【異国の忍】誓願

■シリーズシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:5〜9lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:5人

冒険期間:12月01日〜12月06日

リプレイ公開日:2005年12月08日

●オープニング

●街外れの公園INパリ
 炎が消えたように、胸にぽっかりと穴が開いていた──ギルド員、リュナーティアのことである。
 たまの休暇だというのに、何もやる気が起きないというように‥‥ベンチに腰掛け、空虚な空を見上げる。
 初冬の空はとても物悲しく。
 だからこそ、また思考は原点に帰る。

 ‥‥自分の無力を嘆くことしかできない。

「‥‥はぁ」
 深い溜息を漏らしたリュナーティアに、不意にぶっきらぼうな声が掛かった。
「よぉ、死んだ魚みてぇだな」
「あなたは‥‥」
 振り返ったリュナーティアはそこに立つ男を見上げた。
 神出鬼没の怪盗ファンタスティック・マスカレードの一味、弓使いのディック・ダイだ。
「驚かねぇんだな」
「ファンタスティック・マスカレードも仲間の皆さんも本当に神出鬼没ですから、いちいち驚いていたら身が持ちません」
 そう言っていつもの微笑みを浮かべるも、萎れるように笑顔が消える。
 面倒そうな奴に声かけちまったぜ‥‥と頭をかいたディック、何事も無かったかのように立ち去ろうとし、リュナーティアに腕を捕まれた。
「おい、触るなっ!!」
 力いっぱい振り払う怪盗の仲間。どうも、女性に触れられるのは好きではないようだ。
「ディックさん、ちょっと‥‥気が向いたらで良いんですが、冒険者の方と話していただけませんか?」
「ああ? いつだって気が向けば話してるぜ?」
 そうではなくて‥‥紡ぐ言葉はデビルの情報を欲しがるであろう冒険者たちの話。
「きっと‥‥ディックさんの言葉にヒントを見出せると思うんです。気が向いたらで構いませんので‥‥」
 お願いします、と深く頭を下げるリュナーティア。
 頭を上げたとき、既にディックはそこに居なかった。

 風に煽られ、カサカサ‥‥と枯葉が駆けていった。

●今回の参加者

 ea3117 九重 玉藻(36歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5766 ローサ・アルヴィート(27歳・♀・レンジャー・エルフ・イスパニア王国)
 ea6738 ヴィクトル・アルビレオ(38歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ea8539 セフィナ・プランティエ(27歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea8989 王 娘(18歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ea9114 フィニィ・フォルテン(23歳・♀・バード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb0342 ウェルナー・シドラドム(28歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb1052 宮崎 桜花(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

ヴィグ・カノス(ea0294)/ ゴールド・ストーム(ea3785)/ リュリュ・アルビレオ(ea4167)/ フェリーナ・フェタ(ea5066)/ ロート・クロニクル(ea9519

●リプレイ本文

●宮廷図書館
「‥‥焦るな。しかし急げ。見落とすな」
 ヴィクトル・アルビレオ(ea6738)は自らの口にしたその言葉を実践するように宮廷図書館へ赴いた。愛娘のリュリュと共に。古い羊皮紙の臭い、手入れは行き届いているもののどこか黴臭く感じる書架──そんな宮廷図書館でヴィクトルが見たものは、本の虫と化している顔見知りの冒険者たちだった。
「ヴィクトルさんも調べ物?」
「ああ。デビルについて、ちょっとな」
 にこやかに声を掛けてきたフィーナへ対照的な強面を披露しながら頷く。その口から漏れたデビルという言葉に反応したフィソスとミィナは堆く積まれた本の山を見た。
「娘とシュティール領に行った人か。じゃあキミもビフロンスについて調べるんだろう、協力しないか?」
 腹の探り合いになることを嫌ったマーヤーの言葉に、ヴィクトルは願ってもないことだと頷いた。他国に比べて多くはないとはいえ宮廷図書館の蔵書である、人数は多いに越したことはない。恐らく、雛菊の命がかかっているのだ。

 ──ヴィクトルおじちゃんのお膝座るの、雛、だぁいすきなのね〜♪

 笑顔が愛娘の顔と重なる。頭を振り、感傷を振り切ると本の虫たちへと訊ねた。
「どこまで調べたのだ?」
「実は‥‥本の当たりはついているのだが、読めるものがおらんのだ」
「言い回しが難しかったりして、私たちじゃ読めないんですよ。どうしようもなければニコルさんに手伝ってもらおうと思っていたんですけど」
 表情の薄い面持ちに滲む恥ずかしさを覆い隠すように渋面を浮かべたフィソス。彼女が示す先には積み上げられた本があった。
「大丈夫か?」
 誰に聞いてるの、と笑ったリュリュ。ゲルマン語への深い造詣とモンスターに対する広い知識は彼女の武器の1つ。──そのために呼んだんでしょう、高いからね? 親指を立てて念を押すように言い放つと、ビフロンスの情報を得るべく手早くページを捲り始めた。


