燃え尽きたミンメイ堂

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月06日〜12月11日

リプレイ公開日:2005年12月13日

●オープニング

●夢のアト
「も、燃え尽きたアル‥‥。何も‥‥かも‥‥」
 江戸を襲った大火によって、ミンメイ堂はあっという間に消し炭と化した。
 ‥‥今までの苦労が水の泡。
 残っているモノと言えば、一緒に逃げたごるびーと、帰ってきたばかりのそれんだけ。
 本当なら命があっただけでも、喜ぶべきなのかも知れないが、失った物はかなりデカイ。
 しかも、今のミンメイは無一文。
 ‥‥落ち込むのも無理はない。
「きゅきゅきゅっ!」
 こんがり焼けたスルメイカを口にくわえ、ごるびーがミンメイの肩を叩いて励ました。
 ごるびーも大好物のイカが消し炭と化してしまったため、ある意味ミンメイと同じ気分である。
「お、お終いアル‥‥。このままじゃ、生きるために借金をした上、如何わしいお店に売られてしまうのがオチあるよぉ〜!」
 一気に転落人生を歩む事になったため、ミンメイの口から魂がひょろりと抜けた。
 彼女のやるべき事は、ただひとつ。
 ‥‥明日からの住処である。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0248 郭 梅花(32歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0789 朝宮 連十郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea2722 琴宮 茜(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2724 嵯峨野 夕紀(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3582 ゴルドワ・バルバリオン(41歳・♂・ウィザード・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea4927 リフィーティア・レリス(29歳・♂・ジプシー・人間・エジプト)
 ea5062 神楽 聖歌(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea5897 柊 鴇輪(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●ミンメイ堂跡
「‥‥見事に焼けましたね」
 ミンメイ堂だった場所を見つめ、神楽聖歌(ea5062)が両手を合わす。
 ミンメイ堂は江戸の大火に巻き込まれ、すっかり焼け落ちてしまっている。
「はやや〜、看板まで真っ黒焦げですよ〜」
 驚いた様子で汗を流し、ベル・ベル(ea0946)がボロボロになった看板をうんしょうんしょと持ち上げた。
「‥‥うーむ、江戸は火事の多い町だと知ってはいたが、よく知っている建物が灰になっておるのを見ると、流石に応えるな!」
 ミンメイ堂の跡地に立ちながら、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が辺りを睨む。
 中途半端に焼け残ってしまうのもアレだが、跡形もなく燃えてしまうと何だか虚しくなってくる。
「しっかしミンメイもえらい確率で災難に遭うよな……。まあ俺もあんまり人の事は言えない不幸体質だけどさ。さすがにここまで酷い事ばかりが続くような事はなかったな。……多分。実家にはすっごく帰りずらいけど。まあ、何かあっても笑ってりゃあ幸せは来るっていうし、こういう時こそ助け合いしなきゃな。底の底まで来たら後はまた這い上がっていくだけだ。どんどん良くなっていくだろ。とにかく元気出しとけよ」
 ミンメイの事を励ましながら、リフィーティア・レリス(ea4927)が気まずい様子で頬を掻く。
「う〜‥‥、アル」
 魂の抜けた表情を浮かべ、溜息をつくミンメイ。
 よほど店が燃えてしまったのがショックなのか、ミンメイが呪文のようにして『これは夢アル。ドリームチャンス』などと訳が分からない事を呟いている。
