葬送の蒼―美しき水深の都よ2―
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■シリーズシナリオ
担当:やよい雛徒
対応レベル:5〜9lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 40 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:10月13日〜10月28日
リプレイ公開日:2005年10月19日
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●オープニング
昔話をしましょう、おばぁちゃんは言いました。
むかしむかし『坂の街』にはヒトの姿をしたヒトでないヒトタチが棲んでいたのだそうです。
腰から上は、とても美しい姿をしていて、下は大きな魚のよう。『坂の街』で初めてヒトの姿をしたヒトでないヒトタチを見つけたのは、海に出ていた貧しいおじさんでした。
おじさんと同じ言葉を話す、ヒトの姿をしたヒトでないヒトタチはすぐに『坂の街』のヒトと仲良くなりました。仲良くなった人の所へ、沢山の海の恵みをわけてくれました。そのお礼にと『坂の街』のヒトタチは綺麗な石や髪飾りをあげました。
けれどある日、遠くからやってきた偉い先生が『坂の街』のヒトタチにこう教えたのだそうです。
『その者達はヒトではない。人魚と呼ばれ、肉を食べれば老いる事もなく死ぬ事もない』
偉い先生の話を聞いた『坂の街』ヒトタチは、手や顔がしわくちゃになるのがイヤでした。そして家族がいつか覚めない眠りにつくことを知っていました。『坂の街』のヒトタチは人魚と呼ばれたヒトタチを次々捕まえて食べてしまいました。
『やめてください。宝物が欲しいなら全部かえすから』
沢山の泣き声がしました。けれど捕まえる人には聞こえません。
偉い先生がヒトではなく魚なのだと教えたからです。
ただ一人、最初に見つけたおじさんは一人で食べ残しの骨を眺めて泣いていました。
やがて海から毎日見えていたヒトの姿をしたヒトでないヒトタチはついにいなくなってしまいました。何故か泣いていたおじさんは泣くのをやめて仕事をするようになりました。
何年も経って人魚を食べた人たちは、普通の人と同じようにしわくちゃの顔と手になって、普通の人と同じように永い眠りにつきました。偉い先生の話は間違いだったと知った『坂の街』のヒトタチは残念がりましたが、いつしか忘れてしまったそうです。
「その人魚さんはみんな食べられちゃったの? おじさんはどうしたの?」
おばあちゃんは『みんな食べちゃったのよ』と笑っていました。
それから数年後、おばあちゃんは覚めない眠りにつきました。
私の前からいなくなったおばあちゃんは、おじさんの事を最後まで答えてくれませんでした。
――――。
西の港湾都市ブリストルは、約一月にも及ぶ芸術祭も絶頂を過ぎて終わりの兆しを見せ始めていた。
何百という人々で賑わう西の大都市に芸術祭の見せ物にと取り寄せられた物珍しい物や真新しい物が道行く人の目を楽しませてくれていたが、その片隅では黒い影が現れては消えていた。少し前に円卓の騎士ディナダン・ノワールが冒険者達に命じて調べさせていた船の沈没騒動である。
船の沈没は、一見静まったかに見えた。しかし調査の者達が消えるやいなや、やはり不自然とも言える状態での沈没が起こり始めたのだ。芸術祭の時期と言うこともあり、沈んでいる船の荷物は芸術品が多い。が、芸術品の一部は回収しきれず海底の底に沈んだのではないかと金目の物に目をぎらつかせた下町のハイエナたちは話し合う。
