【破妖結界】祝詞を織りて・後

■キャンペーンシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:29 G 93 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月07日〜05月13日

リプレイ公開日:2007年04月16日

●オープニング(第1話リプレイ)

●再開される旅路
 伊勢の騒動に関わると言われている要石‥‥先日、その半分に再度の封印を済ませてからすぐ後に起きた騒動より今まで、残されている半分に付いては放置されたままだったが漸くにして今、伊勢が落ち着いた事により再びの巡行は始まりを告げる。

「うん、まぁ何とか揃ったわね。一安心一安心」
「うんうん、良かった良かった」
 京都、冒険者ギルド‥‥居並ぶ冒険者達を前にして安堵の溜息を漏らしたのは他でもない依頼人の斎王こと祥子内親王で直後、彼女に続いて何度も頷くのはギリギリで参じる事を決めた侍の鋼蒼牙(ea3167)。
「‥‥所でお仕事は大丈夫かしら?」
「以前の話を聞く限り、問題はないのでござろう? それに何か起きたとしても隊の仲間がきっと何とかしてくれるでござろうから、拙者はこちらを頑張ると致すよ♪」
 だったが今更の様な問いを響かせる斎王に彼と同じ斎宮の守り手が『五節御神楽』に所属する天城月夜(ea0321)が黒衣靡かせ、笑みも艶やかに浮かべ答えれば
「流石に要石の再封印に際し、人手が足りぬままに臨むのは不安でござったしの」
「ありがとう。それとそこなお二人さんも暫くの間、力を貸して頂戴ね」
「この身、あの日の誓約に従い最後まで力を尽くしましょう」
「任せて下さい、頑張るぞー!」
 次にはその瞳すがめ、真摯な面持ちにて言葉紡ぐと謙虚に頭を下げて斎王は改めて皆を見回し、久し振りに見えた騎士のマーヤー・プラトー(ea5254)と初見である戦士のユーディス・レクベル(ea0425)へそれぞれ、声を掛ければ返って来た頼もしき答えに彼女は顔を綻ばせると二人は暫し、斎王と話を交わす。
「此度はレリアとエドも一緒か。随分久しいな、達者だったか?」
「‥‥うん」
「しかし国司様の護衛とは言え、レリアさんはともかくエドさんも一緒とは‥‥」
「私一人では手が届かない所もあるだろうし、少し考える所もあって斎王様に同道の許可を貰った。ともかく、宜しく頼む」
「こちらこそ」
 その傍らにて伊勢の霊刀『白焔』の使い手、ガイエル・サンドゥーラ(ea8088)が久し振りに見たレリア・ハイダルゼムとエドワード・ジルスへ挨拶を交わしており、相変わらずに言葉少ないエドが頷く中で緋芽佐祐李(ea7197)が初めて見た、幼き彼が同道する事に訝るがレリアの答えを聞けば一先ずは頷き彼女に応じる。
「しかし沈黙する妖等、気掛かりとなる点が多過ぎるのが‥‥」
「惑う事はない。要石に封印を施す事が伊勢の完全な平定に繋がるなら、それだけを先ずは果たせば良い」
「そうですね。それならば私のやる事は前と同じくガイエルさんを全力でお守りし、封印を無事済ませられるに努力するだけです」
 そんな折、響いたのは月夜の疑問であり‥‥だがそれには惑わず、ガイエルが断言すれば佐祐李もまた力強く言葉を紡ぐと、決意を露わにする皆の表情を見て斎王は微笑めば
「では、ガイエル。これを」
「はい」
 次には背負う、今にも朽ちそうな刀を何とか引っこ抜くと斎王はその使い手であるガイエルへ再び託す。
「『白焔』様、お久し振りですね。お元気でしたか?」
「元気も何も、刀故に調子等あろう筈もないじゃろうて」
「‥‥あのぉ、所でこのお爺さんはどなたですか」
 すると『白焔』を覗き込む様に顔を寄せ、相変わらずに巫女装束を身に纏う大宗院鳴(ea1569)が挨拶交わせばやがてそれは突っ込まれる事となり‥‥しかし彼女は突っ込まれた老父の存在に首を傾げると、皆は一様に絶句するが
「年故に外に出る事も最近はなかったからのぅ‥‥伊勢国司、北畠泰衡じゃ。以後、お見知り置き頂けると幸いじゃて」
「今回、依頼を受けました鋼蒼牙です。此方こそ宜しくお願いします」
「不手際なき様、務める所存で‥‥」
「なぁに、そうかしこまる必要はなかろうて。伊勢に力を貸してくれていると言う話は守也よりきいちょるし、それならば尚更になぁ」
 皺多き顔を尚くしゃくしゃにして笑えば彼は改めて皆へ自己紹介をすると蒼牙と佐祐李の礼を受けて、しかし彼は肩を竦める。
「所で北畠さん、でしたっけ? 貴方は何故に要石の封印に同道しようと思ったんですか?」
「‥‥これから伊勢の為に何を成せねばならぬか、自身に出来る事を見定める為にじゃよ」
「なるほど。それならば是非、頑張って下さい」
 その柔らかき対応を前に蒼牙は僅かにその表情を緩ませて、彼が今回の要石再封印に当たっての同道する理由を尋ねると暫しの沈黙の後、真摯な面持ちにて確かな答えを彼の口より聞けば、国司の奮闘を期待して激励するも
「ではそろそろ行くとしよう、急いだ方がいいのなら尚更に事は早く済ませてしまわないと」
 多少なりとも話が長引いた事からマーヤーが皆へ声を掛ければいよいよ、四つ目の要石に向けて一行はその歩を進めるのだった‥‥まだ見ぬ光を求めて。

