●リプレイ本文
「‥‥ぬう、何たる事だ! 我輩の同胞が盗賊などに身を堕としておるとは! しかし、痩せても枯れても我が同胞、さぞかし立派な筋肉を持っているに違いない。筋肉の無い可哀想な村人たちはきっと難儀しておるだろう。よし、我輩も責任をとって一肌脱ごうではないか!」
稲妻をバックにポージングを決め、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が雄たけびを上げる。
「俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもの! ついでに、ミンメイちゃんも俺のものってか!」
勢いよくミンメイに飛びつき、朝宮連十郎(ea0789)が嬉しそうに頬擦りした。
「そ、そうなのアル‥‥か?」
キョトンとした表情を浮かべ、ミンメイが首を傾げる。
「取り敢えず、先に酔っぱらわせればいいんだよね☆ んじゃ、もの凄く悪酔いするような脂っこい料理とか、塩辛い料理を沢山出して、お酒を呑ませてしまえば大丈夫かな? お水を飲ませずにお酒だけを飲むと、悪酔いしやすいって言うから‥‥できるだけ乾き物の料理を作ろうっと☆」
苦笑いを浮かべながら、郭梅花(ea0248)が調理場にむかう。
ジャイアント達を招待する場所はあらかじめ決められているため、料理や材料などは自由に使用できるようになっている。
「それじゃ、女装しておくか。ホントはやりたくないんだけど、敵を油断させるにはこれが一番だからな。決して女装好きじゃないぞ! ‥‥仕方なくやっているんだ‥‥」
自分に言い聞かせ、リフィーティア・レリス(ea4927)が着物を持って溜息をつく。
すでに着替える場所も用意してあるため、ここで逃げるわけにはいかないようだ。
「あれが噂の『サムライジャイアントs(仮)』か。なんだか耳障りな笑い声が聞こえてきたね」
ジャイアント達に怪しまれないようにするため、安堂嶺(ea7237)が動きやすい服に着替えて物陰に潜む。
ジャイアント達は白い横線の入ったオレンジ色の服を着ており、耳障りな歌を腹の底から機嫌よく笑っている。
「凄い下手な歌だよね。耳の奥がジンジンするよ」
道化の半仮面を被って正体を隠し、フィール・ヴァンスレット(ea4162)がジャイアント達を警戒した。
ジャイアント達は朝から酒を飲んでおり、まわりの村人達にちょっかいを出している。
「おらおら、邪魔だ! ジャイアント様の御通りだぞ!」
巨大な棍棒を肩に担ぎ、ジャイアント達が豪快に笑う。
「ジャイアン‥‥トさん達の噂を聞いて華国から参りました。なんでも失神するほど素晴らしい歌声の持ち主だとか〜。ぜひ僕にも聴かせて頂けませんか〜?」
瞳をキラキラと輝かせ、御子柴叶(ea3550)がジャイアント達の前に立つ。
「当たり前だろ! 俺は天下のジャイアント様だぞ!」
自分の胸をゴツンと叩き、ジャイアント達がニヤリと笑う。
「村には大した物は残っておりません。代わりと言ってはなんですが、あちらに心ばかりのささやかな宴の席を設けております。今回のところは、これでひとつ、どうか良しなに‥‥」
しおらしく演技をして、嶺がジャイアント達を案内する。
誰も怪しんでいないため、ジャイアント達が嶺の後に続いて歩く。
