それゆけ、オーストラリア探検隊!

■クエストシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:17人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年04月01日
 〜2007年04月31日


エリア:オーストラリア

リプレイ公開日:04月21日06:19

●リプレイ本文

●まずは退治
 小型の肉食恐竜が、包囲網を築きつつあるアリススプリングス。翼竜対策に鳴子とやぐらが組み上げられ、ゼルスのペットのガーディが、パトロールを続ける中、冒険者達は次なる対策を練っていた。
「きしゃあああ!」
「体格ではこちらだって負けてはいない!」
 牙を向き、囲もうとするラプトルに、レオーネはランスチャージで、その胴体を横薙ぎにする。倒れた血の匂いに興奮したラプトルが、飛び掛ってきたところで、カウンターの要領で、喉元を貫く。
「おっぱじめたな。こっちも手伝うとするか」
 その爪を、盾で防いでいるレオーネを見て、ファンが手にしたショートボウを放つ。
「撃ってるだけだと、限界があります! こっちへ!」
 と、キリルも、ライトロングボウを放ちながら自ら囮となり、出来るだけ罠のある方へと走りこむ。上手く引っかかってくれればと思ったが、さすがに賢い部類の恐竜だけあって、外壁まで逃げ込んでも、なかなか近づかない。
「きしゃあ! きしゃあ!」
 そんな中、ラプトルのリーダーが、撤収とばかりに叫び声を上げた。それを機に、トロエドンも、危険を察知したのか、散り散りになって行った。
「何とか追い払ったか‥‥」
 ほっと肩をなでおろすレオーネ。またやってくるかもしれないが、繰り返していれば、そのうち来なくなるだろう。

●代価
 数日後、槌の音が響く中、アリススプリングスには、様々な新しい建築物が建てられていた。
「色んなモンが出来つつあるなー‥‥」
 外回りから戻ってきたファンは、中央広場で、周囲を見回し、そう呟く。病気を押してまで整備に奔走した結果、その四隅には背の高い見張り台が作られ、それまで巡回していたガーディの代わりに、大きなかがり火が焚かれていた。
「今月末には、全て完成しますから、その際には皆でお祝いしましょう」
 そのゼルス、魔法で底上げしていたのが切れて、青い顔をしている。その姿を見たレオーネは、設計図をひょいと取り合げ、こう言って休ませる。
「フレイムエリベイション、もう切れてるんだから、無理するな。浴場にお湯張っておくから、汚れ洗い流して、横になっているといい」
「そうします‥‥」
 さすがに反動で頭が痛い状態の彼、レオーネの指し示した浴場へ、付き添われるようにして向かう。そこには、高床式の小屋が設置され、くつろぐには最適の場所になっていた。
「おし、翼竜対策は、これでしばらく大丈夫だ」
 その上に、まるで網目を張り巡らせるかのように、ロープが張られている。それには、鳴子が取り付けられており、翼竜の羽ばたきで知らせるようになっていた。もっとも、一度追い払ったら、相手も慎重になったようで、余り近づいては来ないのだが。
「あとは‥‥外側の罠だけだっけ?」
「ええ。見えるところは直したんですが‥‥」
 ファンの問いに、キリルはそう答え、外壁の外を指し示す。見張り台から見えるそこには、深い堀が設置され、数m起きに縄梯子が置かれている。外壁と堀の間には、先を鋭く尖らせた木の杭が張り巡らされており、見た目にも分かりやすく、近づいたら危険そうな香りを漂わせていた。
「これだけ警戒しておけば、いくらなんでも、自分からは飛び込んでこないでしょう。それを確かめてから、堀の外側に虎バサミを仕込んでおけば良いと思います」
 そう話すキリル。それを含め、見張り台に屋根を乗せたり、運んだ土で外壁を強化したりと、細かい補修は必要だったが、それも月末までには終わる計画だった。
 と、そこへ、本国からの援助物資の検査が終わった旨が、報告される。
「やっと終わった‥‥。今回は、数が多くて大変だった‥‥」
 恭也がそう口にする通り、本国からの援助物資は、資材をはじめ、かなり量が多かった。それを、羊皮紙に書かれたリストと同じかどうか、チェックしていたら、月道が開いてから、3日程たってしまったらしい。
「薬草は病人達ン所へ運んでくれ」
「既にそうしてる」
 それを手伝っていたらしいイグニスの申し出に、恭也はそう言って、浴場の方を指し示した。みれば、ゼルスが小屋の中から、あれこれと指示している姿が見える。
「病気が治ったらの話ですが‥‥、来月からは、私もアリススプリングスの外に行動を移そうと思っています。ですから今月の間に、資材だけは多目に、アリススプリングスに集めて置いておきたいところですね‥‥」
 届いた資材のうち、丸太等、大きいものは、中央広場にまとめて置かれた。これと、現地で調達した資材をあわせると、広場のはずのそこは、まるで建築資材置き場のようになっていた。
「他にも、色々届いているな。お、手紙もあるか」
 イグニスが品物をひっくり返すと、そこにはロシア王国の紋章入りで、立派な羊皮紙の手紙、それに設計図が添えられていた。
「なんて書いてあるんだ?」
「えぇと。提出済みのサンプルから、以下のものを、来月までに用意するように‥‥?」
 ファンに尋ねられ、イグニスはそれを読み上げる。と、そこにはこう書いてあった。

