●リプレイ本文
「ついに憧れのごるびーさんに会えます。待っていてくださいね、愛しのごるびーさん。うふふ‥‥」
瞳の中にお星を散らしてクルクルと回り、志乃守乱雪(ea5557)が地響きを響かせスキップする。
「みなさん、どうしたんですか。早く行きましょう!」
他人のフリをしようとしていた仲間達に声をかけ、乱雪が陽気な笑みを浮かべてごるびーの待つ湖にむかう。
「ズドラ〜ストヴィチェ! カーグ ジュラー?」
欧州をふらついていた先祖が書き残したと思われる帳簿を見ながら、本所銕三郎(ea0567)が愛馬サジマの上に乗りごるびーにむかって挨拶した。
ごるびーは銕三郎が言っている意味が分からず、不思議そうな表情を浮かべて首を傾げる。
「いやあ、なに‥‥もしロシアに行く事になったら、挨拶ぐらい解った方が良いと思ってな。今のは『こんにちは! 元気ですか?』だそうだ」
爽やかな笑みを浮かべながら、銕三郎がサジマから降りてごるびーの頭を撫でた。
「冗談だ。‥‥本気にするな」
どんよりとした空気が辺りに漂い始めたため、銕三郎が慌てた様子でフォローを入れた。
「本当にらしくないな‥‥深刻か?『はい』ならダー。『いいえ』ならニェットだ」
ごるびーの肩をぽふぽふと叩き、銕三郎がごるびーの小さな心臓にトドメをさす。
「きゅう!」
あまりに悪ふざけが過ぎたため、ごるびーが必死で抗議した。
「ハッハッハ、怒るな怒るな。軽い冗談だから」
ごるびーがぷんすかと怒ったため、銕三郎が慌てた様子で後ろに下がる。
「ごるびーちゃん可哀相ですね〜。大丈夫ですよ〜☆ 私たちが、こさっくさん達を撃退してあげますですよ〜☆」
不貞腐れているごるびーの頭を撫で、ベル・ベル(ea0946)が大好物のイカを渡す。
ごるびーはようやく機嫌を良くしたのか、大好きなイカをガシガシと噛む。
『今までこの姐さんの乗馬として戦場を駆けてきたんだぜー』
ごるびーの顔をペロリと舐め、ルミリア・ザナックス(ea5298)の愛馬(雄)が挨拶する。
『あたしは、荷物を引くのが苦手なんだけどなぁ‥‥』
突然の歓迎にごるびーは戸惑ったが、今度はルミリアの駿馬(雌)がぶるるんと鳴く。
『ぼ、ボク、一度売られちゃってるんです‥‥。またいつか売られちゃうんでしょうか‥‥』
間髪居れずにルミリアの驢馬(雄)が溜息をつき、『キミも気をつけてね』という目でごるびーを見る。
「ううむ、ごるびー達もウチの馬達のように仲良くなっておれば良いのだがなぁ」
見当違いの言葉を呟き、ルミリアがごるびー達を見守った。
「雷電君に振られちゃった……くすん。いいもん、私は新しい恋(玩具)に生きるわ、私、負けない!」
新しい遊び相手としてごるびーを選び、レオーネ・アズリアエル(ea3741)がニヤリと笑う。
ごるびーは身の危険を感じたためか、慌てた様子でイカを隠す。
「はじめまして、ごるびーちゃんっ★」
それと同時に燎狩都胡(ea4599)が元気よく挨拶し、ごるびーを湖の中に突き落とした。
「‥‥は。突き落としちゃった‥‥。て、なんで泳げないの!? かわうそなのに!! まさか泳ぎ方忘れたとか!? 黄昏たり白くなったりしている場合じゃないよっ。ごるびーちゃん泳げーっ」
陸に上がろうとしたごるびーを見つけ、都胡がハリセンで叩き落して渇を入れる。
「‥‥ごめんね。ごるびーちゃんっ。でもこれも愛のなせる業っっ。‥‥たぶん」
溢れ出る涙を手ぬぐいで拭きながら、都胡がごるびーに手を振った。
しかし、ごるびーは既に三途の川を渡っており、都胡の言葉が届いていない。
「あ、あれが噂のごるびーさん!?」
