●リプレイ本文
「必ず卯忍の称号を取り、寅忍の試練に出れなかった汚名を晴らさねば‥‥」
友人の助太刀をして前回の試練を欠席したため、ルーラス・エルミナス(ea0282)が罰として亀に負けたウサギの扮装をさせられ、玄武から胸に『負けウサギ』と書かれた札を貼り付けられる。
玄武は今回の戦いに掛けているため、いつも以上に気合が入っているようだ。
「気合を入れて頑張れよ。期待しているからな!」
豪快な笑みを浮かべながら、玄武が優しく肩を叩く。
負け犬、へっぽこなどと言った不名誉な称号を得たため、玄武もかなり必死になっているらしい。
「そう言ってもらえると助かります。武道大会に多くの方が行かれているこの機に何としても石版の欠片を取らなければ、玄武の未来はありませんからね。なんとしても勝利を目指しましょう!」
試合が始まる時間まで待つため座禅を組み、ルーラスが穴からウサギが出てくる様子をイメージし精神を統一させていく。
玄武も苦笑いを浮かべながら空を眺め、心の中で玄武衆の勝利を願う。
「あらあら、今回は白虎と玄武の一騎打ちですの。まあ、なんにしても玄武さんは参加者がいてくださって良かったですね」
試練会場に玄武衆の姿しかなかったため、南天流香(ea2476)がチャンスとばかりに微笑んだ。
「悪いがお前達の好きにはさせん。不戦敗ほど惨めな事は無いからな」
何も言わないゴルゴを横目で見つめながら、不動金剛斎(ea5999)が舞台に立って気合を入れる。
青龍衆の参加者は彼だけのため、ゴルゴもかなり期待しているようだ。
「俺は皆勤賞の割に報われんな。だが、今度こそ玄武に初石版の欠片を持ってかえるぜ!」
悲しげにほろりと涙を流し、紫上久遠(ea2841)が拳をギュッと握り締める。
玄武には期待されているのだが、結果にはなかなか結びついていないらしい。
「それでは、試練を始めるぞ。試練は一人ずつ受けてもらう。それ以外の参加者は耳栓と目隠しをきちんとして置くように!」
参加者が舞台に立った事を確認し、審判が旗を大きく振り下ろす。
他の参加者には耳栓と目隠しと目隠しが配られたため、どの穴が正解なのかは分からない。
「天よ、私に力をっ! 3、5、8番で行きます」
大きく深呼吸をした後、ルーラスが3の穴に飛び込んだ。
「うわっ! 何ですか、これは!」
穴の中には大量のガマが放たれ、ルーラスが油でつるんと滑る。
「大丈夫か! まさかしょっぱなから落ちるとはな」
大粒の汗を浮かべながら、玄武が素早く手を伸ばす。
この試練はハズレを選んだ時点で失格になるため、ルーラスは得点が得られぬまま会場を去る事となる。
「‥‥まさか予想した穴がハズレだったとは‥‥。く、悔しいっ!」
玄武の腕を掴み取り、ルーラスが大きな溜息をつく。
狙いは悪くなかったが、天が味方をしなかったらしい。
「まぁ、気にするな。頑張ってくれたんだろ」
爽やかな笑みを浮かべながら、玄武がグッと親指を立てる。
ルーラスも玄武に深々とお辞儀をすると、寂しげに会場を去っていく。
「どうやらチャンス到来のようですね。わたくしが丑寅忍の称号を得ている以上、他の称号も手に入れないとなんだか物騒ですわ。さすがに鬼門忍では不吉すぎますから‥‥」
高得点を狙うため、流香が複数の穴を選択する。
「まずは5番ですわ。キングウサギは何所ですかね。王冠でも被っているんでしょうか? 雷兎なら欲しいですね」
冗談まじりに微笑みながら、流香が5番に飛び込んだ。
「きゃ、きゃあ!? これはウナギ!?」
大量のウナギに襲われ、流香が慌てた様子で悲鳴を上げた。
「‥‥やはり丑寅忍の称号は不吉です」
どうやら5番も外れだったらしく、流香が悔しそうに拳を握る。
「玄武も白虎も0点か。これなら卯忍の称号は戴きだな。絶対にキングウサギを引き当てて青龍衆に貢献するぞ!!」
瞳をキラリと輝かせ、金剛斎が2の穴に飛び込んだ。
今回は金剛斎に運が味方したらしく、3番目の穴で見事キングウサギをゲットする。
その後も金剛斎はポイントを増やし、5番目に入った穴でハズレを選んで試練を終えた。
「端数は切捨てになるから5ポイントだけか。‥‥悪くない結果だな」
勝ち誇った様子で腕を組み、金剛斎が久遠を睨みつける。
「ま、負けてたまるか。今回の戦いは玄武衆の存亡が掛かっているんだっ!」
運命の女神に祈りを捧げ、久遠が穴の中に飛び込んだ。
久遠の命が通じたのか4番目までは当たりの穴を選び、何とかポイントだけはゲットする。