「とある村で話を聞いてきたんやが、ジャイアントは巨腹(きよはら)『腹が出とる。通称番長。こわい』、鷹嘴(たかはし)『額に鷹の嘴をつけとる。身嗜みようて小奇麗やけど、所詮』、鵠坊(こくぼう)『欧風の白鳥の舞の衣装を着た少年侍‥‥ゆうても所詮』、悪屁(あべ)『屁が臭い。受けが得意。‥‥そういう意味あらへん。今季前半は神懸りな棍棒捌きで手えつけられなんだ』、狗頭(くどう)『犬の頭つき毛皮を被っとる。棍棒はからっきしや思われとうたけど、今季はスマッシュEXを当てて皆をたまげさせた』、鷹嘴(たかはし)『口に鷹の嘴をつけとる。通称宴会局長、脱ぎ上戸。棍棒苦手やけど裸で迫るで』、狗腸(くわた)『犬の頭つき毛皮の腹巻しとる。巨腹とダチ』、餓腹(うえはら)『いつも空きっ腹』、模鴇(もとき)『わての贋者‥‥なわけあらへん。鴇の模型つき兜を被っとる。チャンスに強い』の9人や。他にもおるけど、ここには来ていないようやな。なんでも噂じゃ、昔世話になった流馬(ながしま)ゆう人の無念晴らそうとして村を追い出されてしまったらしいんや」
どこか遠くを見つめながら、柊鴇輪(ea5897)が資料を読む。
「まさかここに母親が来ているとは思わないだろうけどな」
ジャイアント達の出自を調べあげ、連十郎(ea0789) が会場に母親達を招待した。
母親達は駄目人間と化した息子達を更正させるため、今のうちからお仕置きをする準備を整えている。
「それじゃ、宴会場にれっつごーアルよ♪」
ぴょこぽんと右手を掲げ、ミンメイがニコリと微笑んだ。
「‥‥宴会。ジャパンの文化に触れる良い機会です。華国人同士、ミンメイさんと一緒に行きますか」
宴会場からジャイアント達の騒ぎ声が聞こえたため、叶がミンメイと一緒に部屋へむかう。
「こ、こら! ミンメイちゃんに触るんじゃねぇ!」
瞳をキピィーンと輝かせ、連十郎が露骨に嫌な顔をした。
「ほらほら、邪魔よ。それだけ元気があるなら、これを宴会場まで運んでね☆」
連十郎達に料理を渡し、梅花が調理場に戻る。
「まっ、しゃあねぇな。ミンメイちゃんも一緒だし」
そして連十郎はミンメイの後に続いて、宴会場にむかうのだった。
「もう、えっちなんだから」
宴会場ではあおいがウサギの格好でジャイアント達の相手をしており、過激なスキンシップを軽くあしらっている。
「食べさせてあげるわ、ジャイ。アーン」
(ダジャレかよ!)
愛ロバのすにーくすたぁのツッコミも気にせず、あおいがジャイアント達に毒入りの料理を食べさせた。
「うっ‥‥うめぇ!」
毒のピリピリ感がたまらないのか、ジャイアント達が料理を絶賛する。
普段からまともなものを食べていないため、なかなか毒の効果が出ない。
「さすがジャイくん。料理の味が分かるわね」
親しみをこめて愛称で呼び、あおいがニコリと微笑んだ。
「当たり前だろ。俺達は違いの分かる男だからな」
下品な笑みを浮かべながら、ジャイアントが酒を呑む。
「‥‥我輩、酒はイマイチ‥‥」
ブルブルと首を振り、ゴルドワが視線を逸らす。
「なんだと俺の酒が呑めないのか!?」
不機嫌な表情を浮かべ、ジャイアントがむりやり酒を呑ませる。
「‥‥ワハハハハ! もっと酒は無いのか〜!!」
途端に表情が変わり、ゴルドワがガブガブと酒を呑む。
「おっ、いい呑みっぷりじゃねえか。‥‥気に入ったぜ」
ゴルドワと仲良く肩を組み、ジャイアントが豪快に笑う。
(「‥‥気のせいかも知れないけど、ゴルドワさんまでジャイアント化しているね」)
物陰に隠れて汗を流し、フィールがゴルドワの事を心配した。
「どんどん呑んでくださいね〜。料理もたくさんありますから〜」
ジャイアント達に怪しまれないようにするため、レリスがわざと声色を変えて彼らの事を油断させる。
「あれ? 箸が折れているの? だったらコレを使いなよ」
ジャイアント達にお酌をし、嶺が夾竹桃の箸を渡す。
「もう少し肌をすり寄せて‥‥コレをグイッと呑ませてくれる」
