●リプレイ本文
「はぱかはんぱぱーん、恵方巻きー!! これで玄武にも春が訪れるぞい」
キュウリ大目の太巻きを高々と掲げ、錬金(ea4568)が縁起の良いとされる方角をむいて無言で食べる。
太巻きの中にはキュウリ以外にも七種類の具が入っており、服を食べるという意味合いもあるらしい。
「初午や〜、ああ初午や、初午や♪」
青色のくの一忍者服に身を包み、山浦とき和(ea3809)が人参の入った籠を腰にぶら下げ、嬉しそうに玄武と腕を組む。
「おいおい、俺は玄武衆の首領だぞ。こんな所をまわりの奴らに見られたら勘違いされちまうぜ」
とき和の事をジト目で睨み、玄武が恥かしそうに頬を掻く。
「え〜良いじゃないのさ〜、玄ちゃんと私は一心同体♪ それともなんなの? 私を乗せられないって言うの? 表に出て貰おうじゃないのさ!」
玄武の甲羅を指でなぞり、とき和が艶っぽい笑みを浮かべて呟いた。
「いや、これには深いわけが‥‥って、馬いるじゃん!」
とき和に表まで引っ張り出され、玄武が驚いた様子で彼女の馬を指差した。
「居るなら最初から連れて来い! ‥‥って言う抗議は聞っこえなぁ〜ぃ。だって玄ちゃん、嫌だ嫌だって言っても、本当は照れ隠しをしているだけでしょ♪」
ウリウリと玄武を小突き、とき和がニヤリと微笑んだ。
「ち、違うっ!」
顔を真っ赤に染めながら、玄武が恥かしそうにそっぽをむく。
「そうだ! 今度、勝った時は何をして貰おうかねぇ〜。甲羅の中身は見せて貰っちゃったし‥‥。前回は素敵な中味を有難う♪ な・か・み♪」
甲羅を外した時に浮かべた玄武の表情を思い出し、とき和がクスクスと笑い出す。
「お、覚えてろ!」
雑魚がよく使う台詞を吐き捨て、玄武が涙を浮かべて逃げていく。
「今回の試練は趣が違うな。さて、どうしたものか?」
立て札に書かれている内容を読み終え、岩倉実篤(ea1050)が溜息をついて腕を組む。
「‥‥お前らしくないな。いつも通りに行けばいい」
木の上から飛び降り、ゴルゴが実篤の肩をポンと叩く。
「おたくがゴルゴか。私は真理を追究する錬金術師だ。難しい依頼をこなし、腕を上げたいと思っている。もちろん河童忍軍の祭にも興味ありだ。よろしく頼む」
ゴルゴにむかって声をかけ、ゲレイ・メージ(ea6177)が愛馬カウンタックに乗って現れた。
「‥‥ああ、期待しているぞ」
カウンタックの身体を触り、ゴルゴがコクンと頷いた。
「みんな気合が入っているわね。私達も頑張らなきゃ」
参加者達を引き連れ、白虎が扇子をパタパタと仰ぐ。
「‥‥随分と余裕だな。まぁ、いい。俺も負けるつもりはないからな」
まったく興味がないのか、ゴルゴが何も言わずにその場を去る。
「相変らずクールな方ですね」
白虎から借りた大胆なスリット入りのチャイナ服を身に纏い、南天流香(ea2476)が苦笑いを浮かべて呟いた。
「そんな事より、その服‥‥ちょっと大胆じゃないか」
視線のやり場に困りながら、南天輝(ea2557)が不満そうに愚痴をこぼす。
「そんなにわたくしの足が気になりますか?」
戸惑う兄の顔を見つめてクスリと笑い、流香がわざとらしく生足を見せる。
「こらこら、あんまり苛めたら可哀想よ。漢はみんな狼なんだから」
輝があからさまに動揺したため、白虎が冗談まじりに微笑んだ。
「白虎お姉様〜、私だけ称号を取れてないです〜」
白虎の身体にしがみつき、南天桃(ea6195)が瞳を潤ませる。
「気にする必要はないわ。頑張る事に意味があるのよ」
桃の頭をヨシヨシと撫でながら、白虎が彼女の事を励ました。
「そうそう。イキの良いスッポンが手に入ったので、さっそく調理するでござる」
スッポンの入った鍋を置き、沖鷹又三郎(ea5927)が料理の準備をし始める。
「おお、これは活きのいいスッポ‥‥、うお〜、とってくれぇぇぇぇ!」