『来月までに、サンプルにあった胡椒を10kg、ブラン鉱脈から1塊、中型恐竜の骨と皮10頭分を、送付した資材の代金として、用意するように』

 どうやら、痺れを切らして、生産指定をかけてきたようだ。いくつか積み上げられた羊皮紙には、ルーン文字の書かれたスクロールが混ざっている。どうやら本国としては、どうしても精製済みのブランが、手に入れたいようだ。
「はぁい☆ 何の相談?」
 と、そこへ今まではアリスにいなかった女性が、すこーんとファンの後ろ頭をドツく。
「見ない顔だが‥‥。お前さんは?」
「ミカエルよ。パープル先生がこっちにいるって聞いて」
 何でも、ケンブリッジ時代に色々と世話になったそうである。そう名乗った彼女‥‥ミカエルは、うふふふふと怖い笑いを浮かべて、明後日の方向に誓う。
「ジャパンでの用事も終わったし、あたしも遂にオーストラリア探索に参加よ! ヒノミ・メノッサとか遺跡とか‥‥もう、あたしの為に存在してると言っても過言じゃないわ!」
 やる気満々だが、それを達成する為には、問題が山積みだ。どうやら知らないらしい彼女に、イグニスはげんなりした表情で、こう説明する。と、それを聞いたミカエルは、にこりと笑ってこう申し出てくれた。
「なるほど。だったら、私もお手伝いするわ。先生に追いつくのは、それからでも大丈夫そうだしね」
「よろしく頼む」
 困っている人を放っておけないタイプの彼女に、イグニスはそう言って、まずは病人達の状況を、チェックしに行くのだった。

