●リプレイ本文
「丑の次は寅だが、丑寅の方角と言うのは鬼門というらしいな。鬼が出入りする方角だとか‥‥。方角には色々と呪術的な意味が有るな。‥‥となると、石版は何か呪術的なアイテムではないのか? その欠片を集めると言う事は‥‥」
険しい表情を浮かべながら、デュラン・ハイアット(ea0042)が五輪祭の裏に潜む謎に憶測を巡らせる。
五輪祭については色々と胡散臭い所があるため、デュランが裏で調査を進めているのだが、いつも肝心な所で邪魔が入り核心に迫る事が出来ないようだ。
「前回は考えなしに数字を選び全くの役立たず‥‥今回こそは」
ゴルゴに気合を入れてもらい、丙荊姫(ea2497)が寅忍の称号を得るため闘志を燃やす。
各忍軍の首領はそれぞれ玄武、青龍、白虎、朱雀の名前を受け継いでおり、通常はその名前で呼ばれるのだがゴルゴだけは青龍と呼ばれる事を嫌っている。
「今回は小桃ちゃんが仕事の都合で参加出来なかったから、その分ガンバル!!」
拳をギュッと握り締め、琴宮茜(ea2722)が舞台に立つ。
試練の行われる舞台の中心には虎の吼えている絵が描かれており、例え相手が同じ所属の忍軍であっても戦わねばならない。
「随分と強い奴らばかり集まっているじゃねえか。さすが寅忍の試練! 絶対に俺が最後の一人になってやる!」
玄武を見つめてニヤリと笑い、紫上久遠(ea2841)が親指をグッと立てる。
「朱雀衆の首領殿は女性には厳しいお方‥‥。ハナ殿らのとりなしが無ければ危うく裸踊りをさせられるトコロであったぞ‥‥」
ハナのおかげで朱雀からお仕置を免除してもらい、ルミリア・ザナックス(ea5298)がホッとした様子で溜息をつく。
「昨晩は蟹料理をしたばかりでござる。故に蟹だけには負けんでござる!」
試練に参加した冒険者達のために蟹鍋を用意し、沖鷹又三郎(ea5927)がウットリとした表情を浮かべる。
各忍軍の首領も又三郎の持参した蟹の味を絶賛し、キュウリと一緒にモグモグと頬張った。
「‥‥これより寅忍の試練を開始する。両者見合って‥‥始めっ!」
蟹の足を咥えたまま、麒麟衆の忍者が試練開始を宣言する。
それと同時にデュランがリトルフライで飛び上がり、荊姫相手に気合の入った一撃を繰り出した。
「ま、負けた‥‥」
自らの拳を見つめ、荊姫がガックリと肩を落とす。
「こういうのをジャパンでは『運否天賦』と言ったかな。今回の勝負はそれに沿ったものだったと言う事だ」
落ち込む荊姫の肩を優しく叩き、デュランがニコリと微笑んだ。
「すべては天の決めた事というわけですね」
この日の出来事を記憶に刻み、荊姫がゆっくりと立ち上がる。
青龍衆の首領も荊姫の気持ちを察したのか、腕組みしたまま何も言わずに目を閉じた。
「勝負は一瞬で決まるようですね。ならば‥‥すべてを天に任せるのみ!」
対戦相手の久遠を睨み、茜が地面を蹴ってチョキを出す。
「‥‥引き分けか。ならばこれでどうだっ!」
茜の放った一撃をかわし、久遠が瞳をキラリと輝かせ、次なる一撃を放つ。
「天は私に味方してくれたようですね。残念ですがあなたの負けです」
久遠のグーをパーで包み、茜が寂しそうに首を振る。
「だぁー! 負けたっ! これじゃ、修行のやり直しだな。次は絶対に負けないぜ」
茜を見つけてニヤリと笑い、久遠が嬉しそうに舞台を去った。
引き分けでも1ポイントはいるため、玄武も上機嫌な様子で久遠の事を迎え入れる。
「‥‥残るは我達だけか。この試練を受けた者が6人しかいないから、これで勝てばそのまま決勝戦という事だな」
