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イメージノベル『久遠ヶ原学園の美少女がこんなに残念な訳がない!』

第二話「文学少女と男子高校生」



●0時間目「邪気眼様お帰りください」

邪気眼系女子・園沢園子――もとい宝龍院玲良(笑)は、相変わらず俺の周囲をうろついている。
だが有用な対抗策を得た今の俺に、彼女の付け入る隙はないのである。

「磯……」
「弘史ー! 一緒にメシ行こうぜ」
「あの、いs」
「なぁ弘史、今月の学園非公式新聞もう読んだか?」

お分かり頂けただろうか。
実質的な完封勝利である。

しょんぼり項垂れる園沢の姿に、まったく罪悪感がないといえば嘘になる。
けれど油断は禁物。相手は鬼だ。もとい鬼道忍軍だ。
自分の身は自分で守るぐらいの気概がなければ、この殺伐とした久遠ヶ原学園で生き抜いてはいけない。

いつも通り学食でラーメンをすすっていたら、弘史が突然武士になった。
「磯子殿、拙者は時折ヒジョーに心配に思うのでござるよ」
「何が?」
四六時中一緒にいれば若干ウザい弘史の言動にも慣れるというもの。
どうせまた下らないネタだろうと、話半分で聞き流すわけだが。
「お前最近、俺とばっか行動してるじゃん」
「……あぁ、そうかもな」
言われてみれば、例の一件以来は他の友達と一緒に行動する機会が減っているかもしれない。
全く、園沢マジ罪深いな。
「彼女とか欲しくねぇの?」
好奇心丸出しで問いかけてくる弘史に、俺は苦笑いで答えた。
「ないと言ったら嘘になる、……が、正直今はそれどころじゃない」
そう――こんな話をしている最中も、隣のテーブルについた園沢は、こそこそと俺達の様子を伺っている。
もはやストーカー状態である。というか、どれだけ暇なんだ彼女。
「学業にバイトに忙しい、ってか? なるほど非モテだけどリア充ではあるわけだ」
そんな感じかなぁ、などと濁した言葉を返しながら、思う。
俺はそんな事よりお前に他の友達がいなさそうなところが心配だ。割と切実に。
「バイトはこの間やめたばっかりだし、別に忙しい訳じゃないが……まあ、いろいろあってな」
「いつの間に辞めてたんだよ……っつーかいろいろって何だよ。まさか――フラグか!?」
ずい、と顔を近づけてくる弘史をぐいぐい押し戻しながら、俺は答える。
「そうだよ、フラグだよ」
ただし死亡フラグな。肉体的なのと社会的なのと2本。今すぐ折りたいそのフラグ。

まあ、それは大袈裟なたとえだとしても。
実際問題、今の俺に彼女ができたところで園沢の粘着がすぐに終わるとは思えないのである。
むしろ彼女の方が、アレに怖気づいて逃げ出してしまうんじゃなかろうか……。
そんな懸念が先に立つのは、至極当然のことだろう。
俺のことを好きで好きでしょうがないって言うんなら、まだ、なんとかなるかもしれないが――
正直、そこまで好かれる要素が自分にあるなんて自惚れてはいない。
スポーツマンガの主人公みたいに部活に打ち込んでいるわけでもなければ、アルバイトさえ中々続かずに色々なところを飛び回っている有様だ。
今時の女子は男に安定性と甲斐性を求めるものだって、ばあちゃんが言ってた。SNSで。


