●リプレイ本文
●怨霊寺
「‥‥肝試しか〜。暑い時期になると、こう言うのをなんでやるんだろ? まあ、涼しい気分に一時的になるからいいけどね‥‥」
しみじみとした表情を浮かべながら、郭梅花(ea0248)が肝試しの行われている怨霊寺にむかう。
怨霊寺はお化け役をする事になった冒険者達によって飾りつけられており、おどろおどろしい雰囲気が漂っている。
「ううっ‥‥、何だか物凄く嫌な雰囲気が漂っているアルね。ほ、本当に大丈夫あるか?」
怯えた様子で辺りを見回し、ミンメイがダラリと汗を流す。
ここに来る前に奇妙な噂を聞いたため、本物のお化けが出ると思っている。
「はっはっは、ミンメイ殿、ご安心召されよ。伊達に巫女の修行は積んできてはおらぬ。例えどんな怨霊が現れたとしても、この金棒とオーラの技で必ずや昇天差し上げるとも☆」
棍棒をブンブンと振り回しながら、ルミリア・ザナックス(ea5298)がにこやかに笑う。
その言葉を何処かで盗み聞きしていたのか、お化け役の冒険者達がビクッと身体を震わせる。
「とりあえずコレを着てれば幽霊も近づかないぜ! 伝説の除霊師が着ていたとゆー霊験あらたかな逸品だ」
あまりにもミンメイが怖がっていたため、朝宮連十郎(ea0789)がお守り代わりに巫女服を渡す。
9割ほど彼の趣味が反映されているが、その真実を知っている者は誰もいない。
「おおっ、これならお化けが出てきても安心アル♪」
連十郎から巫女服を受け取り、ミンメイがホッとした様子で溜息をつく。
実際に効果があるのか別として、だいぶ落ち着き始めている。
「そう言えば、聞いた事がありますか? この寺に纏わる奇妙な噂を‥‥」
深刻な表情を浮かべながら、三笠明信(ea1628)がミンメイの肩を叩く。
それと同時にミンメイが悲鳴を上げ、慌てた様子で梅花の後ろに隠れる。
「‥‥おや? ミンメイ殿、顔色が悪いが‥‥大丈夫か?」
心配した様子でミンメイを見つめ、ルミリアがボソリと呟いた。
ミンメイは両手を使って耳を塞ぎ、今にも泣きそうな表情を浮かべて、『わーわー』と叫んでいる。
「大丈夫だから、安心して♪ ミンメイちゃんに妙な真似をする人がいたら、あたしがブン殴ってあげるから」
苦笑いを浮かべながら、海花がミンメイの肩を叩く。
ここまで来た以上、後戻りは出来ないのだから‥‥。
●お化け側
「よっしゃ、準備完了〜。もう少ししたら、こっちにミンメイちゃんが来るぜ! これは合法的に闇の中でアレコレするのを許された素敵イベントだ! ミンメイちゃんとぐっと仲良くなる為に、みんなも協力してくれよ!」
卑猥な握りこぶしを振り上げながら、連十郎が上機嫌な様子で戻ってくる。
予め連十郎が怨霊寺の噂を流していた事もあり、ミンメイ達の心に幽霊の存在を植えつける事に成功した。
「何だか邪な考えがあるようですが、分かりました。‥‥協力しましょう」
白装束姿で連十郎の後ろに立ち、嵯峨野夕紀(ea2724)が口を開く。
「のわあああ! おっ、おっ、驚かすんじゃねえよ。し、心臓が止まるかと思ったろ!?」
驚いた様子で悲鳴を上げ、連十郎が派手に尻餅をついた。
油断していたせいもあり、心臓がバクバクと鳴っている。
「とにかくミンメイさんを驚かせばええんやろ。しっかし、困ったなぁ。何処にも住職さんの霊がおらんのや。もう成仏してしまったんやろかぁ?」
ションボリとした表情を浮かべ、グラス・ライン(ea2480)が溜息をつく。
デティクトアンデットを使って住職の霊を探してみたが、何処にもそれらしき気配はなく、時間だけが虚しく過ぎていった。
「ひょっとして恥ずかしがり屋なんじゃないのか? お化けってそんなにひょいひょいと出てくるもんでもないだろ?」