不敵な笑みを浮かべながら、あおいが嶺の耳元で囁いた。
嶺は小さくコクンと頷くと、ジャイアントに毒入りの酒を飲ませる。
「なんか眠くなってきたな。わしは酔っているんやろうか」
頭をフラフラとさせながら、鴇輪がコロリと転がった。
「先に酔いつぶれてどうするの。取り敢えず端っこに運んでおかないと‥‥」
ミンメイと一緒に鴇輪を運び、梅花が大きな溜息をつく。
鴇輪は酒を呑み過ぎたためか、スヤスヤと寝息を立てている。
「よく見りゃ、お前イイ女だな。こっちに来い」
いやらしい笑みを浮かべながら、ジャイアントが嶺の事を押し倒す。
「あ〜〜ん、怖〜い」
リーダー格のジャイアントに言い寄り、嶺が瞳をウルウルとさせる。
「おい、やめんか。俺も混ぜろ」
豪快に服を脱ぎ捨て、巨腹が物騒なモノを出す。
「えええええっ!」
予想外の反応が出たため、嶺が慌てて後ずさる。
それと同時に他のジャイアント達まで服を脱ぐ。
「お楽しみは最後にね。まだ宴は始まったばかりよ」
ジャイアント達を説得し、あおいが嶺にウインクする。
「それもそうだな。今日はとても気分がいい。俺が一曲歌ってやろう」
豪快な笑みを浮かべて立ち上がり、ジャイアント達が耳障りな歌を歌いだす。
「は、早く耳栓を‥‥」
耳をつんざくほどの歌声にめまいを感じ、嶺がフラつきながらも耳を塞ぐ。
「おぉ! 歌か! 我輩も歌うぞ! ボゲェェェ〜♪」
ジャイアント達と肩を組み、ゴルドワが音程の外れた歌を歌う。
「うわっ‥‥、なんだこりゃ‥‥。耳栓なんて意味がねぇ!」
あまりの煩さに両耳を押さえ、レリスがパタリと倒れこむ。
「これって歌と言うよりは衝撃かも‥‥」
ジャイアント達の大合唱に耐え切れず、梅花がグルグルと目を回す。
「あたしもうダメぇ‥‥」
トロンとした表情を浮かべ、あおいがジャイアントのそばに倒れこむ。
「何だ、この歌声は‥‥。脳味噌がかき混ぜられるようだ」
近所の屋根から宴会場を覗き込み、氷川玲(ea2988)が険しい表情を浮かべて膝をつく。
一応、耳栓をしているのだが、集団で歌を歌われてしまったため、あまり効果がないようだ。
「宴会場にいたら大変な事になっていたな」
オーラエリベイションを発動させ、リーゼ・ヴォルケイトス(ea2175)が身軽な格好になる。
「しかし、誰も席を立たないな。こうなったら一気に片付けるしかないか」
ジャイアント達が歌を熱唱しているため、玲が呆れた様子で溜息をつく。
「ぽるしぇ、すまぬがおぬしは外で待っておれ」
そう言って緋月柚那(ea6601)はぽるしぇ(驢馬)に別れを告げ、玲達と一緒に宴会場へとむかうのだった。
「う〜んう〜ん‥‥助けて連十郎衛門〜。僕がのびたら、親切な連十郎さんが助けてくれるはずです。有料で‥‥」
うわ言のようにして呟きながら、叶が連十郎の名前を何度も呼ぶ。
「‥‥たくっ、しゃあねえな。本当ならもう少しミンメイちゃんとこうしていたかったんだが‥‥」
ジャイアント達の歌声から逃げるため、ミンメイと一緒に押入れの中にある布団に包まっていたのだが、叶から何度も助けを求められたため仕方なく連十郎が顔を出す。
「なんだ、てめぇらは!」
不機嫌な表情を浮かべながら、ジャイアント達が連十郎を睨みつける。
「それはこっちの台詞だ!」
叶からお礼の報酬をふんだくり、連十郎がバーストアタックを放ち、ジャイアントの持っていた棍棒を砕く。
「格好いいアル、連十郎」
瞳をキラリと輝かせ、ミンメイが連十郎を応援する。
「てめー! 連十郎の癖に生意気だぞ」
棍棒を持って一斉に立ち上がり、ジャイアント達が鼻を鳴らす。
「お前のものは俺のもの‥‥おぬしのものは柚那のもの、じゃ★」