●交渉
 原住民の村までは、徒歩で2日かかる。その間、決して恐竜がいないわけではない。ジヴの地図があるおかげで、大型恐竜のいないエリアを進む事は出来たが、その分半日ほど余分に時間がかかってしまった。
「嫌な感じね」
「噂どおりだな」
 相変わらず、突き刺さるような視線を感じなかがら、イグニスとミカエルは、村のリーダーであるイェーガーへと繋ぎをつけてもらう。
「ゲルマン語か‥‥。俺、あまり得意じゃないんだよな」
「任せて。だいたいの言語なら、頭に入ってるし」
 ただし、イグニスは元々イギリスの出身なので、ロシア公用語であるゲルマン語は、余り得意ではない。その分のフォローは、現代の言語に関して精通しているミカエルが行うことになったようだ。
「なら、通訳は任せた。まぁ、俺も話せないわけじゃないしな」
 もっとも、イグニスとて日常会話くらいは、わけもない。ただ、ちょっとしたニュアンスの違い等は、わからないと言うだけだ。
 そんな役割分担を決めているうちに、当のイェーガーが、村人達数人と共に現れた。あいかわらず、じろじろといぶかしげな視線が投げかけられる中、イェーガーは表情を険しくしたまま、こう尋ねてくる。
「この間の連中とは違うな。今度は何の用だ?」
 相変わらず、警戒されているようだ。しかしイグニスは、JJ達に聞いた通り、きちんと挨拶をする。
「俺は、あいつらの仲間で、イグニスって言うんだが。実は‥‥仲間が病で倒れてな」
 そして、素直に事情を話す彼。正直な態度を見せれば、彼はきちんと応対してくれる‥‥と聞いていたから。
「皆のかかった病気とか、出来れば遺跡なんかに関しても何か知ってたら教えてもらいたいな♪ 知らないとは言わせないわ」
 一方、そんな事情を知らないミカエルは、自分自身の言葉でもって、ややふんぞり返りながら、そう申し出る。
「ずいぶん偉そうな娘だな」
「すまん」
 機嫌を損ねたら、知っている事も教えてもらえないかもしれない。そう思ったイグニスは、素直に謝り、そのままの姿勢で持って、続けた。
「俺はアンタ達のことを何も知らないから、何をすれば良いのか見当もつかないが‥‥出来る限りのことをする。だから頼む、仲間を助けてくれ」
 オーストラリアから出て行けとか言われると困るが、話を聞いている限りは、そこまで酷い事は言われないようだ。と、その様子を見たミカエル、明るい口調で、こう主張してきた。
「あたし達は話し合えるんだから、お互い楽しく、そしてプラスになるようにしていきたいじゃない」
 彼女とて、上手くやっていく方法を模索していないわけじゃない。と、そんな2人の態度をじっと受け取っていたイェーガーは、しばらくしてこう答えてくれた。
「‥‥話し合いか。いいだろう。こちらとて、村の者が平和に暮らせるのならば、それに越した事はない」
 喧嘩をしたいわけじゃない‥‥といった様子の彼。向こうも向こうで、歩み寄りの姿勢を見せようと言うのだ。おそらく、前回JJ達が礼を尽くして話し合いに来た事で、敵意がないと悟ったのだろう。
「早速なんだが、こちらの状況はこんな感じだ」
「ふむ‥‥」
 イグニスが、イディアから受け取った病状の記録を見せる。他の村人は、文字なぞ失われているようだったが、イェーガーのような立場の人間は、きちんと読めるらしい。状況を把握している間も、近づくなオーラ全開の彼を見て、ミカエルはこっそりイギリス語で話した。
「なんか、近寄りがたい人よね」
「噂どおりだな。出来れば、薬草の見分け方なんか教えてくれると、ありがたかったんだが、まずはあの凝り固まった部分をほぐさないと、無理そうだ」
 今は、病気について教えてくれるだけでも良しとしよう‥‥と、そんな思いのイグニス。
「この記録だけでは、なんとも言いがたいな。実際に見てみないと、対処のしようがない」
 ぱたんと記録を閉じたイェーガーはそう言った。確かに、倦怠感と頭痛があるだけでは、なんともいえない。そこで、イグニスは、ここが本題とばかりに、こう切り出した。
「もし、村に来てくれるなら、こっちもその方が楽なんだが」
「‥‥いいだろう。こちらも、入って欲しくない場所を教える都合がある」
 イェーガーとしては病人の対応より、自分達の安全を確保する方が重要なのだろう。しかし、ミカエルとしては『仲良くなる方』が重要らしく、イェーガーの太い腕に絡みつく。
「やったっ。歓迎するわよ☆ 懇談会みたいなの、開催して見るのはどうかしらね?」
「そんな余裕があると良いがな」
 しかし、彼はミカエルのアピールさえ振りほどき、相棒の恐竜‥‥を引っ張り出すと、その背にさっさと乗ってしまった。
「あーん、待ってよーっ」
「そいつに乗って行くなら、これを頼む」
 あわてて追いかけるミカエルと、対照的にすぐ側に生えていた巨大ぜんまいを、イェーガーに手渡すイグニス。
「これをどうするつもりだ?」
「ん? ああ、これは俺達と一緒に住んでる子恐竜達の分だ」
 もって行く理由を尋ねられ、イグニスは『留守番してるから、お土産だ』と、答えて見せるのだった。