「‥‥大変な大火事でござったからな。ミンメイ殿もごるびー殿も大変だったでござる。幸い、拙者の棲家は無事だった様子ゆえ、ミンメイ殿の家を復興する、お手伝いするでござるよ」
 自分の胸をポンと叩き、沖鷹又三郎(ea5927)がニコリと微笑んだ。
「♪君が泣きたい。も〜の〜は‥‥なに? 大火事? 宿無し? 借金じご‥‥く〜♪」
 まったく悪気がない様子で、柊鴇輪(ea5897)が彼女の耳元で歌う。
「ううっ、彼女を殺して、ワタシも死ぬアルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 大粒の涙を浮かべながら、ミンメイが鴇輪の首をギュッと締める。
「♪天国は〜目の前にあるもの〜‥‥。だから‥‥みんなダイブする〜♪」
 薄れ行く意識の中、鴇輪が危険な歌を口ずさむ。
「ふたりとも落ちついてください。いまはミンメイ堂を復旧する方が先です」
 暴れるミンメイに当て身を食らわせ、琴宮茜(ea2722)が疲れた様子で溜息をつく。
「と、とにかく焼け残ったものがないのか、調べてみた方が良いかもしれないでござる。さすがに何も残っていないという事はないと思うでござるから‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、又三郎が台所のあった場所にむかう。
 ほとんどのものは黒焦げになっていたが、包丁や鍋が無事だったため、又三郎が焚き火を焚いて簡単な料理を作り始める。
「はやや〜? 何だかイイ匂いがするですよ〜」
 料理の匂いに誘われ、ベルがフラフラとやって来た。
 又三郎は魚料理を作っており、辺りには美味しそうな匂いが漂っている。
「作業を終える頃には美味い飯が食えそうだな!」
 豪快な笑みを浮かべながら、ゴルドワが穴を掘っていく。
 ‥‥ミンメイ堂に眠る埋蔵金の噂。
 ゴルドワが彼女を励ますためについた嘘。
 彼女を元気付けるため、ゴルドワはゴールドの入った壷を埋めた。
「そう言えば、あの壷‥‥。どこに隠してあったっけ?」
 ミンメイを起こさないようにしながら、レリスがそっとゴルドワに耳打ちする。
「それが‥‥、よく分からんのだ。確か目印をつけておいたのだが、何処にもそれが見当たらん!」
 目印として突き刺しておいた棒を探すため、ゴルドワがキョロキョロと辺りを見回した。
「何か探し物ですか〜?」
 目印になっていた棒を握り締め、ベルがふよふよと飛んで来る。
「そ、それだっ!」
 ベルの事をビシィッと指差し、ゴルドワが大声で叫ぶ。
「し、し、し、心臓が飛び出しちゃうかと思ったですよ〜」
 驚いた様子で目を丸くさせ、ベルが心臓をドキドキとさせた。
 ベルは偶然、棒を拾ったらしく、今から捨てに行く途中だったらしい。
「元気を出せ。‥‥明日がある」
 落ち込むゴルドワを慰め、鴇輪がぽふりと肩を叩く。
「と、とにかく壷を探しましょう。時間をかければ必ず見つかるはずですから‥‥」
 ゴルドワの埋めた壷を探すため、聖歌があちこちに穴を掘る。
「‥‥おや、これは?」
 カツッと何かに当たったため、茜が手を使って穴を掘っていく。
「きっと、壷に間違いないな」
 ホッとした表情を浮かべ、ゴルドワが一緒になって穴を掘る。
 しばらくして‥‥、穴の中からゴルドワの埋めた壷と大きな箱が姿を現した。
「なんだ、こりゃ!?」
 壷と一緒に出てきた箱を見つめ、レリスがすぐさまツッコミを入れる。
 ミンメイのために壷を埋めた記憶はあるのだが、大きな箱を埋めた記憶がないためゴルドワ自身も驚きながら‥‥。
「どうやら我輩達はとんでもないものを見つけてしまったのかも知れないな」
 仲間達の顔を見た後、ゴルドワがゆっくりと箱を開けた。
 開けてはならない。禁断の箱を‥‥。
「源徳×‥‥」
 鴇輪がその本を取った瞬間、物凄い勢いでミンメイが走ってくる。
「み、見ちゃ駄目アルゥ!!!! そ、それは‥‥、畳の下に隠しておいたはずなのに‥‥。それが何故!?」
 青ざめた表情を浮かべながら、ミンメイが鴇輪から強引に本を奪う。
「鼻血、止まらない」
 大量の鼻血を撒き散らし、鴇輪がグッタリと倒れた。
 よほど刺激的な内容だったのか、鴇輪の顔が真っ赤である。
