●リプレイ本文
「湯船に手拭いを入れるのは厳禁、着衣のままや褌なんてもっての他! それにしても、ごるびー君。キミはとても暖かそうで、いい毛皮を着ているね」
鬼神の小柄をキラーンと嫌な感じに輝かせ、レオーネ・アズリアエル(ea3741)がニヤリと笑う。
ごるびーはレオーネの言葉を真に受け、身体をカタカタと震わせている。
「まぁ、そんなに怯える事はない。レオーネも本気でおぬしの毛を刈るつもりは‥‥あ、あるのか!?」
レオーネが熱心に小柄を研ぎ始めたため、ルミリア・ザナックス(ea5298)が大粒の汗を流す。
「そんな事で恐がっていたら、豚鬼戦士が現れた時はどうするの? 鍋にして食べられてしまうわよ」
素早くごるびーの事をつまみ上げ、レオーネがクスリと笑う。
「‥‥安心しろ。そんな事をしたら我らが損をするだけだ。きちんとおぬしを守ってやる」
ごるびーの肩をポンと叩き、ルミリアがコクンと頷いた。
「それじゃ、そろそろ入りましょうか。ごるびー君はこれに入ってね」
専用の桶の中にごるびーを放り込み、レオーネがゆっくりと温泉に浸かる。
それと同時にえりつぃん達が物陰から顔を出し、温泉にむかって勢いよく飛び込んだ。
「おお、これが温泉であるか〜♪」
宝石の如くキラキラと輝く温泉を見つめ、ルミリアが感動した様子で溜息を漏らす。
「ほら、ごるびー。楽しいよ〜♪」
キセルを使って濃い石鹸水をシャボン玉状にして飛ばし、レオーネがごるびー達と仲良く遊ぶ。
ごるびーは桶に乗ってシャボン玉を追いかけ、ルミリアの身体をマジマジと睨む。
「‥‥武骨な我が肌の荒れ具合を気にするのは、おかしいか? 騎士は見栄えを気にする職からでもあるが‥‥何よりいつか我の良人となって頂けた方に恥かしくないよう、できる限り女は磨いておきたくてな」
照れた様子で視線を逸らし、ルミリアがボソリと呟いた。
「ところで、ごるびー。ハゲが広がるゆえ、あまり長湯は駄目であるぞ」
ごるびーがお湯浴びをしていたため、ルミリアが背中を掴んで首を振る。
ごるびーはハッとした表情を浮かべると、慌てた様子でハゲを隠す。
「ルミリアさんも一杯どうですか?」
松之屋で購入した冷酒を杯に注ぎ、レオーネがニコリと微笑んだ。
「ん? あ、ああ‥‥」
ルミリアは馬達の面倒を見ていたが、レオーネの呼び声に気づくと、コクリと頷き酒を飲む。
「どうやら豚鬼戦士は現れないようだな。‥‥となると別の湯か」
そしてルミリアはごるびー達を連れ、弐の湯へとむかうのだった。
「‥‥わたくしの命に比べれば安いものか」
ルミリアから受け取った日本刀を見つめ、三笠明信(ea1628)がごるびーを弐の湯へと連れて行く。
明信は武術大会でボコボコにされたため、身体中に負った傷が痛々しい。
「貰っておいたらどうですか? あなたを心配しているようですし‥‥。難しい事は考えずに温泉に浸かって休みましょう。弐の湯は疲労回復の効果があると言われています。考え事をしていたら余計に疲れてしまいますよ」
明信の肩を優しく叩き、山本建一(ea3891)がごるびー達の後をついて行く。
ごるびー達はまるでカルガモの親子の如く隊列を組んでおり、歩くたびに可愛らしくきゅきゅっと鳴いた。
「いえ、これを装備してしまうと重量オーバーで動けなくなってしまうんです」
苦笑いを浮かべながら、明信が刀を布に包んでおく。
「それじゃ、さすがに無理そうですね。僕も疲労と言うかなんというか‥‥ね。日頃の色々な疲れがありますから。女王様やるのも楽じゃないんですよね。まあ半分ぐらいは趣味なので楽しんでますけど。たまにはこうして疲れをとるのもいいですよね」