●1時間目「バイトウォーカー」

――働かざるもの、食うべからず。

「しかし……そろそろ次のバイト探さないと、経済的にやばいのは確かだ」
「だよなー、何かと金のかかる久遠ヶ原生活よ……」
何につけても金である。久遠、久遠とつきまとう貨幣の影。
資本主義で民主主義の現代社会、否定するつもりは更々ないけれど。
経済格差というものは得てして学生が一番、身にしみて感じているものだ。
なにせ久遠ヶ原学園は門戸が広い。極貧学生も多いがセレブ学生も少なくない。
この食堂の隣にあるレストラン『GAKUSHOKU』なんかは、セレブ学生御用達でランチコース三千久遠と大変リーズナブル(笑)。
平たく言うとラーメン十杯分だ。世知辛いことこの上ない。此処は僕らの楽園(エリュシオン)じゃない説を推したい気分である。
……冗談はさておき。
そのような食生活を送れる一部の金持ち学生は別として、大多数の学生は仕送りだけでは暮らしていけない。
武器、防具、それらのメンテナンス費用に日々の細々とした出費……。
学園からの支給品や何やらで賄えるのなら苦労はないが、なかなかそう上手くはいかないもの。
特に高等部や大学部の学生は、交際費などの出費が増えるぶん深刻なようで、自然とアルバイトをする学生の割合は増えるようだ。

「弘史、何かいいバイト知らないか」
「そう言われてもなぁ……斡旋所でも見てくれば?」
「斡旋所、か。言われてみれば、しばらく顔を出してないし……行ってみるかな」
「お、じゃあオレもオレもーっ」

久遠ヶ原学園内のアルバイトには、本土のそれと同様に様々なものがある。
たとえば有名なものでは試験監督。教師の手伝い。学園事務の補助。学園島の中にある様々な商店での接客販売に調理。
何を隠そう俺もまた、この数ヶ月で数々のバイト先を渡り歩いてきた放浪のバイト戦士である。
おいそこ、続かなかったとか言うな。1ヶ月以内の短期ばっかりだったんだ。そう、短期。

……話を戻そう。
無論、そういった一般のルートで採用が行われるもののほかに、撃退士が集まる久遠ヶ原ならではのアルバイトも存在する。
具体的には、学生たちに『依頼』と呼ばれている単発の仕事である。
派遣撃退士として、撃退庁や地方からの出動要請に応える形で戦いや捜索に赴くような案件もあれば、
どこかの誰かが作った怪しげな薬の臨床試験(常人なら最悪死ぬ)などもあったりと、いろんな意味で命がけの仕事が目白押しだ。
そういった仕事を学生に紹介しているのが、久遠ヶ原学園・依頼斡旋所。
学園の中に点在するその施設では、あたかも派遣会社のように、多くの求人から興味のある仕事を選べるようになっている。

中には危険な依頼を次々に引き受ける撃退士もいるようだが、俺には絶対に真似できない。
無理のない程度に、が俺の――というか、大多数の学生のモットー。
平凡かつ安定志向の俺は、あくまで普通のアルバイトを中心に生活したい……訳だが。
人間、生活のために意志を曲げなければならない局面というものは必ず存在するのもまた真理。

そう。かくいう俺も、依頼斡旋所の紹介で仕事をしたことが無いわけではなく。
何度か赴いた現場はどれも、一般的な「撃退士らしい」天魔の討伐依頼。
もちろん俺が行くようなものは、危険な依頼とは異なり特別に割がいいとは言えない。
とはいえ普通にアルバイトをするより実入りがいいのは確かだし、内申点にプラス評価がされる事もあったりして……実は割とおいしい。

だがもちろん、そういった条件のいい仕事に人気が集中するのは、普通のバイトと変わりない。
運良くいい案件に巡り会えれば苦労はしないけれど、俺の運なんてものは残念ながら雀の涙ほどしか存在しないわけで。
たとえば弘史のように、超倍率の購買戦争を連日勝ち抜けるだけのリアルラックを持っていれば、違うかもしれない。
あるいはクラスメイトの某氏のように、素人ビーチフラッグ選手権で優勝できるレベルの旗取り職人なら……。

否、自分の悲運を嘆いたところで何も始まらない。
俺のような没個性一般人は、地道に草の根活動していくしかないのだ。
通常ならば斡旋所の依頼ではない普通のバイトをこなすだとか。
今のように切羽詰った場合は、可もなく不可もなくな依頼をピックアップしてみるとか。
――もしくは一か八かの賭けで、誰も気付かないような掘り出し案件を見つけるか?

