【魔法使いの一族】怒りの風、呪われし風
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■シリーズシナリオ
担当:夢村円
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:05月22日〜06月01日
リプレイ公開日:2005年05月30日
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●オープニング
見えるような気がする。
闇が自分に向けて、手を差し伸べるのを。
聞こえるような気がする。
闇の囁きが。
『どうした‥‥。怖気づいたのか?』
「俺は、最高の魔法使いになる。俺を追い出した連中を見返して、あの家を取り戻す為に。その為にはどんなことでもすると決めたんだ」
『その意気だ。私の願いを聞き届けたなら、お前を優れた魔法使いにしてやろう‥‥』
「本当だな?」
『ああ、だから早く封印を解くのだ‥‥』
いつも見る夢。ベッドから身を起こし、男は立ち上がった。
「一人では足りなかったようだな。なら次は‥‥」
ベッドの上で眠り続ける長兄を兄弟達はそれぞれの表情で見つめていた。
「兄さんのバカ! だから叔父さんなんかに構うなって言ったのに! 母さんも叔父さんを家に入れては駄目よって言ってたのに。‥‥お人よしなんだから」
悔しげな表情でベッドの足を蹴り付けた姉に弟も、妹も何も言わなかった。止めもしなかった。
「犯人は、本当に叔父貴なのか? 何で叔父貴が兄貴を刺すんだよ!」
「そんなこと知らないわよ。でも、冒険者達が兄さんは叔父さんと会うって行ったって言うんだからそうに決まってるじゃないの!」
「俺は、知らないんだよ! 魔法使いじゃないからって皆、何にも知らせてくれないで‥‥」
「カイちゃん‥‥」
俯く青年の手を少女は握る。慰めるように‥‥。
その様子を黙って見ていた若者は、兄弟達に向かい合った。
「カイン。お前が冒険者ギルドに依頼を出していたんだよな?」
「‥‥ああ。だから、マイト兄を守ってくれたんだ。ウィン兄も見たろ?」
なら。ウィン兄と呼ばれた若者は手に持っていたスクロールを握り締める。
「俺は、キャメロットに行く。行って遺跡の調査と、犯人探しの協力を頼んでくる」
「何でだよ? 俺が行くって。依頼人は俺なんだから!」
身を乗り出すようにして抗議する弟のおでこを、兄は軽く指で制した。
「ちょっと、調べることがある。それに‥‥」
女兄弟に聞こえないように彼は弟の首を掴むと声を潜め、囁いた。
「兄貴を傷つけたのが叔父貴なら、今度はファーラ姉貴やララを狙ってくるかもしれない。お前が、二人を守るんだ」
今まで、兄弟が自分を頼ってくれたことなど無かった。ましてこの二番目の兄はいつもどこか冷めていて自分とは仲が悪い部類だと思っていたのに。
「解った。俺が皆を守るから!」
「ちょっと、勝手に決めないでよ。アタシはねえ! こら、聞いてるの?」
怒りに拳を上げる姉の言葉は勿論聞こえていた。だが、彼は早々に無視すると旅の支度を始めた。
「これ、魔法の炎から、生まれたらしいぜ。火の鳥によって、母さんの死んだ日に生まれた、そう言ってやがった」
「ウィンさん‥‥」
草の燃えかすを摘み、冒険者ギルドに現れた思いがけない人物の登場に、冒険者達は少し驚き、そして俯いた。
「悪いな。兄貴を守りきれなくて」
すまなそうな顔を見せる冒険者にあんた達のせいじゃない、とウィン・サーガは告げた。
「兄貴が勝手な事をしたのが悪いんだ。だが‥‥まだ、兄貴をやったのが叔父貴だという確証は無い。ひょっとしたら、母さんも、なのかもしれないが、まだ解らない。だから、また、調査を頼めないか? あと兄弟達の護衛を‥‥」
思いもかけぬ素直な願いに冒険者達は頷いた。
「今まで話さなかったが‥‥街の、エーヴベリーサークルには古代から伝わる何かが封印されている、という風に伝えられている。そして、その何かを守るためにサーガ家の一族は存在しているとも」
封印は決して破ってはならない。そう伝えられている。
だが、先代当主ホーリィ・サーガの弟、ザイードは古代の力を求めて封印を解こうとした。それが為に家を追い出されたのだとウィンは語った。