背後からジャイアントに蹴りを放ち、柚那が嬉しそうに胸を張る。
「そんなに興奮するな。せっかくのイイ男が台無しだぞ」
ジャイアント達をなだめながら、リーゼが耳元で妖しく囁いた。
「‥‥少し油断したようだね」
背後からゆっくりと近づきメタボリズムを詠唱し、フィールが笑顔を浮かべてデスを放つ。
「鬼道衆が一人、殺戮切支丹のフィール‥‥その御首、頂戴しに参上‥‥」
仮面を勢いよく外し、フィールがニヤリと微笑んだ。
「やりやがったな」
慌てた様子でフィールを睨み、巨腹が棍棒を振り下ろす。
「騙される方が悪いのだ。鬼道衆弐席、喧嘩屋と言えば分かるか? 宴会の続きは閻魔様とやってこい」
混乱に乗じて模鴇の首を掻っ切り、玲が全身に返り血を浴びる。
「まさか‥‥、お前」
「知っているのか!? コイツらを!」
大粒の汗を浮かべながら、巨腹が狗腸の身体を掴んで揺らす。
「なんや騒がしいな。静かにせい!」
寝ぼけた様子で目をこすり、鴇輪が不機嫌そうに棍棒を放り投げる。
「ひょっとして‥‥眠っていたのかな? 頭がガンガンするよ」
ようやく意識を取り戻し、嶺がグッドラックを詠唱した。
「ダメ‥‥そんな大きなもの、入らないわ‥‥」
寝ぼけた様子で巨腹に抱きつき、あおいが寝技に持ち込んだ。
「こりゃ、たまらねぇな」
物騒なモノをぷらんと揺らし、巨腹が下品に笑う。
「助けて、すにーくすたぁ! 道具を出してー!」
ジャイアント達に如何わしい事をされそうになったため、あおいがすにーくすたぁの名前を呼ぶ。
すにーくすたぁは障子紙を突き破り、ジャイアント達に体当たりを食らわせた。
「ある時はばにーがーる、ある時は突っ込んでないツッコミ役、ある時は誘い受け? ――しかしてその実態は、如月バニー参上!」
(変わってにゃーッ!)
ウサギのバックパックを素早く穿き、如月あおい(ea0697)が可愛らしくポーズを決める。
「い、いきなり何だ!?」
驚いた様子であおいを睨み、巨腹が妙なモノをチラつかす。
「問答無用! バニーフラーッシュ☆」
巨腹の股間を蹴り飛ばし、あおいがニコリと微笑んだ。
「うっ‥‥、なんだ。妙に腹がイテェ!」
ようやく薬が効き始め、巨腹が何故か内股になる。
「僕も連十郎さんに助けてもらった分、働かないと‥‥。てぃ!」
小型大仏像で悪屁を殴り、叶が荒く息を吐き捨てた。
「叶、よくやったぞ! 後は俺に任せておけ!」
峰打ち程度にスマッシュを放ち、連十郎がニヤリと笑う。
「(♪ちゃらららっちゃら〜)どこでもロバ〜困っているヒトがいればゆなえもんは現れる〜」
能天気な声を響かせながら、柚那がぽるしぇを呼ぶと、ありったけのキュウリを投げる。
「キュウリに気をとられたね」
ジャイアント達の血でまみれ、フィールが刃物を使って狗頭の首を掻き切った。
「ひ、卑怯だぞ!」
ガタガタと震え、巨腹が涙を流す。
「‥‥悪人に人権などない!」
バックステップを使って狗頭の攻撃をかわし、リーゼがシュライクを使って首を刎ねる。
「‥‥地獄で後悔するがいい」
ナイフを突き立て巨腹の肝臓を抉り出し、玲が返り血を浴びながら、ナイフを素早く切りあげた。
「なんや凄い事になってるな。身体が返り血でベトベトや」
厠に行こうとして立ち上がり、鴇輪が驚いた様子で汗を流す。
「ちとやり過ぎじゃねえか。マズイな。コイツらの母親を呼んじまったよ」
気まずい表情を浮かべながら、連十郎が疲れた様子で溜息をつく。
「まぁ、自業自得ではあるがな。それよりもミンメイが気絶しているぞ」
そう言ってゴルドワがミンメイを指差し、連十郎に頼んで医者に連れて行かせるのであった。