調査の中は七隻だった船は、今や十隻になっていた。だが引き上げた船の一隻から奇妙な遺体が引き揚げられている。頭髪も手の皮もふやけて脱落し、苔が生え、生前の顔すら分からない。だが目を見張るべきは、その下半身だ。どうみても人の足には見えなかった。
世に言う『人魚』に類する遺体に、わっと港から話は広がった。噂を知らぬ者はいないのではないかと言うほどに。やがて古びた家に孫娘らしき女性と暮らしていた老人が発したのは「まさかと思うが船の沈没は人魚の仕業では」などと言い出した。
これが着火に繋がった。
人魚達の肉を食うと不老不死になれる伝説がある。人というものは心の何処かで不可能を望みたがる節がある。沈没船を無くすため、そして人魚の肉を手に入れるために人魚狩りに乗り出した者達が、ひとりふたりと増えていった。
「おい! 聞いたか? 裏通りの家の息子が海で人魚の影をみかけたんだとさ!」
「きいたよぉ、絶対捕まえてやるって意気込んでたねぇ。最近話を聞きに来る冒険者なんかもふえたしさぁ。嘘にしろ、港は度の連中が集まってきて宿屋も満杯! 商売繁盛ったぁいい事だよ。人魚サマサマだね」
「あの、それほんとですか?」
宿屋の女将の話に割り込む影がある。人魚ではないかと港に零した老人と二人きりで暮らす娘だった。名前はアルディエナ。気だて良し、頭も良し、面倒な仕事を頼んでも断らないので地元では「あの偏屈爺にゃもったいない」という話も度々起こる。
「あぁ本当だよ。それにアルディは知らないかも知れないけど、あんたの爺さん、偏屈だけどむっかしは凄腕の漁師だったんだよ。若い頃は人魚とっつかまえたって言われてるし、最近ボケてるけど、この辺の海の事は知らない事はないって言われてるぐらいだから、爺が言うならーって若い衆も本気になっちゃってさぁ、‥‥ちょっとアルディ!?」
アルディエナはお夕飯の途中なので帰ります、と家に戻った。だが彼女は家に帰るやいなや、家の事を隣の家のおばさんに任せて王都へ向かった。
見知らぬ少女を連れて。
「ごきげんよう。王都キャメロットのギルドは、公平に物事を判断し、依頼を請け負うと伺って参りました。アルディエナ・ロンサードと申します。ブリストルの交易船連続沈没事件に関して調査をした方々がいると噂に聞いております。呼んでいただけませんか」
「失礼ですが」
「私達は力になりたい‥‥一刻も早く事件を再調査していただきたいのです。依頼料は少なからず用意しました。私の隣にいるのが妹のアマレットです。船の沈没時、何者かが沈没している船から財宝や骨董、重要な芸術品の数々を盗み出している場面に姉と遭遇していたと話しまして‥‥姉がその者達に攫われたと」
「誘拐事件ですか。わかりました。しばしお待ち下さい。担当できる者を集めます」
●リプレイ本文
時に私は憎むのです。人が老いると言うことを。
「私達が到着するまでに更に1週間、まだ生きてたら奇跡だねぇ〜」
依頼だから探してはみるが生きたままの保証は出来ない。そう辛辣な言葉を依頼人にかけたのはチャイ・エンマ・ヤンギ(ea9952)だった。アルディエナは気を落とし、アマレットは姉の所で大泣きしている。事実は事実、態度等はチャイの性質でもあるだろうが、依頼人に対して言葉は選ぶべきだろう。「探す前に依頼人絶望させてどーすんだよ」とフィラ・ボロゴース(ea9535)がやれやれと首を掻きながら、何事か思いついたように荷物からジャパンの髪留めである簪を取り出した。色鮮やかな簪をアマレットの視界にかざす。
「ちょっと詳しく教えて欲しいんだけど、いっかな? これプレゼントするからさ」
物でつるのはありきたりではあるが、幼い少女に効果は抜群。二言三言言葉を交わし、フィラはアマレットに簪を贈った。情報も引き出してご機嫌とりもできるとなれば安い物。
