ジェロニモ、再び

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:11〜17lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 24 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月30日〜05月05日

リプレイ公開日:2006年05月07日

●オープニング

 ある日、新撰組の屯所に一通の手紙が届けられた。
 差出人の名前は『ジェロニモ』。
 それは一番隊の隊士に対して、助けを求める手紙であった。
 ジェロニモが合流場所として指定したのは、飛鳥の地にある石舞台。
 沖田総司によって倒された黄泉将軍にいた場所である。
 ジェロニモは、とある集団に追われており、このままでは命を落としてしまうため、彼らの情報を教える代わりに助けて欲しいと言う事だ。
 ‥‥誰かが言った。

 これは罠かも知れないと‥‥。

 しかし、信用するしか道は無い。
 いまより前に進むために‥‥。

●今回の参加者

 ea0012 白河 千里(37歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0728 サクラ・クランシィ(20歳・♂・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2614 八幡 伊佐治(35歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea2700 里見 夏沙(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3108 ティーゲル・スロウ(38歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea6065 逢莉笛 鈴那(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea8553 九紋竜 桃化(41歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea8802 パウル・ウォグリウス(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●ジェロニモの手紙
「ジェロニモは呼び出してきたか‥‥、乗るか反るか」
 ジェロニモから送られた手紙を握り締め、ティーゲル・スロウ(ea3108)がボソリと呟いた。
 今回の任務は新撰組として動く事が出来ないため、僧衣を身に纏って仲間達とは別に行動する事を告げて去ろうとする。
「‥‥ジェロニモには会わないのか?」
 ひとりで石舞台に向かおうとしているスロウを見つめ、パウル・ウォグリウス(ea8802)が口を開く。
「ああ‥‥、いざという時に何とか出来ないと困るからな。‥‥ジェロニモには会わず、警戒しておこうと思っている‥‥」
 『後は頼む』と言い残し、スロウが仲間達に背を向けた。
 ジェロニモが書いたと思われる手紙を読む限り、色々と引っかかる所があるため、素直に信用する事が出来ないというのが本音である。
「俺にはジェロニモが嘘をついていようには思えないが‥‥。そこまで余裕もないと思うしな」
 ジェロニモの手紙をマジマジと見つめ、鷲尾天斗(ea2445)が溜息をつく。
 しかし、ジェロニモの筆跡を見た事がないため、本物だと断言できるだけの証拠がない。
「今まで新撰組を避けてきたジェロニモ様が、我々を頼られたと言う事は、命を掛けて果さねばならぬ使命が有る為と思いますわ。使命の為に命を懸けるのは、侍の本分、必ず叶えたいと思いますし‥‥」
 もう一度ジェロニモの手紙を読み返し、九紋竜桃化(ea8553)が自分の考えを口にした。
「このまま終われない物が有るからこそ、助けを求めてきたんだと思いますしね‥‥」
