●リプレイ本文
「‥‥今度は辰か。確かジャパンではドラゴンの事で神格化されて水神となっているようだな。干支の中では唯一の神、12の中に隠されし神か‥‥何かあるな。河童とて水の生き物。水神と強ち無関係でもあるまい。やはり石版の欠片に秘密があるな」
五輪祭の秘密を暴く為、デュラン・ハイアット(ea0042)が極秘裏に動く。
何か裏がある事は確かだが、それが何かは分からない。
「せっかく貯めたポイントが、また無くなってしまいましたわ。今回こそ鬼門忍以外の称号も手に入れないといけませんね」
前回の試練でポイントがゼロになった為、南天流香(ea2476)が気合を入れて呟いた。
他の試練には自分の兄が参加している事もあり、少し心配した様子で溜息をつく。
「イギリスに行っちゃう茜おねーちゃんの為にも、何としてでも白虎が優勝しないとね!!」
白虎衆の優勝を心に誓い、柊小桃(ea3511)が滝の上を見つめて拳を握る。
「‥‥おぬしらはいいな。我はこんなに恥かしい思いをしているのに‥‥」
前回欠席した罰として朱雀から『チームメイト全員に祝福のキスをしろ』と命令された為、ルミリア・ザナックス(ea5298)が恥かしそうに汗を流す。
ひとりずつキスをして歩いているのだが、恥かしさのあまり気絶しそうな心境だ。
「パトラッシュ‥‥わしは燃えたよ、真っ赤にな。燃え尽きたよ、真っ白な灰に‥‥とっても眠いんじゃ‥‥」
何故かイスに座って真っ白な灰になったまま、錬金(ea4568)が妙な幻を見て身体をぷるりと震わせた。
「ごぉら! 何を燃え尽きてんだ! てめぇの持ってきた小龍包‥‥カラシが入っていたぞ!」
大粒の涙を浮かべながら、玄武が金を本気でブン殴る。
試練の前に金が各忍軍の首領に対して小龍包を差し入れして来たのだが、玄武の小龍包だけカラシが入っていた為かなりブチ切れているらしい。
「は、はて‥‥わしは何をしていたんじゃろ? そうじゃ、試練に参加せねば‥‥」
完全に玄武の事を無視しながら、金が空ろな瞳でふらりと歩く。
「無視してんじゃねぇ。こら、待ちやがれ!」
タラコのように厚くなった唇を押さえ、玄武が金の事を追いかける。
「パ、パトラッシュ〜」
まるで何かに取り付かれたような表情を浮かべ、金が玄武の攻撃をすり抜け試練にむかう。
「‥‥しッ、一気に行くぜ!」
麒麟衆の審判が旗を振り下ろした為、阿武隈森(ea2657)が滝を登っていく。
8〜10は危険地帯と予測した為、確実にポイントを狙って5で止まる。
「こんな所を昇れるわけないだろ!! 私は飛んでいくぞ、体力自慢どもに付き合っていたら身が持たん」
リトルフライを発動させ、デュランが6の位置を目指す。
「‥‥え? 嘘!?」
6の位置に辿り着いた瞬間デュランと派手に激突し、小桃が驚いた様子で滝壷まで落ちる。
「クッ‥‥、まさかこんな所で脱落とは‥‥。まぁ、ルミリアが勝てれば問題は無いか」
最後の望みをルミリアに託し、デュランが大きな溜息をつく。
「ごめんなさ〜い」
大粒の涙を浮かべながら、小桃が流香の活躍に期待する。
「やはり予想通りか。さて‥‥他の連中はどうかな?」
満足した様子で腕を組み、森が上を見上げて呟いた。
「ジャパンでは鯉が滝登りをすると龍になると言い伝えがあるのか‥‥鯉、コイ‥‥恋‥‥むぁっ! 我は何を‥‥!! うぁあ!」
恥かしそうに頬を染め、ルミリアが首を振りながら一気に滝を昇っていく。
「甲羅を背負わなくて良くなったわしは、まさにさなぎから脱皮した、蝶! 華麗な滝登りを見せてやるわい!!」