鍋の中を覗き込んだ瞬間、スッポンに鼻を噛まれてしまい、金が悲鳴を上げて涙を流す。
「師匠がスッポンに噛まれたでござる!?」
激痛に苦しむ金を見つめ、又三郎がパニックに陥った。
「このバカ弟子が〜!」
あまりの激痛に雄たけびを上げ、金が又三郎をガツンとブン殴る。
「はっ!? 師匠の雷声に吃驚してスッポンが離れたでござる!」
げふっと血反吐を吐きながら、又三郎がゴロリと転がった。
「早くも脱落者かい?」
グッタリとしたふたりを見つめ、朱雀が髪を掻きあげクスリと笑う。
「ところで聞きたい事がある。親切に掲示された五輪祭の『現在までの結果』を見て少し謎が‥‥。石版の欠片は各衆に見事に分かれているが、欠片というからには全部ひとつに揃えなければ意味は無いのではないか? 石版が完成しなければ、五輪祭の謎は恐らく解けないな。後で欠片を奪い合う競技でも行うのかも知れんが‥‥。先代から何か聞いていないのかね?」
今まで行った競技の結果が立て札に書かれていたため、デュラン・ハイアット(ea0042)が険しい表情を浮かべて朱雀を睨む。
「‥‥やはり欠片の数が鍵なのか?」
大粒の汗を浮かべながら、ルミリア・ザナックス(ea5298)が朱雀の事を問い詰めた。
「それは‥‥秘密さ。教えちゃったら面白くないだろ?」
妖艶な笑みを浮かべながら、朱雀が麒麟衆の審判を逆さ吊りにして鞭でしばく。
どうやら前回と前々回の説明で、朱雀集の紹介を忘れていた事が原因らしい。
「まあ、深く考えても仕方ない。試練に集中するか」
朱雀の態度を不審に思いながら、デュランが試練会場にむかう。
今回の試練は今までのものとは異なり、複数の試練を行わず上位三名が称号を与えられるようになっている。
「ところで明信殿。‥‥以前の文はお読み頂いたであろうか‥‥? で、出来ればご返事を頂きたいのだが‥‥」
ラブレターの返事をもらうため、ルミリアが絞り出すようにして声を出す。
「では、これを‥‥。いかんせん使い慣れないゲルマン語‥‥。試練の後に‥‥読んでください‥‥」
ゲルマン語で書かれたラブレターを手渡し、三笠明信(ea1628)が恥かしそうに頬を染める。
試練の後だと反省会などあるため渡し損ねてしまう可能性があるため、付き合っても良いと書かれた内容の手紙を渡す事にしたらしい。
「それじゃ、ふたりとも頑張るんだよ。祝いの意味も込めて、今回は何があっても罰はなしだ。他の連中もふたりに感謝するんだね」
妖艶の笑みを浮かべながら、朱雀がふたりの肩を抱く。
何故か含みのある笑みを浮かべているが、それが何を意味しているかは分からない。
「‥‥安心して。今回は得意分野の乗馬で挽回させて貰うわ」
そしてアイーダ・ノースフィールド(ea6264)は馬に飛び乗り、目の前のコースを睨みつけた。
「最も得意とする馬術競技こそ最後の試練、負けられません」
負け兎、3式の姿で登場し、ルーラス・エルミナス(ea0282)が胸まで黒く染まった兎の姿で試練に挑む。
「ふ、俺の華麗な馬術を見せてやるぜ」
足掛けロープを軽々と飛び越え、紫上久遠(ea2841)がルーラスに続く。
「はははっ、冒険者は駄目じゃと言われたが、河童や首領に乗ってはいかんとは言われておらん」
玄武に肩車されながら、金が豪快な笑い声を響かせる。
「あ、あれ! 玄ちゃん? ‥‥きゃあ!?」
いきなりのスタミナ切れで馬子が果てたため、とき和が悲鳴を上げてコースをゴロゴロと転がった。
「お前‥‥スタミナ配分、間違ったな」
哀れみの表情を浮かべ、玄武がとき和にツッコミを入れる。
「‥‥この試練、油断は出来ないな」
リトルフライを使って驢馬の上で偉そうに腕を組み、デュランが第3ポイントで人参に気をとられないように警戒する。
「うおっ‥‥、こんな場所で人参か」
