●リプレイ本文
●卵の試練
「‥‥残る試練もあと僅か。だが、五輪祭に隠された秘密の全貌は未だ見えない。だが、石版には何らかの秘密があるはずだ。全ての欠片を集めた時に、そこに描かれているもの、一体なんなのだろうか? 何か曰くつきの宝のありかでも描かれているのか? 河童なだけに水関係‥‥、桶とか杯とか‥‥うむむ、謎が深まるばかりだな」
険しい表情を浮かべて腕を組み、デュラン・ハイアット(ea0042)が口を開く。
試練が終わりに近づくにつれ、ようやく真相が見えて来たのだが、河童達もあえて語ろうとしないため、謎は深まるばかりである。
「暗殺者から命を狙われるほどのモノって‥‥」
大粒の汗を浮かべながら、羽雪嶺(ea2478)がデュランを睨む。
うまく言葉にする事は出来ないが、五輪祭に何か秘密が隠されている事は間違いない。
「ふむ、暗殺者か。終盤にきて中々面白い状況になってきたな。尤もゴルゴを暗殺できる程の腕がある暗殺者なら俺程度では止める事も敵わんな。結局の所‥‥、河童膏の一件以降相手の正体は探り切れて無い訳か。情報収集面で忍軍として問題ありなのではないか?」
そう言って岩倉実篤(ea1050)が何者かの気配に気づく。
‥‥青龍衆の首領、ゴルゴである。
「暗殺集団の正体は分かっている。大半は麒麟衆に所属していた忍者達だ。ヤツらは何者かに雇われ、俺達の命と石版を狙っている。おそらくは‥‥、いや止めておこう。お前達まで巻き込む必要はないからな」
不敵な笑みを浮かべながら、ゴルゴが黙って目を閉じた。
「まあまあ‥‥、難しい話はこの際は抜きでござる。月見ももう季節が少々過ぎたでござるが、せっかくでござるゆえ、中秋の名月を祝ってお団子を作ってきたでござる」
重苦しい空気を振り払うため、沖鷹又三郎(ea5927)が団子を配る。
「それもそうだな。ところで話は変わるが、試練のルールがよく解らん。攻撃毎に使用した卵の数の2倍ダメージなのか? それともゴールまでに攻撃使用した卵合計の2倍ダメージなのか答えてくれ」
実篤の抗議に麒麟衆の審判が気まずい様子で視線を逸らす。
一応、答えは前者だが、ミスが発覚すると、穴掘り虫の刑が待っているため、審判もなかなかミスを認めようとしない。
「‥‥またミスったようね、麒麟衆」
麒麟衆の審判を睨みつけ、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が頭を抱えて溜息をつく。
相次いで審判のミスが発覚したため、麒麟衆の忍者達がまわりを取り囲む。
「それじゃ、試練を始めるか。今度こそ俺が勝ってみせるっ!」
審判の肩をぽふりと叩き、紫上久遠(ea2841)がクスリと笑う。
麒麟衆の審判は青ざめた表情を浮かべながら、ションボリとした様子でテクテクと歩く。
「相変わらず朱雀衆は欠員が多いな。まあ、それぞれが一騎当千の実力者。人数の差が戦力の決定的差ではない事を思い知らせてやる」
心配した様子で辺りを見つめ、デュランが審判の合図を待つ。
「ただでさえ朱雀衆は他チームに遅れてるのに、今回は人数が少な過ぎるわね。玉砕覚悟で2試合に挑むより、全力で1試合に圧勝するように頑張る方が、石版の欠片を入手する可能性は高そうだし‥‥、トリの試練で朱雀衆が負けちゃ、洒落にならないから♪」
卵の入った籠を持ち、アイーダが着合いを入れる。
麒麟衆の審判は大きく咳払いすると、右手を上げて試合の開始を宣言した。
「一度走り出した飛脚の僕に卵が当てられるとは思わないでね」
試練開始の合図と共に、雪嶺がダッシュで走り出す。
その後に又三郎、アイーダと続く‥‥。
「あなた達の誰一人として、卵を持って行かせないわ」
参加者達を潰すため、アイーダがすべての卵を投げつける。
「食材を無駄にするとは何たる事でござる! ぶはっ‥‥」
大量の卵が顔面に当たり、又三郎がボロボロと卵を落とす。
「うわっ、わあああああっ!」
その拍子に雪嶺が何個か卵を踏み、ズルリと滑って転倒した。
「いきなり半数が脱落か。なんだかよく解らない日頃の鬱憤をこの場で晴らしてくれよう!」
脱落した参加者達を横目で睨み、実篤が次々と卵を投げていく。
「ま、負けるかっ!」
険しい表情を浮かべながら、久遠が卵を投げ返す。
その巻き添えを食らい、卵まみれになるデュラン。
「スマンが荒事は苦手でな。逃げ切らせてもらうぞ」
卵まみれになりながら、デュランが第4エリアに突入した。
「逃がすかあっ!」
テュランの後頭部を狙い、久遠が卵を叩きつける。
