【聖杯戦争】芸術家の苦悩BR?―罪の丘―

■シリーズシナリオ


担当:やよい雛徒

対応レベル:5〜9lv

難易度:難しい

成功報酬:5 G 61 C

参加人数:14人

サポート参加人数:4人

冒険期間:07月20日〜08月01日

リプレイ公開日:2005年07月29日

●オープニング

 最後の過越の夜。種なしパンと葡萄酒が並ぶ食卓で、十二人の弟子に主は答えた。
「愛する弟子達よ我が声を聞け。この中に、私を裏切る者がいる」
 弟子達に波紋が広がる。「ラヴィ(先生)、其れは私ですか」と問う弟子達がいるなかで、イスカリオテのシモンの子ユダが金貨の小袋を握りしめた。金貨は主を売った代償であり、彼こそが裏切りのユダと呼ばれる者だからである。
 ある者はこの話に次のような奇怪な論を残している。悪魔の囁きもまた神の手の上、ユダの裏切りこそがジーザスを神の子としてあげるに至った。裏切りなくばジーザスは神の子にはならず、其れが故、裏切りのユダこそ真の使徒である、と。
             ――――とあるカルト教団の研究をまとめた学者の話より。

 そのころ、ジーザスを裏切ったユダは、ジーザスに有罪判決が下ったのを知って後悔し、銀貨三十枚を祭司長たちや長老達に返そうとして「私は罪のない人を売り渡し、罪を犯しました」と言った。
 しかし彼らは「我々の知ったことではない。お前の問題だ」と言った。そこでユダは銀貨を神殿に投げ込んで立ち去り、首を吊って死んだ。祭司長達は銀貨を拾い上げて「これは血の代金だから、神殿の収入にするわけにはいかない」と言い、相談のうえ、その金で「陶器職人の畑」を買い、外国人の墓地にすることにした。
             ――――『マタイによる福音』第二十七章3節〜7節より抜粋。

   † † †

「回収に失敗した? 莫迦じゃないの?」
「別に、機会はいくらでもありますよ。贄姫に傾倒しているようですから単純に進むかと思いましたが、残念。キャメロットの方も騒がしくなってきましたし、我々には好都合。プシュケの容態はいかがです?」
「平気よ。ところで地下神殿の正道は潰さなくて良いのかしら?」


 キャメロットでは不穏な空気が漂っていた。
 ゴルロイスの出現により、ペンドラゴンの不義が世間の知るところとなったのだ。そこへ現れた有力諸侯のロット・オークニーが多くの貴族へ揺さぶりをかけている。忠誠心揺れる貴族達と円卓の騎士。今まさにキャメロットは戦場へ変わろうとしていた。
「キャメロットに先日、バース地方のラスカリタ伯爵がいると聞いて交渉に向かった者がいたんだが、一つ条件を出されてな。その条件を解決して欲しいんだ」
 伯爵はいつの間にか長女のウィタエンジェが継いでいた。
 条件というのは、何者かに城と送り込んだ使者や騎士団を捕らえられた為、彼らを解放し、城を取り戻すことが出来れば見返りに十分な準備と兵力を持ってアーサー王への助力を行う。勿論、渋っている知り合い貴族達への口添え、参戦要請も行うという。なんとバース地方の貴族達の多くが奇妙な物言いで協力を渋っているのだそうだ。
「何故かは知らないんだが、向こうの人間は妙に結束が強い。中核にいるのがラスカリタ伯で、バース周辺の他子爵、男爵もラスカリタ伯が動かぬのなら自分達も動かないと頑として譲らない。ラスカリタ伯はバース地方4分の1の実権を握っている。参戦させるには条件をのむ他無いんだ。敵陣に取り込まれるのは避けなけりゃいけねぇ。緊急を要するぞ」
 試されているのかは知らないが‥‥とギルドのおっさんは話す。
 尚、伯爵城奪還にはもう一チームあるという。彼らとともに城と兵を奪還協力を行うのが望ましく、ラスカリタ伯を含むバース地方の貴族への参戦を促すよう働く事が使命となった。