●お宝はどこに
 さて、時間は月道が開く前後に遡る。
「これでよし‥‥と。今回は刀也達の捜索に時間とられそうだしな‥‥。これくらいが限界か‥‥。まあ、人が集まってくれればラッキーくらい‥‥かな」
 手書きのポスターを貼り終えた恭也は、小道具を片付けると、出発の荷物を引っ張り出していた。
「さて‥‥刀也達はいったい何処にいったのか‥‥。厄介ごとに巻き込まれていなければいいが‥‥。連絡がない時点で厄介ごとに巻き込まれてると考えるべきだろうな‥‥やっぱり‥‥」
 出るのはため息ばかりだ。気がかりな事は他にもあるが、月道の管理に関しては、他の面々も協力してくれると言うし、荷物検査だけなら、どうにかなるだろう。皆には、『月道を通る際には、荷物の内容を申告し、中身の確認を受けること』と言う通達を出している。既に、エチゴヤ初めとするまっとうな商人は、素直に従ってくれていた。
「このまま、稼動してくれれば良いけどな‥‥」
 次の月道が開くまでは、まだ一ヶ月ある。それまで、何も起きなければ良いのだが、もし起きたとしても、本国から返答が来るのが遅いのも問題だな‥‥と、恭也は思った。
 しかし、問題はまだ山積みだ。その一番の懸念が、遺跡に向かったまま戻らない刀也とゼファーのことだった。
「さて、助けに行くとしますか」
 そう言って、ルカやJJと共に出発する恭也。問題の遺跡へは、普通なら、恐竜を避けたりと、一週間はかかる。だが、ルカもJJもセブンリーグブーツを所持しており、恭也はレオーネが予備に持っていたブーツを借りたので、3日後には、件の遺跡へとたどりついていた。
「恐竜の足跡だな‥‥。これは、人のか?」
 ルカが、床を見てそう言った。たどり着いた先で、彼らを待っていたのは、泥のついた足跡だった。すでに、乾ききっている所を見ると、三人がアリスを出発する前についたものだろう。
「犬の足跡がある。これ、涼のだろう」
 人のものと思しき周囲に、まるで付き従うように、わんこの足跡を、JJが見つけた。確か、出発に際し、刀也が愛犬・涼を連れて行ったのを覚えていた彼は、この足跡が彼らのものだと確信する。
「崩された跡があるし。争っているのは、対恐竜だけだな。この踏み込みは、矢を放った時のモンだと思う」
 敵を避けることに長けたJJだったが、その職業柄、投擲術も心得ている彼、足跡から人の動きを読んだようだ。
「足跡は‥‥どっかに続いてるか?」
「ああ。ここから‥‥尾根沿いに続いている。たぶん、途中で切れていると思うけど、行かないよりはましだろ」
 恭也の問いに、ルカはそう答えた。乱闘の痕跡が残る足跡は、外に向かってずっと延びている。それをたどると、そこにあったのは。
「あれだな、目的地は」
 城のようにも見える、別の遺跡。それを見て、JJは。
「どうやら、本気で美味しい状況になってるみたいだな。――なんか無性にやる気がわいてきたぜ!」
 生き生きとした表情で、その『城』へと歩みを速める。
「ほんと、生き生きしてるなー。まぁ、本職だし、当然か」
 そんな相棒の様子に、頼もしささえ感じて、そんな事を呟くルカ。1人、恭也が「へ?」と分かっていない表情をしていた。
「いや。こっちの話さ。さて、追いかけるとしましょうか」
 にやりと笑って、彼は城へと向かうのだった。