ジリジリと間合いを取りながら、ルミリアがゴクリと唾を飲み込んだ。
観客席にはハナの姿があるのだが、その横では朱雀が荒縄を握って笑っている。
「何やらワケありのようでござるな」
ルミリアが青ざめた表情を浮かべていたため、又三郎が何となく事態を飲み込んだ。
「‥‥情けは無用。朱雀殿もあの縄を使って亀甲縛りとか‥‥しそうだな。うむむ、これは負けられん!」
危険な映像が脳裏で渦巻き始めたため、ルミリアが青ざめた表情を浮かべて首を振る。
「覚悟しろ! 最初はぐー‥‥ジャンケン‥‥ぐーっ!」
オーラパワーを使ってゴゴゴッと擬音が出るほど気合を入れ、ルミリアがすべての思いを拳に込めて必殺の一撃を放つ。
「引き分けでござるか。‥‥行くでござる!」
汗をキラリと輝かせ、又三郎が素早くパーを繰り出した。
「‥‥残念だったな。我の勝ちだ!」
クールな笑みを浮かべながら、ルミリアが内心ホッとする。
「次は私達の番か。この勝負‥‥勝たせてもらう!」
先手必勝とばかりに拳を握り、デュランが大声を上げて茜を睨む。
「私だって負けられません。いきますよっ!」
デュランの掛け声に合わせ、茜が素早くパーを出す。
「‥‥私の勝ちだ。これで朱雀衆の勝利は決まったな。しかし、勝負とは非情なもの。最後の一人になるまで戦わなければならぬのか」
何処か寂しげな表情を浮かべ、デュランがルミリアと対峙した。
「それは我も覚悟の上。お互い悔いのない戦いをしよう」
デュランと合わせてパーを出し、ルミリアが再びパーを繰り出しデュランを倒す。
「‥‥勝った。これもすべてはハナ殿のおかげ! 彼女の応援があったからこそ、我は最後まで生き残る事ができたのだ!」
そしてルミリアは見事寅忍の称号を獲得し、大きく拳を掲げてガッツポーズをするのであった。
「俺は別件で前回参加する事が出来なかったが青龍の結果は振るわなかった様だな。今回参加するからには相応の働きをせねばならん」
審判達の立つ絶壁を見上げ、岩倉実篤(ea1050)が大きな溜息をつく。
この試練と次の試練では獲得ポイントの説明が詳しくされていなかったため、審判の口から5、3、1の順にポイントが獲得できると説明された。
「白虎のお姉様も会場に来ているようですね。桃ちゃんはこの会場にいるようだし、わたくしも白虎衆の勝利目指して頑張らないと」
絶壁の上で待機する白虎を見つめ、南天流香(ea2476)がリトルフライを使用した。
辺りには妙な緊迫感が漂っており、心臓がバクバクと鳴っている。
「どうせ頂上までいけないんだから、楽しまなきゃ損だよね♪」
苦笑いを浮かべながら、跳夏岳(ea3829)がボソリと呟いた。
よほど強運の持ち主でない限り、頂上まで到達する事ができないため、どこまで登る事ができるかで勝敗が決まる。
「ぬぉ〜、わしは負けんっ! 前回の惨敗をバネに、今度こそ汚名挽回じゃ!」
惨敗のお仕置きとして重石の亀甲羅を背負わされ、錬金(ea4568)が気合を入れて雄叫びを上げた。
「それを言うなら『名誉』挽回だろう」
本気で金がボケたため、実篤が冷たくツッコミを入れる。
「一生の不覚っ!」
表情が劇画調になったまま、金がげほっと血反吐を吐く。
「あっ、試しに岩を落とすみたいだね〜」
絶壁の上を指差しながら、外橋恒弥(ea5899)がニコリと微笑んだ。
それと同時に大きな岩が上から落とされ、轟音にあげながら地面に落ちる。