「あ、あの‥‥」
 本の内容を容易に予想する事が出来たため、聖歌が頭を抱えて溜息をつく。
「燃やしましょう。‥‥世の中のためにも」
 すべてを悟ったような表情を浮かべ、茜がミンメイから本を受け取り火をつける。
 ミンメイの本は勢いよく燃えながら、燃えカスが宙を舞っていく。
 時折、野郎の裸をチラつかせ‥‥。
「‥‥おや? 何か面白いものでも見つけたのでござるか?」
 ようやく料理が出来たため、又三郎がニコリと笑う。
 その後、ミンメイ達は妙な雰囲気のまま、又三郎の作った料理を食べ、乾いた笑いを響かせた。

●清十郎宅
「苦労してやっと始めた店が全焼だなんて、可哀想になぁ」
 同情した様子でミンメイを見つめ、朝宮連十郎(ea0789)が彼女をギュッと抱きしめた。
「はははっ‥‥、アル」
 ミンメイは色々とショックが重なったため、魂の抜けた表情を浮かべている。
「あらら‥‥、ミンメイちゃんの店、焼けちゃったの?? まったく‥‥あれほど火の始末はちゃんとしておくようにって言っておいたのに。‥‥で、これからどうするの??」
 苦笑いを浮かべながら、郭梅花(ea0248)がミンメイに話を聞く。
「しばらく清十郎の家にいくつもりアル」
 最低限の荷物を抱え、ミンメイが乾いた笑いを響かせる。
「俺の家だったらいつまで居ても大歓迎なんだけどよ。‥‥ていうか嫁に来ないか」
 やけにクールな表情を浮かべ、連十郎がミンメイを口説く。
 しかし、ミンメイの耳には届いておらず、連十郎の口から魂がひょろりと抜ける。
「と、とにかく清十郎さんの家に行ってみましょう。清十郎さんがいくら女嫌いだからって、困っている人を見殺しにするような人じゃないだろうから‥‥」
 ミンメイの事が心配になったため、梅花も一緒についていく。
 幸いな事に清十郎の家は江戸の大火を逃れており、まわりの家も何とか無事なようである。
「な、なんじゃ、お前らは、か、帰れっ!」
 ミンメイと顔を合わせた瞬間、清十郎が驚いた様子で塩を撒く。
 どうやらミンメイがお通夜のような表情を浮かべていたため、反射的に大量の塩を撒いてしまったらしい。
「てめぇ、何しやがんだっ! ミンメイちゃんは漬物じゃないんだぞ! いきなり塩を撒くなんて、どういうつもりだっ!」
 清十郎の胸倉を掴み上げ、連十郎がドスの利いた声を響かせた。
「い、痛いのじゃ! わしは何も悪くないじゃ!」
 大粒の涙を浮かべながら、清十郎が激しく首を横に振る。
「その様子だと僕達がここに来た理由も分かっているようですね」
 清十郎の気持ちを察し、瀬戸喪(ea0443)がニコリと笑う。
「う、うぐっ‥‥」
 心臓をドキリとさせ、清十郎がモゴモゴと口篭る。
「‥‥この寒空に、橋の下の掘っ立て小屋に住まわすなんて事出来ないわよねえ?」
 ジト目で清十郎を睨みつけ、梅花が警告まじりに呟いた。
「し、知らんのじゃ!」
 気まずく視線を逸らしながら、清十郎が入り口の戸を閉めようとする。
「清十郎‥‥、悪い事は言わねぇ。お前‥‥、また借金をしただろう? しかも複数の飲み屋から‥‥。恋人に金を貢ぐのもいいが、借金を返していなかったのは失敗だな」
 含みのある笑みを浮かべ、連十郎が清十郎の耳元で囁いた。
「ま、まさか‥‥」
 色々と心当たりがあったため、清十郎がダラダラと汗を流す。
 だんだん怖くなったのか、真っ青な顔で‥‥。
「ああ、その‥‥まさかだっ!」
 適当に相槌を打ちながら、連十郎がキッパリと答える。
「ぎゃあああああ! だ、助けて欲しいのじゃ!」
 大粒の涙を浮かべ、清十郎が感情を爆発させた。
 連十郎の言葉で芋蔓式に嫌な予感が脳裏を過ぎり、部屋の中を走り回ってあたふたとする。
「そこで取り引きというわけさ。しばらくお前の家を貸してもらう代わりに、借金取りから逃れるための隠れ家を用意してやろう。‥‥それなら問題はないだろ?」
 小悪党な笑みを浮かべ、連十郎がニヤリと笑う。
「た、確かに‥‥」
 オロオロとした様子で、清十郎が汗を流す。
「どうしますか? このまま素直にミンメイさんを家に住ませるか、それとも借金取りに捕まって簀巻きにされるか、どちらか好きな方を選んでください。ちなみに僕は借金取りに雇われていますので、返答次第では‥‥ふふふっ」
