清十郎最後の日?

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:11人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月11日〜10月14日

リプレイ公開日:2005年10月18日

●オープニング

●清十郎の身に何かが起こる‥‥!?
 男色絵師で名の知れた、清十郎が修行の旅に出るらしい。
 以前の見合いで懲りたのか、しばらく江戸を離れるようだ。
 旅には、まとりょーしかという名前のオコジョが同行する予定になっている。
 ‥‥何でも馬が合うらしい。
 人間とオコジョだが‥‥。
 ‥‥すまん。
 いま言った事は忘れてくれ。
 ‥‥何だか寒くなってきた。
 物凄く嫌な視線を感じるし‥‥。
 と、とにかくだ!
 ‥‥清十郎のヤツが旅に出る!
 それと、詳しい事は分からんが、見世物小屋の主人も同行する。
 噂じゃ、借金返済のための島流し『重労働1ヶ月』の旅と言われているが‥‥まさかな。
 巷じゃ、まとりょーしかがふたりの監視役に任命されているという話だが、そこまでオコジョに出来るとは思えないから噂の域を出ていない。
 ふたりとも何故か逃げ腰という話だから、江戸湾まで彼らを見送ってやってくれ。
 自分達で旅に出たいといったわりには逃げ腰だからな。

●今回の参加者

 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0489 伊達 正和(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0789 朝宮 連十郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0957 リュカ・リィズ(27歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea2605 シュテファーニ・ベルンシュタイン(19歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea4927 リフィーティア・レリス(29歳・♂・ジプシー・人間・エジプト)
 ea5062 神楽 聖歌(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb1415 一條 北嵩(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb3021 大鳥 春妃(26歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●清十郎
「‥‥オコジョと馬が合うからって、煩悩を捨てて‥‥恋人も捨てて江戸を離れられるとは思えないんだけどね、俺」
 呆れた様子で溜息をつきながら、一條北嵩(eb1415)が清十郎の家にむかう。
 清十郎の家には薄汚れた紙が何枚も張られており、『金返せ』『盗人野郎』『覚悟完了』などの文字が並んでいる。
 保護者である小野於通(ez0029)に話を聞いてみたところ、『とうとうこの時が来たのね』と含みのある笑みを浮かべていた。
「嘘臭いな、あの男色絵師が無我の境地なんざあり得ねえ。於通さんは何か知っているようだったが、詳しい事は教えてくれなかったしなぁ‥‥」
 於通に会った時の事を思い出し、伊達正和(ea0489)が腕を組む。
 色々と引っかかる点はあるのだが、於通が話そうとしないため、謎は深まるばかりである。
「とにかく清十郎さんを捕まえておきましょう。放っておくと逃げそうですし‥‥」
 匍匐前進で逃げ出そうとしていた清十郎を踏みつけ、瀬戸喪(ea0443)が縄を取り出し縛り上げ彼を見つめて微笑んだ。
「お前ら‥‥、俺を何だと思っている! 少しでも人の心があるのなら、俺を逃がしてやろうと思わないのか!」
 納得のいかない表情を浮かべ、清十郎がブツブツと愚痴をこぼす。
「みんな、清十郎さんの事を思って、やっている事です♪ 文句を言ったらバチが当たってしまいますよ」
 清十郎の肩にちょこんと座り、リュカ・リィズ(ea0957)がクスリと笑う。
 彼の表情から『借金問題』が絡んでいる事が容易に想像する事が出来たが、このまま見逃したとしても於通に迷惑がかかると思ったため、リュカも気づいていないフリをする。
「とにかく大人しくしていろ。こうなったのもお前に原因があるんだぞ。於通さんの気持ちを察せ!」
 於通の考えを理解し、北嵩が頭を抱えて溜息をつく。
 清十郎の性格からして、江戸にいる限り真面目に絵を描く可能性が低いため、島流しにされて強制労働でもしていた方が、色々な意味で心を入れ替えるかも知れない。
「港に行く途中で馬鹿な真似をするんじゃないぞ。俺達だって手荒な真似はしたくないからな」
 約束の場所にむかうため、、正和が強引に縄を引っ張りあげる。
「お前だったら‥‥許すのじゃ‥‥」
 必要以上に唇を近づけ、清十郎が恥ずかしそうに頬を染めた。
 ‥‥どうやら彼に好意を持ったらしい。
「やめろ、気持ちが悪いっ! 俺にそっちに趣味はない!」
 すぐさま清十郎を殴りつけ、正和が縄をズルズルと引っ張って行く。
「やろ、やめるのじゃ! 分かったから‥‥、わしが悪かったから‥‥! このままでは、顔が‥‥、股間が‥‥、あうううう‥‥」
 大粒の涙を浮かべながら、清十郎が顔と股間を押さえて謝った。
 よほど微妙な部分に直撃したのか、清十郎も必死なようだ。
「随分と可愛い声で鳴くんですねぇ‥‥。於通さんがいたら、どんなに悦んでいた事か‥‥。この場にいない事が悔やまれますね」
 苦笑いを浮かべながら、喪が清十郎の頭を撫でた。
「ほらほら、早くしないと船が出ますよ」
 自分の身体に巻きつけた鉢巻を握り締め、リュカが清十郎の首に巻きつける。
「げほっ、げほっ、苦しいのじゃ!」
 青ざめた表情を浮かべながら、清十郎が激しく咳き込んだ。
「しばらく会えなくなるな。‥‥元気でやれよ」
 色々な意味で清十郎を励まし、正和が爽やかな笑みを浮かべて肩を叩く。
 清十郎は空ろな表情を浮かべ、正和達に連れられ港にむかう。
 港にはガラの悪い連中が待っており、清十郎の胸倉を掴んで連れて行く。
「これで最後かも知れませんね。彼と会う事が出来るのは‥‥」
 少し寂しそうな表情を浮かべ、喪が清十郎を見つめて両手を合わす。
「‥‥門出に涙は駄目だよな。頑張って来いよ清十郎! これは餞別代りだっ! 持って行け!」
 うっすらと涙を浮かべ、北嵩が清十郎を抱きしめた。
「こ、これは‥‥」
 北嵩から受け取った包みを開け、清十郎がハッとした表情を浮かべて汗を流す。
 清十郎好みの漢汁が染み付いた至極の褌‥‥。
 心に響く野郎声‥‥。
「煩悩を捨てる為の旅立ちだけど‥‥この位は大目に見て貰おうぜ」
 ‥‥北嵩の言葉に涙が出た。
「必ず帰ってくるのじゃ! その時は‥‥ううっ‥‥」
 ボロボロと涙を流し、清十郎が北嵩に抱きつく。
 本気で帰ってくる気があるのか、やけに気合が入っている。
「まだ江戸に戻ってきたら、今度は私の絵も描いてくださいね」
 名残惜しそうに涙を浮かべ、リュカが大きく手を振った。
 清十郎が再び帰って来る事を祈りつつ‥‥。