「絶対にお姉ちゃんを助けるから‥‥信じて待っててくれ、な?」
「フィラ君もなかなか小さなレディへの接し方が上手いね」
傍らにいたヒースクリフ・ムーア(ea0286)が微笑ましい光景に呟くと「うっさいな」とフィラの頬が薄紅に染まった。からかいがいがあるなぁ、とばかりにヒースクリフとフィラの口論が続く。チャイが「どうせ私は扱いが下手よ」とふん、とそっぽを向いた。
「チャイさんまで機嫌損ねないでください。話はこれくらいにしましょう。急ぐべきです」
仲裁したシアン・アズベルト(ea3438)の言葉に、ゼファー・ハノーヴァー(ea0664)達も頷いた。前回の調査の欠点は、大っぴらに動きすぎたことだと皆自覚していた。彼らの調査とともに沈没が沈静化しても、去ったと同時に多発したのでは鼬ごっこだ。
叶朔夜(ea6769)の様に箒に乗る者、ルーシェ・アトレリア(ea0749)の様にセブンリーグブーツ等の速い速度で走れる道具、ユラ・ティアナ(ea8769)のように軍馬に跨る者と様々だが、姉妹は歩いてブリストルへゆくという。依頼人の顔を眺めてチャイが唸った。
「私は馬車で行こうかしら。なんなら依頼人同乗したら? 聞きたいこともあるし」
「其れはかなり難しいと思うわ」
何故? と鸚鵡返しに問い返すと、エルザ・デュリス(ea1514)が「経験よ」と短く答えた。ブリストルは港湾都市といえど王都に比べれば田舎町。芸術祭も終わりの兆しを見せ、西の方へ向かう馬車は少なく、王都行きの方が多い。さらに一人ならともかく複数となると通りがかりの馬車に乗せてもらえるはずもないと。「なるほどねぇ」と声を返す。
「さて、また目を回さないでね。あ、カノちゃん?」
「あのぅ‥‥依頼人さん達だけで‥‥ブリストルの方へ?」
ユラとともに行動するカノ・ジヨ(ea6914)が、心配そうな顔をしていたが「大丈夫よ」とエルザがカノに向かって微笑んだ。
「心配しないで。可愛い依頼人の事は私が受け持つわ、セブンリーグブーツも持ってはいるけれど心配だし。追って連絡を入れるから、お先にお願いするわ」
「エルザさん、頼もしいです〜‥よろしくお願いしまぁす‥‥向こうであいましょうねぇ」
こうして行動は別になった。依頼人のアルディエナとアマレットの護衛を、チャイとエルザが受け持った。誘拐犯を突きとめ事件に光をてらす為にも、彼らは急いで地を蹴った。
フィラが聞き出した姉の事。身長160cmほどの小柄で細身、銀髪碧眼。手首に紫のリボンを巻いていて、最後に見たのは港の‥‥
「おぉい、なんなんだこれ。どこなんだよぉ〜」
「唸るな。それだけ多くの人間が当日港に出入りしていたという証拠だろう。先ほどディナダン殿から返答の手紙が届いた。遺体は骨格からしてほぼ人魚と断定。私は心得がないので難しいが、念のため後々エルザ殿に調べて貰った方がいいかもしれんな」
密かにブリストル到着後、宿屋で収集した情報に踊らされるフィラ達。ゼファーは坦々と言葉を綴った。ゼファーの頭の中では資料を纏めてたえず予想が駆け抜けてゆく。何度も潜って調べた。消えた積み荷。何かしら価値のある品を手に入れている一段であるなら、手に入れた以上、裏の販売ルート等で売り捌くのが妥当。ふとルーシェが首を傾げた。
「今きいておけばよかったなぁと思ったんですが、沈没している船から盗み出してって完全に沈んだ船からなんでしょうか、沈みかけた船からなんでしょうか? 大変じゃないかと思って。フィラさん、倉庫調べてましたよね。空の倉庫が二つあった以外は‥‥」
「ああ、変なことは無かったぜ? 空のは一宗教団体のもちもんらしいけど」