そこまで考えて――俺はひとり、無言のまま頷いた。
やはり無難に無難な依頼を引き受けることにしよう。
以前、同じような状況で賭けに出た俺は、失敗して大変な目に遭っていた。
何があった、って? やめろ思い出させるんじゃない。うねうねでヌメヌメのディアボロなんて俺は知らないんだからな!


●2時間目「出会いなんて基本アポなしでやってくるもんだぜ」

久しぶりにやって来た依頼斡旋所の前には、相変わらず大量の張り紙が掲示されていた。
良い案件はないものか……と端から順番に目を通していると、弘史が突然あっと声をあげた。
「おぉ、きのもっちゃんじゃーん! おひさー」
手を振る彼の視線を追うと、そこには隣のサブカル系チャラ男の知人とは思えない大和撫子が立っていた。
たくさんの本を抱えた彼女は、控えめな仕草でシンプルなデザインの眼鏡をくいっと上げる。
改めて弘史の姿を視認すると、彼女はああ、と納得いった様子で頭を下げた。
まるで絵に描いたような文学少女だ。
変わった人間だらけの久遠ヶ原にもこんな普通の子がいるのか――意外に思いつつ、俺も静かに頭を下げた。
いや、よく考えたら俺も大概普通なのだが。
「弘史の知り合いにしては大人しそうな子だな」
思わずこぼれ落ちた本音。弘史はこれ見よがしに顔を歪め、俺に抗議をはじめる。
「何それ磯子っち……僕ちゃんそんな言われなきゃいけないほどチャラ男じゃないですしおすし!」
だが怒っているように見せたって無駄だ。
黒縁眼鏡の奥にあるお前の目が笑っていることに、俺は最初から気づいているからな。
「そういうのいいから。……あー、えっと、初めまして。俺は磯子青護、高等部1年」
「ご丁寧にありがとうございます、磯子センパイ。私は中等部3年の木之本 栞(きのもと しおり)です」
そう言って、文学少女はもう一度ぺこりと頭を下げた。
つられて俺も頭を下げると、隣で弘史がぷっと笑いやがった。
何故そこで笑う。抗議の視線を向けるが、思いっきりそっぽを向かれた。余計腹立たしい。
「川中島センパイとは依頼で何度かご一緒させてもらって。そのご縁で仲良くしていただいてます」
「あぁ、そういうことか……そうだよな、変な趣味しかない弘史にこんなに可愛い後輩がいるわけないよな!」
「ちょっと待て磯子ちゃんそれどういう事」
弘史が何か喚いているが、相手をしたら負けだ。
徹底的に無視して話を進める俺、マジ紳士的で話のわかる先輩。などと熱い自画自賛を挟んでみる。
「お二人は、仲、いいんですね」
「どこが!」
「ただの腐れ縁だよ」
2人して否定の言葉を口にすれば、少女はくすくすと笑い声をもらす。
「……って、違う! バイト探しに来たんだろ俺ら」
「そうだった」
本題が行方不明になるのは良くあることだけれど、あまり油ばかり売っていても日が暮れてしまう。
日本各地から緊急情報が飛び込んでくる斡旋所は、もちろん24時間体制ではあるのだが。
俺たちはあくまで、普通の学生であるからして。
一般校に比べれば非常に緩くはあるものの、一応は授業だって受けなければいけないのだ。
「私も図書館に本を返さなきゃいけないので……今日のところは失礼しますね」
と、栞は手にした本をちらつかせ。
俺と弘史は顔を見合わせ、こくりと頷きを返した。
「それじゃ。また会う機会があれば、その時はよろしくね」
俺が笑顔で手を差し出せば、彼女も笑顔で応えてくれて。
「はい、今後ともよろしくお願いします……センパイ!」
軽い握手を交わし、その日は別れたのだった。
可愛い後輩との出会い――プライスレス。通ってよかった一貫校!