●五ヵ所城近隣
「五ヵ所城と言えば、山と海の幸が一緒に楽しめる良い所ですよね。今なら確か‥‥鯛でしょうか」
「食の事となると相変わらず詳しいですね」
「えへ」
 やがて一行の前に見えてくる五ヵ所城を遠目とは言え確かに捉えながら、『白焔』の贋物が『白塩』を引き摺り顔を綻ばせ言う鳴に佐祐李が苦笑を湛えながらも褒め称えると尚更に笑みを増す彼女が纏う雰囲気の様に辺りの空気は国司の存在の割、思いの他に和やかなものだった。
「所でさ、『五節御神楽』に付いて何か知っている事ってある?」
 だからこそか、その場の雰囲気故に軽い口調で皆へ『五節御神楽』の事に付いて尋ねる蒼牙‥‥どの程度、自身の所属する組織が周囲に浸透しているのか確認の為に紡いだ疑問だったが
「知っているが、それがどうかしたか?」
「しらなーい!」
「それは美味しいんですか?」
「まぁ、こんなもんかな。回答どうもー」
 先ずは冒険者の皆から返って来た答えはそれぞれに異なり、その反応を前に彼は納得して次は今向かっている村でも聞いてみようと思ったが
「‥‥お間抜けさん?」
「あぁ、そう言われて見れば」
「一寸待って、納得しないでそこのお二方‥‥ってまたあんたか、月夜さん!」
 そんな折に響いた声を聞き止めると蒼牙はすぐにその声の主であるエドとレリアを見付ければ、即座に訂正を願い出るもその傍らで潜みほくそ笑んでいる同僚も見付けると彼は憤慨し、叫ぶのだった。
「やれやれ、随分と賑やかじゃのぅ」
「だからこそ、いいのかと思います‥‥これから、厳しくなるでしょうからこれ位は弾けていた方が」
 そしてその光景を前に国司は果たして呟くが‥‥故に彼を諭す様に斎王は以前の巡行よりも見知った顔触れであるからこその調子に苦笑を湛え、言葉を返した。

