【聖杯戦争】祈りに似ている外伝?―咎人―
|
■シリーズシナリオ
担当:やよい雛徒
対応レベル:5〜9lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 61 C
参加人数:12人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月20日〜08月01日
リプレイ公開日:2005年07月29日
|
●オープニング
「慰撫の為?」
「贄姫制度の発端らしい。犠牲の上に成り立つ平穏だな」
時は遡る。かつて北の森は半ば魔物達の支配下にあった。森から溢れる魔物に苦悩した人の長は、娘に惚れたハーフエルフの旅の少年に元凶をうち倒してくれと頼んだという。
「話には裏があった。倒した相手は北の森に住むエルフの長で実父、褒美に結婚した相手は容色衰えぬ実母。旅人は二人の禁忌の子で、捨て子の為彼らを知らなかったそうだ」
エルフの若長と人間の娘。二人の仲を猛反対し、ひき裂きながら窮地に陥ると助けを求めた人の長。虫が良すぎると突っぱねたエルフを逆恨みして法螺を吹き、実の息子に殺させたのが運の尽き。数年後に事実を知ったハーフエルフは人里を飛び出し、父の墓に足を運びエルフ達の迫害にあうものの、尊敬していた若長の息子が悔いて戻ってきたのを機に、エルフ達の怒りの矛先は人里に向いた。見せしめに村を滅ぼし始めたのだ。
「その後エルフとハーフエルフ達は魔物として惨殺されたが恨み言を残した。何度でも生き返り、未来永劫罪を償わせると。言葉に違わず、彼らは魔物化して人里を襲い続けた」
数年後現れた旅の者が、静める方法を人里に与えたという。地下の何処かに神殿が築かれ、彼らは封印された。十三の宝石は封印具。そして実母の子孫が慰撫の為の贄となった。
「少数派の調査結果はそこまで。十中八九、地下神殿に封印された連中がいる。贄姫を要求する理由は様々なれど、ハーフエルフは依代、復活の鍵だ。性別も問わなくなったのは破壊衝動に囚われているからだろう。我々には彼らを誘き寄せる餌となり耐えられるだけの精神を持った鍵が必要だ。連中への情が一欠片でもあれば、鍵は陥落、事態は悪化する」
ネイは契約の一族が現れたのは封印が緩んでいるのかも知れない、と語る。宝石全てを破壊するか、あるいは全てを神殿の盤に収める事で、封印は解けてしまうのだと。
冒険者達を雇ったアニマンディに、ウィタエンジェの姿で接触したマレアが帰ってきていた。面倒だと動くのを拒否していたウィタエンジェ本人は話を聞いて窓の外を眺める。
「という事は次の領主が僕‥‥贄姫の血筋が領主だ、皮肉だよね」
忌まわしき血筋、贄姫の家系。
後妻の子等は家を出たアニマンディ以外は他界した。サンカッセラは調査で遺体と判明、本来のウィタエンジェは昔実母に毒殺、リレンスィエは戦乱で惨殺、エリキサクアはレイスに憑き殺され。残るは表向き殺された事あるいは無い者とされている三兄妹のみ。
本当に呪われた家系と言う他無い。そして先日耳に飛び込んできた不穏な情勢。
オクスフォード侯爵がアーサー王に反旗を翻した。ゴルロイスの出現により明らかにされたウーサー・ペンドラゴンの不実。円卓の騎士を含め多くの貴族達に走った同様。しかも暗躍しているのはロット・オークニーの妻モルゴースと言う。
「拙いなぁ。どこもかしこも火を噴いてるんじゃ。交渉人を派遣するのは明白。うちは反乱しても益が無いし。アーサ王に助力するにしろ‥‥兵力を取り戻すしかないな」
