●リプレイ本文
●はじめての肝試し
「‥‥肝試しでござるか。最近暑いでござるから、丁度良いでござるの。ごるびー殿も暑くてやる気が出ないのかもでござるし、涼しい思いをして戴くでござるよ」
ごるびー達を驚かすため、沖鷹又三郎(ea5927)が肝試しの準備をし始める。
又三郎が用意したのは、涼しげな料理。
井戸から汲んだばかりの冷水を使い、ごるびーの好物である焼きイカや、イカの塩辛、きゅうりの和え物などを作っておく。
「念のため地図を配っておくか。一回限りだから、そんなに高い紙を使う必要はないよな?」
途中で参加者が迷わないように地図を描き、一條北嵩(eb1415)が韋駄天の草履を履いて外に出る。
一応、墓場の中にも目印となる看板が立っているのだが、途中で迷子になった場合に地図があった方が心強い。
「ごるびー‥‥肝試し‥‥と来たら、やっぱりコレか。ごるびーのヤツ‥‥、驚くだろうな」
どこでも柳に干しイカを吊るし、本所銕三郎(ea0567)がニヤリと笑う。
干しイカの先には何故かごるびーが食いついており、銕三郎と顔を見合わせぷらんぷらんと揺れている。
「くっくっくっ‥‥、つまみ食いはいかんな、ごるびーよ。何ならここで性根を叩き直してやろうか?」
ごるびーの首根っこを掴み上げ、龍深城我斬(ea0031)が冗談まじりに囁いた。
青ざめた表情を浮かべ、ごるびーが激しく首を横に振る。
我斬の言葉を聞いて身の危険を感じたのか、ジタバタと暴れて地面に降り立ち、あっという間に逃げて行く。
「きっと偵察に来たのでしょう。どんな内容か分かっていれば、それほど驚く事もありませんから‥‥」
二度とごるびーが入って来ないようにするため、琴宮茜(ea2722)が入り口の戸を閉め鍵を掛ける。
ごるびーは芸をするほど頭がいいため、茜の言っている事も間違いとは言えない。
「さて、わしも準備をするかのう。‥‥最高の冷麺をな」
気合を入れて袖をまくり、駒沢兵馬(ea5148)が冷麺を作る。
出汁はやや濃い目で鰹を使い、麺には山葵を練り込み、若布や小魚などを砕いてボール状して歯ごたえを楽しんでもらうように工夫を凝らす。
「それじゃ、みんなで頑張りましょうか」
そう言って神楽聖歌(ea5062)が肝試しの準備をする。
自分達のやり方で、ごるびー達を驚かすため‥‥。
●怯えるごるびー
「しふしふですよ〜、ごるび〜ちゃん☆ 今回もよろしくですよ〜☆ なんだか今回は肝試しらしいですね〜☆ ごるび〜ちゃんは怖くないですか〜☆」
満面の笑みを浮かべてごるびーの顔を見つめ、ベル・ベル(ea0946)が墓場の入り口でクルクルまわる。
肝試しの舞台になっている墓場は、昔から『出る』と言われている場所のため、辺りには異様な気配が漂っており、今にもごるびーが倒れそうな雰囲気だ。
「大丈夫ですよ、この墓地には知り合いがいますから‥‥」
ごるびーを安心させるため、志乃守乱雪(ea5557)がヨシヨシと頭を撫でる。
しかし、ごるびーは乱雪の言葉を誤解し、墓地に幽霊の知り合いがいると思い込む。
「肝試し‥‥ねぇ。一寸の虫にも五分の魂と言うけれど、身長50センチ(推定)のごるびーくんの肝っ玉は、どのくらいの大きさかな?」
すぐさまごるびーの腕をむんずと掴み、レオーネ・アズリアエル(ea3741)が墓場の中に入っていく。
ごるびーは激しく首を振っているが、レオーネは全く気づいていない。
「私は、こう言うのはあまり得意じゃないですよ〜。ですから、ごるび〜ちゃん、私を守ってくださいですよ〜☆」
怯えた様子でごるびーの背中に隠れ、ベルがカタカタと身体を震わせる。
ごるびーはすぐにでも逃げ出したい気分だが、ベルがしがみついているため逃げられない。
「ご安心ください。幽霊が出てもわたくしが追い払って差し上げます」
おっとりとした笑みを浮かべ、大宗院鳴(ea1569)がごるびーの事を励ました。
ごるびーは一瞬険しい表情を浮かべたが、鳴のほんわかとした雰囲気で心が安らぎ、だんだん恐怖心が薄れてきた。