●親父
「見世物小屋の親父が妙な真似をしているらしいな。売り上げの持ち逃げ未遂に、ミンメイちゃん名義で借金未遂、それとセクハラ未遂‥‥だっけか? みんな俺が阻止しなきゃ、危ない事になっていたからな。‥‥二度ある事は三度あるって言うけど、仏の顔も三度までって言葉もあるし、恩を仇で返そうってんなら、それなりにそれなりの手を打たせて貰おうわないとな」
 瞳をキュピーンと輝かせ、朝宮連十郎(ea0789)が指の関節を鳴らす。
 見世物小屋の親父は連十郎に酒を飲まされ、ベロベロに酔ったところを縄で縛られ、猿轡を噛まされジタバタと暴れている。
「いや、借金取りに捕まって色々あったのは、なんとなく喪から聞いてはいたんだが‥‥。これでミンメイにとばっちりがいったら、今まで俺らがやってきたことが無駄になるしな‥‥。ちょっと調べさせてもらうぞ」
 身体検査をするため、リフィーティア・レリス(ea4927)が親父を睨む。
「‥‥」
 気まずい様子で視線を逸らし、見世物小屋の親父が汗を流す。
「やっぱりな。この財布は何かな? 随分と可愛らしい財布だが‥‥。おまえにそっちの趣味はないよな?」
 親父の懐から出てきた財布を突きつけ、レリスが呆れた様子で溜息をつく。
 財布の持ち主は‥‥ミンメイ。
 数日前から彼女が探していたものだ。
「恩を仇で返すなんて‥‥最低ですね。同情する気にもなりません」
 親父の懐をガサゴソと探り、神楽聖歌(ea5062)がジロリと睨む。
 今度はミンメイ堂の権利書だ。
 見世物小屋の親父は一気に借金を返すため、ミンメイから店の権利書を奪い、財布を奪ってトンズラするつもりでいたのだろう。
「そこまで落ちたか、馬鹿野郎! ごるびーが聞いたら、またハゲるぞ!」
 親父の胸倉を掴み上げ、連十郎がいきなり怒鳴る。
 ハゲという言葉に反応し、驚くごるびー。
 ショックのあまり、アフロのカツラが吹っ飛んだ。
「それじゃ、船に連れて行くとするか。噂じゃ、離れ小島で強制労働だって話だけど、石を抱かされて江戸湾に沈められるよりマシだろ? きちんとお給金も貰えるようだし‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、レリスが親父の背中を叩く。
 親父は猿轡を噛まされているため、モゴモゴと言っているだけだが、意味としては『ふざけるな!』と叫んでいるような感じである。
「それが嫌なら奉行所です。ここまでヒドイ事をしたんですから、いまさら言い訳なんて聞きませんよ」
 そう言って聖歌が見世物小屋の親父を引っ張り港にむかう。
 ションボリとした表情を浮かべる親父を連れて‥‥。