「本気か! アレが当たれば死ぬぞ。流石に実力者しか寅忍の試練を受けれんと豪語するだけはあるな」
地面に大きくめり込んだ岩を見つめ、実篤が土煙の中で汗を流す。
「‥‥ハリボテの岩じゃないようですね」
苦笑いを浮かべながら、流香が慎重に上昇し始めた。
「これが本当のお年玉ってオチじゃないんだね」
全神経を集中させ、夏岳が絶壁を登る。
最初の岩は試しに落としたものだが、頂上に登るまで4回何かが落ちて来る事は確実のため、早めに登った方が身の為だろう。
「次に失敗すれば、おそらく変な‥‥もといカッコイイ仮面をつける羽目になる‥‥。な、なあ、虎の穴の試練の時は、コレ外してもいいんじゃろ、‥‥た、頼む、いいと言ってくれぇぇぇ!」
いまにも甲羅の重みで落ちそうになりながら、金が大粒の涙を浮かべて玄武に頼む。
「聞こえんなぁ〜って言っているようだね〜。‥‥あれ? 玄ちゃん?」
玄武達の落とした岩に気づき、恒弥がバランスを崩して悲鳴を上げた。
「ば、馬鹿な! ぐおっ!」
審判の投げた大きな岩のひとつが直撃し、実篤が血反吐を吐いて転がり落ちる。
「自分の部下でも容赦なしなんだね〜。酷いよ、玄ちゃん〜」
ウルウルと涙を浮かべ、恒弥が岩に当たって地面に落ちた。
「ふっ‥‥我が子を崖から突き落としたくらいで満足するとは、虎もまだまだ甘ぁい! 真に我が子を思うならば、崖の下には落とし穴を仕掛け、上から大岩を落とすぐらいの芸当は‥‥まさか!? ぬおおお!」
玄武から巨大な狸の置物を落とされ、金が気合で何とか受け止める。
「ふぁいとぉぉぉっ! いっぱぁぁぁぁぁ‥‥」
腰から妙な破裂音を響かせ、金がドップラー効果を伴ってタヌキと共に落ちていく。
「トラップは4と6の地点に仕掛けられていたんだね。‥‥という事は次で終わりって事か」
既に4回分の回避ポイントを使ったため、夏岳が困った様子で溜息をつく。
朱雀衆としてはここでポイントが欲しいのだが、何かを避けるだけの気力は残っていない。
「どちらが寅忍の称号に相応しいか勝負ですね」
最後の気力を振り絞り、流香が迷う事なく頂上を目指す。
「えっ? 槍とか刀まで落ちてくるの!? は、反則だよ!?」
大量に落ちてきた槍や刀に驚き、夏岳がバランスを崩して落下する。
「クッ‥‥、相打ちですね。わたくしも油断していましたわ」
夏岳と一緒に地面に落下し、流香が尻餅をついてクスリと笑う。
そのためこの試練では同じ位置で落下したふたりに寅忍の称号が与えられ、五輪祭では異例の結果を残す事になる。
「私〜今回、白虎衆に参加させてもらった南天桃です〜♪ 今回ゴルゴさんの試練に参加するので挨拶にきました〜。よろしくお願いしますです〜」
満面の笑みを浮かべながら、南天桃(ea6195)がペコリと頭を下げる。
「俺の後ろに立つんじゃねえ!」
背後に桃が立とうとしたため、ゴルゴが素早く短刀を投げた。
「うちの子に手を出さないでくれるかしら?」
ゴルゴの短刀を扇子で弾き、白虎が爽やかな笑みを浮かべて挑発する。
「ちょい待ち! 首領同士で喧嘩はやめろ! まわりに示しがつかんだろう」
ふたりの間に割って入り、玄武が呆れた様子で溜息をつく。
「はぁ〜い、玄ちゃん、元気ぃ〜。この間は1位になれなかったけど、今度こそ頑張ったら甲羅の中身を見せてくれる約束だよね♪」
ブンブンと音が出る程に手を振りながら、山浦とき和(ea3809)が玄武と指切りげんまんをする。
「言っておくがゴルゴは強敵だぜ。くれぐれも注意しておけよ」