ペットのティルナを墓場の上に置き、リフィーティア・レリス(ea4927)がクスリと笑う。
ティルナは陽のエレメンタルビーストで、遠くから見れば人魂と勘違いしてもおかしくない。
「‥‥んじゃ、やる‥‥」
キョトンとした表情を浮かべ、柊鴇輪(ea5897)が自分の顔を指差した。
一応、本堂に行けば住職が身に着けていた袈裟があるのだが、まったくサイズが合わないのでブカブカである。
●肝試し
「明信殿〜♪ ご一緒できて嬉しいですよ〜♪」
満面の笑みを浮かべながら、ルミリアが明信と腕を組む。
明信は恥ずかしそうに頬を染め、本堂を横切って肝試しの行われている墓場にむかう。
「ううっ‥‥。ふたりとも怖くないんアルか? うにょおおおん!?」
青ざめた表情を浮かべながら、ミンメイが身体をカタカタと震わせる。
それと同時にミンメイの首筋に何かが当たり、彼女が悲鳴を上げて尻餅をつく。
「だ、大丈夫、ミンメイちゃん!? ‥‥ん? こんにゃく!?」
不思議そうに首を傾げ、梅花が糸のついたこんにゃくを掴む。
糸の先には白装束を着た女性が立っており、こちらを見つめて恨めしそうな表情を浮かべている。
「うわぁ、怖いですねぇ〜」
わざとらしく驚きながら、ルミリアが明信にしがみつく。
「うぐっ‥‥。む、胸が‥‥」
ルミリアの大胆さに驚き、明信が顔を真っ赤にした。
ふたりともお化けの存在を忘れているため、夕紀が気まずい様子で立っている。
(「ア、アカン‥‥。これじゃ、肝試しにならへんやん。もっと派手な仕掛けを用意した方がよさそうやな」)。
茂みに隠れてコッソリと様子を窺いながら、グラスが困った様子で溜息をつく。
お化けを本物だと思っているのはミンメイだけなので、他の参加者達を驚かすためにはもう少し捻りを加える必要がありそうだ。
「ううっ‥‥、早く先に進むアルよ‥‥」
すっかり腰が抜けてしまったため、ミンメイが這うようにして進んでいく。
次の瞬間、何処からか釘を打つ音が聞こえてくる。
「な、な、な、何かいるアルよ!? えっと‥‥、あの娘アルか!?」
今にも泣きそうな表情を浮かべ、ミンメイが目の前の女性(レリス)を指差した。
しかし、女性は何も持っておらず、別の場所から釘を打つ音が聞こえている。
「ま、まさか‥‥」
余計な事をしてしまった事に気づき、ミンメイがダラダラと汗を流す。
目の前の女性は呪いの歌を歌いながら、フラフラとミンメイに迫っていく。
「ねえ‥‥私の‥‥歌、聞いて‥‥くれる‥‥?」
今にも消え去りそうな声で、レリスがミンメイに囁いた。
「うにゃらぽけれほー!」
恐怖のあまり奇声をあげ、ミンメイが物凄いスピードで地面を這う。
よほどレリスが怖かったのか、ひとりで先に進んでいる。
「ミ、ミンメイちゃん!?」
ハッとした表情を浮かべ、梅花がミンメイの後を追う。
次の瞬間、梅花の背後に何かが落ち、グシャリと嫌な音が響く。
「ま、まさか、ミンメイちゃんが!?」
慌てた様子で後ろをむき、梅花がソレを確認した。
それは四肢が異様な向きに捻じ曲がった死体(鴇輪)で、梅花に気づくとビタビタと跳ねて追いかけてくる。
「クッ‥‥。せっかくいいムードだったのに‥‥、運命とは皮肉だな」
怒りに身を任せて金棒を振り上げ、ルミリアが鴇輪に攻撃を仕掛けていく。
鴇輪は死体の着ぐるみを脱ぎ捨て、逃げるようにして茂みに飛び込んだ。
「あっ! ミンメイちゃん!」
ようやくミンメイを発見し、梅花が心配した様子で駆け寄った。
しかし、ミンメイはパニックに陥っているため、颯爽と現れた連十郎をしばき倒している。
「ご、誤解だ、ミンメイちゃん! 俺、俺だからッ!」
そして、連十郎は血塗れになりながら、ミンメイに抱きつくのであった‥‥。