「知らぬはずだ!」
 バースの教会では、神父が叫んでいた。彼にはメイガースという闇商人が薄気味悪く笑っていた理由を知っている。教会の秘密を知る者は、教会を守り続ける歴代の神父達だけ。聖職者として、多くの民を導く者として。完全に閉ざさねばならぬ理由があった。
「悲劇を繰り返させるものか。何故あんな一介の‥‥まて、キャヴァディッシュ伯爵は」
 かの伯爵の家は、数十年も前に贄姫の資格を失った家。贄姫を捧げた最後、養子を迎えて血筋は絶えた。しかし同胞であることに代わりはない。神父は怖い顔で壁画を見上げた。

 アリアドネは現れた参謀とともに川辺の道を歩いていた。
「彼はもう帰ってこないよ。七日経っても帰らなければ諦めてくれ、向かう前に言っていた」
 静かな声だった。傍らの少女を見下ろす男。
「接触した時に、彼らが鍵を欲しがったその時に、狙いを察するべきだったも知れない。代償を差し出せば静まると、過去を参考に甘い考えをしたのが悪かったんだ。‥‥気づいた時はもう手遅れ。私は古い仲間も失った」
 契約の一族の背後の存在は、我々BRでは手に負えない。死なない内に、本当の意味での封印が解けてしまう前に、内乱が始まる前に遠い場所へ逃れるといいと話した。
 彼は今、組織の者の所へ赴き、任を解いているのだという。掟に縛られる事なく思うようにすれば良いと。ムーンやセレスク、名を与えられなかった者も皆姿を消した。
「私は今アリエストとルィの娘の面倒を見ている。石をもってキャメロットへ向かうが」
「‥‥参謀、主は決めました。ですから彼の為に命を使います」
 自分を監視者として見なかった少年の為に、自分の力を使うのだと話した。

   † † †

○『ラスカリタ伯爵城』
 小高い丘の城。周囲を塀で四角く囲み、四方にゲートがある。城本体は三つの棟から成り立っている。F字型。縦の館が本館四階立て、横二本が奥から第二棟(三階立て)、手前が第三棟(二階建て)。全部屋の総数は八十を超えます。領主代理の書斎は本館四階。
特殊:秘密通路(城内・地下・地下水路)有り。敵ウィザード十名。親玉一体。

●今回の参加者

 ea0254 九門 冬華(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0321 天城 月夜(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0383 プリムローズ・ダーエ(20歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea0836 キラ・ヴァルキュリア(23歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea0850 双海 涼(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1519 キリク・アキリ(24歳・♂・神聖騎士・パラ・ロシア王国)
 ea2030 ジャドウ・ロスト(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea3109 希龍 出雲(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea4844 ジーン・グレイ(57歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea5352 デュノン・ヴォルフガリオ(28歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5410 橘 蛍(27歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6109 ティファル・ゲフェーリッヒ(30歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea6426 黒畑 緑朗(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1421 リアナ・レジーネス(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

灰原 鬼流(ea6945)/ シェリル・シンクレア(ea7263)/ 黒畑 五郎(eb0937)/ 邪璃 理璃栖(eb3104

●リプレイ本文

「古代魔法語、解読と一緒に訓練だったんだね。とはいえ、アリアドネも基礎的な事しかできないとなると僕たちの他に使えた人は‥‥やめよう、後で天城月夜(ea0321)さん達にも報せなきゃ。あ、ジーン・グレイ(ea4844)さーん」
 一人会談へ赴いたキリク・アキリ(ea1519)が、ジーンとキラ・ヴァルキュリア(ea0836)達を発見した。どうやら前回城へ赴いていた別グループと敵の情報を交換したところ、宜しくない事ばかり発覚していた。剣捌きを追うのも難しいハーフエルフと、悪魔の影。
「前から厄介事は当たり前だったけれど、悲惨ね。ともかく、私はこれから移動するわ」
「私はこれからディルス卿の所へ行ってから向かう。バースで会おう」
 話していると他の者達はもうすでに出たという。出る前、マレア達へ声をかけていた月夜も会談には出席せず、すでに城の方へ向かったという話だ。彼らは再び散った。

