●リプレイ本文
「しっかし、ジャパンってのは、本当に何でも祀るんだな〜。鍋もそういう対象になるって辺りが他の国には無いトコだし‥‥」
ミンメイが貴重な紙に描いた地図を見つめ、リフィーティア・レリス(ea4927)が鍋の奉られている祠を目指す。
祠のある場所までは詳しい道程が書かれているため、途中で道を間違わないようにしながら地図を何度も見て歩く。
「今回はお鍋の秘密ですかぁ〜‥‥。ミンメイさんも忙しい人ですねぇ〜‥‥。でもお鍋は大好きだから謎を解いて伝説の鍋料理を食べるですよぉ〜!」
ミンメイのまわりをグルグルと飛び回り、ヴィヴィアン・アークエット(ea7742)がニコリと笑う。
祠に着く前からお腹が空いているためか、早く伝説の鍋を使って美味しい鍋料理が食べたいらしい。
「今夜は鍋パーティあるね♪ みんなもそれでイイあるか?」
満面の笑みを浮かべながら、ミンメイが仲間達に確認する。
「私は真理を追究する錬金術師だ。好奇心の赴くまま、謎を解明したい」
鍋料理にはまったく興味がないのか、ゲレイ・メージ(ea6177)がさらりと答えを返す。
「そ、そうアルね。頑張るアル!」
ゲレイの一言で本来の目的を思い出し、ミンメイが拳をギュッと握り締める。
「ミンメイ殿と会うのも久しぶりであるな! よもや我輩の事を忘れたとは言うまいが!」
豪快な笑みを浮かべながら、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)がミンメイの肩をバシンと叩く。
「も、もちろんアルよ」
その勢いでミンメイが前のめりになったため、慌てた様子で宙を仰いで元に戻る。
「がっはっはっ! それは良かった。まぁ、我輩の顔を忘れている事はないと思ったが‥‥」
納得した様子で頷きながら、ゴルドワが両腕を組んで高らかに笑う。
「さぁて、今回もミンメイちゃんと一緒に頑張るわよ〜☆ ‥‥で、今回の依頼は‥‥鍋祠か。何だか面白そうだわね♪」
ミンメイの傍を離れないようにしながら、郭梅花(ea0248)がニコリと微笑んだ。
ミンメイと一緒に数多くの依頼をこなしてきた事で彼女は助手として認められ、いまではミンメイの片腕としてミンメイ書房の本作りを手伝っているようだ。
「ミンメイちゃんとなら、例え深淵の鍋底だろーと何処までもドンと来いだっ! ‥‥てか、今回の報酬金額を見るに、結構資金難だったりすんのかな、ミンメイちゃん。困った事がありゃあ、何時でも俺を頼ってくれよ?」
いつもと比べて報酬が少ない事が気になり、朝宮連十郎(ea0789)が心配した様子でミンメイの手を握る。
「わ、分かったアル‥‥」
ミンメイは苦笑いを浮かべているばかりだが、彼女の表情を見る限り連十郎の言った事に間違いはないだろう。
「さて‥‥伝説の鍋‥‥ですか? 一体どのような物なのでしょうね? いまからとっても楽しみです♪」
そして大曽根浅葱(ea5164)は湯気の上がる祠の中へと入っていった。
『伝説の鍋とは!』
鍋が与えた様々な試練を乗り越え、最後の戦いに勝利した者だけが、その鍋を手に入れる事が出来るという究極の鍋!