「クッ‥‥、あと1ポイントだったのに!」
ギリギリの差で金剛斎に敗北し、久遠がガックリと肩を落とす。
やはりキングウサギをゲットできなかった事が久遠の敗北に繋がったらしい。
「しっあわせはぁ〜1日にしてならずぅ♪ だぁから毎日飲んだくれぇ〜♪」
音程の外れた歌を大声で歌いながら、山浦とき和(ea3809)が玄武を見つけて微笑んだ。
「玄ちゃん、おげ‥‥御免よぉ、石版の欠片を獲得できなくて。でもね、今回はちょっと違うんだよ! 見よ! この玄武衆の面々の目の輝きを!」
自分のお尻をムニッとつねり、とき和が真剣な表情を浮かべて口を開く。
玄武もかなり怪しいと思ったのか、とき和のお尻をジーッと睨む。
「一体、何処を見ているんだよ! ひょっとして玄ちゃん、私に気があるんだねぇ〜」
玄武に気づかれそうになったため、とき和が誤魔化すようにして飛びついた。
「ば、馬鹿言えっ! 俺はそんなんじゃねえぞ!」
恥かしそうに視線を逸らし、玄武が逃げるようにして去っていく。
「この試練に参加するのは二人だけ? それじゃ、卯忍の忍者は3人以下になるかもね。さすがにヤラセをするわけにもいかないし‥‥」
疲れた様子で溜息をつきながら、白虎が数字の書かれたルーレット盤を眺める。
この試練で失敗するとポイントがゼロになってしまうため、気合を入れて参加する者はいないらしい。
「白虎のお姉様〜、前回ゴルゴさんから護ってくれたの。格好良かったです〜♪ お姉様は美人であんなに強いなんて凄いです〜」
満面の笑みを浮かべて白虎に飛びつき、南天桃(ea6195)が瞳をキラリと輝かせる。
白虎は苦笑いを浮かべているが、まんざらでもないようだ。
「それじゃ、準備はいいかな?」
丸い球を手の平で弄び、審判の男がニヤリと笑う。
「ねぇねぇ! 何で五なのか<ちょっと聞いてくれるぅ? 私の友人がさぁ〜今朝、人の顔見るなり、『お前の額に五がみえる〜見える〜』って言ってさ‥‥。ほら見てよ、オデコ!! 筆で『五』って書くんだよ? 有り得ないぃ〜!」
身振り手振りを使って審判に今朝の出来事を説明し、とき和が鉢金を外して自分のおでこを指差した。
「こ、こら! 何をやっているんだよ! 審判が困っているだろうが!」
とき和の頭をポコンと殴り、玄武が大きな溜息をつく。
「痛っ! 大きなたんこぶになったら、どうする気だい? ひょっとして責任を取ってくれるのぉ〜?」
冗談まじりに微笑みながら、とき和が玄武に抱きつき囁いた。
「う、うるせぇ! それじゃ‥‥頑張れよ」
自分でも少し怒り過ぎたと思ったため、玄武が捨て台詞を残して去っていく。
「それじゃ、ルーレットを始めるぞ。‥‥覚悟はいいな」
一瞬にして緊張の糸が緩んだため、審判が気合を入れなおす。
「覚悟は出来てますよぉ〜」
ほんわかとした様子で自分のポイントを1に賭け、桃が心配にむかって可愛らしくウインクする。
心配は少し動揺したのか、球をポトリと盤に落とす。
「五番〜、はぃ! 五番〜! 異国では『信じるものは救われる』って言うって聞いたからさ! 友人を信じて球の行方を待つのさ♪」
盤の中を球がクルクルと回る中、とき和が拳を握って結果を待つ。
「ふたりとも残念だったな。出たのは9番だ」
9番の穴に入った玉を拾い、審判がふたりのポイントを没収する。
その後も残ったポイントで賭けは続けられたのだが、やはり当たりは出なかったらしい。
「お姉様の役に立とうと思ったのにぃ〜。ごめんなさいですぅ〜」
悔しそうに涙を浮かべ、桃が白虎に頭を下げる。
「気にしなくていいのよ。次があるじゃない。頑張りましょう」
扇子をパタパタと仰ぎながら、白虎が優しく桃の肩をぽふりと叩く。
「友人!! 裏の畑に埋める!」
そして、とき和はどぶろくを一気に飲み干すと、不機嫌な表情を浮かべて会場を去るのであった。
「白虎様、ごめん。僕、前回これなかったよ。寅の石版、取れなかったんだね。だから今回は石版の欠片狙いで、危険を承知でポイント狙いに走るよ」
会場に来ていた白虎にむかって挨拶し、羽雪嶺(ea2478)が気合を入れて勝負に挑む。
「ふふっ‥‥期待しているわよ」
白虎は雪嶺を緊張させないようにするため、扇子を仰いでニコリと笑う。
「うおおおーー、早くポイントを稼がんと、わしの体はぼろぼろじゃーー」
前回の失敗で亀甲羅の重さを増され、錬金(ea4568)が血反吐を吐いて拳を握る。
これ以上、甲羅が重くなってしまうと命にも関わるため、金の気合も必要以上に入っているようだ。