 清十郎の決断を早めるため、喪が堂々と嘘をつく。
「こ、怖いのじゃ」
 喪の嘘にすっかり騙され、清十郎がガタガタと身体を震わせる。
「あたし達は味方よ。‥‥安心して。この地図に隠れ家の場所が書かれているわ。しばらくの間、辛い事もあると思うけど‥‥頑張ってね!」
 掘っ立て小屋の地図を渡し、梅花が色々な意味で清十郎に別れを告げた。
「か、感謝するのじゃ」
 ホッとした表情を浮かべながら、清十郎が心の底から感謝する。
 きっと清十郎の目には梅花が救いの女神に見えただろう。
 すぐさま荷物を抱え、嬉しそうに家を出て行った。
「‥‥行ってしまいましたね。何も知らずに、あの場所へ‥‥。まぁ、清十郎さんなら何処でも生きていけそうなので大丈夫でしょうけどね。きっと‥‥」
 清十郎の前途を祈り、喪がなむなむと両手を合わす。
 掘っ立て小屋は河原にあるため、夜風がとても冷たいのだが、ゴキブリ並みの生命力を持った清十郎なら、必ず冬が越せるはず‥‥。
 ‥‥と思いたい。
「それじゃ、部屋の掃除をしちまうか。清十郎の痕跡が残らないようにな!」
 そう言って連十郎が部屋の掃除をし始めた。
 清十郎が真実を知って帰ってくる前に‥‥。

●掘っ立て小屋
「うーむ、橋の下の掘っ立て小屋。べったべたにベタな場所だよな」
 清十郎が家を出てから数日が経ったある日、龍深城我斬(ea0031)が掘っ立て小屋まで彼の様子を見にやって来た。
「い、いらっしゃいませ‥‥なのじゃ」
 警戒した様子で我斬達の顔を確認し、清十郎がホッとした様子で溜息をつく。
 清十郎は借金取りから逃れるため、ボロ切れ一枚で掘っ立て小屋に隠れていたらしく、今にも死にそうな表情を浮かべている。
「とりあえず雨風は、しのいでいるようですね。‥‥差し入れです」
 クールな表情を浮かべながら、嵯峨野夕紀(ea2724)が小屋の中に布団を運ぶ。
 この布団は於通からの差し入れで、何故か亀甲縛りが施されている。
「う、うぐ‥‥。ここも危なくなってきたようなのじゃ」
 色々な意味で危険を感じ、清十郎がダラダラと汗を流す。
 先日も五寸釘の刺さった藁人形が届いてきたため、だんだん身の危険を感じているらしい。
「とりあえずランタンと火打ち石を持ってきた。後は保存食と、釣り道具だ。残念ながら、吊り道具は持ってきていないから、早まった真似はするんじゃないぞ」
 やけに清十郎が怯えていたため、我斬がぽふりと肩を叩く。
「で、出来れば新しい逃亡先が欲しいのじゃ」
 青ざめた表情を浮かべながら、清十郎が我斬の腕をギュッと掴む。
「あんまり飢えた表情を浮かべて俺を見るな。下心があるのは分かるが、俺にそっちの趣味はない!」
 清十郎が妙に密着してきたため、我斬が迷わず彼を拒絶した。
「あんまり馬鹿な真似をしていると、そのまま簀巻きにされて川に流されるのがオチですよ」
 呆れた様子で彼を見つめ、夕紀がツッコミを入れる。
「うぐっ‥‥、心を読まれているようじゃな。わしだって寂しいのじゃ。恋人とも会えず、ひとりで過ごすのが‥‥」
 瞳をウルウルとさせながら、清十郎が上目遣いできゅうと鳴く。
「だからって俺をターゲットにするな。‥‥寒気がする!」
 全身に鳥肌を立たせ、我斬が慌てて離れる。
「あんまり人様に迷惑をかけるようなら、いっそ切ってしまった方が良いのでは? このハサミで‥‥ちょっきんと」
 懐からハサミを取り出し、夕紀が清十郎をジロリと睨む。
「か、か、勘弁して欲しいのじゃ! 借りてきた猫のように大人しくするから‥‥」
 全身の血の気が一気に引いていく感覚に襲われ、清十郎が慌てた様子で夕紀に何度も土下座した。
「‥‥分かればいいんです、分かれば」
 於通に状況を報告するため、夕紀がさらさらメモを取っていく。
 清十郎がまったく反省していないと書き記し‥‥。
「そ、それは‥‥、まさか」
 ハッとした表情を浮かべ、清十郎がメモを奪おうとする。
「‥‥義務ですから」
 清十郎の右手をするりとかわし、夕紀がキッパリと言い放つ。
「うぐぐぐぐぅ‥‥」
 ガックリと肩を落としながら、清十郎がションボリと溜息をつく。
 これからやって来る地獄の日々に怯えながら‥‥。