●リプレイ本文
●トノサマ
「‥‥今度はごるびーか。まあ、五輪祭とは関係ないが居なくなれば悲しむ人もいる。何とかせにゃな。とりあえず、そのトノサマって河童がいれば、ごるびーを返してくれるんだよな? 勝手に間違えておいて随分と我侭な言い草だが仕方あるまい。いずれえろがっぱ共は殲滅するか」
険しい表情を浮かべながら、龍深城我斬(ea0031)がトノサマの目撃された見世物小屋にむかう。
見世物小屋は座長のごるびーが居なくなってしまったためか、ガランと静まり返っている。
「確かトノサマって、こないだ井戸から逃げていった河童だよね? ごるびーちゃんを連れ戻すためには強制連行するしかないかな?」
警戒した様子で井戸の中を覗き込み、白井鈴(ea4026)がゴクリと唾を飲み込んだ。
しかし、既にトノサマの姿は無く、桶の中に入った蛙がキョトンとした表情を浮かべている。
「けひゃひゃひゃ、確かトノサマ君は腰巻を集めているのだったね〜。腰巻を囮にすればトノサマ君をおびき出す事が出来るだろう。けひゃひゃひゃひゃ」
不気味な笑みを浮かべながら、トマス・ウェスト(ea8714)が懐から腰布を取り出した。
トマス(以下:ドクター)の記憶が確かなら、トノサマは『伝説の腰巻』を集める殿様河童で鋼の子分。
「‥‥って言うか、中身がなきゃ面白くないと俺は思うんだがなあ。‥‥エロ河童の考える事は判らん」
腰巻をマジマジと見つめ、我斬が呆れた様子で溜息をつく。
河童達の話では冒険者達に受けた拷問が元でトノサマの性格は豹変してしまったらしい。
「おーい、トノサマやーい。お前の好きな腰布だぞぉー」
先端に腰布を括りつけた棒をユラユラと揺らし、鈴が見世物小屋の中に入っていく。
見世物小屋はミンメイの指示によって改築が進められているらしく、胡散臭い置物を置く部屋が出来ている。
「さあ、トノサマ君。君が欲しがっていた『伝説の腰巻』7枚だよ〜」
目立つようにして腰布を大きく揺らし、ドクターがトノサマの名前を何度も呼ぶ。
しかし、トノサマは姿を現さず、鈴がパタパタと走っている。
「‥‥おかしいな? この辺りに潜伏しているのは、間違いないはずなんだが‥‥。ひょっとして何処か別の場所に行ってしまったのか?」
なかなかトノサマが見つからなかったため、我斬が困った様子で腕を組む。
近隣の村でトノサマの目撃情報が無かった事もあり、その可能性は非常に低いのだが決してあり得ない話ではない。
「おっかしいなぁ〜。ここにいると思っていたんだけど‥‥。あっ、これを見て! これって忍者屋敷にあるやつだよね。こうやって掛け軸の前に立って仕掛けを作動させると、裏返しになって隠れる事が出来るやつ‥‥」
仕掛け板を作動させてクルリと板を回転させ、鈴が忍者の如く我斬達の前から姿を消した。
それと同時に後ろに隠れていたトノサマが姿を現し、青ざめた表情を浮かべて視線を逸らす。
「「い、いたあああああああああああああああああ!」」
一斉にトノサマを指差し、我斬達がツッコミを入れる。
そのため、トノサマは掛け軸で顔を隠して逃げようとしたが、ドクターの行く手を阻まれコアギュレイトの餌食になった。
「けひゃひゃひゃひゃ、これで悪い事は出来なくなったねぇ〜。まさかこんな場所に隠れていたとは〜。ひょっとして記憶が戻り始めているのかなぁ〜?」
含みのある笑みを浮かべながら、ドクターがトノサマの頭をペチペチと叩く。
そのせいでトノサマは悲鳴をあげ、怯えた様子で身体をカタカタと震わせる。
「どっちにしても関係ねぇ。俺達の目的はごるびーを取り戻す事だからな」
そう言って我斬がトノサマを連れて、ごるびーの救出にむかうのであった。
●河童
「よく分からないんだけど、ごるびーちゃんとかいうカワウソを助けるのよね? まあ、そういうのは他の人に任せて温泉を堪能するわよ。えろがっぱーずを名乗っている河童を引きつけておけば文句ないでしょ?」
河童達を誘き寄せるため、御陰桜(eb4757)が温泉にむかう。
この温泉はえろがっぱーずの支部から近いため、河童達にとっては格好の覗き場になっている。
「‥‥そうねぇ。私は偽ごるびーを作った事もあったから、まるっきり無関係ってわけじゃないけど、河童達を引きつけておけば問題ないわ」
苦笑いを浮かべながら、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が答えを返す。
念のためごるびーを救出に行く仲間達に偽ごるびーを渡しておいたが、随分と前に作ったものなのでトレードマークのチョンマゲはついていない。
「確か、この温泉ってお肌にいい泉質だったわよねぇ? せっかくだから桃と小春も入ろうか。どうせえろがっぱのせいで客も居ないんだし問題ないでしょ?」
