●リプレイ本文
「‥‥今回は‥‥肉球真拳かぁ‥‥なんだか面白そうねえ☆ まがりなりにも武道家なんだから、こういう機会で他の流派のものも習うのもいいわね☆」
肉球真拳の極意を習得するため、修行を続けている仲間達を見つめながら、郭梅花(ea0248)が見よう見真似でポーズを決める。
肉球真拳は指を肉球に見立て折り曲げ全身の気を集中させ、相手に対して素早く突き出す技らしい。
「華国だかジャパンには、指で急所を突くだけで相手の体を砕く暗殺拳があるそうだが、もしかしてこれがそうなのかも知れないな。ちなみに秘拳の伝承者は、正体を明かしてはならないそうだ」
真剣な表情を浮かべながら、ゲレイ・メージ(ea6177)が顔を隠す。
ミンメイも完全に騙されているためか、感動した様子でピョンピョンと飛び跳ねている。
「ミンメイちゃん、ソレ騙され‥‥いや、ミンメイちゃんが存在すると言うなら、間違いねぇ! 肉球真拳、極めてみせるぜ!」
ミンメイの心をガッチリと掴むため、朝宮連十郎(ea0789)が何処かへと消えていく。
「こんな感じでやるのね」
赤と白に防寒服を身に纏い、如月あおい(ea0697)が三田の格好で梅花達の真似をする。
ロバのすにーくすたぁにも真っ赤なお鼻に見立てた紅小鉢が鼻についており、あおいの後ろで複雑な心境に陥っているようだ。
「丁度良い事に、私は先日肉球の洗礼を受けたばかり。あの時の肉球のもふもふ感を思いだしながら、集中致す。‥‥‥‥今だ!」
大袈裟に気を練るポーズをとりながら、天羽朽葉(ea7514)が気合を入れてオーラショットを叩き込む。
もちろんミンメイに気づかれないようにするため誤魔化す事に重点を置き、ミンメイが視線を逸らした一瞬のうちに技を決める。
「す、凄いアル! やっぱりこれは本物だったアルね!」
瞳をランランと輝かせ、ミンメイが朽葉にむかって飛びついた。
「‥‥今ひとつ心の肉球具合が足りぬようだな。ふむ。もう少し要素を深めてみると致すか」
この状態ではまだまだ見破られる可能性が高いため、朽葉がうまく誤魔化す方法を考えながら気を練るフリをする。
「それじゃ、期待しているアル! ところで柚那は見物アルか?」
緋月柚那(ea6601)がマッタリしている事に気づいたため、ミンメイが心配そうに首を傾げて呟いた。
「うむ、柚那には緋月家に代々伝わる由緒ただしき武術『北斗にくきう神拳』があるのじゃ。肉球ではなくにくきうがポイントじゃ★」
ミンメイ達に生暖かい視線を放ち、柚那が苦笑いを浮かべて答えを返す。
「ミンメイちゃん! 肉球真拳の伝承者をぶっ倒してきたぜ! もちろん秘伝の奥義を会得したぜ!}
満面の笑みを浮かべながら、連十郎が血達磨になった酔っ払いを放り投げる。
酔っ払いはミンメイから騙し取った金を使い果たしてしまったらしく、連十郎の拳にも必要以上の力が入ってしまったらしい。
「さすが連十郎アル。肉球真拳の極意を会得するなんて‥‥」
木の根元に倒れた酔っ払いを寝かせ、ミンメイが感動した様子で連十郎に抱きついた。
「当たり前だろ! 俺は誰にも負けねぇぜ。ミンメイちゃん以外にはな」
ミンメイの甘い香りに眩暈を感じ、連十郎が恥かしそうに視線を逸らす。
「‥‥やはり肉球真拳はでっち上げか」
グッタリと倒れた酔っ払いの顔を見つめ、ゲレイが呆れた様子で溜息をつく。
「肉‥‥球‥‥いうたら‥‥これ?」
キョトンとした表情を浮かべ、柊鴇輪(ea5897)が酔っ払いは何かを揉み始める。
酔っ払いは何か訳の分からない事を叫びながら、グッタリとした表情を浮かべて意識を飛ばす。
「‥‥バッチリ?」
納得する事が出来なかったのか、鴇輪が不思議そうに指をクネクネとさせる。
「それは違うんじゃないのかな?」
苦笑いを浮かべながら、アーク・ウイング(ea3055)が大粒の汗を流す。
アークはずっと訓練をしているフリをしていたのだが、さすがに鴇輪が間違った方向に突っ走りそうになったため、わざわざツッコミに来たらしい。
「このままじゃ、山鬼戦士には勝てないアル! 作戦会議をするアルよ!」
そしてミンメイは険しい表情を浮かべながら、今にも壊れそうな小屋へと仲間達を案内した。
「肉球真拳がダメなら、華国3千年の歴史『野球拳』で勝負というのはどう? まずは運試しに誰が山鬼戦士と戦うか、このサイコロを振って決めるのよ。もし2が出たらあたしが囮になるわね」
半分だけ服を脱ぎ、あおいが勢いよくサイコロを転がした。
「えっと‥‥‥‥2ね。こ、これは練習。今度は本番こそ本番よ! ていっ! ‥‥‥‥行って来るわ」
青ざめた表情を浮かべながら、あおいが今までコスプレしてきた服を纏う。
「‥‥餌‥‥食べ放題?」
うさぎ、人魚、きのこ、たまごの順番にあおいがコスプレをしていったため、鴇輪がお腹をグゥと鳴らしてダラダラと涎を流す。