 教会は改装だった時の光景を変えているわけでもなく、静かに佇んでいた。内装と外観が異なる教会の調査に赴いた双海涼(ea0850)とプリムローズ・ダーエ(ea0383)、ジーン、ティファル・ゲフェーリッヒ(ea6109)、そして黒畑緑朗(ea6426)とキリクの六名は、教会の神父の所へ向かい、調査をさせてくれと説得へ出たが、やはり突然の話に渋面。
 そこで緑朗が「立ち話もなんでござる。是非とも」と押せ押せ話術で神父を小部屋に引っ張り込んだ。常に強気な緑朗であるが、今回ばかりは良い機会だった。緑朗が神父を説得せんとばかりに独占している間、プリムローズが不信顔の信者の対応にでた。
「申し訳ありません。私達はギルドの者です。神父様と大切なご相談がございますので、本日はお引き取り下さいませ。明日には神父様もおいでになられますから」
 天使のスマイルで信者を閉め出す。もうして大捜索は始まった。何故この教会は外観と内部構造が異なっているのか。嫌な胸騒ぎに揺り動かされるが如く。
「嫌な予感がするんです。‥‥ワケアリの土地のワケアリの教会。予感だけで終わらせたい物ですが。どうしてこんなに血なまぐさい気がするんでしょうか」
 ふっと無表情な涼の顔に物悲しさが漂う。バースの内乱と言い、オクスフォード候の反乱といい、モンスターなどは仕方ないにせよ、平穏な国は何処にもないのか。
「涼さん、大丈夫ですか?」
 プリムローズが思案顔の涼を気遣った。なんでもありません、と普段の顔に戻り調査を再開する。ふとプリムローズが覆い隠されている壁画のある場所を眺めた。
「あの‥‥ならず者の言葉は考えさせる響きがありました。教会は果たして清らかさだけであるか、と言う事に対しても、もしかすると違うのかもしれません‥‥」
 宗教は万民の心の拠り所となる事もあれば、良い側面ばかりだけとは限らない。プリムローズはティファルを呼んだ。彼女のクレバスセンサーなら分かる事もあるかもしれない。
「まーかせとき。大変やけど、精一杯やるわ。教会の秘密暴いてみせたる!」
 意気込みとともにティファルがプリムローズが気にしていた壁を調べた。すると。
「なんや、この壁の向こうに部屋があるで。正方形の空間や。誰かの部屋とちがうん?」
 そんなはずはなかった。慌てて涼とキリクが走る。じっくり注意して見て回っても、ティファルが言う空間への入り口は何処にもない。さらに調べるが、完全な密閉空間だった。
「お姉さまの絵は、折角守ったんです。それを壊すなんて」
「せやけど、魔法で入り口がないゆーことは『閉ざされた部屋』っちゅーことやろ。何処か壊さないとはいれへん。奇妙な部屋があったちゅー事をギルドに報告してみるか」
 と話が上がるが、一部は特に諦める気配はなかったし、プリムローズも以前の話が気になってか、そのまま立ち去るつもりはないらしかった。と、そこへ緑朗と神父が現れた。
「神父殿。この壁の向こう、一体何を隠しておられる。先日涼殿をはじめ、怪盗役をした者達が教会の外観と内部構造が違うことに気づきましてな。事と次第によっては」
 ジーンの事務的な話が続く。いざとなれば怪しい教会として壁を破壊して調査するという話を持ち出すと、やめてくれ、と悲痛な叫び声が響いた。その向こうは墓場に繋がる道だ、立ち入ってはいけないのだと青い顔で話すが、先日会談に参加していたキリクには神父の言葉は理解するに至るとともに届かなかった。もう平穏を保つ段階は過ぎていた。
「遅いんだ神父様。このままじゃ救えない。‥‥みんなに、聞いて欲しい事があるんだ」