港は現在、ユラと昨夜、シアンの三人が監視をしていた。ヒースクリフは先ほどから姿が見えない。カノは現在アルディエナと暮らすロンサード老から地方の昔話や人魚関連について洗いざらい話して貰おうと忙しく走り回っている頃だろう。昨日の話を思い出す。
『人魚か、肉を喰らえば不老不死の響きに惹き付けられる者は多いと言う事か?』
『そうなんだろうねぇ。朔夜君の言うような人間で港は溢れているようだし、私も一つ演じてみようかな。道化を、ね。明日はシアン君とユラ君も港だし、はずしていいかな』
『分かりました。人魚狩りに混ざって賊のいる可能性も高いですし、お願いします。お姉さんの安全のためにも一刻も早く救出する必要があります』
『誘拐事件に関してはあまりに情報が少ないから今回はどうこう言えないかもしれないけど、アジトが分かるようならさっさと行ってしまったほうがいいかもしれないわね』
調べても調べても出てくるのは人魚の話ばかり。その日の事、変化は訪れた。下町のハイエナに混ざって「実は母が病気でね‥‥噂に聞く人魚の肉ならば、と思って」苦笑混じりに人魚狩りに混ぜてくれと話したら、「にいちゃん、大変だなぁ」と絶対捕まえようぜと人魚狩りに同行することになったのである。海域を監視するシアンや朔夜、ユラ達の監視のなかで、ヒースクリフは海へと繰り出すことになった。
「それじゃあ〜‥、この都市には本当に人魚が存在したんでしょうかぁ‥‥」
「さよう。おちびちゃんはカノと言ったかの。これは本当じゃ。そして今も人魚は絶対いる。みんな食べた、絶滅したと思った。その中で、海にいた人魚達に人目を欺き川へ棲めと言ったのも儂なのだからな。昔、あの人魚達は密かに儂の漁も手伝ってくれたしのぅ」
まさか船を襲うようになるとは微塵もおもわんかったがな、と深い溜息を吐いた。こうなってはただの害獣でしかない。はやいこと駆逐されるのを待つばかりじゃと老人は言う。
話が終えた後、戸口にエルザとチャイと依頼人がいた。アマレットはいなかった。
老人とアルディエナ、いないはずの妹の事も含めて複雑な家庭事情がチャイとエルザ、カノの手で浮き彫りになっていた頃。港では大きな騒ぎが起こっていた。「大変だ」と人魚探しをしていたヒースクリフが朔夜達の所へ戻ってきていた。沖近くにある明日出向予定の船が、急に傾き始めた。ヒースクリフによれば不振な動きをする者達がいたという。数名が地下の水脈へ潜り、何人かが船の周辺で妙な動きをしていたという。
「動き出したな。逃げてる人間も多いみたいだが、巻き込まれる奴も多い。救援に向かう」
「また厄介ごとになりそうね、もう充分面倒かも知れないけど。私も乗せて頂戴」
ユラは朔夜の背に飛び乗った。あたいも行くぜ、とフィラがシアンを連れてフライングブルームへ跨って飛ぶ。ヒースクリフは水路の方を見て来るという。ゼファーが水の中へ飛び込んだ。二人の方が何かと安全ではある。ルーシェが地上から混乱を誘導するという。
「それじゃ、私はヒースクリフ殿といってくる。むこうを頼むよ」
「はい、気をつけて!」
船は混沌としていた。逃げまどう人々の並に逆らって朔夜達は船内へと乗り込む。明らかに何度も連続して続く破壊音。船底に近づくに連れて、人の遺体が、ひとり、ふたり。そして圧倒的に多いのが、水が押し寄せる船内に縛り付けられた船員達だった。
「なんて事を、溺死が狙いか。水遁の術が丁度良いな、フィ‥」
「わーってるよ。あたいとあんたしか無理だからな。悪い、後宜しく!」
フィラと朔夜はすぐさま溺死寸前の乗組員達を助けるために激流へ飛び込んでゆく。
「やっばい、私達も溺れるわ。シアン君もはやく」