●3時間目「災難は 忘れた頃に 顔を出す(五七五)」

しかし、人は時に驚くほど数奇な運命に巡り合うことがある。
俺と木之本栞との予期せぬ再会は、想像以上に早く訪れた。
別に河川敷の土手で寝転んでいたわけじゃない。風も吹いてなかった。
それは迷いに迷って引き受けた、さほど難しくなさそうなのに身入りのいい――要するにちょっと怪しい――依頼の、現場での出来事。

――だから、どうして負けると分かっている勝負に手を出してしまうんだ!
人類の大体半分ぐらいは抱えたことのありそうな疑問を胸に、俺は深いため息を吐いた。
仕事の内容……確かに危険ではないし、誰にでもできる簡単な仕事ではある。
ただし。
プライドを霞ヶ浦に投げ捨てるぐらいの度胸は、必要だろう。

一言で表すならばコスプレ喫茶である。
だが久遠ヶ原商店街を侮るなかれ。
巷でよく聞くメイド喫茶、執事喫茶なんて生易しいものではない。
それならば、普通の時給でも働きたい人間なんて久遠ヶ原には掃いて捨てるほどいる。
けれどこの店の人手不足は深刻で――
何故か? 愚問だ。

ここが、――ふんどしカフェだからだ。


●4時間目「これほんと誰が得するんだ」

それは、久遠ヶ原に根付く謎の伝統……。

平成の世、無理もない話であるが。
購買の下着売り場に我が物顔で並ぶ褌を初めて見たとき、新入生の多くは驚きの表情を浮かべる。
江戸時代じゃあるまいし、一体どこに需要があるのか。
浮かぶ疑問、けれどその常識はたった数日で覆されていく。

久遠ヶ原の学生寮は、大浴場を備えていることが多い。
無論、全部屋にシャワーが備え付けられてい寮が「無い訳ではない」のだが……
放課後のピークタイムに一斉にお湯を使われてしまうとなると、水の供給が追いつかなくなることが予想されるのは当然だろう。
全室でチョロチョロ水流になってしまったのでは本末転倒だということで、以前より公衆浴場文化が根付いているのだ。
いわゆる銭湯、温泉の類も島内には多く存在しているため、そのような浴場に足を向ける学生も多いものの、
寮内に存在する大浴場で一風呂、というのが久遠ヶ原のスタンダードであるようだ。
……まあ、自由な校風かつ共学の久遠ヶ原において、異性の存在を気にせずにアレな話をできるのは風呂とトイレと部屋ぐらいなので。
実質的に大浴場は、ひとつの「紳士の社交場」となっているわけだ。実際風呂に行くと紳士的な下ネタで溢れている。

話がそれたが。
そんな紳士の社交場にひとたび顔を出せば、想像を遥かに超える男子生徒のふんどし着用率に驚かされる。
これは久遠ヶ原でも有名な新入生洗礼のひとつである。多分。おそらく。……きっと。
きっとこの島では毎日がお祭りなのだ!
……などと、俺も初めは訳のわからない理由をつけて自分を納得させたものだが、今となっては日常である。

だが、ふんどしはあくまで下着だ。下着……の、はずだ。
マニアックすぎる。なぜ下着姿で接客しなければならないのだろうか。いや上は着てるが。どちらにせよ疑問しかない。
疑問を素直に店長に投げてみたら逆ギレされるわ、まさに踏んだり蹴ったりである。
しかしよくよく考えれば、ふんどしは古来日本男児の水着としても利用されてきたわけで……
うん、パンツじゃないし恥ずかしくないな! いやもう無理矢理自分を納得させるしかねぇよ。