「昔の事だけど‥‥叔父貴がいなくなった日、母さんが血相を変えて飛び出して行ったのを、帰って来るのを四人で待っていたのを覚えてる‥‥」
「四人?」
「ああ、ララは、どうしたっけ‥‥。思い出せないが、とにかく叔父貴が何かをしでかしたのは確かなんだ。昔も、そして多分、今も」
だから、ウィンは依頼する。
「今回頼みたいのは、エーヴベリーで叔父貴を捜すこと、兄弟達を守ることだ。俺は、古代文字で書かれたこの文書をキャメロットで調べてからすぐ戻るから」
護衛には弟カインもついてはいるが‥‥と口を濁す。何故、と問えば
「ララはともかく、ファーラ姉貴は兄弟でも1番の直情家なんだ。しかも、いつもふらふら街を歩き回ってる。絶対、家の中で大人しくしているなんて出来ない。家を抜け出して叔父貴のところに殴りこみ、なんて十分あり、だ。カインが、どこまで姉貴を押えられるかな? あんた等が付くまで、持てばいいけど‥‥」
あまりにも簡単に想像がつく。冒険者達は頭を抱えた。
でも、そんなことをしている間は無い。いや、余計に急がないと‥‥。
何かが蠢いている。
予感にも似た感覚が冒険者達の背を駆け抜けていった。
●リプレイ本文
ワザと大通りを歩く。人の集まる所を目立つように。
通りを歩く人たちに挨拶をしながら歩く彼女はやがて目的を果たすと、街を後にした。
一人、街道をゆっくりと、ゆっくりと‥‥歩く。夕暮れ、逢魔が時。周囲の風景も少しずつ闇に溶けていく。
道の先‥‥石の作る神秘の空間が見える。何故か白い石は冴えて光っていて‥‥それが、まるで自分を手招きするように彼女には見えた。
「来るなら来なさいよ。私は兄さんみたいにお人よしじゃないんだから‥‥」
呪文と、何より心の準備を整えて‥‥周囲を伺う。
ふと、何かを感じ、目線を、そちらに向ける。
「来たわね‥‥兄さんの‥‥うわあ!」
いきなり背後から羽交い絞めにされて、彼女は手足をバタつかせた。
身動きが取れないまま、石の影に連れ込まれ‥‥
(「やられる!」)
そう思った時だ。
「しっ! 静かに。私よ」
(「えっ?」)
手元を押えていた手が離れ、拘束も解ける。そうして、彼女は改めてもう一度上を見た。
暗くなってきて顔はよく見えないが、声には覚えがある。
「イフェリア‥‥さん? なんで、こんなところに‥‥」
腕を押えた人物イフェリア・エルトランス(ea5592)は小さく息をついた。
「良かった‥‥」
とりあえず、間に合ったようだ。
「ご無事で良かったです。ファーラさん、捜したんですよ」
「ファーラ姉。一体何をしてんだよ。危ねえって解ってるのに窓から抜け出すなんて! 皆が来てくれなかったら気付かなかったぜ!」
リース・マナトゥース(ea1390)横から飛び出した弟の声に肩を竦める気配がする。飛びかからんばかりのカインを抑えてリースは笑いかけた。
「げ! カイン。あ〜バレちゃったんだ。‥‥どうしても我慢できなくって」
周囲の気配を確認してのち、ファーラと呼ばれた女性は照れたように頭を掻いた。
だが、冒険者達の視線は射抜くように‥‥厳しい。
「皆、どれほど心配していると思っているの? ファーラさんにもしもの事があれば悲しむ人が大勢いるのよ。お願いだからもっと自分を大切にして‥‥もう私にあんな想いをさせないで」
「そうだよ! マイト兄の後、ファーラ姉までいなくなったらどうすんだよ!」
自分を心配してくれる、その存在を感じたからファーラは素直に言った。
「ゴメン。軽率だった」
思ったよりも素直な答え。冒険者達は少し、戸惑った顔を見せた。
「ま、まあ‥‥解ればいいんだよ」
「叔父さん探しは、後で手伝います。とりあえず戻りましょう。ララさんも、心配していますわ」
「解ったわ。じゃあ、戻りま‥‥キャアア!」
巨石の横から顔を出したファーラは突然後ろに飛びのいた。風の刃が肩口を切る。ツツと血が真っ直ぐに下に落ちた。
「ファーラさん!」
膝をつくファーラをイフェリアは庇うように背中に抱く。
「大丈夫ですか?」
「ええ、かすり傷。でも。な・何よ今の‥‥」
夕日の向こうに人影が見える。黒いローブに身を纏った男‥‥?