「まったく許せませんね。いったい彼らをああした奴らは‥‥ユラさん、早く船から下りて! 今、人影が水路に!」
ゼファー達が見たのは、人影が水路を通って海へと向かってくる存在を網に絡めていた所だった。紛れもない人魚が一人。待ちかまえていたとばかりに、網に絡まる。その顔は見覚えがあった。アルディエナの妹アマレットである。しかし驚いている暇はない。
彼らはすぐさま網を持つ人間達に襲いかかった。水中での行動は体力を奪い、息も苦しい。もみ合った末に解放されたアマレットはゼファーとヒースクリフを物言いたげに一瞥したが、そのまま一目散で船に向かっていく。後を追おうとしたが網を持っていた人影が逃走したので、そちらを追いかけた。
フィラ達が自分達も溺れそうな水の流れの中で着実に作業をしていると、ヒースクリフ達に解放されたアマレットが二人を手伝いに来た。下半身は魚である。驚きあれどのんびり見ている暇はない。急いで溺死寸前の船乗りを助けようとする、だが長くは続かなかった。船底の壊れた部分から複数の人影が現れてアマレットを捕獲しようとしはじめたからだ。抵抗をするが数が数だ。朔夜達とアマレットの距離が離れる。攫われる。
『こいつら』
水の中でさえなければ、叩きつぶせるはずの相手だった。
水路は長く続いていた。
シアンとユラと、地上にいたルーシェの三人が水路に入ったという人影を追っていた。しめった水路は迷路のように連なっている。川のように流れる塩水のわきに足場があった。追いかけていると途中でゼファー達と合流した。不審者を取り押さえようとしたシアン達だったが、電撃が不審者を黒こげにした。赤毛の男が離れた場所にたっていた。
「だめだなぁちゃんと殺してもらわなけりゃ。そいつらは強盗に人攫いですぜ」
「こいつらの仲間ですか?」
「いやいや。ここらを取り締まって商ってるんでさぁ、ヨロシクだ・ん・な。丁度掟破りを始末しまわってるところでねぇ。手間が省けましたよ。ところでー‥」
ざばーっと、水の中から現れたのはフィラだった。朔夜はカノ達の所へ向かったらしい。
「大変だぞ、アマレットが人魚だった、変な連中に攫われた。どこいったかわかんねぇ」
「人魚探しっすか? んじゃ取り引きしませんか。今回の事は闇市でも赤恥でね、見逃してくれませんかね。で、今後俺達の商売を邪魔しない、ブリストルの闇市をギルドの代表として容認する、って誓約書に書いてくれれば人魚狩りの支援者と現在の人魚所有者をお教えしますよ、別にギルドに相談する必要はありません、欲しいのは皆さんのサイン」
本来はこんな莫迦な事は本来はしないと言う。今回は下っ端の独断で、沈没騒動は手当たり次第芸術品を強奪する事と、沈没する船に引き寄せられる生き残りの人魚達を捕獲して売るものらしい。
‥‥たかが紙切れ、されど紙切れ。
闇商人はゼファー達がギルドでかなりの貢献をあげている事を知っていた。中にバース地方の貴族と信頼関係を結んでいる者の事も。署名さえすれば姉妹の居場所は早くに特定できる、誓約書に署名をした事も誓って口外しない。信用が全てを左右する闇取引。ただし火の粉が降りかかろうものならば、署名の事実を公開し報復に出るというギブアンドテイク。
闇取引の事実が公になれば、ギルドからの除名は想像に容易い。
「話を大きくすると大事なんです。なにせ闇市は大金渦巻く金持ちの世界。ある程度想像つくでしょう? 俺だってお得意様を売るんだ、悪い話じゃねぇでしょう。俺は口利きも出来るんで、次の返事まで姉妹の命は保証しときますよ」
冗談なのか本気なのか。ただ蛇のように笑った。魔法でそのまま壁の中へと消えてゆく。穏便に済ませたいなら、自分と身内の将来とメンツか、目の前で攫われたアルディエナの姉妹達の命か。
好きな方を選べばいいと。