 それから一両日もせず、村へと至った一行は平和な風景が広がっている事に一先ず安堵を覚える。
「とは言え、だ」
「聞いた話によると量より質らしいからなぁ、最近の妖怪。どっかで潜んで襲撃する機会を窺ってそうだな」
 だが場を包む平穏故に余計に気を張るのは冒険者の性で、密かに表情を厳しくして呟くレリアに蒼牙も最近の伊勢の状況を思い出すが‥‥一先ず一行は今まで歩き通しだった事から足を止め、たまたま見付けた茶屋にて一時の休息を取る事にする。
「何じゃ、一体?」
「んー、いやー‥‥何て言ったらいいのかなぁ」
「そんなにわしが表に出て来た事が気になるかの?」
 すればその中、茶を啜る国司を凝視するユーディスに気付いた彼は首を傾げ彼女へ直に尋ねると、道中にて皆を気遣っていた姉御肌の彼女は先とは裏腹に口を小さく動かし自身、惑えばその様子に顔を綻ばせて彼は再び尋ねると頷きだけ返すユーディスへ
「まぁ確かに、今更じゃな。そう思うのも当然じゃろうて」
 同意した後、一人何度も頷けばその表情に影を落とし国司はボソリ囁くと
「‥‥自身に力がないのが疎ましいのぅ、全く。今まで何も出来んかったからな」
「そそ、そんな事はないよっ」
「その通りだ。自身の力のなさを実感しているからこそ、これからでもまだ遅くはないと思う」
「じゃからこそ、願い出たんじゃよ。爺故に迷惑だとは思うたがな」
「ならばきっと、この旅にてこれからの道が見出せる筈です。その想いが強ければ必ず」
 先までとは全く違う反応にユーディスは今度、狼狽を露わにしながらも彼を全力にて慰めればマーヤーもまた言葉を掛けると国司は僅かにだけ表情を緩めると騎士の彼は惑いなき瞳の光で彼を射抜きながら‥‥だからこそ優しく、諭す様に彼へ言うと泰衡は果たして一度だけ、力強く頷いた。
「じゃといいが、の‥‥」
 だがその彼が最後に紡いだ言葉の欠片は囁きよりも小さく、皆の耳には届かなかった。

●鳴動する要石
 翌日、確かな休憩を取った後に一行は村の外れにある要石を目指し歩いていた。
「あの岩塊が要石で、その折に一緒だったレリア殿やガイエル殿と再び同じ道を行くとは‥‥いやはや」
「全くだ、偶然とは言えな」
 その道中、一年も前の依頼にてここを訪れた月夜が感慨深げにその当時を思い出し、呟くとガイエルも微笑か苦笑かを湛え応じるとその折にふと、ある事を思い出した黒髪艶やかな浪人。
「そう言えばあの時、レリア殿を助けた者とは?」
「京都にいるらしいが、良くは知らん」
「相変わらずでござるな」
 その事に付いて黙々と前を歩いているレリアの背へ投げ掛ければ、剣士は振り返らずに答えるとその反応を前にして月夜は肩を竦めて見せるが、やがて視界の中にその岩塊‥‥四つ目の要石が飛び込んで来ると彼女は今まで纏っていた雰囲気を鋭くする。
「やっぱり要石は皆、同じ様な形ですね」
「それぞれで形が違ったら色々と困るから‥‥って事じゃない?」
「その形状から封印に何か、関わっているのかも知れんのぅ‥‥しかし、ふむ。これが要石か」
 そして一行は皆、要石を前にして歩を止めるとそれを見ては今までに見た要石と相違ない事に気付いた鳴が呟くと、直後に斎王の大雑把な推測が紡がれればそれに付随させる様、泰衡の推測も響く中‥‥彼は要石を凝視したまま。
「辺りは静かだけど、気にした方がいいよね」
「そうだな」
 その物珍しげな視線を要石に注ぐ国司を気にしながら、ユーディスが鬱蒼と茂る木々の群れに視線を移し皆へ尋ねながらも早く動き出せば、ガイエルも頷き応じつつブレスセンサーの巻物を解き放つと暫しの間、一行は要石周辺の哨戒に当たるが『それ』は程無くして皆の視界に入れば
「っ‥‥やはり、相変わらずか」
「しかし先日とはその動きが違う。まさか‥‥拙者らの事を待ち伏せしていたか」
「その様ですね、しかし‥‥」
 森の最奥より巨躯を揺すり歩み寄る一つ目の巨人を見て、色々な意味を含めガイエルは微かに舌打ちを響かせるが以前とは違い、村を襲う事無く要石の近辺に伏せていた事から月夜が眼前にいる巨人の意図‥‥正確にはその影に隠れているものの意図を読むと推測の域こそ出ないものの、同意して佐祐李が頷けばすぐに『白焔』の使い手が元に駆け寄ると
「ガイエルさんはこの私が必ず、守り通してみせますっ!」
「斎王様は‥‥っと、問題ない様だから後は己の身一つで頑張りますか」
「レリアさん、エド君! 国司様は任せたっ」
 剣抜き放っては声高らかに叫ぶと、蒼牙にユーディスもそれぞれが気に留める存在の安全を確認した後、動き出せば
「問題ない、皆こそ気を付けてくれ」
「もっちろん!」
 得物を構え、悠然と国司の傍らに佇むレリアが皆へ声を掛けると場違いな程に明るい声を上げてユーディスは勝利のルーンが刻まれている剣を掲げ、三匹の巨人目掛けて地を蹴った。