 教会調査に赴いた者達が城へ辿り着くのは、城での大騒ぎの末になることになるのだが、城の方へ向かった者達はと言えば、時間がこくこくと迫っていた為に突入を決めた。バースの問題だけならばまだ待てる。しかしこの仕事は、キャメロットの命運もかかっていた。
「これ以上は待てません。一刻も早く城の開放を行わないと、アーサー王率いる国王群への参入が難しくなる。別チームとの打ち合わせ通り、日が高いうちに突入します。さて、命がけの仕事ってね」
 橘蛍(ea5410)の声から敬語が消えた。覚悟とともに余裕が失せたのだ。今この場にいる者達は蛍とともに地上から知らされたウィザード達を引きつけ、確実に別のチームが親玉を叩けるようにするらしい。一見ただの陽動班であるが、彼らの判断は的確だった。束となって戦うよりも利口な方法だ。蛍に加え、九門冬華(ea0254)と月夜、キラ、ジャドウ・ロスト(ea2030)、希龍出雲(ea3109)とデュノン・ヴォルフガリオ(ea5352)、そしてリアナ・レジーネス(eb1421)。
「おーっとそうそう、向こうの連中の中でさっき俺と一緒にいた奴が城の中で俺達の方に合流してくれるらしい。どういうつもりか知らねえがな」
 出雲と知り合いの女性が一人、彼らの所へ合流するらしい。其れを聞いたジャドウの目が一瞬反応したが、気づいた者がいたのかさて。デュノンも城を眺めて決意を新たに。
「城かぁ‥‥久しく見てなかったなぁ。いいや、俺は先日の遅れを取り戻す! そして団長に認めてもらえる強い男になるんだ!」
 団長=ジーンの事であるらしい。尊敬してらしいのだが、まぁ熱意は良いことだ。
「微力ながら私も力を尽くします。反乱に備えるためにも兵力を取り戻しましょう。えぇっとまずは月夜さんが入られるのでしたでしょうか」
「そうですね。月夜さん開門宜しくお願いします。相手が現れたら」
「死なない程度に排除、でござったか。力加減できると良いが、いってくるでござるよ」
「ちょっと月夜! 冬華と長々話してないでいくわよ!」
 キラがフライングブルームに乗り、月夜が後ろにしがみつく。空を飛び門を超え、間近に迫った見慣れた城。眼下の氷付けの傍には今まさにアイスコフィンの作業を施しているウィザードがいた。キラの呼びかけに月夜が降り立つ。氷の上を滑り降りるように短刀月露をかまえ、一瞬のうちに懐へと滑り込む。鈍い音がして、短剣の柄で鳩尾に一撃を食らったウィザードにスタンアタックで打ち込むと気絶した。戦い慣れした手際の良さだ。
「月夜! 本館の四階にバートリエと似た格好の奴がいたわ! こっちに気づいた!」
 そのようでござるな、と城を睨みつけながら月夜は門を開放する。蛍達がなだれ込んできた。派手に暴れて敵体を引きつけ、うまく事を運ばねばならない。城にいるトランシバという男、悪魔の影、ウィザードは残り九体!
「絶対、助けますから!」
 駆け抜けざまにリアナが凍りついた騎士達を見て叫んだ。彼らを解放すること。それが最重要任務である。傷は後で回復すればいい。冬華がロープ代わりに気絶させたウィザードの腱を斬っておく。操られているにしろ、元凶を倒すまでに復活されてはたまらない。
「どこみてんだ、こっちだぜ! おぃデュノン!」
 ウィザードを見つけた出雲が吠えた。ソニックブームを放つと、其れを囮に傍らにいたデュノンが地を走る。大鎌でばっさりいくのは避けたいと、衝撃波をうち破ろうと身を避けた敵へ接近したデュノンは月夜と同じ手段を用いて沈黙させた。
「パン屋さんには勝てなかったな、魔法使いども」
 こうして彼らは下階から着実に上へと向かう。大声を上げて確認し会う蛍達。
「僕が一人、デュノンさんと出雲さんが二人、リアナさんが今一人ライトニングサンダーボルトで弱らせた相手を月夜さんが沈黙させました。残りは多分五人‥‥姉さん後ろ!」
 冬華の真後ろから放たれたウォーターボムが廊下の壁にぶち当たる。蛍と冬華が現れたウィザードの無力化に向かう。みるからに、ウィザード達は己の意志と裏腹に魔法を発動させていた。二人がウィザードを確実に気絶させる。ふと蛍が何かに気づいた。
「‥‥七人? ちょっと待って下さい、ジャドウさんは何処に!?」
 やられたかと焦ったところ、一人戦闘不能のウィザードをつれたキラが呆れた声で。
「雑魚は任せた、とか言って勝手に行っちゃったわよ。どうするの、私達も行く?」
 彼は一人城の中を走り出したという。他チームの娘から情報交換を行ったジーンからキラへ、キラから皆へ伝えられた怪しいハーフエルフと悪魔の影を腕試しに適した敵とでも見いだしたのか、捜索の為ムーンアローで「トランシバの上着」を指定するも何故か何度やっても光の矢は彼の身に跳ね返り、舌打ち一つして個人で捜索に走り出したらしい。ついでに直接対決している者達を力量測定に観察してから敵に攻撃をと、そもそも対悪魔知識も未熟な彼の個人行動の為に、大惨事が発生していたのだが、彼らが知る由もない。
「いえ、まだ七人。まだ三人居るはず。僕らが行くのはそれからです!」
 此処はまだ二階。蛍達は再び誘き寄せる作戦へと戻った。
 