自分の肩を叩きながら、瀬戸喪(ea0443)がのんびりと温泉に浸かる。
温泉は薬草の成分が染み込んでいるため、次第に身体の疲れが取れていく。
「ごるびー達はあんまり浸かっていたら駄目だよ‥‥。フニャフニャになっちゃうから‥‥」
温泉で暴れるごるびーを見つめ、ファラ・ルシェイメア(ea4112)が軽く注意する。
ごるびー達は温泉の中にドボンドボンと飛び込むと、水を獲た魚のようにして泳ぎ出す。
「さすが芸を仕込まれているだけはありますね。みんなの息もピッタリです」
華麗な泳ぎで芸を見せるごるびー達を褒めながら、志乃守乱雪(ea5557)が感心した様子で呟いた。
「それじゃ、ゲームをしてみましょう」
それんを頭の上に乗せて温泉の中央へと進み、乱雪が重々しいBGMと共にブクブクと沈む。
そのためそれんはパニックに陥り、ジタバタともがく。
「(今です、ごるびーさん。華麗な泳ぎでそれんちゃんを危機から救うのです。ごるびーさんのためなら、私は悪役になりましょう!)」
心の中でごるびーにむかって叫び、乱雪があえて悪役を演じる。
ごるびーはすぐさま表情を険しくさせ、見事な泳ぎでそれんの事を助け出す。
「なんだかフニャフニャですね」
ごるびーのホッペをムニムニと掴み、喪が苦笑いを浮かべて呟いた。
温泉に浸かりすぎていたためか、ごるびーの身体がフニャフニャだ。
「これは使えます! 珍獣ちりめんカワウソのごるびーさん!」
ごるびーがまるで餅のようなため、乱雪が満面の笑みを浮かべる。
「何だかおいしそうに見えるのは気のせいですかね?」
壱の湯と弐の湯に入った事で艶々のごるびーを見つめ、喪が爽やかな笑みを浮かべて冗談を言う。
「そう言えばそうですね。だんだん食べ頃になっている気が‥‥」
何処か遠くを見つめながら、健一が困った様子で汗を流す。
確かに食べ頃と言えば、食べ頃のようである。
「肉が柔らかくなったカワウソ‥‥豚鬼が雑食なら、餌になりそうな‥‥」
ごるびー達を桶に乗せ、ファラがボソリと呟いた。
全くごるびー達に自覚が無いため、余計にタチが悪いらしい。
「こんな場所で襲われたらシャレになりませんね」
豚鬼戦士の襲撃を恐れ、明信が警戒した様子で辺りを睨む。
いまのところ豚鬼戦士の気配は無いが、油断は出来ない状況である。
「とにかく温泉を楽しみましょう。緊張ばかりしていたら、せっかくの休暇が無駄になりますしね」
なるべくごるびー達を温泉の中心で遊ばせ、健一が苦笑いを浮かべて汗を拭う。
「それもそうだね。豚鬼戦士が襲ってきてから考えようか」
そしてファラは温泉にのんびり浸かり、身体の疲れを癒すのだった。
「おまえ、頭にシミがあるんだなぁ‥‥まるで地図みたいだ」
ごるびーの頭をマジマジと見つめ、本所銕三郎(ea0567)が頭を触る。
「うきゅっ!?」
あまりのショックに驚きながら、ごるびーが恥かしそうに頭を隠す。
「‥‥やはり気にしていたのか。大好物のイカをやるから許してくれ」
どんよりと凹んだごるびーを慰め、銕三郎がイカの燻製を手渡した。
「ごるびーちゃんと温泉ですよ〜☆」
嬉しそうに参の湯のまわりを飛び回り、ベル・ベル(ea0946)が温泉の中にイカを放り込む。
参の湯の中には野菜がグツグツと煮えており、まるで大きなおでん鍋のようになっている。
「ごるびー殿は本当にイカが好きなのでござるな。しかし、野菜も取らねば駄目でござるよ」
美味しいおでんを作るため、沖鷹又三郎(ea5927)が野菜を持参する。
温泉からは香ばしい匂いが漂っているため、又三郎も満足した様子で微笑んだ。
