●リプレイ本文
「今回は巳の試練らしく『まむし』じゃ〜!」
ぱんぱかぱーん、と独特な効果音を響かせ、錬金(ea4568)がアツアツのご飯の上にタレのかかったウナギを乗せる。
「はっはっは、驚いたようじゃな。まむしといっても蛇料理じゃないぞ! これはれっきとした鰻丼じゃ! そもそも、まむしとは‥‥」
「てめぇか! 俺のマムシを食ったやつは! せっかく精力をつけようと思ったのに!」
すぐさま金の顔面に飛び蹴りを放ち、玄武が胸倉を掴んで涙を流す。
「ご、誤解じゃ! これはウナギであって、マムシでは‥‥うごうごっ」
ブンブンと首を横に振り、金が何とか誤解を解こうとする。
「言い訳なんか聞かねえぞ! あれは絶倫効果のある特別製のものだったのに‥‥」
金にマムシを食べられてしまったと思い込み、玄武が大粒の涙を浮かべると雄叫びを上げてドツく。
「だから誤解‥‥だと‥‥あ、あれは‥‥」
薄れ行く意識の中、金は草叢へと逃げていくマムシを見つけ、プルプルと指差し気絶した。
「今回の試練はまさに命懸けですね。生きるか‥‥死ぬか‥‥。そのくらいの覚悟が必要かも知れません」
グッタリとしている金を見つめ、山王牙(ea1774)が解毒剤を忍ばせ念入りに太刀を研ぐ。
麒麟衆の審判からきちんと許可を貰い、試練で使った蛇を食べるつもりでいるらしい。
もちろん、河童達も味の良し悪しで蛇を選んだわけではないため、どんな味がするのか食べてみないと分からない。
「蛇を‥‥食うのか?」
鋭い視線で牙を睨み、ゴルゴが表情を険しくさせた。
「あ、はい。挨拶が遅れました。頭領、初参加の新米ですが、宜しくお願いします。牛、猪と食材を狩って来た称号の中に、蛇を付け加えるつもりで頑張ります!」
ゴルゴの傍まで駆け寄り、牙が礼儀正しく頭を下げる。
「油断するんじゃないぞ。‥‥蛇は執念深いからな」
ヤル気に満ちた牙を見つめ、ゴルゴがクスリと笑って背をむけた。
「ええ、分かっています。そのための準備は怠っていません」
研ぎ澄まされた太刀を握り、牙がゴルゴに一礼すると試練の行われる場所にむかう。
会場には既に参加者達が座っており、選んだ笛を握り締め開始の合図を待っている。
「青龍衆はやる気だな。それじゃ、こっちも頑張るか」
苦笑いを浮かべながら、南天輝(ea2557)が蛙の形を模した笛を選ぶ。
どんな音色がするのか想像する事も出来ないが、一番独特な形をしているため何だか期待が持てそうだ。
「おっ、久しぶりに参加したら、白虎衆も結構いるんだね。まあ、試練は運が左右しやすいし蛇に咬まれないようにしないな」
辺りをキョロキョロと見回しながら、羽雪嶺(ea2478)がチョコンと座る。
笛は全部で5種類あり、どれかひとつがハズレのようだ。
「ふたりとも頑張ってね。期待しているわ」
自分の忍軍の所属しているふたりにむかって声をかけ、白虎が持参したおにぎりを配っていく。
「これはありがたい! 白虎さん、この間は挨拶でみっともない所を見せた。いや、前回はいっぱいだったもんでな。今度、俺と食事でもどうだ。落ち着いてみたら美しい事に気が付いたんでな」
爽やかな笑みを浮かべながら、輝がおにぎりを一気に平らげる。
「この試練で巳忍の称号を得たら‥‥考えてあげるわ」
含みのある笑みを浮かべ、白虎がボソリと呟いた。
「それじゃ、約束だ。忘れるなよ」
そう言って輝がニカッと笑い、気合を入れて笛を握る。
「よし! みんな位置についたようだな。若干、1名ズタボロのようだが‥‥。そろそろ試練を始めるぞ!」