 命を落としてでも交渉に臨むため、山王牙(ea1774)が白装束を身に纏って拳を握る。
 どちらにしてもジェロニモがピンチである事には代わりがないため、命を懸けても彼を助け出す必要がありそうだ。
「だが、これまでの言動と『一番隊に助けを求める』『代償は情報』ってのが、微妙に納得がいかないな。命が惜しくて情報を出してくるんだったら、屯所で拷問に遭ってた時に、もっと違う態度をとっていたと思うから‥‥。しかし、ジェロニモさんが窮地に陥っていて、石舞台に現れるってのは本当だと思う――というか、俺はそうだと信じたい」
 新撰組一番隊とジェロニモを接触させたい人物がいるのだと考え、サクラ・クランシィ(ea0728)が石舞台に向かう事を決意した。
 例え罠であったとしても、このまま無視する事は出来ないのだから‥‥。
「個人的には、ジェロニモさん自身よりも、手紙にあった『とある集団』の存在の方が心配ですね。一連の事件の黒幕が誰かという事にもよりますが、ジェロニモさん本人に私達を罠にはめる気がなくとも、彼と接触した事で、私達一番隊が何かの濡れ衣を着せられて‥‥という結果になる可能性がありますから‥‥」
 いざという時のためにペットの蛇をボディガードとして連れて行き、ゼルス・ウィンディ(ea1661)が辺りを睨む。
「どちらにしても、行くしかないってわけか」
 苦笑いを浮かべながら、八幡伊佐治(ea2614)がジェロニモの手紙を懐にしまう。
「‥‥ちょっと待ってくれ。夏沙、すまんがアッシュワードを使って、これを書いた人物を聞いて貰えぬだろうか」
 伊佐治からジェロニモの手紙を受け取って灰にした上で、白河千里(ea0012)が里見夏沙(ea2700)にアッシュワードをお願いした。
「こ、これはっ‥‥! どうやら‥‥、ジェロニモの手紙ではないようだな。第3者の手によって書かれた手紙のようだ」
 アッシュワードを使って灰と会話し、夏沙が千里を見つめて返事を返す。
「‥‥やはりな。しかし、ここまで来ると、虎穴に入らずば虎子を得ずを地でやるしかあるまいて。‥‥俺達を陥れるために仕組まれた罠かも知れないが、逆の言い方をすれば敵の尻尾を掴むチャンスでもあるんだしな。それよりも気になるのは、事件の裏で手を引いている黒幕達の存在だ」
 険しい表情を浮かべながら、氷川玲(ea2988)が地面に落ちた灰を拾う。
「そもそも虎長様が暗殺されて得をするのは誰かって事になるわよね? 源徳様は大火事他色々あってこちらまで勢力を伸ばす余力はなさそうだし、藤豊様か京都に勢力伸ばしたい西の大名、黄泉人、九尾の狐? 黄泉人は最近纏まりを見せつつあるという話もある事だし、黒の教徒と黄泉人が結びついたって事? それに藤豊様は、結局五条の宮様が継いだのだし、成るかどうか分からない暗殺に手を染めるのは藤豊様らしくないと思うんだけど‥‥」
 いくつか心当たりを思い浮かべ、逢莉笛鈴那(ea6065)が腕を組む。
「誰が黒幕であろうとも、俺はジェロニモの事を信じている。だってあいつの損得で考えて、嘘ついて得になりそうな事もなかったしな。沖田殿に罪を着せる。それは即ち源徳公の不信感を強める事。平織殿を害し、源徳公の威信を地に落とし、この構図で最も得をしたのは誰だ? 新たに京都守護職の任に就いた五条の宮? しかしもう一つ考えねばいけない事がある。何故、平織殿は蘇生されなかったのか。蘇生を拒む者があったのか――それとも、元から蘇生など叶わない存在だったのか。つまり、人ではなかった、と。少なくとも、先日暗殺されたとされる平織殿は‥‥。もしもこの仮説が正しければ――剣に『悪』と見なされた事にも納得が行くが‥‥。それに関東勢が沖田殿の件で美味い汁を吸う事は‥‥多分、ない。奥州は目下関東との競り合いと見る。畿内は中心だが、動乱において得はなく‥‥。ならば新たな勢力、中国・九州を怪しいと見るべきか? しかし秀吉公はこの時期に長崎に戻る――いや、今だからなのかも知れないが‥‥」
 どの勢力もそれなりに怪しいため、夏沙が困った様子で溜息をつく。
 どちらにしても、その答えは石舞台にありそうだ‥‥。

