●リプレイ本文
●見猿の試練
「久しぶりだねぇ。麒麟衆の連中が長期で修行の旅に出ていたから、このまま五輪祭は中止になるかと思ったよ。まぁ、明信とルミリアに会えたんだから良しとしようかねぇ」
三笠明信(ea1628)達からキュウリを受け取り、朱雀がニコリと微笑んだ。
五輪祭が休んでいる間、新しい事業にでも手を出したのか、朱雀の格好はやけに豪華で派手気味だ。
「とにかく頑張ってきな。一発逆転を狙ってさ」
妖艶な笑みを浮かべながら、朱雀が明信達に別れを告げる。
試練の開始まで、あと少し‥‥。
明信は力強く頷くと、ルミリアに微笑み、洞窟の入り口まで移動した。
「‥‥真っ暗な洞窟か。ふ‥‥、俺はこう見えても夢想流の使い手だ。周囲が見えずとも駆け抜けてみせるぜ」
自信に満ちた表情を浮かべ、紫上久遠(ea2841)がニヤリと笑う。
目指すは1位。
久遠に恐れるものなど何もない。
「いよいよ試練の始まりか。難しい事は考えず、久々の五輪祭を楽しむかな」
河童神社のご利益を期待し、阿武隈森(ea2657)が気合を入れて五輪祭に挑む。
ひさしぶりの競技という事もあってか、会場にはたくさんの河童が見物に来ており、自分の所属している忍軍の応援を始めている。
「もしかして白虎衆で称号無しは僕だけ‥‥。だーーーこれでは駄目だ。何でもいい、今度こそ」
洞窟の入り口に立った瞬間、重要な事に気づき、羽雪嶺(ea2478)が必要以上に力を入れる。
開始の合図を耳にしながら‥‥。
「ぬおおおおおっ!」
試練開始の合図とともに、森が大声を上げて走り出す。
目の前に縄が張っている事にも気づかずに‥‥。
「ぬわっ! し、しまった!」
ベジャッと嫌な音をと共に、森が豪快にズッコける。
「もらった!」
その隙に久遠が参加者達との距離を離し、徐々にスピードを上げて行く。
「負けませんよっ! うわっ!」
久遠を抜いて第3地点を通過した瞬間、明信が沼にハマッてバランスを崩す。
「うわあああ」
その影響で雪嶺と久遠が続いて転び、泥だらけになりながらブクブクと沈む。
「‥‥ここで遅れを取り戻さないとな」
助走をつけて沼を飛び越え、森が第5地点を通過する。
このままトラブルがなければ、何とか1位になれそうだ。
「負けませんよっ! 出口で私を待っている彼女の為にも‥‥!」
ルミリアを思い浮かべながら、明信が森の声を追っていく。
「絶対に勝つんだからっ!」
真っ暗で何も見えない中、雪嶺が明かりを目指して先に進む。
横に並ぶ参加者達。
次第に闇に慣れたため、おぼろげだが相手の顔が見えてくる。
「うおおおおおっ!」
それと同時に森が雄たけびを上げ、明信と並んで洞窟を抜けていく。
‥‥結果は同着。
森と明信のふたりには申忍の称号が与えられた。
「惜しいっ! 同着2位か。いきなり河童が抱きついて来るんだもんな。あれさえなければ、俺が1位に‥‥ううっ‥‥」
残念そうな表情を浮かべ、久遠が大きな溜息をつく。
雪嶺と一緒にゴールしたため、マイナス点にはならないが、とても悔しい思いである。
「次こそは‥‥」
絶対に1位をとらねば‥‥。
●聞か猿の試練
「‥‥お久しぶりです、白虎さん。麒麟衆の方々も何だか大変そうですね。ところで石版に関して、わたくし達はまだ何が起きるか、知る事は出来ないんですか?」
白虎にペコリと頭を下げ、南天流香(ea2476)がボソリと呟いた。
「そうね。そろそろ本当の事を‥‥言いたい所だけど、ごめんなさい。‥‥言えないの。あなた達まで危険が及んでしまうから‥‥」
申し訳なさそうな表情を浮かべ、白虎が気まずい様子で答えを返す。
何か知っているのか、あまり多くは語ろうとしない。
「まぁ、気にするな。必要になったら、嫌でも俺達が話すからさ」
苦笑いを浮かべながら、玄武が流香の肩を叩く。
「玄ちゃーん」
聞き覚えのある声がした。
反射的に逃げだす玄武。
それと同時に山浦とき和(ea3809)が勢いよく玄武に飛びついた。
「逢いたかったわ、玄ちゃん! 玄ちゃんに逢えない日が続き、ご飯もろくに喉を通らず‥‥見ておくれよ、この痩せ細った体。‥‥って、胸はもともと無かったわねぇ‥‥。あえて言わなくても解ってるわよ、助兵衛♪ さ〜て、久しぶりだからこそ、玄ちゃんの喜ぶ顔を見る為に頑張るよ!」
御揃いの三日月が書かれた鉢金を装備し、とき和がクノイチ装束で玄武に迫る。
「いや、その‥‥だなぁ‥‥」