むりやり倒れている金を位置につかせ、麒麟衆の審判が試合開始の合図を出す。
「まずは私から行きますね」
いかにもアレな笛を吹き鳴らし、牙が目の前の壷を黙って睨む。
壷の中からは一匹の蛇が顔を出し、優雅にダンスを踊っている。
「出てきたのはコレだけですか。やはり形がアレですからねぇ」
威嚇し始めた蛇を睨みながら、牙がゆっくりと手を伸ばす。
「さすが頭領が警告しただけの事はある。捕まえるだけでも一苦労ですね」
なかなか蛇を掴む事が出来ないため、牙が険しい表情を浮かべて溜息をつく。
これでは捕まえるまでしばらく時間がかかりそうだ。
「次は僕だね。それにしても‥‥この笛長いな。吹く前に折れたりするのは勘弁だよ」
心配そうな表情を浮かべ、雪嶺が妙に細長い笛を吹き始める。
壷の中からは妙に細長い蛇が3匹ほど顔を出し、長い舌をペロリと出すと身体を怪しくクネらせた。
「「はっはっは、みんな甘いのお。ここでわしの実力を見せてやろう。気合じゃーーーーー!」
奇跡の復活を遂げムックリと起き上がり、金がやけに気合の入った笛を鳴らす。
それと同時に辺りがシーンと静まり返り、空でカラスがカァと鳴く。
「うーむ、わしの『めろでぃー』が美しすぎようじゃな。蛇達も壷の中でウットリと聞き惚れておるわ。はっはっは」
乾いた笑いを響かせながら、金が気まずく誤魔化した。
「最後は俺か。上手く蛙の鳴き声に近い音色を鳴らせれば何匹か蛇が出るだろう。まあ、大物狙いだがな」
蛙を模した笛をゲコゲコと鳴らし、輝がゴクリと唾を飲み込んだ。
壷の中からは小さな蛇が五匹現れ、輝の持っている笛を威嚇するようにして首を揺らす。
「勝負あったな。この試練の勝者は輝! ちなみに最後まで残っていた蛇の姿をしている笛だが、これは大蛇を呼び寄せる事の出来る特殊な笛だ」
そして麒麟衆の審判はニヤリと笑い、笛を吹いて壷の中から大蛇を出した。
「新年明けましておめでとう、玄ちゃん。今年もよろしくね」
玄武にむかってウインクしながら、山浦とき和(ea3809)が投げキッスを送る。
今年からコスチュームを新調したらしく、たくさんの蛇を捕まえるための魚籠を背負う。
「随分と気合が入っているじゃねえか。どうせ蛇を掴むのが恐くて悲鳴を上げるんだろ」
苦笑いを浮かべながら、玄武がとき和の事をからかった。
「蛇なんていや〜ん、恐い! なんて言うと思ったら大間違い。蛇はネズミなんかを駆除してくれるありがたい生き物だもの。恐がるわけがないだろ。玄ちゃんのためならえ〜んやこらさ」
玄武を見つめてニコリと笑い、とき和が気合を入れて拳を握る。
「期待していいんだな。だからって無理して怪我するなよ」
恥かしそうに頬を染め、玄武が気まずく頬をかく。
「今回の試練はどれも比較的楽な気がするのは俺の気の所為か? まあ、試練が楽でも競争相手がいる以上、欠片を手に入れれるかは別問題だけどな」
立て看板に書かれている注意書きを読みながら、岩倉実篤(ea1050)が麒麟衆の審判を睨む。
「そんな事はない。一歩間違えばあの世逝きだからな。もちろん、毒消しも解毒剤も用意していない。必要ならば河童に秘薬でも使うがいい」
あからさまに怪しい薬を取り出し、麒麟衆の審判が実篤の肩を叩く。
(「ちっ、解毒剤は結構 値が張るからな。手持ちに無いがさてどうするか? まあ、咬まれなければ済む問題だが‥‥。黒勾玉もあるし運勝負といくか」)
険しい表情を浮かべながら、実篤がチィッと舌打ちする。
木に登っている間は毒蛇の判別が出来ないため、後は運を天に任せるだけだ。