「それに、これをつけていれば、どんな化け物が出てきても平気ですからね」
魔よけのお札に紐をつけ、乱雪がごるびーの首にぶら下げる。
ごるびーは魔よけの札が気に入ったのか、嬉しそうにぴょこぽんと跳ねて乱雪に頭を下げた。
「しかし‥‥、マッタリしてるごるびーくんも可愛い‥‥じゃなくって、肝試しで驚かせて、精神が叩き直るモノなのかしら? 何だか海で鍛えるって言った時もこんな感じだったような気が‥‥まあ、楽しいからいいわね」
苦笑いを浮かべながら、レオーネがごるびーと手を繋ぐ。
恐怖心が消えたのか、鼻歌まじりで歩くごるびー。
だが、本当の恐怖はこれからだ。
●墓場
「あら、ごるびーさん。この幽霊、可愛いですわね」
小さな物音がするたびニコリと笑い、鳴がごるびーと一緒に墓場を進む。
ごるびーは鳴にガッチリとしがみつき、ほとんど目を開けていない。
「多分、一昨年の夏に、ココで亡くなった方です」
事前に聞いていた噂を思い出し、乱雪がボソリと呟いた。
「‥‥いい、ごるびーくん。中でお化けとあったら、絶対に相手が目を逸らすまで睨みつけていないとダメ。目を逸らすと、魂を抜かれちゃうからねー」
『劉 鳴海著 鬼門堕目死(きもだめし)』を読みながら、レオーネが肝試しの注意事項をレクチャーする。
ごるびーはレオーネの持っている本を恐る恐る覗き込み、クールな表情を浮かべて『きゅきゅっ』と力強く頷いた。
「(‥‥そうだ、そのままこっちによって来い、一生物のトラウマにしてやるぜ)」
ボロボロで血糊のついた般若面を顔に被り、我斬が薄汚れた外套を纏ってごるびー達が通り過ぎる時を待つ。
「‥‥‥‥きゅっ」
ごるびー達は何も知らずに墓場を進み、我斬の仕掛けた火の玉(油を染み込ませた布を丸めて吊るしたもの)に気づく。
「悪い子はいねが〜〜!」
般若面である事を強調しながら、我斬が両手に小柄を抱えて墓石の陰から飛び出した。
「きゅいいいいいいいいいいいいいいん」
全身が真っ白になるほどの勢いで、ごるびーが悲鳴を上げて目をまわす。
「わぁっ ごるびーだ!! え〜い☆」
次の瞬間、柊小桃(ea3511)がまるごとメリーさんを身に纏い、ごるびーの背後から勢いよく飛びつき頬擦りをする。
「ぴーちめりー必殺!! 『わたあめり〜』!!」
満面の笑みを浮かべながら、小桃が毛玉のように丸まりごるびーの身体をホールドした。
「ご、ご、ご、ご、ご、ごお‥‥ですよ‥‥」
あまり恐ろしさに言葉にならず、ベルがダラダラと汗を流す。
「きゃあぁぁぁぁぁっ、きゃあ。ごるびーくん、わんこのお化けよーきゃあきゃあ」
嬉しそうに悲鳴を上げ、レオーネが魔よけのお札を奪い取る。
そのショックでごるびーの魂がひょろりと抜け、へなへなとしながら倒れこむ。
「気絶‥‥、しちゃいましたね」
それんと一緒に着ぐるみを脱ぎ捨て、茜が気絶したごるびーをツンツンとつつく。
本当ならそれんも脅される側にいるはずだったのだが、一緒に脅す側にまわりたいとせがんだため、ごるびーを恐怖のどん底へと突き落とす結果となった。
「と、とにかく何処かに運ばないと。このままじゃ、ごるびーが死んじゃう!」
すぐさまごるびーを抱きかかえ、小桃が又三郎達の待つ休憩所にむかう。
出来るだけ早くごるびーの事を助けるため‥‥。
●奇妙な出来事
「‥‥こんにゃくだろ、蛙だろ、豆腐だろ‥‥そしてやっぱり餌はイカ! これで完璧だな」
一方、脅かす側の北嵩は墓石の裏に身を隠し、こんにゃく、豆腐、身代わり人形に糸を通していった後、誰が通っても顔に当たるように色んな高さに調節すると、それを木々にぶら下げていく。
「それにしても暑い。夜とはいえ真夏にキグルミは着るものではないな」
どこでもやなぎを身に纏い、銕三郎が柳の枝先に干しイカを吊るす。
着ぐるみの中はとても蒸れるため、早く脱ぎ捨て楽になりたいらしい。
「目下『どこでもやなぎ』職人(?)を目指して修行中の身の俺としては実力を試す絶好の機会だ! ごるびーなんかにゃ見破られないぞ!」