城で凍り付けになっている騎士団達。そして契約の一族の手で伯爵家の隠し牙であるBlackRozen達はほぼ壊滅状態に追い込まれた。契約の一族はバース地方の同胞と呼ばれる貴族達の間で長年秘密にされてきた存在だ。いくら脅威とはいえ、今までの経緯全てを下手に明らかにすることは出来ない。BR達や多数の生け贄を捧げてきたという傷を持つ貴族達の生命線は一気に絶たれてしまう。民衆にも混乱を招く。
「君は、不義の噂をどう受け止めているんだ?」
マディールの言葉に「不義なんて当家も同じ。愚問だね」とウィタエンジェは笑う。
「真偽がどうあれ流出した話は今の問題じゃない。何かにつけて国を奪う者は欲深く野心家だ。例え数多の貴族が反旗を翻しても、次に誰が一番になるかで揉めるのは歴然。戦が長引けば比例して人は死に絶え、国力は弱体化する。そもそも虐殺の果てに頂点に輝いた人間を領民が慕うとは思えないね。ウチが身近で良い例じゃないかな?」
一気にまくし立てた妹にマディールは返す言葉がなかった。
妹はアーサー王の不義の真偽など、どうでも良いのだ。
彼女は可能性を持ち出した上で何が有益か弾き出しただけなのだから。
「そんな奴に荒廃した国を治める器量があると思う? ま、僕の時は破壊目的だったから話が違うけど。今は違う。僕らは内々に消さなければならない連中がいるんだ」
巨大な内乱が起きた今、更なる混乱と被害だけは絶対に回避しなければならない。
「誰でもいい、質問。契約の一族は今どこにいる?」
「バートリエの所在は不明、トランシバはほぼ城にいる模様です」
ネイが凛とした声で答えた。
「‥‥アーサー王への支援を交渉に来た者に条件付きで協力すると答えよう。良い機会だ」
「今放棄したら故郷は」
「城と兵力の奪還を交渉人に協力条件として提示するのさ。本来、即戦力でなくば邪魔なだけだろうが、バース北方の貴族は多くが同胞の支配下。巨大な内乱に契約の一族、板挟みで戸惑っているのは贄姫制度を知る連中だ。ラスカリタの決定に沿うと発言するように伝達しておこう。本来うちは協力できる状態じゃないが、後々を考えると無干渉というわけにはいかない。両方モノにしないといけない辛さだね」
話は続いた。アーサー王への助力の方を担当するのがウィタエンジェ達、同胞と契約の一族を担当するのがマレア達。ネイが関係者用に設けた席に、少数派、多数派の参謀も一日だけ同席する。過去の契約の一族を知る少数派と、現在の契約の一族と接触していたはずの多数派。ぱん、と膝を叩いたウィタエンジェは立ち上がった。
「ラスカリタ城と兵力の奪還。BlockRozen達を退けた契約の一族の実力は未知数だ。今なら各個撃破できる可能性もある。これが容易に出来なければ、――僕らに未来はない」
† † †
○『ラスカリタ伯爵城』
小高い丘の城。周囲を塀で四角く囲み、四方にゲートがある。城本体は三つの棟から成り立っている。F字型。縦の館が本館四階立て、横二本が奥から第二棟(三階立て)、手前が第三棟(二階建て)。全部屋の総数は八十を超えます。領主代理の書斎は本館四階。
特殊:秘密通路(城内・地下・地下水路)有り。敵ウィザード十名。親玉一体。
●リプレイ本文
長き時、長き闇、悲しきかな虚しきかな。巣くわれた闇は尚深く。
BRの会談。ミュエラの腹の宝石を指摘したエルザ・デュリス(ea1514)やヒックス・シアラー(ea5430)達だったが、宝石はすでに取り出され、多数派参謀アスターの手元にある。他シアン・アズベルト(ea3438)の持つルビーを含め、契約の一族の手元に渡っていないのは、ネイからポワニカに渡された物とマレアが隠し持っていた一つ、そして‥‥
「宝石の一つを、マディールおにーちゃんに捨てさせたって‥‥本当なの?」