ぷっかりと浮かんでいるごるびーを見つめ、乱雪が木の後ろに隠れてキュンとする。
ごるびーもその気配に気づいたのか、悪寒を感じて何とか意識を取り戻す。
「そう言えば、泳げてふつーなんだから、泳いでも新芸になんないねー。ご、ごめんね、ごるびーちゃん」
風船のようにパンパンと膨らんでいるごるびーを抱き上げ、都胡が滝のような汗を流して悲鳴を上げる。
もう少しごるびーの救出が遅れれば、頭には金色のワッカが浮かんでいたのに違いない。
「でも大丈夫。ごるびーちゃんはかわゆいよっ。かっぱはげも似合いまくってるん! 胴長で足が短いとこもかわゆいし。例え愛しのあの子に通じなくっても、うるるん瞳攻撃は観客には受けてるよ! ‥‥そろそろネタが古いけど」
ごるびーを慰めるため良かれと思い、都胡が心をザックリと貫く言葉を吐く。
「色恋の話なら当てにするなよ。役には立たん。そんな事より文字を覚えた方がいい」
偉そうにキッパリと言い放ち、銕三郎がごるびーに一本の筆を渡す。
ごるびーは筆を受け取りマジマジと見つめていたが、何を血迷ったのか筆をガジガジと食べ始めた。
「いや、それは食いモンじゃないんだが‥‥。こら、サジマまで一緒になって筆を食うな。さっき餌はやっただろ!」
サジマまで美味そうに筆を食べ始めたため、銕三郎が呆れた様子で溜息をつく。
「お腹いっぱいになれば、嫌な事も忘れられるですよ〜☆」
ごるびーが元気になるようにするため、ベルがたくさんご馳走を用意した。
「それじゃ、マッサージもしてあげるわね。もちろん、癒し系フルコースで☆」
ごるびーを膝の上に寝転がせ、レオーネがマッサージをし始める。
「お客さんー、凝ってますねー」
優しくごるびーに声をかけ、レオーネが巧みなテクニックでハゲを隠し、もふもふとしながら綺麗に毛並みを整えた。
「コレでそれんちゃんも惚れ直すよー。じゃあ次、衣装行って見ようかー。誕生! NEOごるびー」
見違えるほど凛々しくなったごるびーを見つめ、レオーネが背中に大きく『なめんなよ』と白文字で書かれた黒い陣羽織(裏地には竜と虎)を羽織らせ、『誤瑠美威』と書かれた旗を持たせると、黒いマスカレードを着せて『それん命』と書かれた中央にハートマークの鉢巻を締める。
ごるびーはあまり理解はしていないようだが、付け眉毛をキリリとさせて力強く胸を張る。
「あの愛らしい仕草! 利発そうな目! 頬擦りしたくなるようなふかふかの毛並み! ああ、もう我慢できません!」
少女マンガチックに瞳をキラキラと輝かせ、乱雪がおもむろに小柄を抜き放ち、足元に転がっていた石をガツガツと彫り始めた。
「できました。ごるびーさん像! どうぞ受け取ってくださいっ!」
とても嬉しそうな表情を浮かべ、亀か猪のようないびつな岩の塊を差し出し、一瞬にして辺りに氷のような静寂を招く。
「こうして、ごるびーさんと一歩お近づきになれました。渾身のごるびー像、喜んでいただけて幸いです」
複雑な表情を浮かべるごるびーをヨソに、乱雪が満足した笑みを浮かべホッと胸を撫で下ろす。
「これで新しい芸の道が開けそうですね☆」
『なめごるごー』と化したごるびーを見つめ、ベルが嬉しそうに辺りを飛ぶ。
ごるびーも満足した様子で、凛々しく『きゅう』と鳴く。
「10月といえばアオリイカの季節だ。今度捕りに行くか」
釣りをする仕草をしながら、銕三郎がごるびーを誘う。
ごるびーもイカという言葉に反応し、キラキラと瞳を輝かせる。
「じゃぁな。その時にまた会おう。ダ スビダ〜ニャ!」
そして銕三郎は愛馬サジマの背中に乗り、ごるびーに別れを告げた。