「お前達の目的は知らんが少なくとも封印が解放されない限り、その目的は防げるって事だ。なら、俺達は全ての要石に封印を施すだけだ‥‥ま、そっちが派手に動けば此方も色々と察せるんだがね」
「尤も言うだけ、今では無駄な様だが」
 それより始まった戦いは苦戦せずとも長く続き、だがやがて蒼牙が自身の身に滾らせていた闘気を途絶えさせると同時、紡がれた言葉は刀を振るって生まれた風切音と共に響けばマーヤーは携えていた聖剣を鞘に納め、事切れた崩れ落ちている一つ目の巨人を見つめ呟くが
「へぇ、やっぱ良くやるねぇ。それとこれが要石、って奴か‥‥ふーん」
「‥‥‥!」
 その時、不意に響いた第三者の声を捉えると一行はその姿を探し視線を辺りに彷徨わせれば‥‥いち早くエドがその存在を察し、虚空を見上げると蒼き空に浮かぶ四つの黒き点。
「グレムリン‥‥何故ジャパンに!」
「さぁてねぇ」
「でもまぁ落ち着いてよ。今日は先見だけだし、僕らじゃあ皆さんには敵わないからこの辺りでお暇するし‥‥それじゃあ、ね」
 それを見上げ、叫ぶレリアに黒き点の一つは肩を竦めると再び武器を構える一行だったがそれを宥める様に別の黒点が更に空の高みへ昇りながら言葉を紡げば、その通りに黒き点はその身を一斉に翻せばやがてその場より消えた。

●交錯する思惑
「我は願う‥‥朽ちし石よ、この刀で蘇りて再び封を結ばん事を」
 四つ目の要石に封印を施して後、一日を経て一行は改めて要石の前にいた。
「何故にデビルが関与してくると言うのだ‥‥」
「さぁね。だけど分かる事はこれからまた、慌しくなりそうだねって事かな」
 封は確かに施され、だが先日の戦いを思い出して後にマーヤーは予期せぬデビルの来訪を訝るが、ユーディスは肩を竦めるだけであっけらかんとした態度で彼の疑問に臨めば
「‥‥それで、次はどちらへ?」
「次は以前、『五節御神楽』に行って貰った倭姫命(やまとひめのみこと)腹掛岩よ」
「ふむ、先日は雑魚が沸いていたが今回は果たして」
「しかし残りも確実に施さねばな‥‥平穏の為にもね」
 苦笑を浮かべ、彼女の言葉に頷いた佐祐李はその後に斎王へ次へ向かうべき地に付いて尋ねると、祥子より帰って来た答えを聞けば頭を巡らせる月夜だったがやるべき事を間違いなく捉えているからこそマーヤーが微笑湛え呟けば
「問題はないでしょう。気を抜いている訳じゃあないけど、皆がいるからね」
「いよっし、それじゃあ次も頑張るぞー!」
 その彼に答える様、斎王も微笑を湛え断言するとユーディスの激が場に轟いた後、皆は確かに頷いた。
「所で、今日の食事は何ですか?」
 しかしその最後に口を開いた鳴の口から紡がれた疑問を聞けば一行、揃い呻いたのは言うまでもなく。

 それより後、暗がりの奥から一行を見守る視線ありき。
「美味しそうなんだなー‥‥あ!」
 それは妖孤が一匹で、彼らが食事の風景を見ながら腹を鳴らすと‥‥目の前に何処から投げられたか、油揚げが舞い降りると彼はそれに飛び付き即座に頬張る。
「残りは二つ、か‥‥そろそろ急がねばなるまい」
 その場違いな光景にはしかし、唐突に現れた影は見向きもせずしゃがれた声で呟くと自嘲の笑みを湛えて悲しげな声を響かせるのだった。
「しかし一体、何をしているのか」