●食堂
 冒険者ギルドからさほど離れていない食堂の片隅で声を潜め語り合うのはジャパン人の宮崎桜花(eb1052)とエルフのギルド員、そして巻き込まれた女商人という顔ぶれだった。
 冬特有の澄んだ空気が吹き飛ぶような暗く淀んだ雰囲気を纏い、どこか思いつめた表情を浮かべている。
「リュナーティアさん、冒険者ギルドの全面的な協力を得ることは出来ないでしょうか」
「わたくし個人であれば、出来得る限りのご協力はいたしますが‥‥」
 冒険者数名が冒険者ギルドという組織を動かすことは出来ないのだ。リュナーティアにその権限もない。先のシュヴァルツ城攻防戦などは国王ウィリアム3世からの正式要請があったためギルドが動くことになったにすぎない。
「そうですか‥‥」
「事が事ですからフロランス様も仕事中であっても多少のことは目を瞑ってくださると思います。雛菊さんに無事に戻っていただきたいのは私も同じですし、魔法陣を発動させるわけにはいきませんから」
 無力を噛み締める桜花へ、励ますようにリュナーティアが声をかける。
「桜花さんが諦めたら、雛菊さんへの道程は遠退いてしまいます。待っているはずですよ、雛菊さんは‥‥」

 ──桜花お姉ちゃん、ほっぺ擦り擦りするなの〜っ

 旅の途中、毛布の中で擦り寄ってきた雛菊の姿が脳裏に浮かび、桜花はちまをぐっと握り締めた。
 そして暖めたワインで喉を潤すルシアンへ向き直る。
「ルシアンさんはどうして雛ちゃんと知り合ったんですか? 何故雛ちゃんを宝物に?」
「冒険者ギルドでぶつかって来たのよ、あの子が。宝物にしたのは‥‥あの子なら逃げ切ると思ったからよ」
 愛らしい外見と目を見張る身体能力。それらがあれば冒険者は本気を出せず、無事に逃げ切るはず──そう思ったのだ。雛菊の友人が来たことはルシアンの想定外の事態だったに違いない。
「あの、図々しいのは判っているんですが‥‥魔法陣や精霊のいっぱいいる場所、それにビフロンス・アンドラスといった言葉に聞き覚えはありませんか?」
 アンドラスが破滅の魔法陣を発動させようとした──ルシアンから出てきたのはパリに滞在している殆どの冒険者が知っている、その事実。
「ビフロンスっていうのは知らないわね。精霊も心当たりがないわね、ごめんなさい。自然の豊かなところなのだとは思うけど」
 肩を落とした桜花だが‥‥
「満月‥‥月‥‥リュナーティアさん、あの丘はどうでしょうか? ほら、月の綺麗な晩に恋が叶うとかいう」
 半年ほど前、雛菊と七夕を祝った丘。月の綺麗な晩に恋が叶うと言われる丘。パリから二日の距離にあるその丘は、シュティール領に鎮座している。
「‥‥そんな精霊がいたような気がします」
 肯定するように頷くギルド員。桜花は弾かれたように立ち上がった!
「調べてみますっ。可能性がある限り諦めません! ‥‥雛ちゃんのためにも」
 静かに微笑んだ桜花。その瞳には凛とした輝きが戻っていた。


●孤児院
 パリを離れて丸一日。九重玉藻(ea3117)は半月前に訪れた孤児院を訪れていた。
 正確には、孤児院のある村を、である。
「小さなジャパン人の女の子と、黒髪のシフールの二人連れを見なかったかしら? 半月くらい前に、ここの孤児院へ慰問に来たのだけれど」
「半月も前の話じゃなぁ‥‥」
「そう‥‥そうよね、ありがと」
 しかし、馬車の定期便があるほど大きくもない、小ぢんまりとした小さな村である。半月も前の話ではなかなか目撃情報も掴めない。
 しかも相手はデビルと恐らく腕の立つ忍者で人遁の術を使うとなれば、足取りを掴むのは雲を掴むようなものかもしれない。

 ふぅ、と溜息を吐く玉藻の黒髪を風が浚った。

 冷たい風で頭を冷やし、雑貨屋へと足を進める。
「ねぇ、ジャパン人の女の子と黒髪のシフールが買い物に寄ったりしなかったかしら」
「ああ、来たよ。半月くらい前かな、目を引く二人連れだから覚えてる」
 自分の予想は正しかった、とこみ上げる高笑いを噛み殺し、少女たちが買い求めた品を確認する。
「何を買っていったか教えてもらえるかしら?」
「毛布と、保存食と‥‥それくらいかな。冒険者の真似事でもしたい年頃なんじゃないかな」
「そうかもしれないわね、オーッホッホッホ!」
 逃がさないわよ、マリス。
 堪えきれず、昏く高い笑いを響かせる玉藻。
 保存食の数から行動可能圏を割り出すというのは、どうやら成功したようだ。