「ぐおっ!」
バランスを崩して転倒し、デュランが何個か卵を落とす。
「悪いが優勝させてもらうっ!」
優勝を確実なものとするため、実篤が久遠に攻撃を仕掛ける。
久遠もすぐさま反撃したが、最後の一個を使ったため、この時点で失格となった。
「優勝したのは俺と実篤か。これもアイーダのおかげだな」
そう言って我斬がホッとした様子で溜息をつく。
卵まみれになったアイーダを見つめ‥‥。
●雛の試練
「審判のヤツ‥‥、また何か間違いをやらかしたな」
試練の途中で逆さ吊りの刑に処された審判を見つめ、龍深城我斬(ea0031)が疲れた様子で溜息をつく。
最近、審判のミスが増えてきたため、忍者達の間では様々なお仕置きが考案されており、河童忍軍の歴史に一石を投じている。
「暗殺者騒ぎで混乱しているのかも知れませんが、あまりにもミスが多いですね。まさか暗殺者集団の仲間とか‥‥」
胡散臭そうな表情を浮かべ、ルーラス・エルミナス(ea0282)が審判を睨む。
今までミスを犯した審判の中には、暗殺者集団に情報を流していたものもいたため、今回の審判も例外であるとは言い切れない。
「暗殺者達なら私達が‥‥倒したわ‥‥。会場内に怪しい人がいたから‥‥、私と玄武で‥‥ううっ‥‥」
険しい表情を浮かべながら、白虎が右腕を押さえて膝をつく。
暗殺者集団と戦った時に怪我をしたのか、彼女の右腕からダラダラと流れている。
「申し訳ありません、白虎さん! 私達がついていながら、守る事が出来ないなんて‥‥」
傷ついた白虎に気づき、琴宮茜(ea2722)が慌てて土下座した。
「気にする必要はないわ。あなた達に何かあれば、試練に参加できなくなるし‥‥。余計な事は考えて欲しくないの」
優しく茜の肩を叩き、白虎がニコリと微笑んだ。
「無理をしなくていいんだぞ。前回は帰国に間に合わなかったから、何も出来なかったしな。俺達に遠慮なく言ってくれ」
刺繍入りローブを白虎に渡し、南天輝(ea2557)がそっと抱きしめる。
「試練‥‥、頑張ってね」
潤んだ瞳で輝を見つめ、白虎が静かに目を閉じた。
「えーっと、そろそろ試練を始めていいか? あんまりのんびりしている事も出来ないからさ」
気まずい様子で視線を逸らし、玄武がコホンと咳をする。
「あ、ああっ! 悪かったな」
恥ずかしそうに頬を染め、輝がコクンと頷いた。
「玄武殿‥‥。イギリスでは、生涯を共にする方へは、指輪を贈る風習が有ります。この指輪を想い人へ渡したら如何ですか?」
細工士に頼んで用意した御揃いの指輪を玄武に勧め、ルーラスが指定された位置につき辺りを睨んで試練に挑む。
審判の合図と共に雛達が広場に逃げる。
「行け、ライツ!」
輝の掛け声と共にボーダーコリーのライツが雛達の逃げ道を塞ぐ。
「いまのうちに雛達を捕まえましょう」
自分達の方向に走ってきた雛を捕まえ、茜が広場に置かれた表示板を睨む。
表示板に書かれている数字は5。
残り5ターンである。
「俺はここで止めておくか。今までの法則からして、そろそろ試練が終わるはずだ」
雛の入った籠を見つめ、我残が広場の外に出た。
我斬が捕まえた雛は、合計10匹。
結果としては、まずまずである。
それと同時に雛の試練が終了し、広場に残っていた参加者達の籠が没収されていく。
「試練終了!? ま、まさか‥‥」
信じられない様子で審判を見つめ、ルーラスがダラリと汗を流す。
雛の試練の勝者は我斬。
それは揺ぎ無い事実であった。
●鶏の試練
「はじめまして、白虎衆参加させてもらう事になった刀根要です。今回は白虎衆として参加している南天流香さんの代理として恥しくない働きをしたいと思いますので、よろしくお願いします」
仲間の代理として五輪際に参加し、刀根要(ea2473)が深々と頭を下げる。
要は近々結婚を控えているためか、白虎衆の者達が彼の事をからかった。
「何だか幸せそうね。‥‥うらやましいわ」
幸せそうな要を見つめ、白虎がニコリと微笑んだ。
「玄ちゃん、聞いたぁ〜? 結婚だって! 私達にもそんな時期が来るのかねぇ?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべ、山浦とき和(ea3809)が何度も玄武の肘をつく。
「そ、そんな事を考えている暇があったら、試練の事を考えろよ。その‥‥なんだ‥‥。が、頑張れよ」
恥ずかしそうに頬を染め、玄武がとき和に指輪を渡す。
「げ、玄ちゃん、これって‥‥?」
驚いた様子で玄武を見つめ、とき和が胸をドキドキさせる。