●石舞台
 一番隊隊士が石舞台に着いたのは真夜中だった。
 辺りに人の気配はなく、ジェロニモらしき人物がぽつんと立っている。
「‥‥お待ち‥‥してい‥‥ましたよ‥‥」
 真っ黒なフードを頭から被り、ジェロニモらしき人物が口を開く。
 いつもと違って抑揚のない喋り。
 まるで誰かに台詞を言わされているような雰囲気である。
「‥‥ジェロニモさんか? 新撰組一番隊隊長代理の鷲尾天斗だ。覚えているかな? ‥‥飛鳥の石舞台。屯所に駆け込むんじゃなくて、此処を合流場所に指定したって事は此処でしか出来ない要件でもあるのかい?」
 警戒した様子でジェロニモらしき人物をジロリと睨み、天斗がゆっくりと近付いていく。
 天斗が隊長代理として行動しているのは、相手に対して牽制する意味合いも込められているため、正式に認められるかどうかは今後の活躍次第である。
「ええ‥‥、覚えてますよ‥‥。忘れたくても‥‥、忘れる事の出来ない場所ですから‥‥」
 含みのある笑みを浮かべながら、ジェロニモらしき人物が素早く刀を抜く。
 顔が‥‥違う‥‥。
 ジェロニモではない、誰か。
 その誰かの顔がみるみるうちにカサついていき、本来の姿へと戻っていく。
「罠だっ! みんな、気をつけてっ!」
 ディテクトアンデットを使っていたため、いち早く黄泉人達の存在に気づき、伊佐治が仲間達に対して警告した。
「やはり‥‥罠でしたか」
 すぐさま地面を蹴って後ろに下がり、ゼルスがチィッと舌打ちする。
 それと同時に次々と地面が盛り上がり、たくさんの黄泉人達が姿を現した。
「まわりを囲まれているようですわね」
 オーラパワーとオーラエリベイションを付与し、桃化が黄泉人達との間合いを取る。
 黄泉人達は錆びた刀を握り締め、唸り声を上げて歩き出す。
「‥‥問題ない。すぐに仕留めるっ!」
 険しい表情を浮かべながら、パウルが黄泉人達の攻撃をかわしていく。
 黄泉人達は土の中から次々と現れ、パウル達の逃げ道を塞ぐようにしてまわりを囲む。
「やはり黒幕は黄泉人か。‥‥新撰組である前に西洋教会の使者としても相手となろう。Ash to Ash Dust to Dust!!」
 鬼神ノ小柄を握り締めて物陰から、スロウが黄泉人達に向かって斬りかかる。
「ほっほっほっほっほっ、やはり人間とは愚かよのぉ‥‥。妾はキッカケを作っただけじゃ。お前達があんな事さえしなければ、こんな事にもならなかったのにのぉ‥‥」
 高笑いを響かせながら、暗闇の中から女がひとり現れた。
「お、おまえは‥‥!?」
 ハッとした表情を浮かべ、スロウが慌てて後ろに下がる。
 だが、それよりも早く女の右手が伸びていき、スロウの首をムンズと掴む。
「‥‥忘れたわけではないだろうな。妾の愛しいヒトを殺した者よ。妾の名は黄泉女神‥‥。地獄に落ちる前に覚えておくがよかろう‥‥」
 人並み外れた力でスロウの首を締め上げ、黄泉女神が恍惚とした表情を浮かべてニヤリと笑う。
「うぐっ‥‥ぐぅ‥‥」
 朦朧とする意識の中で、スロウが必死になって抵抗する。
 しかし、黄泉女神の力は予想以上に強く、スロウの攻撃ではビクともしない。
「ほっほっほっほっほっ、恨め、苦しめ、憎むがいいっ! それが妾の力となるっ!」
 スロウが苦しむ様を楽しみながら、黄泉女神が徐々に彼の首を絞めていく。
「待ってろ! いま助けるっ!」
 このままではスロウが死んでしまうため、玲が短刀『月露』を構えて黄泉人達の間を斬り抜け助けに向かう。
「‥‥無駄じゃ。これ以上、妾に近付くつもりなら、こやつの首をへし折られるぞ」
 警告まじりに呟きながら、黄泉女神がジロリと玲を睨む。
「ひ、卑怯な真似を‥‥」
 悔しそうな表情を浮かべ、夏沙が拳を震わせる。
 黄泉女神の言葉にハッタリはないため、迂闊に黄泉人達を攻撃できない。
「随分と苦戦しているようだね」
 ‥‥誰かの声がした。
 それと同時に光が走る。
 一撃‥‥二撃‥‥三撃‥‥と‥‥。
「沖田‥‥組長‥‥!?」
 玲の言葉に、誰もが自分の目を疑った。
 しかし、そこに沖田の姿はない。
 スロウを助けたのと同時に、暗闇の中へと姿を消してしまったから‥‥。
「おのれっ! 一度ならず二度までも‥‥」
 恨めしそうな表情を浮かべ、黄泉女神が再びスロウに手を伸ばす。
 しかし、黄泉女神の一撃は放たれる事なく、ミミクリーを使って梟に変化していたサクラによって防がれる。
「‥‥油断しましたね」
 すぐさま黄泉女神にソードボンバーを放ち、牙がスロウの逃げる時間を稼ぐ。
「お、覚えておれっ! 妾を敵に回した事を必ず後悔させてやろうっ!」
 牙達に対して呪いの言葉を吐きながら、黄泉女神が暗闇の中へと消えていく。
「ま、待てっ!」
 高速詠唱を使ってバーニングソードとフレイムエリベイションを詠唱し、千里が黄泉人達を殴って黄泉女神を追おうとする。
 しかし、黄泉人達の数が予想以上に多いため、黄泉女神に近付く事さえ叶わない。
「ここはいったん退きましょうっ! 他の場所からも黄泉人達が集まってきているわ」
 熊犬のパウルがワンワンと激しく吠えたため、鈴那が警戒した様子で辺りを睨む。
 黄泉人達は唸り声を上げながら、次々と鈴那達に向かって襲いかかる。
「こっちですっ! 早くっ!」
 別の方向から声がした。
 ‥‥聞き覚えのある声。
「ジェロニモ‥‥か?」
 ハッとした表情を浮かべ、千里がジェロニモの腕を掴む。
「‥‥詳しい説明は後です。早くこっちへ!」
 このままでは黄泉人達に囲まれてしまうため、ジェロニモが焦った様子で口を開く。
「‥‥ひとつだけ聞かせてくれ。貴殿らに『シープの剣』の情報提供を行った、そして引き抜くよう示唆した人物がいるはずだ。そいつが今回の動乱の黒幕か?」
 鋭く冷たい眼差しを向け、パウルがボソリと呟いた。
「沖田組長にシープの剣を抜かせたのは私です。そして、その情報を私に伝えたのが八百比丘尼です」
 辺りの様子を確認しながら、ジェロニモが安全な方向へと逃げていく。
「八百比丘尼だって‥‥!? 黄泉女神じゃないのかい!?」
 ジェロニモの答えに驚き、伊佐治がダラリと汗を流す。
 黄泉女神と、八百比丘尼‥‥。
 果たして両者の関係は‥‥?