 〜続く〜

●今回の参加者

 ea0321 天城 月夜(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0425 ユーディス・レクベル(33歳・♀・ファイター・人間・ビザンチン帝国)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea5254 マーヤー・プラトー(40歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea7197 緋芽 佐祐李(33歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea8088 ガイエル・サンドゥーラ(31歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)

●リプレイ本文

●倭姫命(やまとひめのみこと)腹掛岩へ
 伊勢にある六つの要石、天岩戸の封印を補助する形で存在しているそれへ新たな封印を施す道程は折り返して後、四つ目の五箇所城の近くにある村の最奥に存在するそれにも無事、封印を施せば今は次なる要石の倭姫命腹掛岩を目指し歩を進めていた。
「残りは二つか、新たに現れた悪魔の事もある。小物だけとは思えぬし、より気を引き締めてゆかねばならぬな」
 その封印に際し、最早外せない存在である『白焔』が使い手のガイエル・サンドゥーラ(ea8088)は先の事に思い耽り、だが五箇所城で起きた一連の騒動を振り返っては厳しい表情を浮かべたままに呟くと
「あぁ。しかし倭姫命腹掛岩か、随分と久し振りだな」
「そうでござるな、だが今回はその封印が優先されるにしても‥‥」
 伊勢の守り手、『五節御神楽』が鋼蒼牙(ea3167)は黒衣靡かせ真剣な面持ちで頷くと話をこれから至るべき場に戻せば、彼の同僚の天城月夜(ea0321)は同意しながらも辺りを見回すと最初に目に付いたのはユーディス・レクベル(ea0425)。
「久し振りに見たなぁ‥‥つかなんでエールもないのにグレムリンが居るんだよ!」
「知らない‥‥でも」
「でも?」
「‥‥何でもない」
「うーん?」
 先日の一件、ジャパンに何故か姿を現したデビルの存在に憤慨すれば、普段は儚げな表情を今は濁らせながら静かに言葉を紡ぐエドワード・ジルスだったがそれを見逃さず、彼女は言葉も途中で濁した彼へ尋ねるがその答えは返って来ず、ユーディスが首を捻る中で未だ浮かない表情を湛えるエドの様子に月夜は何事だろうと訝れば
「今回の一件、此方が陽動で実は別な所を本命としているのではないでしょうか? 例えば‥‥要石の結界を壊せるもの、とか」
「霊刀『黒不知火(くろじらぬい)』か、なくもないわね。人手を掛けて捜索は続けているのだけど」
「ならば早く手を打つべきかと思います、今は手の空いている『五節御神楽』も動員する等して」
「‥‥そうよね、早急に何らかの手段を講じましょう事にしましょう」
「他に懸念すべき事項が多々あると言うのが、何ともはや」
 次に響いた、緋芽佐祐李(ea7197)と伊勢神宮が斎王の祥子内親王が穏やかな声音にて要石の件と、それの裏にて潜み暗躍する存在に付いて意見交わす様を聞き届けると月夜は多々抱えている、未だ結び付ける事が出来ない問題を前にすれば辟易として天を仰ぐも
「だがこの一件、裏には何が潜んでようとも好きにはやらせはしない」
「同意だ」
 彼女の溜息は確かだからこそ、先ずはこの場にいる皆でやるべき事を騎士がマーヤー・プラトー(ea5254)の確かな信念と共に改めて告げれば、蒼牙を筆頭に皆は頷く。
「お花見したいですね。道中で木花咲耶姫神(このはなさくやひめ)様に桜の花が咲いている事をお願いして‥‥」
「まだ事を成してもいないのに少々、気が早いな」
「でも、悪くないんじゃない? たまには息抜きしないとねー」
「まぁまぁ、それよりもはよぅ先を急ぐとしよう」
 が相変わらずに巫女の大宗院鳴(ea1569)が辺りに咲き誇る桜の木々を見てはマイペースに呟くと肩を竦める銀髪の剣士、レリア・ハイダルゼムだったが姉御肌のユーディスが珍しくも鳴の肩を持てば混迷しそうになる場だったが伊勢国司の北畠泰衡が年の割、張り切り先頭に立っては呼び掛けると一行は緩めていた歩みの速度を再び上げた。