玄武は苦笑いを浮かべているが、とき和はとても嬉しそうだ。
「前回参加したのはいつだったか‥‥。すっかり腕も鈍ってしまったかも知れん。一連の怪異で何処も深刻な人手不足らしいからな。開催が遅れたのも仕方ない事だ」
心配そうに麒麟衆の審判を見つめ、岩倉実篤(ea1050)が溜息をつく。
エリート揃いの麒麟衆も今や半分以上が粛清され、色々な意味で無難な忍者しか残っていない。
「それにしても、また落ちモノ試練か。命綱なんて当然用意されてないよな? 毎度の事ながら命懸けか。多少鍛えてあっても冒険者は不死身ではないのだが‥‥」
ゆっくりと谷底を覗き込み、実篤が険しい表情を浮かべて腕を組む。
見た目のわりにそれほど高くはなさそうだが、落ちたら無傷では済みそうにない。
「‥‥ジャパンには石橋を叩いて渡れと言う風習が有るそうですが、壊れそうな橋は、どの様に渡る風習が有るのか、楽しみです」
必勝鉢巻をぎゅっと締め、ルーラス・エルミナス(ea0282)がたすきをかけた。
ルーラスはジャパンの文化に染まってきたため、間違った意味でお洒落な格好になっている。
「‥‥人海戦術の白虎より少数精鋭と謳われる青龍の実力を示さないとならんな。何より、ココで石版手に入れないと白虎に勝利を与えてしまう」
白虎衆が優勢である事に危機感を感じ、実篤が辺りを睨んでボソリと呟く。
「現在、朱雀衆の順位は、えーと‥‥、ぶっちぎりの最下位? トータルポイント−2の私としては、より一層肩身が狭いわね。いい加減、マイナスから脱出して少しはチームの勝利に貢献しないと‥‥」
大粒の汗を浮かべながら、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が気合を入れる。
「‥‥五輪際復活。この記念すべき日に、勝利し優勝への足掛かりを作りましょう」
応援に来ていた仲間達を見つめた後、ルーラスが覚悟を決めて位置につく。
麒麟衆の審判は大きく息を吸い込んだ後、大声を上げて試練の開始を宣言した。
「うわっ‥‥。ま、まさか! こんな所で‥‥」
吊り橋を渡ろうとした瞬間、橋板がボロッと抜け落ち、流香が青ざめた表情を浮かべてバランスを崩す。
「チッ! またかよ。この手の試練とは相性悪いのか〜〜〜?」
同じ場所で足を滑らせ、実篤が流香と一緒に谷底へと落ちて行く。
「‥‥読めたわ。『聞か猿の試練』では見(3)猿と言わ(1、8)猿を選んではいけないのよ、きっと」
自信に満ちた表情を浮かべ、アイーダが橋板を飛び越える。
「音が響きやすい谷なら、音を立てずに渡るまで! 2(にー)と4(しー)って、静かーに渡るって感じじゃない?」
アイーダとは異なり、慎重に橋を渡っていき、とき和が額に浮かんだ汗を拭う。
「足場の悪い場所では、機先を制した者が勝つ(?)‥‥お先に行かせて貰います」
とき和の横を通り過ぎ、ルーラスがゴールを目指す。
「ま、負けないわよ。‥‥そして9は強運の持ち主に出してもらった私のラッキーナンバーなのさ!終わりよければ全て良しってね。あーれぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜」
ずぼっと豪快な音を立て、とき和が谷底へと落ちて行く。
ゴールまでは目と鼻の先。
先にゴールしたルーラスとアイーダが汗を流し、玄武が引きつった笑みを浮かべている。
‥‥今回は運が悪すぎた。
●言わ猿の試練
「久々の五輪祭でござる! 五輪祭参加の皆と再会できて嬉しいでござる! 白虎殿や白虎衆の皆はお元気でござったか? 毎日暑いでござるの! 精をつける為に鰻料理をたくさん作ってきたので良ければ食べて下され」
爽やかな笑みを浮かべながら、沖鷹又三郎(ea5927)が精をつけるために作った鰻料理を配って行く。
「ありがとう。試練を見ながら戴くわ。あら、お兄様はどうしたのかしら?」
又三郎から鰻を受け取り、白虎が南天桃(ea6195)に気づいて後ろを向く。
「白虎お姉様〜、お兄さまからの言付です〜。『すまんな、今パリの空の下だ。異国の風も意外といいものだ。もうじき戻る、次の試練では必ず逢おう。またな』だそうです〜、お兄さまが異国に行ったのは〜麒麟衆さまが動かないからです〜かなり動かずにいたんですよ〜」
不満そうな表情を浮かべ、桃がぷんすかと白虎に怒る。
「ご、ごめんなさいっ!」