「よし! 今日は鍋にするかの」
あおいの顔をマジマジと見つめ、柚那が掌をポンと叩いて今晩の夕食を決める。
「ちょっ、ちょっと! ちょっと不吉な事を言わないでよ! まるであたしが山鬼戦士に食べられるみたいじゃない!」
仲間達の視線を全身に浴びながら、あおいが涙まじりに抗議した。
「とりあえず頑張ってね☆ 生暖かく見守っていてあげるから」
あおいの肩をぽふりと叩き、梅花がニコリと微笑んだ。
「何か作戦を考えないと、ここままじゃマズイな」
険しい表情を浮かべながら、ゲレイが黙って腕を組む。
「彼女も酔っぱらいのでっち上げに騙されるくらいだから、それらしく見せておけば誤魔化せるんじゃないかな」
仲間達が深刻な表情を浮かべているため、アークがミンメイに気づかれないように小声でボソリと呟いた。
「何をコソコソとやっているアルか?」
アーク達が作戦会議をしていたため、ミンメイが興味深そうに寄って来る。
「‥‥ミンメイちゃんの応援さえあれば、負ける気がしねぇぜ!」
そして連十郎は誤魔化すようにしながら、ミンメイの身体を力強く抱き締めた。
「さぁ! 野球拳で勝負よ!」
フル装備したコスプレ姿で山鬼戦士の前に立ち、あおいが覚悟を決めて勝負を挑む。
山鬼戦士は涎をダラダラと流しながら、あおいの身体を嘗め回すように見つめている。
「な、何よ、その顔は! 涎なんて流して‥‥。す、すにーくすたぁ! 逃げちゃ駄目ぇ!」
すにーくすたぁに飛び乗り逃走を図ろうとしていたのだが、スタコラとに逃げられてしまったため、あおいがコスプレ衣装を脱ぎ捨て山鬼戦士を挑発した。
「こ、これも作戦なんだから!」
涙をボロボロと流しながら、あおいが裸でミンメイに飛びつき愚痴をこぼす。
「ほ、本当かな?」
苦笑いを浮かべながら、梅花があおいに少しだけ同情した。
「いまこそ肉球真拳を使う時アル!」
瞳をキラリと輝かせ、ミンメイが拳をギュッと握り締める。
「‥‥ミンメイの肉球」
ミンメイの胸をムニムニと揉みながら、鴇輪が全く悪気のない様子で口を開く。
「そ、それは違うアル!」
慌てた様子で胸を隠し、ミンメイがジト目で睨む。
「てめぇ! そんな羨ましい事をするんじゃねぇ!」
鴇輪の頭をポカンと殴り、連十郎が慌ててミンメイを引き離す。
「なんだか山鬼戦士を怒らせちゃったようだね」
苦笑いを浮かべて山鬼戦士を指差し、梅花がオーラショットをお見舞いする。
「どうやら戦うしかないようじゃな。いくぞ、ぽるしぇ!」
山鬼戦士めがけてコアギュレイトを放ち、柚那がぽるしぇと連携を組むと得意の下駄蹴りを叩き込む。
「‥‥さあ、くらうがよい、肉球真拳!!」
ギリギリまで山鬼戦士に接近し、朽葉がソニックブームを撃ち込んだ。
山鬼戦士はバランスを崩してフラつくと、空ろな瞳で柚那達の顔を睨みつける。
「おお、呪文を唱える暇がないのに、まるで魔法のようだ。肉球真拳恐るべし‥‥」
ミンメイに怪しまれないようにするため、ゲレイが誤魔化すようにして驚いた。
「桃色の輝きが肉球の証し! ‥‥これが私の心の肉球!」
再び肉球のもふもふ感を思い出し、朽葉が更に必殺のふにふに感を加え、オーラソードを叩き込む。
「これこそ、肉球真拳の奥義のひとつ。肉球の力を雷撃に変える必殺技、その名も肉球雷神拳!」
それらしく見えるように格好良くポーズを決め、アークが山鬼戦士と距離を保ちライトニングサンダーボルトを撃ち込んだ。
「ちなみに、雷だけじゃなくて、火、水、氷、風、地、光、影の計八つの奥義があるみたいだから」
爽やかな笑みを浮かべながら、アークがミンメイに技の説明をし始める。
「これぞ、肉球真拳、水の奥義、肉球水弾拳!」
素早くウオーターボムを撃ち込み、ゲレイが山鬼戦士の体力を徐々に削っていく。
「そして、これが肉球真拳、氷の奥義、肉球氷風拳だっ!」
山鬼戦士に反撃する隙を与えず、ゲレイがアイスブリザードを放つ。
「師匠を超えた真の肉球真拳を喰らえ!」
拳ひとつで山鬼戦士に勝負を挑み、連十郎がミンメイの応援を受けながら、バーストアタックEXで相手の装甲を破壊し骨をも砕く。
「ぐちゃぐちゃ‥‥ねちょねちょ‥‥」
グッタリと倒れた山鬼戦士の死体を見つめ、鴇輪がツンツンと突いて生死の確認をする。
「ふむ、見事な一撃であったな」
ミンメイが全く気づいていないため、朽葉が真実を語らず軽く流す。
「やったぜ、ミンメイちゃん!」
ミンメイの頬に口付けし、連十郎がふたりで喜びを分かち合う。
「しかし、肉球真拳は魔法より疲れてしまう。残念だがウィザードの役には立ちそうもない」
残念そうな表情を浮かべ、ゲレイが大きな溜息をつく。
「やはり実践向きではないようじゃな」
そして柚那は山鬼戦士の死体を運び、鍋の具に出来るか調べてみるのであった。