●脱出と狩り
 数日後、ゼファーと刀也は、荷物をまとめ、外へと連れ出されていた。
「さて。狩りのターゲットだが、まずは小手調べといこうか」
 フィアットが指示したのは、山のふもとにある湿地帯。そこには、数多くの草食恐竜が、草をはんでいた。アリスの周囲で見たことがあるものもいれば、初めて見る恐竜もいる。
「って、いきなり前線か」
「その為に雇ってるんだ。冒険者なら、文句を言うな」
 ゼファーへ、すっぱりとそう言い切るフィアット。女性だからと言って、容赦はしないらしい。
 目をつけたのは、ムッタブラサウルスと言う恐竜らしい。太い2本の脚でつまさき立つように歩いており、太い尾で体を支えている。頭の幅が広く、顔の鼻先にこぶのようなトサカが生えていた。恐竜としては中型の‥‥約7m位の奴である。
「けどあれ、子持ちの草食竜だぞ。大丈夫なのか?」
 しかも、具合が悪い事に、子育ての真っ最中だ。小さい恐竜が3匹、それに親と思しき恐竜が2匹。いや、彼らばかりではなく、他にステゴサウルスやトリケラトプス、ブラキオザウルスもいる。要は、人の寄り付かないエリアで、昼ご飯を食べている状態だった。
「だから襲うのさ。図体はでかいが、攻撃力はさほどでもない。食料にするには、うってつけだ。それに、卵や子供は本国に叩き送ることも出来るしな」
「やはりそう言う事か‥‥」
 まるで、何処かの組織の幹部めいた笑みを、兜の内側に潜ませるフィアット。それを見て、ゼファーは彼らがその目的のために、ここにいるのだろうと確信する。
「さ。存分に戦ってもらうぞ」
「‥‥わかった」
 戦わなければ、そのまま自分達が餌にされてしまう。そう感じたゼファーは、仕方なく‥‥と言った様子で、魔法を唱えた。恐竜達とは、まだかなりの開きがある。それを利用して、救出に来ているはずの、ルカとJJ、それに恭也を探すつもりだった。
「涼、何かあったら教えてくれよ」
「わう」
 一方の刀也も、涼にそう言っていた。そして、剣を抜き、こう呟く。
「お前達にうらみはないけど‥‥。勘弁してくれよ」
「そっちは手伝わないのか?」
 ゼファーが、鬼神の小柄に紐をくくりつけながら、フィアットを見る。これだけの数を相手にするのに、2人では心もとない。だが、彼はまるで面白い芝居を見るように腕を組み、首を横に振る。
「言ったはずだ。まずは小手調べだと」
 どうやら、つい先日彼らが交渉した事が、本当かどうか、試しているようだ。
「きしゃあ! きしゃあ!」
 人の気配を察して、恐竜達が騒ぎ始めた。このままでは、狩るどころか、こちらが蹴散らされてしまう。ターゲットにされた恐竜の、前足親指は鋭い刺になっており、攻撃を食らうと痛そうだ。
「く‥‥。2人じゃ厳しいな」
 なかなか近づけずにいるゼファー。父親と思しき恐竜が、2人の方へと向かってきた。小柄を投げるが、皮膚は固く、かすり傷しか与えられない。
「諦めるな。絶対に、あいつらが来てくれる!」
 そう叫ぶと、刀也はティールの剣を抜き、その分厚い皮膚めがけて、刃を振り下ろす。ざくっと鈍い手ごたえと共に、恐竜の鮮血が飛び散った。
「思ったとおりのパワーだな。優秀な戦力になりそうだ」
 致命傷とは行かないまでも、一撃で恐竜の戦力を半減させる刀也に、フィアットはいたく興味をそそられたご様子。
「わんっ。わんっ」
 と、そこへ涼が刀也の着物を引っ張った。刹那、フィアットと刀也の間に、ダーツが突き刺さる。
「誰だ!」
 剣に手をかけ、狼の頭目さながらに、睨みつけるフィアット。その視線の先にいたのは。
「俺は宝探し屋のJJ。この地に眠るお宝を頂きに来た。ま、覚えておいて損はないぜ?」
 くくりつけた細い紐を手繰り、ダーツを戻しながら、不敵にそう言うJJ。
「追跡人ルカもお忘れなく☆」
「二人とも無事だったか? いろいろ聞きたいが‥‥とりあえずは拠点に戻ってから、だな‥‥」
 後ろには、ルカと恭也もいる。3人の事を見て、フィアットはずばりと言い放った。
「この間、もぐりこんでいたネズミだな」
「ネズミは悪いけど、そこの2人は貰っていくぜ! こっちだ!」
 ルカがそう言いながら、道を開ける。だが、合流した彼らに、フィアットはこう命じた。
「そうはいかないな。大事な手ごまだ、逃がすなよ。特にそっちの黒いのはな」
「せめて名前で呼べよ‥‥」
 ちょっと納得行かない刀也。そんな彼らを、部下と思しき数人が取り囲む。
「やる気なら、相手するぜ」
 すらりとブレーメンソードを抜き、聖騎士の盾を片手に、そう言うルカ。
「そんな重装備で何が出来るんだよ。ふらふらしてるぜ」
「だが、お前達の攻撃も通用しないさ」
 部下の1人が、そう揶揄するが、1mの盾は、自身の体を隠すには充分だ。
「あんまり見くびってくれるなよ。これでも‥‥長い事この稼業をやっているもんでね!」
 その盾を構えたまま、ルカは相手に向かって、スマッシュを振り下ろす。卓越した技能を持つ彼の一撃は、相手の体を的確に捉え、鎧ごと肉を切り裂いていた。
「ちっ」
「人間様には負けないさ」
 血の匂いをかぎつけられてはまずい。それは相手も同じらしく、すぐさま後ろに引いてしまう。
「分の悪い賭けは嫌いじゃない‥‥が、負ける賭けは好きじゃないんでな‥‥」
 見れば、すでに恭也がディザームで、相手の武器を落とした所だった。その切っ先は、まっすぐフィアットに向けられている。彼の技量ならば、その位置から、手にした二本の剣を突き刺す事など、たやすいだろう。
「‥‥ひけ」
 状況を見ていたフィアットは、静かにそう言った。数名のけが人を出した部下達が、「しかし、おかしらぁ」と不満を漏らすが、彼はぴしゃりと告げる。
「俺達の目的は、こいつらといがみ合うことじゃない。クライアントとの契約を果たす事だ。忘れていないな」
 黙りこむ部下達。その態度に、JJがいつものように馴れ馴れしく‥‥いや、フレンドリーに聞いた。
「見逃してくれるって事か?」
「こっちだって、いつまでも追いかけていられるほど、暇じゃない。感じるだろう? 恐竜達の気配を」
 そう言えば‥‥と、3人は周囲に気配をめぐらす。血の匂いをかぎつけたのか、突き刺さるような殺気が、漂ってきた。フィアットとしても、早々に岩船へ帰って、無用な戦力ダウンを避けたいのだろう。
「だが、忘れるな。お前達にも契約があることを。特に‥‥刀也、貴様はぜひとも欲しい」
 名指しで指名された刀也。不安そうに涼が擦り寄ってくる。
「覚悟はしておくさ」
 その首筋を撫で、落ち着かせながら、きっぱりと答える刀也だった。