困った様子で汗を流し、白虎がぺこりと頭を下げた。
何かトラブルでも遭ったのか、とても返事に困っているようだ。
「ふっ‥‥」
含みのある笑みを浮かべ、ゴルゴが壁にもたれかかる。
「よう、旦那久しぶり。仕事干されたんで遊びに来たよ‥‥ってのは半分位冗談だ、五輪祭は遊びじゃなくて真剣勝負だし‥‥」
苦笑いを浮かべながら、龍深城我斬(ea0031)がゴルゴにむかって挨拶した。
クールな表情を浮かべたまま、ゴルゴは何も答えようとしない。
「そういえば今回の試練は言わ猿だったな。いまのうちに黙っておけという事か。久々の試練‥‥決めたからには勝ちに行くぜ!」
拳をギュッと握り締め、我斬が目の前のある猿山を睨む。
猿山にはたくさんの猿が待ち構えており、飢えた目つきで我斬達を狙っている。
「はっはっは、みんな飢えているようじゃの! 今回は申忍の試練だけに『ざる蕎麦』じゃー!! ‥‥そこっ、今捻りが無いとか思ったじゃろう! ‥‥わしだってネタが無いんじゃ!」
通りすがりの玄武を指差し、錬金(ea4568)がフンと鼻を鳴らす。
それと同時に猿達が瞳をキュピーンと輝かせ、物凄い勢いで金の蕎麦を食べに来る。
「こ、こら! やめんか! むぅ‥‥、さすが河童忍軍の使う忍猿じゃ‥‥箸を使うどころか、汁に薬味とネギまで入れておる‥‥」
青ざめた表情を浮かべながら、金がざるを握り締めたまま汗を拭う。
猿達は満足そうに蕎麦を頬張り、スタスタと猿山に戻って行く。
「うわっ‥‥、凄い食欲。これじゃ、参加者達も危ないわね」
驚いた表情を様子で猿達を見つめ、朱雀がダラリと汗を流す。
「朱雀殿、今回は期待してくれ。我はしばらく欧州に行っていたのだが、そちらでの修練の成果を今お見せできるよう尽力致すゆえ‥‥」
明信と一緒に現れ、ルミリアが朱雀と握手する。
「随分と自信があるんだねぇ‥‥。その様子じゃ、欧州で色々とあったのね」
いやらしい笑みを浮かべながら、朱雀がルミリアの耳元で囁いた。
「うむ、それはひとりの少女の為の署名活動がうんぬん‥‥(中略)‥‥そういうワケで‥‥ウサミミメイドさんとなって明信殿にオムレツを馳走し‥‥、何故にそこでニヤニヤとされているのだ朱雀殿!!」
朱雀の熱い視線を感じたため、ルミリアが恥ずかしそうに頬を染める。
麒麟衆の鋭い視線。
‥‥試練開始の合図である。
「さて、この試練は‥‥、口を空けずに猿山を登るのか‥‥」
猿山の頂上を見つめて口元を覆い、我斬が慎重にサル山を登って行く。
途中で猿の妨害に遭ってしまったら意味がないため、我斬も警戒した様子で安全な岩場を選んで進む。
「くっくっく‥‥、華仙教大国の料理人に、猿とはまた飛んで火にいる夏の虫‥‥猿の脳みそは高級食材なのじゃよ。‥‥今宵の手羽先正宗は血に飢えておる‥‥くっくくっ」
含みのある笑みを浮かべ、金が包丁を怪しくギラリと輝かせる。
「‥‥気をつけた方がいい。この猿達は‥‥フツーじゃないっ!」
ルミリアの言葉を合図に猿達が一斉に襲って来た。
手には棍棒や包丁などの武器を持ち‥‥。
「一気にゴールを目指すでござる!」
愛用の包丁を握り締め、又三郎が猿達の攻撃を軽々とかわす。
「このお猿さん達、えっちですぅ〜」
服を脱がされそうになったため、桃がアイスチャクラを放つ。
「いまだっ!」
猿達がチャクラムを避けた瞬間、我斬が一気に頂上を目指す。
それに続いて走るルミリア。
又三郎も後に続く。
「ぬおっ‥‥、しまった!」
猿達の相手に手間取り、金が足止めを食らう。
「お先に失礼しますです〜」
その隙に桃が山を登っていき、他の参加者達と同時にゴールする。
猿達に襲われ揉みくちゃにされた金を残し‥‥。
<総合結果>
・25点(申忍の欠片入手!)
朱雀衆
・10点
青龍衆、白虎衆、玄武衆
●見猿の試練
・10点(申忍の称号ゲット!)
三笠明信(朱雀衆)、阿武隈森(青龍衆)
・5点
羽雪嶺(白虎衆)、紫上久遠(玄武衆)
●聞か猿の試練
・10点(申忍の称号ゲット!)
ルーラス・エルミナス(玄武衆)、アイーダ・ノースフィールド(朱雀衆)
・−5点
岩倉実篤(青龍衆)、南天流香(白虎衆)、山浦とき和(玄武衆)
●言わ猿の試練
・5点(該当者が多数のため、申忍の称号はなし)
龍深城我斬(青龍衆)、ルミリア・ザナックス(朱雀衆)、沖鷹又三郎(白虎衆)、南天桃(白虎衆)
・0点
錬金(玄武衆)
●何者かの妨害に遭い棄権?
一名。