それはありとあらゆる物を調和させ、世界を見通す事も出来ると言われている。
「‥‥それが伝説の鍋の正体らしい」
劇画タッチの表情を浮かべ、鷹波穂狼(ea4141)が伝説の鍋について熱く語る。
一部、音声が変えられている部分もあったため、伝説の鍋は色々な意味で危険な要素を含んでいるのかも知れない。
「そんなに凄い伝説があったアルか。だから闇の葬られたのアルね」
あまりの壮絶さに汗を流し、ミンメイが熱心にメモを取っていく。
「きっと鍋祠って言うからには、年月を経た鍋に手足とか生えて魔物になったのがウヨウヨいて、奇声を上げながら侵入者に襲い掛かって来るのかも知れないね。しかも倒した途端に自爆するとか」
物凄く凶悪な姿をしている鍋を浮かべ、設楽葵(ea3823)が身体をガタブルと震わせた。
鍋祠には色々な噂があるため、想像ばかりが膨らんでいる。
「‥‥気をつけろ。あの鍋の中から髪の長い黒髪の女が這い出てくるぞ!」
警戒した様子で祠に祭られている鍋を睨み、楼焔(eb1276)が金属拳をはめて身構えた。
「何ったって伝説の鍋とまで呼ばれる代物だ。どんな危険があるか分からねぇな」
妙にシリアスな表情を浮かべながら、連十郎がミンメイの前に立って日本刀を握り締める。
「真ん中の鍋だけ‥‥湯気が出ているという事は‥‥あの鍋に秘密が隠されているのかも‥‥知れませんね‥‥。何か怖いです‥‥お姉さま‥‥」
湯気の出ている鍋を見つめ、浅葱が不安そうに葵の腕にしがみつく。
「はら‥‥へった‥‥」
鼻をヒクヒクとさせながら、柊鴇輪(ea5897)が鍋の中を覗き込む。
鍋の中からはいい臭いがしているため、とうとう我慢が出来なくなったらしい。
「うらめしや〜」
それと同時に如月あおい(ea0697)がお化けの格好をして鍋の裏から顔を出し、今にも鍋の中に飛び込もうとしていた鴇輪と目が合った。
「ごはんは‥‥後ろ?」
あおいの顔をマジマジと見つめ、鴇輪が瞳をランランと輝かせる。
「へっ‥‥? 後ろの飯屋‥‥? じゃなくてっ! こ、こら! すにーくすたぁ! そんなにお尻を押さないで! 彼女とキスしそうじゃない! きゃあ!?」
鴇輪の唇を避けようとしてバランスを崩し、あおいが彼女を巻き込み悲鳴を上げて鍋の中へと転がり落ちた。
「あ、あおいさん!?」
すぐさまヴィヴィアンが腰に紐を巻き、慌ててあおい達の後を追っていく。
「‥‥どうやら行くしかないようね。興味半分‥‥恐怖半分ね‥‥ってトコだけど‥‥」
心配そうに鍋の中を覗き込み、梅花がゴクリと唾を飲み込み汗を流す。
鍋の中から生暖かい湯気が出ており、中がどうなっているのか分からない。
「まさか死んだって事はないよな」
ライトの効果が期待出来そうになかったため、レリスが青ざめた表情を浮かべて鍋を覗く。
「今の我輩に怖い物などない! 火の鳥と化して鍋の中に突撃せん!」
仲間達があまりに躊躇しているため、ゴルドワが雄たけびを上げて飛び上がり、鍋の中に飛び込んだ。
「とにかく下りて調べてみよう」
そしてゲレイは鍋に縄梯子をかけると、覚悟を決めて穴の中に下りていくのであった。
「こういう穴って怪しい組織のアジトとか、地下帝国の入り口だったりするんだよな」
何度も下を確認しながら、レリスがゲレイに続いて縄橋子を下りていく。
鍋の底は洞窟になっているらしく、あちこちから湯気が上がっている。
「私が聞いたのは、『灰かぶり姫』に似た話だと言う事だったが‥‥」
警戒した様子であたりを睨み、ゲレイがぬかるんだ地面に降り立った。
香にも似た香りが漂っているため、何だか頭がクラクラする。
「みんな無事アルか〜」
レリスにライトをかけてもらい、ミンメイがあおい達の名前を大声で叫ぶ。
「そんなに大声を出さなくても聞こえているわよ。そんな事より手を貸して!」
地面にすっぽり埋まったゴルドワの手を掴み、あおいが疲れた様子で溜息をつく。
「わ、分かったアル。お、重いアルな」
ようやくゴルドワを引っ張り上げ、ミンメイがその場にへたり込む。
「皆さ〜ん、あっちに温泉があるみたいですよ〜」
大発見とばかりに指をさし、ヴィヴィアンが洞窟の奥からやって来る。
「湯気‥‥きのこ‥‥出汁?」
クンクンと鼻をヒクつかせ、鴇輪がヴィヴィアンの指差した方角へと歩いていく。