「あぁ、温泉! 独特の香り‥‥屋外ではいるからこその情緒、美容効果‥‥あぁ全てが素晴らしい。しかもグツグツと煮立った温泉とは‥‥実に血行によさそうではないか」
まるでダンスを踊るようにしてクルクルと回転し、虎杖薔薇雄(ea3865)が服を華麗に脱ぎ捨て甘い香りを漂わす。
何故かまとりょーしかも一緒になって踊っているが、仲間意識というよりはライバル心が強いらしい。
「でも、何でお野菜が浮かんでるんでしょうかぁ? まさか、私達を誰かさんが料理しているって言うんじゃないでしょうかぁ? それだとちょっと怖いですよ〜〜〜」
身体をガタガタと震わせながら、ベルがごるびーの身体にしがみつく。
「‥‥これは‥‥温泉じゃないだろ、どう見ても‥‥」
全身にある古傷を癒すため湯治に来たのだが、あまりにも温泉が胡散臭かったため九十九嵐童(ea3220)がツッコミを入れる。
「やっぱり違うんですかねぇ?」
手拭いを身体に巻いておき、ベルが心配した様子で温泉を覗く。
「む‥‥これは‥‥!? う、美味いでるっござる!」
温泉のダシがとても美味だったため、又三郎が驚愕の表情を浮かべて汗を流す。
「今回はなかなかグルメな豚鬼戦士らしいな。しかしまあ、ここまでくると温泉というよりは巨大鍋だな。アホらしさを通り越して感心する」
苦笑いを浮かべながら、南天輝(ea2557)が参の湯に罠を張っていく。
罠の材料の利用するものは温泉の中に浮いている食材で、シーソーのように片方の足を踏み入れたら木材が動くように仕掛けておき、顔に当たる部分には食材を置いておき中に手裏剣を隠しておいた。
「だったらこの温泉は危険だな。‥‥ってオイ、サジマ! ‥‥主人の痛みより自分の食い気か‥‥。俺がどんなに痛い思いをしたのか分かっているのか? 血は吹き出すわ<早々に敗れるわ‥‥いや、そんな事は些細な事。何より‥‥寺院での出費が痛かった。その主人を差し置いて温泉に浸かるなど‥‥お、おい! 聞いているのかっ!」
愛馬サジマが温泉に浸かっていたため、銕三郎がクドクドと説教をし始める。
サジマは温泉に浮かんだ野菜をかじり、銕三郎の話は全く聞こうとしていない。
「馬の耳に念仏とはこの事だな。そんなモノを喰って当たっても知らんぞ、まったく‥‥」
呆れた様子で溜息をつきながら、銕三郎がサジマの説得を諦める。
「ところでえりつぃんは酒が好きなのか? ‥‥なんだか目が怪しいな」
桶の中にどぶろくを注いで飲んでいるえりつぃんを見つめ、銕三郎が唖然とした表情を浮かべて指差した。
えりつぃんは怪しくケタケタと笑っており、明後日の方向を見つめている。
「‥‥この匂いは‥‥。ふにゃ〜〜〜、身体が熱いですよ〜〜〜」
ありつぃんの飲んでいる酒の匂いに気づき、ベルがほんのりと頬を染めて手拭を外す。
「おいおい、大丈夫か? ‥‥困ったな」
ベルの投げた手拭いが顔に掛かり、輝が困った様子で溜息をつく。
もうひとつのトラップとして豚肉の入った土鍋を用意していたのだが、ベルが酔っ払ってしまったため大粒の汗を浮かべている。
「それは私に対する挑戦だねっ! 女性もいるから褌だけはつけていたが、生まれたままの姿と言うのもまた美しいものだ‥‥。この私もクロスアウトせねばなるまいっ!」
真っ白な歯をキラリと輝かせ、薔薇雄が褌を優雅に脱ぎ捨てた。
「あまり物騒なものを見せていると、豚鬼戦士を誘き出す鍋の具にしてしまうぞ。ワカメでも巻いて我慢しろ」
高速で動くモザイクを気にしながら、嵐童が呆れた様子でワカメを投げる。