●まとりょーしか
「まとりょーしか殿、旅立つのでござるか。寂しいでござるな。知り合ったばかりの人間について行くとは‥‥愛でござるの。‥‥となると、種族を超えた愛でござるか! 拙者、感動でござる。まとりょーしか殿、達者で暮らすでござるよ」
 餞別代りに鶏肉や魚肉の入った包みを渡し、沖鷹又三郎(ea5927)がまとりょーしかに別れを告げる。
 まとりょーしかは名残惜しそうな表情を浮かべ、又三郎に抱きつきホロリと涙を流す。
「拾われた先が悪かったとは言え、まとりょーしかさんの身の上、不憫でなりません。全ての命は、かけがいの無い物、とても死にそうに無い二人の事は、別として、愛らしい、まとりょーしかさんの命は、絶対に救わねば‥‥」
 拳をギュッと握り締め、ルーラス・エルミナス(ea0282)が辺りを睨む。
 船にはゴロツキ達が乗っており、つまらなそうな表情を浮かべて、キセルをぷかりとふかしている。
「妙に感じの悪い人達ですね。一体、何があったんですか?」
 いまいち事態が飲み込めないため、大鳥春妃(eb3021)が首を傾げて呟いた。
 清十郎達を更生させるための船にしては、やけに胡散臭い連中ばかりが乗っている。
「どうやら‥‥、借金取りのようですわね。清十郎と見世物小屋の主人は、約束を破ってばかりだったので、離れ小島に流され強制労働をする事になったようですわ。つまりまとりょーしかは人質代わり。このままふたりが来なければ、まとりょーしかの命はありませんよ。
 シフールの竪琴を奏でながら、シュテファーニ・ベルンシュタイン(ea2605)が春妃に答えてメロディを歌う。
 メロディの効果により、マッタリとした表情を浮かべるゴロツキ達。
 少し眠くなって来たのか、大アクビまでしているようだ。
「もしもの場合は私がまとりょーしかさんを身受けします。もしもの事を考えて、60Gを用意してありますし‥‥。原因は二人の行動のようですが、まとりょーしかさんが巻き込まれるのは解せません」
 真剣な表情を浮かべ、ルーラスがまとりょーしかを抱き上げる。
「‥‥そんな事があったんですか。確かに納得のいかない話ですね。まとりょーしか様は、何も関係がないのに‥‥」
 まとりょーしかを見つめ、春妃が悲しげな表情を浮かべて呟いた。
 ゴロツキ達もまとりょーしかにちょっかいを出すつもりはないようだが、清十郎達が約束を守るとは思えないため、色々な意味で心配である。
「それなら怖そうな方々とも仲良くしておいた方がいいでござる。彼らだって、まとりょーしか殿の事が分かれば、迂闊に妙な真似をしようとは思わないでござる」
 満面の笑みを浮かべながら、又三郎がゴロツキ達に酒を注ぐ。
 ゴロツキ達もまとりょーしかをどうにかするつもりはないため、清十郎達が船に乗った時点で何処かに逃がすつもりのようだ。
「‥‥ですが万一の場合には、まとりょーしか様をお連れして逃げ出さねばなりませんわね」
 清十郎達が来るまで安心する事ができないため、春妃が冒険者達を呼び寄せボソリと呟く。
「その心配はないようですね。ふたりが‥‥来ました」
 ホッとした表情を浮かべ、ルーラスが彼らを出迎えに行く。
 ふたりともかなり落ち込んでいるが、自分の蒔いた種なので、あまり同情する気にはならない。
「これで、まとりょーしか様も自由ですわね。これからどうするおつもりですか?」
 まとりょーしかの頭を撫でながら、シュテファーニが首を傾げて呟いた。
「一応、私の所で飼うつもりです」
 ゆっくりと、まとりょーしかを抱き上げ、ルーラスがニコリと微笑んだ。
 これで、まとりょーしかは本当の意味で自由となった。
「それならお祝いするでござる。まとりょーしかの新たな門出にっ!」
 そう言って又三郎が仲間達と一緒に船から降りる。
 ‥‥今夜はミンメイ堂でお祝いだ。
 まとりょーしかも何だか嬉しそうである。