「あれは! もう、もう許さない‥‥!」
仁王立ちのファーラの足元がその時、微かに揺れた。
「待って! 今は退却しましょう!」
一本だけ闇に向かって矢を放つとイフェリアはファーラの手を取って駆け出す。
「行こう!」
「待って下さい‥‥一つだけ‥‥!」
リースは危険を承知で呪文を紡いだ。さっきの方向、さっきの人物に向けて白い光が放たれる。
途中、交差するように黒い重力の帯がリースに迫った。カインは彼女を突き飛ばした。
魔法から庇ってくれたと、リースには解る。大きな腕。
「逃げるよ」
「え、ええ‥‥」
彼女は少し躊躇いながら走り出す。手を握られながら。
(「あの‥‥手ごたえは?」)
ボーっとしてしまうのは、手を握られているせいではない、と思う。多分。
彼は目を開けた。身体が鉛のように重い。
「ん? 意識が戻ったか。良かった」
聞こえてきた声は家族ではない、でも聞き覚えのある声だ。マイトがゆっくり顔を横にしたその場所にアンドリュー・カールセン(ea5936)は腕組みをして立っていた。
その表情は、ホッとしたような顔に見える。
「すまない、あれは自分のミスだ‥‥」
自分に向けて下げられた頭にマイトは慌てて身体を起こし‥‥顔を苦痛に歪めた。それでも、アンドリューの謝罪をかき消そうとする。
「‥‥いや。うつつに覚えている。君達が、俺を助けてくれたこと‥‥。護衛を断ったのに、助けてくれて感謝している」
懸命に言葉を紡ぐマイトをベッドに押し戻しながらアンドリューはもう隠す必要の無い事を告げた。
「今まで隠していた事を、言おう。俺はカインからの依頼を受けてあんた達の母を殺し、あんたを傷つけた犯人を捜している。‥‥あんたに怪我を負わせたのは叔父だな?」
質問にマイトは躊躇いがちに、だがしっかりと頷いた。
「遺跡の秘密を教える。伝えられた古代の秘宝や秘術が見つかると‥‥叔父に誘われた。ウォールホールで穴を開けろ、と言われたんだが‥‥魔法を帯びているようで効かなかったんだ」
「そこを‥‥か。怪しいとは思わなかったのか? やつは勘当されていたんだろう? 封印は解いてはならないと言われていたんだろう?」
今考えればアンドリューの言うとおりであるが、マイトは一度だけ下を向いてそれから顔を上げる。
「彼は、優れた魔法使いになっていたんだ。三種の魔法を使いこなす‥‥。彼はあの遺跡の秘密を解き明かせば誰でもそれが可能だと、言ったんだ。もし、それが出来るなら街をより発展させることができる、と俺は‥‥」
(「【欲にまみれ‥‥】か」)
決して私利私欲だけではなかったろうが、彼が結果的に叔父に操られていたのであろうことは、これで確かに思えた。
「マイト‥‥。これは俺の推察だが、あの遺跡には何かが封じられている。それを開封する為には四つの精霊魔法を修めたウィザードの血が必要なのかもしれない。その為に‥‥母親は殺されたのかもしれない。そしてこれからあんたの兄弟達が狙われるかもしれない」
「!」
蒼白になったマイトの肩をアンドリューはポンと叩いた。傷に触らないように軽く。
「俺達も手伝う。だから‥‥兄弟とこの街を守るんだ」
ベッドの毛布が水に濡れる。マイトは小さく、でも確かに頷いた。アンドリューはそれをその目で確かめた。