「元気の出るおまじないだよっ! じゃあな!」
顔を真っ赤にさせながら、玄武が捨て台詞を残して逃げ出した。
「みんな春が来ているんだな。ひとりだけ冬の時代を過ごしているヤツがいるが‥‥」
麒麟衆の審判が鞭打ちの刑に処されたため、阿武隈森(ea2657)が頭を抱えて溜息をつく。
よほどミスが多かったのか、身体に反省文が書かれている。
「さて、河童五輪もそろそろラストスパートじゃ、今回も暴れさせてもらうぞい」
豪快な笑みを浮かべながら、錬金(ea4568)が気合を入れた。
先程まで玄武とごるびーに関して話し合いを続けていたが、暗殺者集団が首領達の命を狙っているため、ごるびーを保護する事は難しい。
「優勝は貰ったよ♪」
そうめんの束を握り締め、柊小桃(ea3511)がニコリと微笑んだ。
麒麟衆の審判は空ろな表情を浮かべ、消え去るような声で試練の開始を宣言する。
「それじゃ、まずは下準備から始めましょうか」
オーラエリベイションを発動させ、鷹の羽生を使って鶏の逃げ道を塞ぎ、要が強そうな見た目の鶏をボスと見込み、仲間を集めてもらおうための交渉を持ちかけた。
しかし、交渉の相手は仮にも忍び鳥である。
要の交渉に首を縦に振るわけがない。
「うむむ‥‥、こうなれば最後の手段です‥‥」
険しい表情を浮かべながら、要がハリセンスマッシュを放って鶏を倒す。
それと同時に他の鶏が鳴き始め、いきなり要を攻撃する。
「‥‥やっぱりな。こういう展開になると思ったよ」
広場にゴロリと寝転がり、森が大きなアクビをする。
何かトラブルがあると思っていたため、要が襲われてもまったく動揺する事はない。
「にわとりさん来ないかなぁ〜」
そうめんの束を撒き、小桃がぴーち型のうちわで扇ぐ。
中にはそうめんの匂いに誘われ、近寄ってきた鶏もいたが、ほとんどの鶏はそうめんの匂いに気づかず、辺りをテクテクと歩いている。
「うみゅ‥‥、なかなか来ないよう。‥‥おそばの方が好みだったのかなぁ??」
ションボリとした表情を浮かべ、小桃がはふぅっと溜息をつく。
やはり鶏の餌ではないため、それほど集まらなかったらしい。
「がっはっはっはっはっ、この料理人・錬金! 例え胃袋に入れるのが鶏であるにせよ、料理に一片の手抜きも油断も無いわいっ!」
大量の餌をばら撒きながら、金が鶏の群れを挑発した。
鶏達はゴクリと唾を飲み込んだ後、そのまま金に群がり餌を啄ばむ。
「‥‥痛い、痛い。鶏ども、わしを突付くなぁぁぁぁっ。わしは餌ではなぁいぃぃぃっ!」
大粒の涙を浮かべながら、金が鶏の群れを払い除ける。
たくさん鶏を集める事ができたが、このままでは命がヤバイ。
‥‥金は迷わず逃げ出した。
「ふふふふふっ‥‥、『導きの声音』っていう称号を所持する私が呼び寄せられない筈がない! さ〜鶏さん鶏さんいらしゃ〜い♪ コケッコ〜♪」
鶏に同族だと錯覚させるため、とき和が真っ白なくのいち装束を身に纏い、真っ赤な鶏冠をつけて鶏を誘う。
オスの鶏は瞳にハートマークを浮かべながら、とき和に次々と飛びつきコケコッコーと愛を語る。
「こ、こら! 私にそっちの趣味はないよ。まさか……鳩胸だからって寄ってきているんじゃないだろうね。勘違いしないでおくれよ。私はこれでも……こ、こら! 話を聞きなさいっ!」
大量の鶏に押し倒され、とき和が籠を盾にした。
鶏は籠越しに愛を語り、とき和の顔に嘴を寄せる。
彼女の悲鳴も気にせずに‥‥。
「‥‥ん? 結果が出たのか?」
眠そうに目を擦り、森が辺りを見回した。
いつの間にか眠っていたらしく、他の参加者達の姿はない。
「結果は‥‥まさか!」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、森が表示板に書かれた数字を睨む。
阿武隈森−5点。
優勝したのは、とき和だった。
<総合結果>
・15点(酉の欠片入手!)
玄武衆
・13点
青龍衆
・10点
白虎衆
・8点
朱雀衆
●卵の試練
・8点(酉忍の称号獲得!)
岩倉実篤(青龍衆)
デュラン・ハイアット(朱雀衆)
・0点
紫上久遠(玄武衆)
羽雪嶺(白虎衆)
沖鷹又三郎(白虎衆)
アイーダ・ノースフィールド(朱雀衆)
●雛の試練
・10点(酉忍の称号獲得!)
龍深城我斬(青龍衆)
・0点
琴宮茜(白虎衆)
南天輝(白虎衆)
ルーラス・エルミナス(玄武衆)
●鶏の試練
・10点(酉忍の称号獲得!)
山浦とき和(玄武衆)
・5点
錬金(玄武衆)
刀根要(白虎衆)
柊小桃(白虎衆)
・−5点
阿武隈森(青龍衆)