豪快な笑い声を響かせ、金がルミリアの後に続く。
「皆さん、考える事は同じですね」
高得点を狙う為、流香も岩場を踏み台にして飛び上がる。
「がーっはっはっは、漢は常に最頂を目指すもの! ‥‥誰じゃそこ、煙と何かは高い所が好きとか言いおってー」
10の地点を目指して駆け上がり、金がギョッと目を見開いた。
「ま、まさか!?」
勢いよく金にぶつかり、流香がルミリアを巻き込み落下する。
「‥‥恋とは落ちるものなのかな‥‥」
ぼぉーっとした表情を浮かべ、ルミリアがひゅーんと滝つぼに落ちた。
興奮して熱っぽかった為か、滝壺の水がジュッと音を立てて蒸発する。
「きゃあ!?」
水で服が濡れて透けていた為、ルミリアが我に返ってしゃがみ込む。
「欲は身を滅ぼすだけだ」
そして森は唯一試練を乗り越え、辰忍の称号を獲得した。
「すまんな。前回は武神祭に行っていたから参加できなかった。今回はそこそこ働かせてもらう事にする」
壁にもたれかかっているゴルゴに声をかけ、岩倉実篤(ea1050)がクスリと笑って試練にむかう。
「‥‥期待しているぞ。死ぬ気で頑張れ」
本気とも冗談とも言えない言葉を呟き、ゴルゴが瞳をギラリと輝かせる。
「常々思っていたのだが、見物している河童は結構いるのに参加している河童をあまり見かけないのはどう云う事だ? 外部の冒険者OKなら飛び入り参加も可だろ? 五輪祭に参加する河童忍者が不足している穴埋めに外部の人間を参加せるのは解るが、肝心の河童より外部者の方が目立っているのは問題ないのか?」
素朴な疑問を感じた為、実篤が振り返って呟いた。
「予選で脱落しているだけだ。‥‥最近の河童は根性がない」
脱落した河童達の顔を思い浮かべ、ゴルゴが疲れた様子で溜息をつく。
「‥‥あれが予選だったのか。ならば河童達にも頑張ってくれと伝えてくれ。‥‥勝利を我ら青龍に!」
参加登録をするまでの出来事を思い出し、実篤が納得した様子で頷き別れを告げる。
「ゴルゴ達は頑張っているようね。全く目障りったらありゃしない。今回の戦いに負けたら‥‥分かっているわよね?」
女王様チックな笑みを浮かべ、朱雀がゆっくりと辺りを見回した。
「ええ、分かっています」
辺りにはルーラス・エルミナス(ea0282)が負けウサギ2式(足首から膝まで黒く変わっている状態で、負けが込むたびに色が黒くなり、全身が黒くなると禁断の奥義でお仕置きされる仕掛け付きの状態)の格好で立っており、何かを怯えるようにしてずっと気まずい表情を浮かべている。
「‥‥負けたら更なるお仕置きですか」
ルミリアの事を思い出し、三笠明信(ea1628)が自分の唇に手を当てた。
その事で堅物である明信はずっと頬を染めたままである。
「何だか嬉しそうな顔をしているねぇ〜。そんなにキスが良かったかい? だったら頑張る事だねぇ」
明信の事をからかいながら、朱雀が意味深な台詞を呟いた。
「べ、別にそんなつもりでは‥‥。し、審判が呼んでます。で、では‥‥」
朱雀から逃げるようにして、明信が視線を逸らして試練にむかう。
「‥‥恋の季節ねぇ」
しみじみとした表情を浮かべ、白虎が明信の背中を見つめてクスリと笑う。
「こんな所にいたのか。妹が世話になっているから挨拶に来たんだ。さっき話しかけようとしたら、何処かに消えていたからな」
白虎にむかって声をかけ、南天輝(ea2557)が何度も深呼吸をし始めた。
きちんと挨拶をしようと思うのだが、無理をしすぎている為か頭から煙が出そうな勢いだ。