●漆黒の小鳩亭
 その夜、王娘(ea8989)とウェルナー・シドラドム(eb0342)はパリの裏通りにある酒場を訪れていた。
「いますね」
 目当ての女性はその立ち居振る舞いだけでとても目立つ。ましてや大柄なハーフエルフと険悪な雰囲気で言葉を交わしているとなれば尚更だろう。
「アールさん? 何をしてるんですか、こんな所で」
 目当てのレジーナ・ヴェロニカから視線を逸らさぬよう気をつけながらウェルナーは男に声を掛けた。関係ねぇと鼻を鳴らされたが、それは彼の日常的な反応と割り切ってヴェロニカへ視線を転じる。
「あの時保護した少女は元気か?」
「ええ、すっかり懐いているわよ。でも訊きたいのはそんなことではないのでしょう?」
 見つめられ、じっと瞳を見つめ返す娘。
 しばらく沈黙を続けた娘が、やがて口を開いた。
「いつか言ったな、幸せは自分が決めて勝ち取るもの。幸せを望んで良いと‥‥そして狂化せずに平穏に暮らす‥‥その世界を壊さない為に協力してくれないか‥‥? 頼む、雛菊を助けたいんだ‥‥!!」
「雛菊‥‥ああ、あの偏見塗れの小娘ね」
 今度はヴェロニカが沈黙する番だった。雛菊を助けることが娘を含めハーフエルフにとってどんな影響を及ぼすか──数々のシュミレーションが展開される。
「わかったわ、協力しましょう」
 交渉事はウェルナーに任せるとばかりに娘は口を噤む。しかし、二人とも特に質問する事柄を考えていなかった。
「ナスカ・グランテを使っているのはビフロンスよ。アルジャーンも奴の器ね。殆どの器は悪魔崇拝者の『行商人』たちがばらばらに運んでいるわ」
「ビフロンス‥‥ヴィクトルさんたちが調べてくれました。死体に憑依する能力を持つデビルで、憑依した死体の知識や技術を使いこなすんだそうですね。デビル魔法を高速詠唱付きで駆使するとか」
「マジックアイテムにも詳しいと言っていた」
 頷くヴェロニカ。その辺りは既に調査済みであるのだろう。
「ナスカ──ビフロンスは『純粋な魂を持つ者』を探していたわ。恐らく、それがビフロンスの使う魔法陣の生贄の条件ね」
 そしてヴェロニカはウェルナーへ手を差し出した。
「同胞たちのこと、よろしくお願いするわ」
「もちろんです、仲間ですから」
 差し出された手をしっかりと握り、ウェルナーは力強く頷いた。
 そしてヴェロニカは娘へと視線を転じた。
「貴女が雛菊とうまく付き合えれば、それが架け橋になる可能性もあるわ。打算で申し訳ないけれど‥‥頑張って頂戴」
 頷く代わりに、胸元に仕舞ったちまにゃんへそっと触れた。


●ヴィクトルの棲家
『私達は現在『あの子』を救い破滅の魔方陣の発動を阻止する為に、デビル『マリス』の残した手がかり『ウザいくらい精霊のいっぱいいる場所』に有るという魔法陣を探しています。以前、薬を探しにアースソウルに会いに行きましたが、他にお心当たりは無いでしょうか?』
 要約すると、フィニィ・フォルテン(ea9114)がしたためたシフール便はそんな内容だった。それに対し、フィリーネ・シュティールから返事が届いたのは調査開始から三日目の夜のことだった。
「どうですか、フィリーネ様のお心当たりは‥‥」
 羊皮紙を覗き込むような真似はせず、セフィナ・プランティエ(ea8539)はじっとフィニィの言葉を待つ。
「シュティール領内で精霊の目撃情報や伝承の多い場所をいくつか調べてくださいました」
 その中にはアースソウルの棲む森も含まれていた。森の一角に『月の綺麗な晩に恋が叶う』という丘や馬が駆ける湖があるようだ。桜花が戻ればルシアンの作ったダンジョンがこの湖のほとりにある事が解るはずだ。
「それから、ヴィルヘルム様と執事さんが失踪したそうです。もしシュティール領なら領主様にも危険が‥‥」
 言いかけたフィニィの言葉をセフィナが遮った。
「レイさんが聞いたマリスの言葉は、『フィリーネ様が死んだらヴィルヘルム様は自由に動ける』とも解釈できませんか」
「‥‥どういうことですか」
「現在の領主様は、ナスカさんと同様、ビフロンスの器の一つか協力者の可能性が高いと思います」
 二十歳まで生きられない、そう言われていながらその倍近い時を生きている男。フィニィも言ったではないか、妻でさえ面会できないほど衰弱し切っていたと。
 昔からの友人だというクレメンスの言葉は信用できる──とすれば、彼が帰ってから入れ替わったのではないか?
 娘の手元へ届いたヴォルフ・ガードナーからのシフール便は、シュティール領内で子供の行方不明事件が数件起きていると伝えた。そして、家族や村長などが領主へ依頼しても、ヴィルヘルムは動かなかったという。
(「‥‥まだ『雛ちゃん』って呼んでもいない。貴女の国の言葉で話したくて、勉強したジャパン語。何一つ、聞いて貰っていないの」)
 雛菊への想いを抱き、導いた答えを告げる。
「賢帝と称されるヴィルヘルム様とは思えません。氷漬けだった領主様は‥‥既に死んでいたための腐敗防止と考えられます」
 静かに聞いていたヴィクトルの背中を、氷のように冷たい汗が流れ落ちた。