「このままだとキングサイズを背負う事になるなぁ。これを背負ったら体力つくぜぇ〜」
金の背負った甲羅を撫で、玄武が怪しくニヤリと笑う。
「しかし、祭りのせいで今回は参加者が少ないの。これは『ちゃんす』じゃ、玄武の衆。石版の欠片目指して頑張るぞい‥‥玄武もお怒りじゃしな」
苦笑いを浮かべながら、金が気まずく視線を逸らす。
「何だか大変でござるな。これでも食べて元気を出すでござる。鮭のジャンプ力は凄いでござるよ。ウサギの足の競技では拙者、鮭に見習って飛び跳ねるでござる」
お正月用の新巻鮭を仕込むシーズンという事もあり、沖鷹又三郎(ea5927)が昨夜漁師の手伝いをして貰ってきた鮭で鮭粕汁をつくって参加者に配る。
「それじゃ、わしからはこれをやろう。
食って気合を入れるといい。これは因幡の白兎の故事が『もちいふ』だ。……失敗して白兎の如く丸坊主にされるのは、ありがたくないがな」
ウサギの耳と目と鼻のついた楕円形の大福を配り、金が豪快な笑みを浮かべて大福をかじる。
「‥‥そんな事を言っても、既に坊主だろ」
金の頭をペチペチと叩き、玄武が大福を口の中に放り込む。
「うーん‥‥、さすがに少し寂しい気がするわね。人数は少なくても、狙うは優勝。ハイリスクハイリターンで行くわよ。‥‥まあ、正直、幸運とは縁が薄いけどね」
朱雀の期待を一身に背負い、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)がクスリと笑う。
ほとんど玄武と白虎の一騎打ちのような雰囲気が漂っているため、ここで勝利を掴んで一気に差を開きたい。
「それでは位置について‥‥ヨーイ、ばきゅん!」
拍子抜けする声を出しながら、審判が試練の開始を合図する。
「桃ちゃん達の分まで頑張らないとな」
最初の障害を軽々と飛び越え、雪嶺が気合を入れてゴールを目指す。
この試練はポイントが大きく動くため、雪嶺も緊張した様子で障害物を飛び越えていく。
「うおっ‥‥、これは奇跡なのか。身体が羽のように軽いぞ!」
天使のような笑みを浮かべ、金が次々と障害物を飛び越える。
「う、嘘だろ‥‥」
玄武もかなり驚いているのは、キングサイズの甲羅を落とす。
「拙者も負けていられんでござる。産卵場所までたどり着けず無念に漁師の網に捕まった鮭の分まで頑張るでござる!」
金に続いてピョンピョンと障害物を飛び越え、又三郎が手拭いで汗を拭う。
「障害物ってみんなパターンが違うのね」
荒く息を吐きながら、アイーダがゴールを目指す。
障害物を何とか避けようとしていたのだが、色々な仕掛けを麒麟衆がしたため、かなり苦戦しているようである。
「僕達は走る事と飛び跳ねる事しかできないからね。なるべく罠に引っかからないようにしないと‥‥うわぁ!」
障害物に引っかかり、雪嶺がバランスを崩して転倒した。
「ぐわっはっはっは! 天は俺に味方してくれたようだな! キングサイズの甲羅など誰が背負うか!」
命懸けで障害物を飛び越え、金が豪快な笑みを浮かべてゴールする。
「はぁはぁ‥‥、凄いスピードでござったな」
金に圧倒的な差をつけられ、又三郎がゴールに辿り着いて水を飲む。
既に金は真っ白に燃え尽きており、何も喋ろうとしない。
「命懸けでゴールしたみたいだね」
いまにも灰になって飛んでいきそうな金を見つめ、雪嶺が哀れみの表情を浮かべて両手を合わす。
金本人も予想外の出来事だったため、そのまま昇天しそうな雰囲気だ。
「はぁ‥‥、ごめんなさい」
魂の抜けた表情を浮かべ、アイーダが疲れた様子で溜息をつく。
アイーダの健闘を称え、朱雀が出迎えに来てくれたのだが、素直に喜ぶ事は難しい。
「これで石版は全衆に行き渡ったようだな。ふぅ〜、一時はどうなるかと思ったぜ」
そして玄武は石版の欠片を受け取り、嬉しそうに掲げるのであった。
<玄武衆>卯の欠片入手
錬金 25 10 卯忍の称号
紫上久遠 4 11
山浦とき和 0 0
ルーラス・エルミナス 0 3
総合ポイント 30(29+1)
<青龍衆>
不動金剛斎 5 5 卯忍の称号
総合ポイント 17(5+12)
<朱雀衆>
アイーダ・ノースフィールド −5
総合ポイント 12(−5+17)
<白虎衆>
沖鷹又三郎 5 6
南天流香 0 3
南天桃 0 3
羽雪嶺(ea2478) −5 −6
総合ポイント 24
[お詫び]前回までの計算に一部間違いがありましたので、今回から分かりやすく集計しています。