「なんだ、愛の告白か? 熱いねぇ〜」
冗談まじりに微笑みながら、玄武が輝の肩を抱く。
「‥‥勘違いするな。俺はただ白虎に挨拶をしただけだ」
ジト目で玄武を睨みつけ、輝がボソリと呟いた。
「そうか。残念だな。せっかく面白いものが見れると思ったのに‥‥」
寂しそうな表情を浮かべ、玄武が大きな溜息をつく。
「燃えろ〜良い女〜♪ ‥‥って縁起でもない! 玄ちゃ〜ん。ちょっとお願いがあるのぉ〜。ちょっとタツノオトシゴを預かっていてくれるかい〜♪」
玄武の肩に素早く腕を回し、山浦とき和(ea3809)が滋養のあるタツノオトシゴを口移しで渡す。
「それじゃあ、行って来るわね♪」
悪戯っぽく微笑みながら、とき和が呆然と立ち尽くす玄武に手を振った。
「この試練では燃えやすい薪を選択し、自分の背負う薪を選択する事になっていたが、少しルールが分かりにくかったようなので、なるべくルールに沿った形で修正した。自分の背負う薪は最も選択した数の大きな薪になっている」
困った様子で咳をしながら、麒麟衆の審判がボソリと呟いた。
ルールをうまく説明できなかった為、彼にはとてつもなく恐ろしい罰が舞っているらしい。
「どうやらルールを把握できたのは少数だけのようだな」
四の薪に燃えやすい薪を5本入れ、実篤が弐の薪を背負うと審判に伝える。
「‥‥となると背負える薪はひとつという事ですね。確かに分かりにくかったです」
壱に2本と四に3本の燃えやすい薪をいれ、明信が仕方なく伍の薪を背負う事にした。
「それじゃ、私の場合は燃えやすい薪を参に仕込み、自分の背負う薪は壱になるわけですね」
麒麟集の忍者から薪を渡され、ルーラスがゆっくりと背負う。
「俺の場合は参の薪か」
燃えやすい薪を指定(壱×3、四×2)し、輝が薪を背負ってスタート地点に移動する。
「私は伍の薪ね。燃えやすい薪は壱×3、参×1、伍×1でお願いするわ」
顔を真っ赤に染めている玄武に手を振り、とき和が伍の薪を背負う。
「この試練‥‥意外と楽勝かも知れないな」
審判の合図と同時に走り出し、実篤が10の地点を迷わず目指す。
「んな!? いきなり燃えたぞ!」
すぐに薪が燃えた為、輝がすぐさま湖の中に飛び込んだ。
「もはや負けは、許されません。文字通り背中に火を背負い、火事場の馬鹿力で、馬や、鹿の様に走るまです」
朱雀のお仕置きに対して例えようのない恐怖を感じ、ルーラスが全身全霊を込めて走り出す。
しかし、炎が一瞬にして他の薪に燃え移ってしまった為、ルーラスも輝に続いて湖の中に飛び込んだ。
「だんだん薪が燃えてきましたね。もう少しでゴールなのに‥‥」
背中の薪が次第に燃えた為、明信が祈るようにしてゴールを目指す。
「このままじゃ、本当にお嫁にいけない身体になっちゃうじゃない!」
大粒の涙を浮かべ、とき和が拳を握り締める。
「‥‥悪いが一番乗りだ。楽勝だったな、この試練」
ほとんど薪が燃えていなかった為、実篤が勝ち誇った様子で呟いた。
「む、無念です‥‥」
背中に大火傷を負う危険がある為、明信が勢いよく湖の中に飛び込んだ。
「もう少しだったのにぃ〜」
悔しそうな表情を浮かべ、とき和が薪を放り投げる。
「どうやら辰忍として認められたのは実篤だけのようだな。ぬおっ、何を!?」
そして麒麟衆の心配は他の河童達に連れられ、朱雀の待つお仕置き部屋へと姿を消した。
「接吻とは基本的に惚れた者とするものだと俺は寺子屋で子供達に教えている。だからお前さんは嫌いじゃないが辞退する‥‥か」