「太助殿も応援に来ているようでござるな。この勝負‥‥負けるわけにはイカンでござる」
太助の期待に応えるため、沖鷹又三郎(ea5927)が籠を背負う。
ここで惨めな姿は見せられないため、最短ルートを登ってゴールする気らしい。
「1と10は参加者の皆様が通るとして、残る8本の内3本がハズレって事ですね〜。白虎お姉様のためにも頑張りますです」
自分の兄である輝が巳忍に選ばれた事もあり、南天桃(ea6195)が白虎衆の勝利を願って気合を入れる。
「蛇1匹につき1ポイントか。こういう事は事前に教えてもらえないと困るんだが‥‥。ん? また始末されたのか」
ぬか漬けにされている河童を見つめ、実篤が呆れた様子で溜息をつく。
最近、麒麟衆の忍者がたるんでいるらしく、次第に罰則も厳しくなっているらしい。
「それじゃ、お先に失礼するよ。早めの方が今回は有利そうだしさ。冬眠している蛇が目覚めたら厄介だろ?」
1→2→4→8→9→10の順にルートを選択し、とき和が蛇の気持ちになりきり腹をペタリとつけ、滑るようにして木を登っていく。
籠の中には1の枝で捕まえた1匹と、2の枝で捕まえた8匹が入っており、スヤスヤと寝息を立てている。
「上の枝にはあまり蛇がいないようですね〜。はうっ!」
3の枝でいきなり毒蛇に襲われ、桃が持っていた蛇を落とす。
毒蛇に咬まれる事は無かったが、籠の中には蛇がいない。
「知り合いの蛇取り名人に話を聞いておいて正解でござるな。面白いように蛇が取れるでござる」
1→4→8→9→10の枝を選択し、又三郎が4の枝で休んで籠の中を確認する。
蛇の数は全部で8匹。現時点では第2位である。
「ここまで来て14匹か。これなら楽勝だな」
何とか5の枝まで登りきり、実篤が身体の汗を拭う。
今のところハズレの枝は選んでいない。
「ちょっと悔しいですね。せっかく最短でゴール出来たのに‥‥」
7の枝で蛇を4匹捕まえ、桃が最初にゴールした。
思ったよりも蛇を捕まえる事が出来なかったため、少し落ち込んでいる様子である。
「クッ‥‥、油断した。まさかこんなに毒蛇が多いとはな」
9の枝で毒蛇の群れに噛みつかれ、実篤が青ざめた表情を浮かべてゴールした。
途中で籠を落としてしまったため、8匹の蛇しか持っていない。
「これだけあればまむし酒が出来るでござる」
実篤と同じく9の枝で毒蛇に咬まれ、又三郎が疲れた様子で籠を置く。
最短ルートを選んだためか、籠の中には蛇が5匹しかいない。
「おやおや、みんな苦戦していたようだねぇ。私は全部で9匹さ。これでようやく甲羅の中身が見えるんだねぇ。こら、待ちなさい。玄ちゃ〜ん!」
そして、とき和は毒蛇に咬まれた事も忘れて、玄武を追いかけていくのであった。
「仲間達が他の依頼で抜けてるのは痛いな。だが、俺には応援してくれる人がいる。逆境ならばなおさら燃えるぜ!」
巳の瞳で使用する大蛇を睨みつけながら、伊達正和(ea0489)がニヤリと笑う。
朱雀の機嫌が悪いため、ここで負けるわけには行かないようだ。
「これ以上黒く染まる訳には行かないのです。此度こそ必ずや勝利を‥‥」
度重なる失敗により、罰として『負け兎の参式(兎の扮装<腹まで黒く染まった衣装、背中に薪を背負った姿)』の刑に処され、ルーラス・エルミナス(ea0282)が覚悟を決めて位置につく。
これ以上の失敗は許されないため、ルーラスも必死なようである。
「みんなピリピリしているわね。こっちはのんびり行きましょう」