「‥‥大丈夫? 天君?」
「うにゅ‥‥天はお手当てはにがてにゃの‥‥」
「ワン!」
「ニャア!」
ぐるぐる巻きになった遊士天狼(ea3385)を包む白い布をララはゆっくりと外していった。
マイトの手当てをしていた二人だったが疲れたようなララの顔と天狼の手伝っているのか遊んでいるのかわからない手伝いに、アンドリューが看病を変わってくれた。
中庭の日差しの中で、動物達と一緒に二人は眩しい、青空を見つめていた。
「ねえ。ララ姉ちゃ? 聞きたいことありゅんだけど‥‥」
いい? 躊躇いがちな天の問いにララは、小さく頷いた。
「あのね‥‥叔父さんがいなくなった日のこと‥‥ララ姉ちゃはおぼえてりゅ?」
ウィンは言っていた。この日、ララがいたかどうか覚えていない、と。ひょっとしたらこの時、彼女は‥‥
冒険者達の推測をララは裏付けてはくれなかった。首を横に振り‥‥沈黙する。
(「やっぱし‥‥」)
だが、これくらいのことは想像していた。天はめげない!
「ハーティ、にゃんこちゃん。おいでなのなの!」
広い若葉の庭で遊んでいた動物達を手招きし、猫をララの膝に乗せる。
「?」
「あのね、この子、天のおともだち〜。にゃんこちゃんのお名前、かんがえてくれりゅ?」
「‥‥この子、男の子、女の子?」
明るくニッコリ、笑いかけた天狼の言葉が詰まる。
「‥‥しらにゃい」
くす。小さな微笑の後、彼女は歌うように呟いた。
「マグメル・メグメル・イ・ブラセル。ルイズ・ソウェル・ナ・ソルチャ‥‥」
「にゃに? それ‥‥」
「昔、母さんが‥‥教えてくれたおまじない。これを聞くと痛いのがなくなるの。ソルチャとか‥‥ってどう?」
猫を抱き上げた白い腕、その右手に古い、だが消えずに深い傷があるのを天狼は黙って見つめていた。
エーヴベリーの街、自警団の詰め所はざわめいていた。
「マイト様が、ケガ? しかも、ホーリィ様を殺した犯人がいるかもしれない、だと!」
ウィンに書いてもらった紹介状を差し出して、藤宮深雪(ea2065)は頷いた。
「はい。ですから、捜索にご協力いただけませんか?」
勿論だ! と男達は意気あがる。
「宿屋を点々としている可能性があります。宿屋や生活必需品の店を中心に捜しましょう。顔が、わかればいいのですが‥‥ジェームスさん?」
「ああ、この間描いた似顔絵か、安心しろ。こんな事も有ろうかといくつか描いておいた」
ルーシェ・アトレリア(ea0749)の質問にジェームス・モンド(ea3731)は前回書いた容疑者の似顔絵を、何枚かテーブルの上に置いた。
「どっかで、見たような顔だなあ?」
「どこでだったかな? まあ、直ぐに見つかりそうな気がするぜ!」
「あ、そうですわ」
やる気満々の満々すぎるが故に危険な青年達を、深雪はやんわりと引きとめた。
「この方は、魔法を使うようです。しかも‥‥強い可能性がありますので、見つけたら無理に捕らえようとしないで、私達を呼んで下さいね」
「逃げ出したら、追跡くらいで構わないからな。無理はしないでくれよ」
聞いているかどうかは解らないが、一応解りましたの返事をして、自警団員達は動き始める。
それぞれの持ち場を確認した後、ルーシェは仲間、エヴィン・アグリッドが渡してくれたエーヴベリーの資料を深雪とジェームスだけに手渡した。