ごるびー達を騙すため、北嵩が詳しい説明の書かれた紙を睨む。
「なになに‥‥、この衣装を着た者が念じる事で、装着者を見た相手は精霊力抵抗に成功しない限り、本当の柳の木だと思ってしまう‥‥か。ふむぅ〜〜」
気合を入れて目を閉じながら、北嵩が息を止めて念じていく。
「げほっげほっ、こりゃあ無理だな。ひょっとしてこれって息が続かず動いたら、急に木が人間になったように見えるって事か。それはかえって怖いかも‥‥。んー、木になりきるよりも、まずは呼吸を長く止める練習が必要じゃん!」
疲れた様子で頭を抱え、北嵩が詳しい説明の書かれた紙を叩きつける。
「おっ、灯りが見えてきたな。‥‥準備はいいか?」
ごるびー達の姿が見えたため、銕三郎が大きく息を吸い込んだ。
「何だか様子がおかしくないか。‥‥ほら」
険しい表情を浮かべながら、北嵩が提灯の明かりを指差した。
「そういや確かに‥‥随分とフラフラしているな。誰かに脅されてヘロヘロなのか? ‥‥ん? あ、灯りだけ? ま、まぁ、この江戸にいてヒトダマ如きで驚きはしないが‥‥、もっと凄いのを見た事あるし‥‥。でも、ちょっと目眩が‥‥」
酸欠もあいまって、銕三郎がグルグルと目を回す。
「おいおい、大丈夫か? ちょっと息を止め過ぎたようだな。無理をするなよ」
銕三郎を抱き起こし、北嵩が疲れた様子で溜息をつく。
「あっ、そうだ! ごるびーに教えてやろう! あいつ‥‥、きっと驚くぞ!」
瞳をランランと輝かせ、銕三郎がひょっこりと起き上がる。
ごるびーを探して走り回るやなぎが一本。
「きゅっ‥‥」
あまりの恐怖で、ごるびーの動きが止まる。
「お、いたいた。よぅ、ちょっと聞いてくれ! 今そこでヒトダマがさぁ‥‥って何で逃げる! 聞いてくれって! ヒトダマが居る位だからきっと他にも居るぞ! なぁ! おい、待ちなさいってば!」
突然ごるびーが逃げ出したため、銕三郎の着ぐるみ姿で後を追う。
本物のごるびーが休憩所に運ばれた事を知らぬまま‥‥。
●
「まさか途中で気絶してしまうとは‥‥」
瀕死のごるびーを横に寝かせ、又三郎が水に濡らした手拭いを頭に乗せた。
ごるびーは何か悪い夢を見ているのか、荒く息を吐きながら身体をジタバタとさせている。
「‥‥よほど怖い思いをしたのだな。身体が汗でびっしょりだ」
出来立ての冷麺を配り終え、兵馬がごるびーの身体を拭く。
「この様子では、さらにトラウマが増えているかも知れませんね、ごるびーくん」
うなされているごるびーを見つめ、聖歌が同情した様子でなむなむと両手を合わす。
「途中でお札を取られてしまったのが、ショックだったのかも知れませんね」
レオーネからお札を返してもらい、乱雪がガサコソと中身を出した。
そこにはいかにも有り難味のありそうな筆跡で『どんとこい超常現象』と書かれている。
「幽霊さんと仲良くなれば、怖がらないですむと思ったのですが‥‥」
残念そうな表情を浮かべ、鳴がごるびーの頭を撫でる。
「はあはあ‥‥、ようやく追いついた。あれ、ごるびー? ‥‥眠っているのか?」
キョトンとした表情を浮かべ、銕三郎がごるびーの事を指差した。
「先程からずっとその調子でござる。‥‥おや、目を覚ましたかな?」
ごるびーがゲホゲホと咳き込んだため、又三郎が慌てた様子で抱き起こす。
「きゅ‥‥」
どうやら花畑が見えたらしい。
「きゅきゅきゅ‥‥」
河のむこう岸には、お色気むんむんのイカ娘。
ごるびーは迷わず河を渡ったらしい。
「きゅきゅきゅ(大変うまかったです)」
ごるびーが幸せそうだ。
「一体、何を喋っているのかのう。何やら幸せそうな表情を浮かべているが‥‥」
もちろん兵庫達には分からない。
ごるびーが幸せそうにしている理由を‥‥。
「‥‥あれ? 一人多くない?」
北嵩の言葉に仲間達が動きを止める。
そう言えば、ごるびーの後ろに‥‥。
「出たああああああああああああああああああああああああああああ!」
その言葉を合図に北嵩達が逃げ出した。
少し遅れて気づいたごるびーを残し‥‥。