●佇む影に封印と、桜に酒と悪魔達
「えーっと‥‥確か、こっちだったか?」
「そうでござるな」
 そして街道を歩き詰めては漸く一行は倭姫命腹掛岩を目前にしており、最初から変わらずに蒼牙と月夜が一行を導くその途中。
「むーむーむーむー」
「何を呻いているのよー」
「いやね、敵の動きを予想しているのだけど‥‥」
 後方にてユーディスが何事か呻いている事に気付いた斎王がその彼女へ呻いている理由を問い尋ねれば、その答えを半ばまで答えながらも
「あー‥‥もう! 分からないから勘と衝動でいっか!」
「‥‥随分と開き直ったわね」
「だって分からない事は分からないし‥‥っと、見えた! ってあれ?」
 途中でそれを自ら遮ればやっと、自身らしい答えに思い至ればその様子に斎王は微笑か苦笑を湛えるも、開き直ったユーディスが鼻を鳴らしては斎王へ胸を張って断言した丁度その時。
 最初こそユーディスが気付いたがすぐその後に一行の皆が皆、目指していた五つ目の要石が倭姫命腹掛岩に気付き、そしてその近くに複数の人影が佇んでいる事にも気付くと
「あのぉ、一体どちら様ですか? あっ、わたくしは大宗院鳴です」
「‥‥‥」
 皆を代表して影だけしか見えないその存在へ鳴が歩み寄りながら呼び掛けるが‥‥沈黙だけを返す影がやがて完全にその姿を一行の前で露わにすれば、只ならぬ雰囲気と様相を携えるその女性に皆が警戒する中、伊勢国司が鳴を窘める。
「自己紹介をする必要はないと思うがの」
「えーっと、どう言う事ですか?」
「愛し姫、じゃよ。のぅ?」
『‥‥‥』
 しかし彼女はその意を解せず、再度泰衡へと問えばその正体が名を紡いだ彼は皆を振り返っては確認の為、尋ねるも‥‥一行の中から返って来る答えは無く、やがてレリアが肩を竦めると
「そうだな、力はないが知恵があるだけに魔法と魅了にさえ気を付ければ後は難の事はない筈」
「ですが知恵のある割、尋常ならざる殺気を放っているのが厄介ですね‥‥しかし」
「‥‥出来る事があるならそれを全うするだけ、だ」
 国司に頷き掛けては自身が知っている愛し姫に付いての知識を語れば、しかし佐祐李が微かとは言え一行に迫ってくる愛し姫に怖気を覚えながらも呟くが‥‥それを振り払う様に剣抜き放つと、蒼牙も彼女に応じ闘気を高めれば倭姫命腹掛岩を目前に一行と死せし者達はぶつかり合った。

「ここが本当に重要なら、形振り構わず戦力を送ってきて良さそうなのだが‥‥」
「何とも中途半端だな」
「でもそう言う割にマーヤー、ボロボロよね」
「‥‥未だ、鍛錬が足りないと言う事には前々からではあったが今回、改めて思い至った次第だ」
 やがて戦いは終わり、確かに強敵でこそあったがあっさりとした幕引きに蒼牙は訝るが‥‥マーヤーが次に同意すれば斎王、一行の中で一番にくたびれているその姿を見つめながら苦笑浮かべると、それにも素直に同意して責任感の強い騎士は自嘲の笑みを浮かべる。
「一先ず、近くには何もいない様ですね」
「‥‥ならばするべき事は一つ」
 だがその傍らでは今もまだ戦いを続けているかの様‥‥いや、実際には未だ目的を果たしていないのだから当然か、佐祐李が辺りを警戒しては『白焔』が使い手に呼び掛けると皆が見守る中にてガイエルが漸く腰に固く縛り付けていた古刀を抜き放てば、祝詞を織りて『白焔』を真なる姿に解放し目の前の岩塊へ疾く突き立て、辺りへ閃光を撒き散らした。
「我、解くるは汝の戒め。現臨せよ、白焔‥‥我、違えぬ誓いをこの石の封呪として立て、施せし」
 そして程無くしてそれが止むとまた此処も無事に封印を終えた事と、『白焔』を振るったからこそ覚える、毎度の虚脱感にガイエルが膝を折ればしかし守り手である佐祐李が彼女をその途中で抱え上げると労いの笑顔を湛えた後、岩塊を見上げては呟くのだった。
「後一つ、ですね」

