた。茉莉さんのことです、と小さく呟く。間にいた娘と耳聡く聞きつけたフィニィと玉藻もそっと立ち位置を変える。
「先日の一件ですが‥‥茉莉さんがあの派手な攻撃をし始める前、雛菊さんが茉莉さんに手伝いをお願いしたんです」
「逃げるためだろう? 捕まるよりは良い選択だ」
あの状況下では使えるものは全て使わねばならなかった、それだけのこと──言外にそう語るヴィクトルの瞳。
「ウェルナーが言っているのは『白い玉』のことだ」
ポソリと娘が呟いた。あれは、デビルが使う能力に似ていた‥‥
「雛菊さんの身体から黒く光るように霞が上って‥‥茉莉さんの手元で白い玉になったんです」
その言葉を聞いたヴィクトルが眉間に深い皺を刻む。それはデビル魔法デスハートンやデビル独特の忌むべき特殊能力そのものではないか。
「雛菊にシフール便を出した相手は解らなかったわ。もっとも‥‥」
相手が解ったとしてもどうにもならない。シフール飛脚が早いといっても人間の移動する速度の倍程度。ジャパンまでの距離を考えれば数日のうちに連絡を取ることは不可能だろう。そもそも、下っ端の忍に指示を出すのは忍。忍相手に連絡を取ることの難しさ、それはここにいる誰よりも玉藻が良く知っていることだった。
浅く息を吐き、小さく肩を竦めながら‥‥視界の隅に茉莉を収める。
「‥‥先日の、天使の羽のひとひらは‥‥近くにデビルがいると示しました」
白き玉と天使の羽のひとひら。それが知らしめていることは‥‥茉莉がデビルだということ。
「その白い玉は生命力そのものだ。奪われ続ければ‥‥」
「そんなことはさせない。殺してでも奪い返す──たとえ雛菊を泣かせることになっても」
みなまで言わせず娘が小さく呟き、フィニィが頷いた。命のやり取りは望むところではないけれど‥‥相手はデビル、しかも大切な少女を狙っている。選択の余地はない。
そんな二人の耳に、最悪の事態を招く高い声が差し込んだ。
「雛、あのハーフエルフたちロクなこと考えてないよ〜っ」
ヒステリックに叫ぶ茉莉をきょとんと見て、首を傾げながら同意を求めるように尋ねた──硬直する友人たちへ。
●真実は罪を招くか。
「茉莉ちゃ、何言ってるなのね〜? 雛のお友達、ハーフエルフなんていないなのよ。ね〜?」
愛らしく微笑む雛菊へ、頷くものは誰もいない。
「‥‥‥」
重みを増した空気が沈黙を招く。
くるりと仲間たちを見回す雛菊と目が合い‥‥‥フィニィが冷たく血の気の引いた手を握り締めて声を上げた。
「聞いてください、雛菊さ‥‥」
「じゃあ耳を見せてみれば〜? ハーフエルフじゃないなら見せられるよネェ★」
しかし茉莉は残酷な真実でフィニィの言葉を遮った。
「雛菊、デビルに誑(たぶら)かされるな!」
「そうです、雛菊さんは雛菊さんの心を信じてください。惑わされないで!」
デビルの人形を地面に叩きつけヴィクトルが吼える。
身の丈以上の十字架を抱えるちまを差し出しセフィナが見つめる。
張り詰めた静寂が空間を支配する。
その静寂を蹴破ったのは娘だった。
「ありがとう、だが事実だ‥‥友に秘密を抱えていたくない。雛菊には全てを知って欲しい」
友、と噛み締めるように呟いた。そして髪を除け、特徴的な耳を晒した。
「私はハーフエルフだ」
「‥‥私もです」
その呪われた運命は変わらない。娘に全てを背負わすのを嫌ってフィニィも長らく隠し続けてきた耳を晒し、批難するような娘の視線に微笑んだ。
突きつけられた事実を受け入れようとじっと耳を見つめた後、雛菊は凍える瞳で二人を交互に眺めた。
「雛のこと騙してたなのね?」
「‥‥‥」
「雛の宝物、取ろうとするなの?」
「違う」
「ハーフエルフは皆盗賊だって、雛の兄様が言ってたなの。雛菊は騙されやすいから信じちゃいけないよって、兄様が言ってたなの」
「そんなことありません」
普段よりトーンの低い声のやり取り。愉快そうに雛菊の頭上で茉莉が舞う。
「きゃはは、必死必死っ☆ で〜も〜、ハーフエルフの言うことなんて信じられないよねェ、雛?」
「黙ってください。デビルの言うことよりよほど信じられます」
ウェルナーの言に鼻を鳴らす──まさに一触即発という状況を押し留めているのは冒険者たちの雛菊への暖かい想いだった。
しかし雛菊の脳裏に兄の言葉がちらつく。
──ハーフエルフは皆盗賊なんだ。宝物を奪われないように気をつけるんだよ。
──ハーフエルフは世間に恨みを抱いていて、隙を見せれば斬りかかって来るんだよ。
──信じちゃいけないよ‥‥雛菊は騙されやすいからいつも心配してるからね。
──可愛い雛菊、気をつけるんだよ。無事に帰って来れるように。
──雛菊‥‥
──菊花‥‥
「茉莉ちゃ‥‥」
「ダメよ、雛ちゃん! 考えるのは茉莉さんの役目じゃありません。皆、自分で考えて自分の足で歩いているんです。だから‥‥雛ちゃんも自分で考えて、本当に大事なものを」
春の花が秋の花へ、心に届くように真摯に語りかける。遠き異国の二輪の花の一途な瞳が交錯する。
デビルもハーフエルフも信用できない。信用できるのは目の前の事実──娘がフィニィがハーフエルフだったこと。
その事実を雛菊に告げたのは‥‥茉莉。
そして、信用せずにはいられない、最愛の兄。
「雛、茉莉のことが信用できないのォ?」
もう特徴的な尻尾を隠すことすらせずに茉莉が囁いた。
雛菊の澄んだ瞳が‥‥濁った。
ローサがキッと茉莉を睨む!!
「魅了!? 雛ちゃん!! 茉莉、卑怯よ!!」
「だぁってぇ、デビルだも〜ん★ それから、茉莉じゃなくってマリス。言っておくけどォ、最初に勝手に間違えたのは雛だよん♪」
定位置と言わんばかりに雛菊の頭に陣取ったマリスは軽快に笑う。
「まぁ、ビフロンス様がアンドラスに出し抜かれるのも癪だしぃ、遊びも終わりにしないとねン☆」
「アンドラス!? マリス、貴様何を!!」
それは忌々しき記憶。パリを恐怖に叩き落したカルロス元伯爵の背後に見え隠れしていたデビルの名だというのはここにいる誰もが知っていた。
──それに出し抜かれるとはどういうことなのだろう。
「雛はマリスがビフロンス様におっ届け〜! ノルマンなんて滅びちゃえ、きゃははっ♪」
「待て、どこへ連れて行く!?」
「うーん。ウザいくらい精霊のいっぱいいる場所、魔法陣の真ん中ぁ☆ んじゃね〜」
「逃がさないよっ!!」
──ドォン!!
ローサが番えたスリングも間に合わず、雛菊が微塵隠れを発動!!
もうもうと立ち上る粉塵と煙が消えた後には、雛菊の姿も、マリスの姿も残されてはいなかった‥‥
誰ともなく、全員が。奪われた少女の名を呟いた。
「雛ちゃん‥‥」
胸に同じ誓願を抱いて‥‥