エルシュナーヴ・メーベルナッハ(ea2638)が古代魔法語の意味を聞いた際、一つを昔放棄したと話す。万が一敵の手に宝石が揃った場合、封印は解かれるが故の処置だ。最初は賭のつもりで破壊させたらしい。そして何より、多数派は封印の方法を知っていた。
「つまり十二個で初めて完全な封印が施せるっちゅーんやな? 神殿に封印の手順が記してあって、封印を施せるのは専門的に古代魔法語を理解している人だけやと」
約束の協力条件にマレア達を危険に曝さない事を提示したBRには、もう他に『専門的』に古代魔法語を扱える者がいなかった。シーン・オーサカ(ea3777)は唸ったが、幸か不幸か、彼らの中に唯一、古代魔法語を確実に読み解き封印を施せる人物がいた。フローラ・エリクセン(ea0110)である。完全な封印を施す場合、フローラの知識が必要不可欠。
残りの宝石を預けてくれとヒックスが頼んだが、危険だと却下されて間もなく封印の話が出た為、いかに全ての宝石を取得するかが問題となった。彼らの元に十二個全て揃っていない現実。奪われた残りをそろえるのは至難の業。しかし連中は全て盤にはめているのが現状らしい。万が一、一つが破壊されている事実さえ漏れる事がなければ手段はある。
「封印石を作り出した魔法使いは大凡こう答えたそうだ。『罪なき血が流るるは哀れ。されど悲劇の元凶は汝等の祖にあり。子孫と祖は異なれど先祖が犯した咎は子孫が背負うべし。我が封印石と咎姫の身をもって封印は完成す』、‥――贄姫の真価はそこにあるんだ」
今までは贄姫だけが封印の役割を果たしていた。だが封印は両方揃って完成する。
「そこまでして封印された契約の一族はどうだったの。‥‥彼らの事を教えて」
ユラ・ティアナ(ea8769)だった。確かに同胞も、契約の一族も、双方ともに愚かな過去があった。けれど魔物化した彼らよりも質の悪い存在が状況を悪化させていると多数派の参謀は話す。封印を解放してはならない絶対的な理由もそこにあると。
「調べで、契約の一族の死から封印まで数十年の空白があった。その間に強力な悪魔の介入が記録に残っている。契約の一族と共に介入した三強が封印されている記録だが、実際封印されているのは一体だけだと最近知ったよ。バースは――悪魔達の狩り場だ」
今冒険者達の手を煩わせているトランシバとバートリエ。彼らが残りの一体を解放する話等をしていたらしい。二人は強力な悪魔に操られている可能性が強い。
「解放したが最後、希望は完全に失せてしまうわけですか。悪魔三体に無数の魔物化したエルフやハーフエルフ達と来れば、私達の手では押さえきれない、と」
シアンは頭を抱えた。短期間で何処まで強くなれるのか、そう過去に問われた所以と悲惨な現実が彼らの肩に押しかかる。失敗してはいけない。もう後がないからこそ。
「‥‥この狂った運命の歯車を打ち壊すと決めた以上、二言はありません。先ほどヒックスさんがカノ・ジヨ(ea6914)さんらを部屋から出そうとしたのをあなた方は止めましたね。受け入れると判断しますが」
彼らは頷く。片隅のカノが体を震わせた。此処に居ぬ、事情を知らぬ者達へは、マレア生存のみ隠し、情報の制限を設けない。ウィタエンジェは、もし伯爵家に傷がつかぬよう秘密裏に事が運んだ暁には、協力者全員に其れ相応の謝礼を渡す。また生存した贄姫達が英雄を見い出す場合、その者に同胞達の所有する魔法武器から一点を与えると約束した。
会談を終えた者達もまたバースへと向かう。今回の仕事はバースの命運だけではなくキャメロットの命運もかかっていたからだ。兵力を奪還しなければならない。先に向かっていたジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)や風歌星奈(ea3449)、リーベ・フェァリーレン(ea3524)やミラ・ダイモス(eb2064)もいたのだが、城への侵入は地下から行われた。地上班が敵の意識をそらしてくれるのだという。