 そして本来の目的を終えた一行は最後の要石へ向けその歩を進め‥‥る事はなく倭姫命腹掛岩をやはり目前に、その周囲に咲き誇る夜桜を眺めていた。
「泰衡さーん、エドくーん。疲れてない?」
「‥‥大丈夫」
「まぁ、何とかと言った所かの」
 いや失礼、休憩ではなくどうやら本腰を入れての花見の様で何処から持って来たかユーディスがござを引くとその本領を発揮するとその準備を仕切る中、寡黙なエドに老体の国司へ気遣わしげに尋ねるが問題ない旨の答えが二人より返ってくれば顔を綻ばせる彼女の表情はまるで、姉御肌と言うよりはお節介好きなおばさんの様に見える気がする。
「‥‥ん?」
「桜と言えばお団子ですよね。と言う事で先程、色々と教えて貰ったお礼です‥‥もごもご」
「拙者は御節を持って来たでござる、と言う事で一先ず事も落ち着いたし折角の機会でもあるが故に今宵は花見と洒落こもうではないか」
「そうですね。桜もあと少ししたら散りそうですし、今日は皆で最後の勇姿を見届けてあげましょう」
「ま、そうね。それに今年は花見をする機会もなさそうだし」
「やっぱ肩肘張ってるばっかりじゃあ、疲れるからなー」
 がその折、泰衡が目前に幾つかの団子が載せられた皿が飛び込んでくれば首を傾げる国司に鳴は人懐っこく微笑み言うと、やがてそれを抓んだ国司の前に今度は三段重ねのお重も現れるとそれを拵えた月夜が改めて皆へ呼び掛ければ、佐祐李も夜闇の中でも映える桜に視線を移して頷くと一行の提案に頷いて斎王、漸く腰を下ろせば
「さ、それじゃあ‥‥飲もうかー」
 場の準備が確かに整った事を見止めた後、ユーディスが笑顔で高らかに告げると皆はそれぞれに持つ盃を掲げてはそれを打ち鳴らした。

「寝てる寝てる」
 さりとて、宴が終われば今は寝静まる一行。
 その元に舞い降りたのは四匹のグレムリンで一行の様子に安堵すると今度は少し離れた所に見える要石を見止め、囁き合う。
「前に見たのと同じだね」
「そう言う決まりなんだろ」
「でも『あの方』はこれ、どうするつもりなんだろ?」
「さぁな、そこまでは聞いていないから知らねぇ‥‥ま、俺達下っ端だしな」
「良し、仕事終了! と言う事で折角だから余り物だけど頂きますかー」
「目敏い奴」
 それぞれが抱いた率直な感想を囁けばそれぞれが頷くと、やがてその内の一匹が未だ飲み掛けで置かれている発泡酒を見付け言えば、別な一匹は呆れながらもしかし彼の提案には賛成してそれに歩み寄れば直後。
「飲んだな‥‥飲んだからには殴らせろー!」
「うきゃー!」
「残念ながら逃がしはしません!」
 何かに足首を掴まれた一匹が叫び上げる中、狸寝入りをしていたユーディスが未だ飲んでいないのに眼前のグレムリンへ理不尽な因縁をつけると他の三匹は慌て己の姿を消そうとするが‥‥要石の陰に伏せていた佐祐李がそれを防ぐべく道中にて手に入れていた小麦粉を辺りへ広くばら撒くと次々に皆が起き上がれば遂には一方的な虐めが始まった。
 どかばきべきゃぐしゃ。
「しかし、こっちは何時まで経っても来ぬでござるなぁ‥‥」
 と言う事で一行の殆どが四匹のグレムリンを苛める中、月夜は大分前より仕掛けていた油揚げがそのままである事を確認しては一人、膝を抱えてはそれを見つめていたのは此処だけの話。

 しかしながらグレムリンより得られた情報は無いに等しく、『あの方』と呼んでいたその存在すら捕縛した悪魔達は面通しもした事がないのか、知らなかった。
 唯一聞き得た話として、彼らは幾つかのグループに分けられた上で『要石の所在を確認せよ』と使命を与えられた、とそれのみで他の話に関しては逆さに振っても一切出て来る事はなく一行はそれを確認した後‥‥グレムリンを現世から放墜した。