まるで何かに取り憑かれているかのようにフラフラとしているため、他の仲間達も心配した様子で彼女の事を見つめている。
「中は‥‥温泉? それに‥‥あのキノコは‥‥何かしら? あ‥‥あれって山海の珍味じゃない。あれも‥‥これも‥‥どうしてあるの!?」
大量の胞子を吸い込み、梅花が熱心に岩を削っていく。
彼女の中ではこれが山海の珍味に見えるらしく、何だかとっても嬉しそうだ。
「妙に‥‥頭の中がぼぉ〜っとするです‥‥熱い‥‥」
ボンヤリとした表情を浮かべ、浅葱がスルスルと巫女服を脱いでいく。
一応、温泉には入っているが、浅葱もキノコの毒にやられている。
「みんなも入ろ? いい湯加減よ」
温泉に勢いよくざぶんと浸かり、あおいが仲間達を手招きする。
ふたりとも妙な幻を見ているためか、裸でいてもまったく恥らう様子がない。
「何だか様子がおかしくないか‥‥?」
大粒の汗を浮かべながら、焔が慌てて後ろに下がる。
それと同時に焔の中で警告音がピコピコ鳴った。
「父、さまぁ‥‥。兄、さまぁ‥‥砂、布巾‥‥」
妙に身体をクネクネとさせながら、鴇輪が焔に抱きつき微笑んだ。
「皆さんも一緒に入りましょうよ。いい湯加減ですよ」
幸せそうな表情を浮かべ、浅葱がほんわかと笑う。
「それもそうね。みんな汗だくのようだし‥‥」
次第にキノコの胞子にやられ、葵が服を脱いで浅葱に抱きついた。
「‥‥美女達に誘われて断る理由もないしな」
明後日の方角を見つめながら、ゲレイが裸で岩と肩を組む。
ゲレイの中では岩が美女に見えているため、ひとりで楽しい会話を続けている。
「何だか考えるのも面倒になってきちゃった。私も身体を温めようっと」
キノコの中に身体を埋め、ヴィヴィアンが幸せそうに歌を歌う。
仲間達が暴れた事でキノコの胞子が舞ったため、よほどの事が無い限り冷静でいる事は難しい。
「俺達も入ろうぜ、ミンメイちゃん」
岩にむかって話しかけ、連十郎がキノコをムシャムシャと頬張った。
「連十郎が壊れたアル。岩を揉んで幸せそうアル‥‥」
青ざめた表情を浮かべながら、ミンメイが大粒の汗を流す。
ミンメイは連十郎に真実を伝えようとしていたが、あまりにも彼が熱心に岩と話すため恐くて声がかけられない。
「みんなキノコを食って幻を見ているのか。俺も気をつけておかないとな」
実の姉の幻を見そうになりながら、レリスがフラつく頭で考える。
このままでは幻覚キノコの影響で、外に出る事さえ出来ない。
「な、鍋が襲ってくる!?」
とうとうキノコを食べてしまい、焔がパニックに陥り悲鳴を上げる。
「『地獄の釜』の話を聞いた事があるが、まさか実在するとはな‥‥」
二本足を生やした巨大な鍋が追いかけられる幻覚を見ながら、ゲレイがアイスブリザードを使って明後日の方向に攻撃を放つ。
「ま、魔法が鍋を避けている。一体、どうなっているの!?」
剣を抜くフリをして浅葱を睨み、葵が彼女を押し倒し色々な意味で戦った。
「‥‥面白い。まさしく『鍋将軍』たるこの我輩にこそ相応しい。ぬおおおおおおおおおおお‥‥」
大きな鍋を受け止めるポーズをとり、ゴルドワが凄まじい雄たけびを上げる。
「このまま一気に喰らいつくぞ!」
勢いよくキノコに突っ込み、ゴルドワがグルグルと目を回す。
ゴルドワの中では意思を持った鍋と戦っているため、キノコの食べっぷりもかなり豪快なようだ。
「さすがカイザー鍋と言われるだけの事はあるな。頭がクラクラしてきたぜ」
巨大な雑煮鍋を食べる幻を見ながら、穂狼が手当たり次第にキノコを食べる。
「‥‥なるほど。これが伝説の鍋の力というわけか。いくら食べても鍋の中身が無なくならん。それどころか量が増えているようだ‥‥」
キノコを満腹になるまで食べたため、ゴルドワが青ざめた表情を浮かべて倒れこむ。
心の中では未だに戦っているようだが、身体が限界を迎えたらしい。
「だったらすべて喰らいつくすだけだ。でりゃああああああああ」
そして穂狼はゴルドワ達と一緒にキノコを喰らいつくすのであった。
鍋の存在はすっかり忘れ‥‥。
奇妙な幻を見つつ‥‥。
その後、ミンメイによって伝説の鍋について書かれた本が出される事になる。
真実は何も語られず、幻覚の中で起きた出来事だけが書かれた本が‥‥。