「この前命取られそうになったのが、狙われていたからだなんて知りませんでしたよ」
道中ヒックスがぼやく。彼は約束の裏の意味を会談で知った。今は亡きBRのキュラスは仲間内で異端と呼ばれていた。理由は参謀すら詳細知らぬ頃に、いち早く状況を察していたようで、一人独断行動を重ねては純度の高い無垢な命の持ち主を探しては取引に使おうとしていたからだが。まさか良質の魂と見込まれて売られていたとは思うまい。
「さて。わるいけど私は此処で失礼。地上班と一緒にウィザードのひきつけしてくるわ」
「お気をつけて」
「そっちもね。きっと危険はそっちの方が高いから」
ミラの言葉に気楽に応えて、星奈は姿を消す。
地下から牢をぐぐりぬけて行こうとした先で、エルザ達は氷付けのレモンドを発見した。
「みんな先にいって頂戴。私はレモンドを蘇生させてから行くわ」
ボッと松明に炎を灯すエルザ。奪われた魂は彼女の手元にある。今の内に蘇生させ、情報源、一勢力としても取り戻すに必要な相手だ。皆が走り行く中でジョーイが残った。
「一人残していくわけにいかないだろ、それにこいつは友だ。絶対に生きて連れて帰る」
氷を溶かし魂を飲ませる。幸い、負傷していたレモンドは彼の回復薬で全回復するに至る。
だが氷を溶かす間に、トランシバを探していた仲間達は大変な目に遭っていた。
以前の書斎目前で、あの声に止まるよう指示されたのだ。探せど姿は何処にもない。一気に高まった緊張感。足音一つしない中、シアンの持つ宝石をちらつかせ、皆が神経を張り巡らせた。彼の周りに皆が陣を張る。ブレスセンサーにも反応がない。ルビーとプシュケの身柄を交換するよう交渉をした。拒否すれば人の手の届かない海峡深く沈める、それとも力づくで奪うのかと。本当は彼がその身を盾に敵へ攻撃を加えるはずが、計画は崩れる。
地上班の黒衣のエルフが現れたのだ。それも構造知らぬ城を単独で歩き回った果てに、第二棟の方向からミラ達の正面に現れた。声に誘われて角から様子を見たつもりが「誰もいない場所で何をしている。相手を捜せと」と、迂闊な単独行動が招いた悲劇だった。
書斎前にいた相手の両腕が裂けた。ずっぱりと紅い切り口を見せ、床に叩きつけられる。まるで霞が晴れるように虚空からミラ達の目の前に現れたハーフエルフ、トランシバ。
「全く突然でかい図体で人の前に立つとは不躾ですねぇ。見えないでしょう」
「あんた、まさか体を透明化させて? 一体何処まで人間離れすれば気が済むのよ!」
床の仲間を眺め、リーベが罵倒した。仲間の顔は蒼白へ変わり血の匂いが充満する。
「貴方が此処でしている事は命の冒涜ですっ! どんな事情があるにせよ、これは許されることではないです! もうやめてください、その人を放してくださぃい!」
カノの絶叫。トランシバは足下のエルフの首元に剣をつきつけ、では宝石と交換しましょうよ、と気楽に放す。贄姫は此処には居ないので、丁度良い代用でしょうと。このまま放置すれば彼の命は危ない。仲間を見捨てるか、宝石を守るか。決断は、‥‥人命だった。
「おのれ、人命危うくなくばアーサー王が為にこのまま叩き斬ってやりたいというのに」
受け渡しにミラを指名した。シアンから宝石を預かったミラが中央で宝石を置き、数歩下がる。其処へトランシバがジャドウを置き、宝石をもって下がった。へまを踏んだとはいえ仲間を傷つけられた事で怒りを頂点にしている者と、痛々しさに目も当てられぬ状態の者。すぐさまカノが腱の切れた腕のクローニングを行う。手荒なことは嫌いでね、私は紳士ですからと良いながら書斎へ向かって下がっていくが、フローラが何かに気づいてシーン達の袖を引いた。――刹那。