●斎宮跡にて待つもの
 そして今抱える、懸念事項に付いての現時点で出来得る限りの処置を終えた一行は漸く、最後の要石を目指すべく支度を整えていた。
「次で最後か、敵も全力で来るだろうが‥‥こちらも立ち止まるつもりは無い」
「そうだな。がさて、場は順調に『白』が固めているが‥‥この場を崩せる『黒』は一体どこで何をしているかね」
「急いで探さなきゃならないんだけどねぇ」
 その最後、斎宮跡にて待つものは知れずとも容易に見える事態の推移を察し、己が得物の手入れをしていたマーヤーがそれを陽光に翳し呟けば、天へ向け大きく伸びる蒼牙がやがて頷くもしかし、姿を見せぬ『黒不知火』の存在に想いを馳せるが‥‥それを聞いて首を竦めるのは斎王、申し訳なさそうに身を縮めては言葉を紡ぐも
「斎王様、至急お知らせしたい事が‥‥」
「なーにー?」
「‥‥残る要石がある斎宮跡なのですが、何やら妖と悪魔がぶつかっており少なからず斎宮跡にも損害が」
「はぁ? 何でそんな事に‥‥って貴方が知る訳ないわよね。それで要石は無事?」
 その次に響いた、唐突な声を聞き止めれば彼女は振り返らないままに現れた『闇槍』が一人へ尋ね返すと彼より紡がれた次の句には思わず声を上擦らせ、理由に付いても問い質すが‥‥当然な事に遅れて気付くと皆が見守る中で斎王はとりあえず、要石の安否に付いて伺えば
「はい。それよりも互いに戦闘の方に力を注いでいる様です」
「えーと、そうなるととりあえず‥‥『闇槍』を回して欲しいのだけど、内部での相談はどう?」
「位はどちらも低いのですが、何分数が多く今までにない事態なので危険視しております‥‥後は斎王様の指示次第で」
「じゃあ現地へ至急向かって頂戴、でも近くに住んでいる人々の避難と要石の防衛に専念。殲滅は私達が要石に新たな封印を施した後とします」
「はい‥‥」
 すぐに『闇槍』より返って来た答えを聞くと斎王はその事には安堵しながら、次に取るべき行動に付いて即座に思考を巡らせ指示を下すと、すぐに『闇槍』がその場より去れば溜息を漏らす彼女。
「因みに確認だが、斎宮跡とは一体どんな所か?」
「どんな所も何も、昔の斎宮跡地。その周囲は平坦で遮るものなく見通し良し、でも住んでいる人はそう多くはないわ」
 急な事態故に一行も皆が皆、緊張感を孕ませる中で早く身支度を整えたガイエルが問いを紡ぐと斎王は簡潔に、斎宮跡周辺に付いて皆を見回して言えば
「で、肝心の斎宮跡に付いてだけど‥‥未だ建物としてその形を残していてね、その内部に要石を奉っているから今日まで何とか保存、管理しているの。けれどこの様子じゃあ建物自体の存続は厳しいわねぇ」
「‥‥ならば改めて確認する、今までと変わらず要石の再封印を第一にしていいのだな?」
「その他に何かある? 斎宮の今までの歴史が一端である斎宮跡だけど‥‥要石の再封印に比べればそれは取るに足らない事。だから、今までと認識は変えなくていいわ」
 多少の間を置いた後、肝心な斎宮跡に付いてその詳細を語るとそれを聞いて再び尋ねるガイエルだったが、彼女の疑問に対して斎王は一分の惑いも見せず断言する‥‥も僅かな一瞬、影を落とした斎王の表情を彼女は見逃さなかった。
「それでは準備も整ったな。事態が事態故に最後の要石を目指して早く行くとしよう」
 だが斎王に真意を問い詰めるより早く、レリアが出立の声を響かせればすぐに踵を返した斎王のその背を見つめながら‥‥しかしその先をも見据えて今は一先ず、斎宮跡へ急ぎ向かうべく皆と揃いその歩を進めるのだった。
 再び暗い影を落とし始めた伊勢のその先に待つものが今は分からずとも‥‥明けない夜がない事を信じて、強く。

 〜続く〜