危うく馬から落ちそうになりながら、実篤が手綱を引いて人参を避ける。
「あれだけ人参を与えておいたのに‥‥」
トラップに使用する人参は最高級のものを使用しているため、予め対応策を用意していた流香も苦戦している雰囲気だ。
「まさかこんな場所で足止めを喰らうとは‥‥」
幸せそうに人参を頬張る馬を見つめ、明信が頭を抱えて溜息をつく。
「こら、喰うな!」
馬の手綱を引きながら、輝が何とか興味を逸らそうと頑張った。
「しまった! ここにトラップか!」
第5ポイントに差し掛かった時点で丸太を喰らい、久遠が血を吐き捨て再び馬に乗りなおす。
この試練では馬に落ちても失格にならないため、素早く立て直す事が出来れば問題ない。
「今回こそ、称号を手に入れるんだから〜〜っ!!」
眩暈のする頭を左右に振りながら、柊小桃(ea3511)が愛馬『相馬 駆(そうま・かける)』に飛び乗った。
「これじゃ、弓矢を射る余裕がないわ」
無数の丸太が飛んできたため、アイーダが短弓を地面に落とす。
「ハナ殿、太助殿、スネーク殿‥‥。我に力をっ!」
河童達の声援を糧にしながら、ルミリアが傷だらけになって先に進む。
「確かこれもルール違反じゃないよな」
ウォーターボムを放って牽制し、ゲレイが他の参加者達を妨害した。
「わわっ、暴力反対ですぅ〜」
ゲレイの攻撃を寸前で避け、桃が涙目になって抗議する。
「今こそ、勝利を、愛馬、ストームガルドよ、駆け抜けろ」
これまでの遅れを取り戻すため、ルーラスが汗だくになりながらゴールを目指す。
「‥‥ぬおっ!」
第8ポイントで虎バサミに引っ掛かり、デュランが前のめりになって倒れこむ。
「そこですっ!」
瞳をキラリと輝かせ、明信が虎バサミを飛び越える。
「きゃあっ!?」
虎バサミを踏んで馬が転んでしまったため、流香が悲鳴を上げて草叢の中に転がった。
「大丈夫か?」
流香に黙って肩を貸し、輝が馬の傍まで連れて行く。
「‥‥たくっ。俺はいつになったら勝てるんだ」
ほろりと涙を流しながら、久遠が愛馬しるばーの足から罠を外す。
「後もう少しだ。頼むぞ、カウンタック!」
だんだん馬が疲れてきたため、ゲレイが大声を出して勇気づける。
「負けないですよ〜」
虎バサミのある場所を通り抜け、桃がゴールを目指してスピードを上げた。
「もう少しでゴールなのにっ!」
悔しそうな表情を浮かべ、アイーダが先頭集団を追いかける。
「これで‥‥面目は保てたな」
ゴール寸前で落とし穴に落下し傷つきながら、実篤が荒く息を吐き捨て最後のポイントを通過した。
「く、悔しいでござる。もう少しで勝てたのに……」
ようやく落とし穴から抜け出し、又三郎が疲れた様子で溜息をつく。
「まぁ、こんなものかな」
差し入れの水を一気に飲み干し、小桃が手拭いを使って汗を拭う。
「‥‥もはやこれまでか」
今回も称号を得る事が出来なかったため、ルーラスがガックリと膝をつく。
「まぁ、いいじゃねえか。俺はお前の頑張る姿勢が大好きだぜ!」
そして玄武はニカッと笑い、ルーラスの事を励ました。
‥‥こうして午忍の試練は幕を閉じた。
結果 合計
<白虎衆> 午忍の欠片入手
柊小桃 12 19 午忍の称号
沖鷹又三郎 12 23 午忍の称号
南天桃 6 23
南天流香 2 8
南天輝 1 8
総合ポイント 33+56=89
<朱雀衆>
三笠明信 10 33
ルミリア・ザナックス 3 5
アイーダ・ノースフィールド 3 −2
デュラン・ハイアット 1 −1
総合ポイント 17+48=65
<青龍衆>
岩倉実篤 14 49 午忍の称号
ゲレイ・メージ 2 12
総合ポイント 16+66=82
<玄武衆>
ルーラス・エルミナス 8 18
紫上久遠 2 17
錬金 2 12
山浦とき和 0 27
総合ポイント 12+68=80
注意:合計は今までの参加した全試練の合計です。