真剣な表情を浮かべ、玄武がとき和の肩をぽふりと叩く。
「あら、心配してくれるのかい? やっぱり私に気があるんだね」
玄武の事をからかうようにして、とき和がクスクスと笑い出す。
「えーっ、オホン! ‥‥そろそろ試練を開始する。それでは用意始め!」
ゴルゴの視線が怖かったため、審判が逃げるようにして合図を送る。
「俺は女の尻を追っかけるのが好きだがら、その経験を活かして見せる!」
見事寅忍の称号を獲得したルミリアの勝利に心から喜び、伊達正和(ea0489)が少しずつゴルゴに近づいていく。
(「‥‥これは俺とゴルゴの真剣勝負。だから負けるわけにいかないな」)
野生の肉食獣の如く気配を殺し、阿武隈森(ea2657)がゆっくりとゴルゴに接近する。
(「‥‥青龍衆だけ優遇するって事はないようね。元々背後に立たれるのは嫌だろうし‥‥」)
着物の前を割って帯に挟み、とき和がズンズンとゴルゴに近づいた。
(「ひょっとして誘っているんでしょうか? 私達の根性がどれだけあるかを試すため‥‥」)
なかなかゴルゴが動きそうになかったため、桃が警戒した様子で50の地点を通り過ぎる。
(「‥‥一気に点数を稼ぐか」)
ゴルゴに気づかれないようにするため、正和が息を殺して進んでいく。
(「手裏剣の届く射程範囲内まで動かぬつもりか。本気で俺達を殺すつもりでいるようだな」)
改めてゴルゴの恐ろしさを実感しながら、森が額に浮かんだ汗を拭う。
ゴルゴは既に手裏剣を構えているため、いつ飛んでくるのか分からない。
「この辺りで止まっておこうかしら。ゴルゴちゃんに乙女の柔肌でも傷つけられたら、玄ちゃんだって黙っていないだろうし〜」
38と書かれた場所でピタリと止まり、とき和がニコリと微笑んだ。
「それじゃ、私もここで止まります。なんだか殺気を感じますし‥‥」
ゴルゴの身体から凄まじい殺気を感じたため、桃が18と書かれた場所で手を上げる。
「‥‥みんな意外と慎重だな。俺もここでやめておくか」
14と書かれた場所で立ち止まり、正和がゴクリと唾を飲み込んだ。
ゴルゴはチィッと舌打ちしたが、未だに後ろを振りむかない。
「やはり13で止まったか。相手はゴルゴの旦那だもんな」
正和と同じ場所で右手を上げ、森が審判にむかって合図した。
「なんだ、もう終わりか」
残念そうに溜息をつきながら、ゴルゴがゆっくりと立ち上がる。
「それじゃ、やっぱり気づいていたのか?」
驚いた様子でゴルゴを見つめ、正和が大粒の汗を流す。
「‥‥当然だ。俺が本気を出したら勝負にならん。せめて5の位置まで来れば、合格だったんだがな。これは俺の与えた試練じゃない。ルール通り寅忍の称号をくれてやろう。‥‥正和と森にな」
何処か納得の行かない表情を浮かべ、ゴルゴが同着の二人に寅忍の称号を与える。
「クッ‥‥、俺とした事が! だが次はこんな失敗などしない。自分自身のプライドに賭けてな」
そして森はゴルゴを見つめ、拳をギュッと握り締めた。
所属 結果 累積
<朱雀> 寅の欠片獲得!
デュラン・ハイアット 5 −2
ルミリア・ザナックス 6 2 ☆
伊達正和 5 5 ☆
跳夏岳 5 6 ☆
合計 21 17
<白虎>
南天流香 5 3 ☆
琴宮茜 3 11
南天桃 3 3
沖鷹又三郎 1 1
合計 12 24
<青龍>
阿武隈森 5 23 ☆
岩倉実篤 1 7
丙荊姫 0 −4
合計 6 12
<玄武>
錬金 3 −15
紫上久遠 1 7
山浦とき和 1 5
外橋恒弥 1 1
合計 6 −1