ちなみに『ダ スビダ〜ニャ』とはさようならの意味らしい。
「みゃあこ、昔むかーし、小さい頃に『露西亜のひとは、コサックダンスを踊りながらシベリア寒気団と一緒に来るんだよ』て、確かに聞いたん! だから、シベリア歓喜団の人にもよろしくーっ!」
戦いに行く冒険者を見送り、都胡が大きく仲間達に手を振った。
「捕獲集団コサックか‥‥胡散臭げな連中は叩きのめしてくれん」
荷車を3頭の持ち馬に引かせ、ルミリアが街道の途中でコサック達を待ち受ける。
捕獲集団コサックはごるびー捕獲のため、妙な踊りを踊りながら湖の向かっている最中だったため、ルミリア達の姿に気づくと問答無用で蹴りを放つ。
「お主ら、何所の者じゃ! 私はエジプトからきたのじゃが、なんとも珍妙な感じがするのじゃがのう」
上空からサンレーザーを放ち、レダ・シリウス(ea5930)がコサック達を威嚇する。
コサック達を怪しいと思ったため、色々と情報を集めてみたのだが、まともな過去を持つ者はいないらしい。
「‥‥ロシア出身の者なら寒中水泳が出来ると聞く。ひとつ見せてくれ」
険しい表情を浮かべながら、九十九嵐童(ea3220)がコサックを睨む。
しかしコサック達は何も答えず、凄まじい蹴りを放つ。
「‥‥寒いのが苦手なのか? じゃあ、これで暖かくしてやる‥‥」
コサックの蹴りを避け、嵐童が火遁の術を使用する。
「おっ、アフロになった。お主はパンチかや。‥‥面白いのう。次はどいつが良いかな」
コサック達の頭を狙ってサンレーザーを放ち、レダが楽しそうにゲラゲラと笑う。
「どうやら俺達と会話をする気はないようだな。奴らにとって最も重要な事はごるびー捕獲というわけか」
コサックの奇妙な蹴りを軽々とかわし、九十九嵐童(ea3220)が素早く背後に回りこみ、バックアタックでカンチョーする。
「‥‥陸奥流禁手、3年殺し‥‥。ふっ‥‥、またつまらぬものを貫いてしまったな」
悶絶しているコサックボーイを横目で見つめ、嵐童がクールな笑みを浮かべて指を拭く。
「どうやらその指が新しい世界を開く鍵になってしまったようですね」
コサック達に対して挑発的な言葉を吐きながら、瀬戸喪(ea0443)が鞭でジワリジワリといたぶった。
「しかも弱い‥‥。これでは本気を出す必要もありませんね」
相手を殺してしまう恐れがあるため、御蔵忠司(ea0901)が武器を使わず手加減する。
「茶がぬるぅいぃーっ! 喧嘩を売っているのか!」
ちゃぶ台の上にお茶を置き、ルミリアがひと口がふりと飲んだ後、オーラパワーを使って凄い怒りの闘気を表現し、ゲルマン語で叫びながらちゃぶ台を振り回してスマッシュを敢行した。
「ハラショー、ハラショーと何度も口にするなら腹芸のひとつでも見せぬか!」
ハラショーと口にする前にルミリアがちゃぶ台をぶん回してバーストアタックを放ち、コサック達の服をバラバラにさせると妙なものを露出させる。
「むっ‥‥、やるな!」
必殺のちゃぶ台返しを弾かれたため、ルミリアが険しい表情を浮かべて汗を流す。
コサック達は円陣を組むようにして、次第にルミリアのまわりを囲んでいく。
「よいリズムじゃ楽しそうじゃのう♪」
コサック達の頭に乗り、レダが面白がって真似をした。
「放置プレイは止めてくれ。なんだか涙が出てしまう」
だんだんコサック達に囲まれ始めたため、ルミリアが仲間達に対して助けを求める。
「‥‥仕方ない。助けてやるか。あとで何かおごってくれよ」
ルミリアの事を助けるため、嵐堂がコサックの股間にポイントアタックで蹴りを放つ。
コサック達はあまりの激痛にしゃがみこみ、今までの思い出が走馬灯のようにして蘇る。