「エーヴベリーの側には洞窟や、他の遺跡もあるようです。もし逃げ出したらそちらに潜伏する可能性もありますね‥‥」
「だが、洞窟に住むよりは街の方が過ごしやすいのは当然だ。とりあえずは身柄の確保と事情聴取。これ以上怪我人は出せないぞ」
「ええ」
「解りました」
手分けして、捜す。この街はそれほど大きい町ではない。見つかるはずだ。きっと‥‥すぐ。
意外すぎるほど、それは早かった。
宿屋で、すでにもぬけの殻となった部屋を調べていると若い声が駆け込んでくる。
「み、見つけました!」
呼びにきた自警団の青年の声に冒険者達が駆けつけたとき、すでに彼の足元には倒れるいくつもの人影があった。
「無理に捕らえるな、と言っていただろうに!」
剣を抜いてジェームスが若い青年達を背に庇った。火傷の身体を起こしながら彼は悔しそうに、声を振り絞る。
「‥‥マイト様や、ホーリィ様を、と思ったら‥‥申し訳ありません」
もう一人、怪我人達を庇うように深雪は前に立ち声を高く上げた。
「どうして、このようなことをなさるのですか? 今ならまだ間に合います。こんな事はやめて下さい」
朗々とした声に、返事は無い。目はどこか虚ろでこちらを見ているようで、見ていないように見えた。
ふと、囁くような呪文が耳に届く。
「危ない! 伏せて!」
指から真っ直ぐに放たれた重力の波に、冒険者達は揺らめいた。なんとか体制を整えたものの、男はもう遠ざかろうとしている。
闇の向こうに消えようとしている男を、ジェームスが追いかけようとした時だ。
「ジェームスさん、行きます!」
遅れてきたルーシェの月の矢が真っ直ぐに、男に向かって飛んでいった。
「ぐ‥‥っ!」
微かによろめきながら彼が歩き続けた時、ジェームスの足は止まったまま動かなかった。
彼は目を疑っていたからだ。
(「な、何だ。あれは‥‥」)
それは‥‥男の身体が朧気ながらだぶって見えたこと。
「あれはまるで‥‥デビルか、ゴーストか‥‥?」
キャメロットの宮廷図書館にここ数日、冒険者達は篭っていた。
放っておけば寝食を忘れて調べものをするウィンをケンイチ・ヤマモト(ea0760)は時折食事を運び、時折面倒を見て調査に専念させていた。
初日に来たアリシア・シャーウッドが整理した机の上は、既に資料が散乱していた。
「ちょっと、こっちを読んでくれ」
ウィンがケンイチを呼んだ。彼が手に持っているのは、エヴィンが調べた遺跡に彫られた文字の中から、ユーリアス・ウィルドが解読できる古代魔法語を拾い上げ、書き記した羊皮紙のメモだった。
「ルイズ・ソウェル・ナ・ソルチャ‥‥月、太陽、光、国? こっちの文字は‥‥光、国、統べる‥‥王‥‥部下?」
「なら‥‥こうだ。【月と太陽の光の国。統べる王の部下、ここに封ぜられり。欲にまみれ、恨み抱える闇の魂。封じたもう我らが血と、祈りにて‥‥】」
ケンイチがユーリアスのメモを読み上げ、ウィンが文章としてまとめていく。
遂に彼らは、家のもっとも古き古書をなんとか解読することに成功したのだ。
その一説にケンイチと、何よりウィンは凍りつく。
【封印を開く鍵は、一族の血。封印を解く鍵は‥‥高き一族の長の血なり‥‥】