参加者達の緊張を解すため、白虎が冗談まじりに微笑んだ。
「お心遣いありがとうございます♪ それにしても白虎さんの着ているチャイナドレスって綺麗ですね。わたくしも着てみたいです♪」
白虎の服をマジマジと見つめ、南天流香(ea2476)が羨ましそうに呟いた。
「あ、これ? ミンメイブランドの服よ。最近、密かなブームなんだって」
微妙な言葉のマジックに気づかぬまま、白虎がチャイナドレスを自慢する。
あまりの安さに纏め買いした事もあり、流香も一着貰える事になったらしい。
「「お楽しみの最中すまないが、そろそろ試練開始の時間だぞ」
流香達にむかって声をかけ、ゲレイ・メージ(ea6177)が合図と共に大蛇を睨む。
大蛇は河童達に棒で刺激され、今にも襲い掛かってきそうな勢いである。
「さて悩む。蛇は1にいるから、2まで行けばほぼ勝てる。しかし咬まれる確率も非常に高い。今回は肝っ玉だけじゃ難しいな」
慎重に大蛇の傍まで近づき、正和がゴクリと唾を飲み込んだ。
視線を逸らす事が出来ないため、大きく深呼吸して先に進む。
「蛇は蒲焼、蛇は蒲焼、蛇は蒲焼‥‥‥‥!」
蛇を喰らう気持ちで瞳を血走らせながら、ルーラスが地面をスタスタと這って行く。
大蛇はルーラスを威嚇しているようだが、罰を受ける事に比べれば可愛いものだ。
「‥‥意外と神経を使いますね」
ようやく5の位置まで進み、流香が額に浮かんだ汗を拭う。
「いつ襲ってくるのか分からないからな。おたくも覚悟しておくといい」
含みのある笑みを浮かべ、ゲレイが一気に大蛇の傍まで近づいた。
「それじゃ、この辺りにしておきますね。高得点を狙って咬まれてしまったら意味がありませんし‥‥」
3の位置で立ち止まり、流香がホッと溜息をつく。
巳忍の称号は遠のいてしまったが、これで最低限のポイントはゲット出来る。
「これ以上は無理ですね。間違いなく襲われます」
大蛇の身体から放たれる殺気に気づき、ルーラスが流香の隣で息を殺す。
咬まれてしまっては元の子も無いため、これ以上先に進む事は出来ないようだ。
「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なり、踏みこみ行けば後は極楽っ! 俺はここに胆力の全てを賭けるっ!」
大きな声を上げながら、正和が2の位置で大蛇を睨む。
大蛇はペロリと舌を出し、正和の顔を睨んでいる。
大蛇が襲ってきた瞬間を狙い、ゲレイがアイスブリザードを放ち、動きが鈍ったところで掴み取り、勝ち誇った様子で高々と掲げる。
「まさか大蛇を掴み取るとはな。‥‥恐れ入った」
勝負に負けた悔しさも忘れ、正和がゲレイと握手した。
「黒き淵が私を飲み込む」
それと同時にルーラスが青ざめた表情を浮かべ、慌てた様子で玄武から視線を逸らす。
玄武はニコニコとしているが、甲羅を奪われ不機嫌そうだ。
果たしてルーラスの運命は!?
結果 累計
<白虎衆> 巳の欠片を入手
南天桃 8 17
沖鷹又三郎 5 11
南天輝 5 7 巳忍の称号
南天流香 3 6
羽雪嶺 3 −3
総合ポイント 24+32=56
<青龍衆>
ゲレイ・メージ 10 10 巳忍の称号
岩倉実篤 8 35
山王牙 1 1
総合ポイント 19+47=66
<玄武衆>
山浦とき和 9 27 巳忍の称号
錬金 0 10
ルーラス・エルミナス 3 10
総合ポイント 12+56=68
<朱雀衆>
伊達正和 5 18
総合ポイント 5+43=48
注:今回獲得したポイントが高い忍軍が欠片を入手しています。