「‥‥ふっ、そんなに見つめないでくれたまえ、あまりに美しいからと言って」
嵐童の投げたワカメは薔薇雄の素敵な腰つきと共に身体に巻かれ、微妙にモザイクの見える状態へと進化させた。
「‥‥すまん。なんだか頭が痛くなってきた。少しあちらで休ませてもうう」
薔薇雄の視界から逃れるようにして、嵐童が少し離れた場所に移動する。
その間も薔薇雄は華麗に舞を舞っているが、相変らずモザイクが見え隠れしている状態だ。
「やっぱり美しすぎるのも罪だねぇ。‥‥おや? キミ達は‥‥」
あからさまに胡散臭い表情を浮かべる豚鬼戦士達に気づき、薔薇雄がクルクルと回転しながら逃げ道を塞ぐ。
逃げ道を失った豚鬼戦士達は嫌々と首を横に振り、恐怖に怯えた表情を浮かべて両手を合わす。
「ついに今日のメインデッシュが現れたようでござるな」
丹念に研いだ包丁を構え、又三郎が豚鬼戦士達を威嚇する。
「‥‥コイツが呼び寄せた、ってわけじゃないよな‥‥?」
鬼神の小柄を見ながら、嵐堂がボソリと呟いた。
「さあな。だが、俺達の敵である事は間違いないっ!}
それと同時に銕三郎が刺叉を使って昆布を拾い、豚鬼戦士の顔面に勢いよくブチ当てる。
「うごぉ!」
顔に当たったワカメに驚き、豚鬼戦士が棍棒を振り回す。
「まさか‥‥こんな事に役立つとはな‥‥。そんな事より……サジマ‥‥。おまえ、まだ食っていたのか」
サジマに腕を噛まれたため、銕三郎が疲れた様子で溜息をつく。
どうやらサジマはワカメが奪われてしまったものだと勘違いをしているらしい。
「奴らを本気にさせてしまったようだな。‥‥お前達はあっちに行ってろ」
烈火の如く怒り出した豚鬼戦士を睨みつけ、嵐童が忍び装束姿のごるびー達を避難させる。
「ひぇ〜ん。着るものが何処にも無いですよぉ〜。裸じゃ寒いし、恥かしいですぅ〜」
ようやく酒が抜けたため、ベルが恥かしそうに悲鳴を上げた。
「そう言う時はワカメを巻くといいよっ! ほら、ほら、ほらぁ☆」
目の前で妙なイリュージョンを繰り広げ、薔薇雄がベルにワカメをアピールする。
「ひぃ〜ん。こっちも恐いですぅ〜」
色々な意味でピンチに陥り、ベルが草叢の中に避難した。
「少しそこに隠れていろ。コイツらは俺が始末するっ!」
ポイントアタックとスタンアタックで豚鬼戦士を気絶させ、嵐童が他の豚鬼戦士をトラップのある場所まで誘導する。
豚鬼戦士達は輝の仕掛けた罠にハマり、悲鳴を上げながら気絶した。
「きやがれ、剣の輝きと共に吹っ飛べ」
すぐさまソニックブームを叩き込み、輝が豚鬼閃士達の感情を逆なでする。
「‥‥愚かな。温泉を邪魔するものには、醜い死、あるのみ‥‥」
クールな笑みを浮かべながら、薔薇雄がワカメをポトリと落とす。
豚鬼戦士は薔薇雄の股間を見つめ、身体をガタガタと震わせる。
「あぁダメダメ。私があまりに美しいからと言って、そんなに見つめてしまっては‥‥。しかし、気持ちは分かるから、どんどん見たまえ。ほらほらほらっ!」
怯える豚鬼戦士に迫りながら、薔薇雄が必殺の一撃を放つ。
「‥‥豚鬼鍋は美味しいのでござろうか‥‥?」
ブクブクと泡を吐く豚鬼戦士を見つめながら、又三郎が大粒の汗を浮かべて呟いた。
「‥‥肉が上手いかどうかが心配だが‥‥まぁ煮込めば大丈夫だろ‥‥」
縄を使って豚鬼戦士達を縛り上げ、嵐堂が参の湯の中に放り込む。
「‥‥俺は遠慮しておく。サジマも喰うなよ」
ジュルジュルとヨダレを流すサジマを睨み、銕三郎が呆れた様子で溜息をつく。
「ごるびー君も鍋には入るなよ。‥‥食べられてしまうからな」
そして輝は怯えるごるびー達の肩を叩き、苦笑いを浮かべるのであった。