「何!?」
突如ジョーイが飛びかかった。彼の向こうにエルザとレモンドが居る。ジョーイは渾身の力でトランシバに飛びかかり、その磨き上げた身のこなしで彼が手の中で遊んでいた宝石を奪い取った。慌てて剣を一閃するが、ジョーイの足を凪ぐにとどまる。
「いまよ!」
ゴロゴロと床を転がっていくジョーイ。エルザの声に、皆が地を蹴った。エルシュナーヴが真価を発揮できないけれど、メロディーで皆の防御となるよう声をあげる。
『信に耐えざるその瞳の像、惑い狂えるその心の影
全ての虚実失われるとも、魂のみは虚ろわぬなり
魂のみにて世界を見よ、魂のみにて思いを馳せよ
そしてその手に輝りしものを、翳して敵を滅すべし!』
「例え同族でも、今回ばかりは容赦は出来ない!」
「僕も負けてられませんね。男の純情弄んだ悪魔のしっぽつかむためにも」
「JJ偉いで。あとまかせときっ、これ飲むんや」
「‥‥へへっ、片足が動かねぇ。なぁに、このくらい‥‥どうって事ねぇさ」
ユラが矢を射る。ヒックスがソニックブームを放った傍ら、シーンから回復薬を受け取ったジョーイは激痛をこらえていた。命を捨てるわけにはいかないと考えつつも、身を捨てて奪い返した勇士が其処にいた。
流れは一気に変化した。
一瞬の出来事に動揺したトランシバがヒックス達の攻撃を迎え撃つ。だが狭い空間でお得意の移動を行うにも限度があり、一人の剣を受け止める間に他の剣が襲い来る。その間を縫うようにしてユラの射撃が的確に打ち込まれていく。相手はかすり傷にとどめて攻撃から逃げるのに必死になっていた。
「みんな除けて!」
リーベとシーンが共にウォーターボムをぶちこんだ。書斎のど真ん中に叩きつけられ、魂の入った鳥籠が散乱する。追撃をかけようとしたが‥‥相手の体が膨張している?
「この――脆弱種族めが!」
書斎の机が吹っ飛んだ。現れたのは巨大な漆黒の獣である。全員が息をのむ。
「公にも近しき我が身に。‥‥美しくない! 地獄の音楽家と名高き我が身の名折れ、手加減せぬぞ脆弱種族共!」
シャドゥフィールドが放たれる。真価は発揮されないが狭い空間など覆うのは容易い。
六分間の暗黒の果てに、ジョーイとカノ、エルとユラ、エルザ達は見た。
攻撃を仕掛けた者が心臓を貫かれて虫の息に。又立ち向かった仲間が散り散りになって床に倒れている。暗黒の中で滅茶苦茶に走り回った者や、視力や聴力とともに回避に優れた者達だけが運良く無傷で廊下にいた。冷ややかに仲間を見下ろす、ハーフエルフの姿をしていたときの怪我が生々しい以外に傷がないのは、トランシバの体は‥‥
ほんの衝動的な動きだった。一矢報いるというものではない。薬で足を治したジョーイはシルバーナイフを握りしめ、背を向けている相手を狙った。それだけだ。だが。
「がああああああああああああああ!」
気が済んで人型に戻ろうとしたのか、中途半端に変身していた相手の右目を刃が凪いだ。それだけではない。すぐ真下に倒れていたリーベが「お礼がまだよ!」と至近距離からアイスブリザードを叩き込んだのだ。近くの窓へ向かって走り出す。そのまま身を投げたトランシバを追ったヒックス達が見たのは、飾り立てた駱駝に跨るバートリエだった。
トランシバとバートリエはそのまま虚空へ溶けるように消えた。
やがてウィザードの対処に回っていた星奈が現れ、彼らを回収。仲間とも合流し、傷ついた者はカノ達が回復に当たった。
城は開放された。確かに依頼は果たされた。
これを機に、バース北方領土の貴族達はアーサー王へ助力を行うことになる。