今、ふんどしを締めた俺の前には、笑いすぎて涙目になった弘史の姿がある。
何で客席に座っているのかよく分からないが、俺を馬鹿にしに来たことだけは理解した。
とりあえずお冷を割れんばかりの勢いで机にドンと叩きつけ、正面を向いたまま後ずさる俺。
「磯子ちゃんほんとバカじゃないの、前見て歩かなきゃ駄目だろー?」
相変わらず腹を抱えて笑い続ける弘史。
ハッ、冗談は顔だけにしろよ。お前に背中――というか尻を見せてたまるか。
いつも風呂一緒なのに何故か抵抗感を覚える謎の現象発生中。仕方ない、だってふんどしだから。


●HR「文学少女と男子高校生と」

しかし意外なことに、女性客が散見される。
正直衝撃を受けている。
マッチョなお兄さんやらオネエさんやらが集まるソッチ系の店かとばかり思っていたのに。
日本男児らしい漢の気概が現代日本には足りていないのかもしれない。
もしくは変態淑女のお姉さまが増えているのかもしれない。言いながらこっちのような気がしてきたぞ。

「ねぇねぇ、あの子かわいくない?」

ふと、そんな声が聞こえて振り向いた。
弁明するが、別に自分のことだと思ったわけじゃない。若い女の子の声がしたら振り向くだろう、男の子なら……さ。

俺がその浅はかな行動を後悔するのは、ほんの数秒後のことである。

視界に飛び込んできたのは、見覚えのある顔。
派手なギャル系の女友達と一緒になぜか席に座っている、木之本栞の姿だった。
……え? 清純派文学少女がどうしてここに……。
あぁ、明治から昭和ぐらいの文豪にふんどし愛好者とかいたよな。その関係か。その関係だな。そうだと言ってくれ。

しかし硬直する俺とは裏腹に、栞ちゃんは目を輝かせて店員達を目で追っている……ような……。
「お、お二人は今日はプライベートで……?」
「はい! といっても今書いてる小説の取材半分ですけど」
ギャルが笑いながら言った。
小説? 取材? どういうことなの。

とにかく落ち着いて情報の整理をしようと、息を吐きだしたその瞬間。
俺の背筋に悪寒が走った。

「尻ががら空きだぜ磯子っち」
「ぎゃああああああああ!!!!!!!」

ぺろーん、と。音もなく忍び寄ってきた弘史が、俺の尻を撫でたのだ。ふざけんな痴漢。
ギャグのつもりでやってるんだろうが、洒落にならない。むき出しだぞむき出し。ちょっと一回俺の立場になって考えろと。
しかし俺が弘史をきつく言葉で責め立てようとした、そのとき。
それまで黙っていた栞ちゃんが、ガタっと立ち上がり、真顔で叫んだ。

「大丈夫です、私たち偏見とかありませんから! 川中島先輩と磯子先輩の将来……応援させてください!」

……はい?

「あ! もしかしてシオリン言ってた先輩達ってこの人たち? やだマジ萌えるね」
「そう、そうなのよ! みほりんならわかってくれると思ったの! 眼鏡チャラ男攻め最高よね……!」
「わかるわー……あ、ごめんなさい気にせず続けてください。2人の時間を邪魔したいわけじゃないんで」
「ちょっと見つめてキャーキャー言うだけなので気にしないでくださいっ」

思わず弘史の顔を見る。相手も俺と同じような顔をしてこちらを見ていた。
気にするな、と言われたって……なぁ。

「もしかして2人って、腐女子……?」
恐る恐る問う弘史に、2人の少女は輝かしいばかりの笑顔で応える。
「はい! 恥ずかしながら先輩達の仲良い姿いつも拝見しておりました、いつも素晴らしい萌えをありがとうございます。先輩方は神です」
「……は、はぁ」

――お父さん、お母さん。
久遠ヶ原は魔物だらけです。ほんまに恐ろしいところです。魔境です。
俺の知らない世界が世の中にはまだまだ一杯あることを今日改めて知りました。
あまり毒されすぎないように頑張りたいと思いますが、万一の際はごめんなさいとだけ、言っておきます。


いや。
目下一番怖いのは、園沢って案外かわいい方なのかもしれない――などと思い始めている、自分であるが。


【第3話につづく】

(執筆:クロカミマヤ)

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