「久しぶりに鞭を手にしましたが‥‥やはりよく馴染みますね」
手足のように鞭を振るい、喪がふさふさな根付でコサック達を刺激した。
そのせいでコサック達は妙な感覚に目覚めてしまう。
「なんだか妙な方向に暴走していますね。これでいいんでしょうか?」
何処か冷めた視線で仲間を見つめ、忠司が困った様子で汗を流す。
「当然じゃありませんか。こんな幸せそうな顔をしているんですよ」
ウットリとした様子でコサック達のアゴをしゃくり、喪が含みのある笑みを浮かべる。
「い、いいんですか。それなら‥‥まぁ‥‥いいんですが‥‥」
気まずい様子で咳をして、忠司がコサック達から背をむけた。
「おぬしらの目的はなんじゃ? ごるびー回しとはどんな芸じゃ」
悦に浸るコサック達に声をかけ、レダが腰に手を当てる。
コサック達は何やらボソボソと呟いているが、行為に集中しているためかハッキリとは聞こえない。
「‥‥さて、これからあんた達にはあの湖で泳ぎ、身も心も清めるという義務がある。みんな‥‥逃げるなよ‥‥」
そして嵐童は怪しく瞳を輝かせ、コサック達に警告した。
「ごるびー君がハゲている姿を見るのは忍びないんですよ。何とか原因を取り除いてあげられれば良いのですけど‥‥」
ごるびーがハゲたと噂を聞き、刀根要(ea2473)が心配した様子で溜息をつく。
「それで調査の結果はどうだったのでござるか?」
3匹が現れるまで少し時間があるため、沖鷹又三郎(ea5927)がボソリと呟いた。
「容疑者はそれんチャン、えりつぃん君、まとりょーしかさんの3匹です。まずそれんちゃんですが、人気の落ちたごるびー君に小言を言っているようです。ただ夫婦喧嘩だと口が出せませんね。次にえりつぃん君ですが、人気急上昇中です。この事もごるびーにとってはストレスかも。最後にまとりょーしかさんですが、ごるびー君に色目を使っているようです」
独自に調べ上げた情報を口にしながら、要が困った様子で腕を組む。
「拙者はまとりょーしかちゃんが怪しいと思うでござる。ごるびーが落ち込んだのが最近の話なのだから、一番後に入った新人が怪しいのは道理でござる」
疑惑の目をまとりょーしかにむけ、又三郎がキッパリと断言する。
「まだ分かりません。3匹とも怪しいので‥‥」
3匹のケモノが現れたため、要がゴクリと唾を飲み込んだ。
「この中にごるびーを苛めている犯人がいるでござる!」
手作りのごるびー人形をポンと置き、又三郎が一匹ずつ顔を覗き込む。
「こんな可愛い動物達を疑うなんて拙者には出来ないでござるよ〜!」
しかも3匹のケモノがあまりに可愛らしかったため、又三郎がその場に倒れて身悶える。
「落ち着いてください。このままだと犯人の思うツボです」
円らな瞳の魔力に屈しそうになったため、要が又三郎の身体を何度も揺らし何とか意識を呼び戻す。
「でも犯人側が分からなくなったでござる」
困った様子で頭を抱え、又三郎がパニックに陥った。
「‥‥大丈夫です。既に犯人は分かってます」
瞳をキラリと輝かせ、要が素早く立ち上がる。
「いじめの犯人は貴方ですね。必死に努力し悩む者にその仕打ち。‥‥認めたくないですね」
3匹を前にして後ろをむき、要が般若の面を被って振り返り、テレパスを使ってえりつぃんを指差した。
『な、なんで、それを!』
信じられないといった表情を浮かべ、えりつぃんがジリジリと後ろに下がっていく。
「おっと逃がしはしないでござる! 観念してお縄になるでござるよ」
そして又三郎は逃げ出そうとしていたえりつぃんを捕獲し、その頭をもふもふと叩くのだった。