●パリ郊外の公園
 そこは1月ほど前、雛菊の『お手伝い』をするために集まった公園。冷気にうなじを撫でられながら、ローサ・アルヴィート(ea5766)は恋人を待って‥‥いや、知人を探していた。
「ていうかディックどこにいんのー。おーい‥‥ダイちゃんって呼ばないから出ておいでー☆」
 カサカサと音を立て枯葉が転がる。サクッと軽い音を立て踏み拉いた足。
「俺はベンチの下に暮らしてるわけじゃねぇぜ?」
 声を掛けたのはその足の主、怪盗一味、ディック・ダイ(ez0085)と呼ばれる男。豪快に胸元を晒す男に、ポロッと口を突いて出た言葉は──
「ところでダイちゃん、その妙にセクシーな服って寒くないの?」
「呼ばねぇんじゃなかったのか」
 溜息を漏らすように息を吐くと、葉巻から生じ胸に溜まっていた白い煙が風に散る。そのまま踵を返す男へ、ローサは慌てて言葉を投げる。
「待って、ディック! あたしたちに力を貸して!!」
「断る」
「お願い、あたし達に力を貸して! もう頼れる人があまりいないの‥‥だから、お願い‥‥しますっ」
 軽口を叩くローサへ即答したディックだが、その声が途切れがちの涙声になると足を止め振り向いた。
 泣きゃ良いってもんじゃねぇだろ、これだから女ってヤツは‥‥ボヤきながら深く深く下げられた女の頭を、その金の髪を、わしわしと掴むように撫でる。その手の温もりに、涙が一筋溢れた。
「魔法陣の共通点なんざ探すだけ無駄だ。厄介だが、作ったデビルによって発動の条件も規模も全部違う。共通しているのは──そうだな、魔法陣と呼べる形態なことと、生贄が必要なことくらいか」
 その生贄も千差万別なんだがな、と眉を顰める。つられてローサも眉を顰めた。
「発動したらどうなるの?」
「あ〜‥‥流石にデスハートンは知ってるよな? あれの巨大版と思え。周囲の生命を文字通り喰らい尽くして死の大地へと変えちまう、らしい」
 そんな物騒なものを発動させないために、怪盗一味は一時的とはいえノルマン国王とも手を組んだのだ。
「‥‥じゃあついでに、マント城の地下でナスカと対峙した時の話とかも聞いていい?」
「断っても聞き出すつもりだろ」
 ニカッと笑う赤い瞳の女に肩を竦めると、経験を語る。
 ──殆ど詠唱することなくデビル魔法を用いたこと。
 ──同行していたインキュバスやインプの邪魔が入ったこと。
 ──インキュバスがムーンアローを使ってきたこと。
「あの時は聖櫃が優先だったんでな、深追いしねぇで引き上げたんだ」
 じっと正面からディックを見つめ低い声に深く聞き入っていたローサ、聞きたかった事を全て聞き出したと判断するや否やするりと立ち上がり、男の浅黒い頬へ唇を寄せた。
「ありがとー♪ ディックってやっぱり優しいんだねー!」
「な‥‥っ! デビルどもを撃退するためだっ!!」
 赤面し頬を擦るディックの言葉をはいはいと聞き流し、ひらひらと手を振るとディックの元を離れた。
 流した涙が本物だったのかどうか‥‥星の支配し始めた空の下では、ディックには判別できなかった。
「待っててね、雛ちゃん‥‥」


 そして、フィニィはそれら全ての情報をしたためたシフール便をフィリーネの元へ放った。
 全ての情報から導き出された魔法陣の在り処はアースソウルの森である、と
 ──それが、12月5日の話である。