まったく悪びれた様子もなく、桜がペット達を温泉に放つ。
ペット達は興奮した様子で温泉に飛び込み、バシャバシャと水飛沫を立てている。
「それじゃ、そろそろ始めましょうか。何処かで河童達が見ているはずだから大胆にね」
桜に向かってウインクした後、アイーダがもったいぶった様子で服を脱ぐ。
それと同時に見張り櫓でアクビをしていた河童が気づき、興奮した様子でハシゴをトントンと降りていく。
「うわっ! 凄い食いつき様ね。さすがえろがっぱ」
続々と河童達が集まってきたため、桜が驚いた様子で汗を流す。
河童達は鼻息を荒くして茂みに隠れ、桜達が全裸になるまで待っている。
「うっ‥‥、ここまで注目されちゃうと、何だか緊張してくるわね」
手拭いを使って胸元を隠し、アイーダが温泉に入っていく。
そのため、河童達は興奮した様子で顔を出し、覗き場所の取り合いを始めている。
「だったら見せつけてやりましょうよ。冥土の土産にね」
含みのある笑みを浮かべながら、桜がアイーダの身体をゴシゴシと洗う。
その拍子に河童が崩れるようにして倒れたため、すぐさま春花の術を使って眠りの世界へと誘っていく。
これでごるびーを助け出す時間が稼げそうね」
そう言ってアイーダがホッとした様子で溜息をつくのであった。
●ごるびー
「今後の事を考えると五輪祭を開く為には、えろがっぱーずを壊滅させる必要が有るようですね」
人質となったごるびーを救出するため、木下茜(eb5817)が警戒した様子で近くの茂みに身を隠す。
ごるびーは釜の中でグツグツと煮込まれているのだが、適温のためかマッタリとした表情を浮かべている。
「なんとしてでもごるび〜ちゃんを助けるですよ〜。早く助けないと茹でごるび〜ちゃんになっちゃうですよ〜」
辺りをグルグルと飛び回りながら、ベル・ベル(ea0946)が必要以上にあたふたとした。
ごるびーの救出が少しでも遅れれば、そのままカワウソ鍋になってしまう。
「ううむ、困りましたね。見世物小屋にいた時よりも高待遇で迎えられているようですし、説得に応じてくれない可能性もありますし‥‥」
険しい表情を浮かべて腕を組み、三笠明信(ea1628)が溜息をつく。
河童達はごるびーを太らせてから食べるつもりでいるらしく、どんな要求にも応じているようだ。
「最悪の場合は力技に頼るしかありませんね。カワウソ鍋になってからでは、何もかも手遅れになってしまいますし‥‥」
クールな表情を浮かべながら、琴宮茜(ea2722)がごるびーの茹でられている鍋に近づいていく。
ごるびーは具材の浮かんだ鍋に使っており、手拭いを頭に乗せて幸せそうな表情を浮かべている。
「それにしても、やけに静かですね。まさかみんな温泉に‥‥」
ハッとした表情を浮かべながら、明信が流星(イーグル)を使って辺りを偵察した。
案の定、河童達は温泉を覗きに行っており、ごるびーにはまったく興味を持っていない。
「いまのうちにごるびーさんを助け出すですよぉ〜」
七輪の上にイカを置き、ベルが醤油をタラリと垂らす。
そのため、ごるびーがパッと目を見開き、興奮した様子で辺りをキョロキョロと見回した。
「いきますよ!」
ごるびーを狙って瞳をキラリと輝かせ、茜(琴宮)がイカのついたニョルズの釣竿を振り下ろす。
それと同時にごるびーが鍋から飛び出し、パクッとイカに喰らいつく。
「ごるびーさん、確保しました!」
ごるびーに飛びついてゴロゴロと転がり、茜(木下)がホッとした様子で汗を拭う。
しかし、河童達が騒ぎに気づいて戻ってきたため、急いでこの場から逃げだせねばならない。
「早くしないと捕まっちゃうですよぉ〜」
慌てた様子でごるびーの手を掴み、ベルが河童達とは正反対の方向を指差した。
河童達は興奮した様子で雄叫びを上げ、キュウリを片手に攻撃を仕掛けてくる。
「思いっきりトノサマを避けていったんですが‥‥。ひょっとして、河童達の頭の中にはカワウソ鍋しかないのでは‥‥」
取引条件として提示されていたトノサマに誰も興味を持っていなかったため、茜(琴宮)が色々な意味で呆れて溜息をつく。
この様子ではトノサマの救出より、カワウソ鍋を食べたい比率の方が高いらしい。
「‥‥仕方がありませんね。ごるびーさん、少しだけ力を貸してもらいますよ。これが‥‥極楽の光です!」
ごるびーの頭に馬油を塗ってピカピカに磨き、茜(木下)が太陽の光を反射させ必殺のサンフラッシュを炸裂させる。
それと同時に明信がごるびーに呼びかけてスピンするように放り投げ、上空で待機していた流星にキャッチさせて逃げていく。
「さぁ、いまのうちに私達も逃げましょう」
そう言って明信が仲間達を連れてバラバラになって逃げていくのであった。