 とその頃教会では、苦労の末、閉鎖された空間に穴が開けられた。中には白い壁が広がり床に地下室に続くような蓋があった。涼が蓋を開けてみると、驚いたことに地下ではなく床下に一本の道が通っていた。果てしなく続く、一本道。残った神父曰く、この道はバースの町の外、北方領土の方向へ繋がっているという。当初すぐに撤退するはずだったが、緑朗の持ち前の好奇心の強さ故に、強制的に道を歩くことになってしまった。
 濁った空気に呼吸が苦しくなる一同。一時間ほど歩いたところで、扉があった。その扉は町の境界、扉の真上が町と外の境目らしい。涼が扉を開けた。そろそろ地上に戻らないと皆が倒れてしまう。そう思った矢先に扉を開けた瞬間突風が吹いてきた。先はまだ見えない。幅五メートルほどしかない道を進む一同。
「なぁ、あれ、なんやろ。明るくないやろか」
 何時間歩いたのか分からない。所々、道は天井が破壊され道をふさがれていたが、地上に出てみれば所々点在する森の下に道があると思われた。何せ根が凄い。空は茜から鈍色へ変わりつつある。
 もう少し地下道を進むと大きな扉があった。装飾的な扉を開けようとして、全員が嫌な気配を感じた。皆、声も出さない。鍵穴から向こうを覗いた者は息をのんだ。祭壇がある、女がいる。地面に旧時代の骸骨らしきものが散乱している。鍵穴を覗いた者が首を振った。危険だ、帰ろうと。ただならぬ気配を感じ取り、彼らは扉の向こうの者に気づかれぬように気を配り、彼らは来た道を戻っていった。
 隠された呪われた神殿を、彼らは見つけた。

 神殿が発見された頃、城は開放されていた。
 何度か騒ぎがあったようだが、急いで囚われていた人々の氷が溶かされ、騎士団達には命が戻った。彼らは元に戻って薬や魔法で傷を癒すと、すぐさま教えられた現在の情勢を察知し、勇敢にも反乱鎮圧に加勢すべく向かっていったそうである。