ルミリアとのやり取りを思い出し、伊達正和(ea0489)がクスリと笑う。
デュランに知恵を借りた事でルミリアと明信の中は進展したらしく、お互い顔を赤らめながら何か話題を探している。
「随分とアツアツのようね。‥‥羨ましいわ」
ルミリア達の姿を見つめ、白虎がボソリと呟いた。
「俺には関係ない事だ。少なくとも今は‥‥」
クールな笑みを浮かべながら、正和がルミリア達に背をむける。
「どうやらそのようね。さしずめ愛のキューピッドって所かしら?」
冗談まじりに微笑みながら、白虎が正和の事をからかった。
「御姉さまと私達南天兄妹も熱々ですよ〜♪ きっと縁があるんですね」
背後から白虎に飛びつき、南天桃(ea6195)がニコリと笑う。
「ふふっ、そうね。試練頑張ってね。‥‥負けちゃ駄目よ」
桃の言葉で我に返り、白虎がコクンと頷いた。
「みんな気合が入っているな。‥‥今度こそ活躍をせねば」
ゴクリと唾を飲み込みながら、紫上久遠(ea2841)が大きく深呼吸をする。
首領の玄武は腑抜けになっている為、自分で気合を入れておく。
「事前に心理戦を仕掛けてはおいたが‥‥ん〜、あまり効果はなさそうだな」
腕組をして精神統一をした後、不動金剛斎(ea5999)が辺りを見回した。
参加者達は色々な意味で気合が入っている為、心理戦はあまり効果がなかったらしい。
「さて、身体も温まったし背中の龍も猛っているぜっ! 陸奥流の技、見せてやるっ!」
どことなく羽織の背中部分に描かれた龍の画が吼えている様に見え、正和が目隠しを外して8、7、9、10の順に板をぶん殴る。
鉄板の仕込まれている板は2〜4の為、正和はすべての板を一瞬にして砕く。
「一体どの板に鉄板が仕込まれているんですかね〜? 目隠しをしていたから分かりませんねぇ〜」
心配した表情を浮かべ、桃が1、8、9の順に目の前の板を粉砕する。
「‥‥みんな楽勝のようだな。一体、何処に鉄板が仕込まれているんだ?」
警戒した様子で板を睨み、久遠が6と10の板を砕く。
「今までの報告書から分かる範囲で推測すると‥‥4、5、8がヤバイと俺の本能が告げているぞ! てりゃ!」
手始めに1と2の板を殴り、金剛斎の動きが止まる。
「何か様子が変ですねぇ〜?」
金剛斎の拳が小刻みに震えている為、桃が首を傾げて呟いた。
「神皇様! 我に力をぉぉぉ!!」
鉄板を砕く勢いで金剛斎が雄叫びを上げる。
それと同時に金剛斎の拳から血が飛び散り、鉄板が見事にヘコむ。
「だ、大丈夫か?」
心配した様子で拳を見つめ、久遠が包帯を持ってくる。
「‥‥これが青龍集の気合って奴だ」
手馴れた手つきで包帯を巻き、金剛斎が会場を去っていく。
「俺の‥‥勝ちだっ!」
そして正和は高々と拳を掲げ、辰忍の称号を獲得した。
結果 累計
<青龍衆> 辰の欠片入手
岩倉実篤 20 27 辰忍の称号
阿武隈森 10 33 辰忍の称号
不動金剛斎 0 5
総合ポイント 30+17=47
<玄武衆>
山浦とき和 18 18
紫上久遠 4 15
錬金 0 10
ルーラス・エルミナス 4 7
総合ポイント 26+30=56
<朱雀衆>
三笠明信 18 23
伊達正和 8 13 辰忍の称号
ルミリア・ザナックス 0 2
デュラン・ハイアット 0 −2
総合ポイント 26+17=43
<白虎衆>
南天桃 6 9
南天輝 2 2
柊小桃 0 7
南天流香 0 3
総合ポイント 8+24=32
注:今回獲得したポイントが高い忍軍が欠片を入手しています。