●親睦懇親大宴会?
「ただいまー! お、元気になったみたいだな」
 5人がアリススプリングスに戻ると、熱を出していたゼルスを含め、数人が起き上がれるようになっていた。
「ええ。まだ倦怠感は残りますけど、どうにか私達だけは」
「そいつは良かったな」
 ゼルスが、もう無理しないでも大丈夫です‥‥と報告すると、JJはまるで自分の事のように、喜んでくれる。しかし、そこへ薬のありかを地図に記していたイェーガーがこう言った。
「だが、手持ちはそこの面々だけだ。それに、今までの生活をしていたら、いつまた疫病に襲われるかわからないぞ」
「わかってます。動けるようになりましたし、その分研究を続けたいと思います」
「そうしてくれると助かる。これは、向こうの遺跡で手に入れてきたものだ」
 イディアも、何とかディニーの世話が出来るまでは回復したらしい。そこへ、ゼファーが出土品の欠片や、写し取ったレリーフ等を提出していた。
「そっちはどうだったんだ?」
「実はな‥‥」
 レオーネが尋ねると、刀也はゼファーを通訳に、遺跡で起きた事を話す。そして、自ら絵筆を取り、内部の様子を羊皮紙に記した。
「ふむ。どうやら山岳部の遺跡は、戦闘用の砦。岩舟遺跡は居住区。そう考えると、この湖を中心として、集落を形成していたのかもしれないな‥‥」
 発見された遺跡や湖を、次々に地図へ書き込んでいくイディア。あわせると、確かに街に必要なものが、すべて揃っているように思えた。もっとも、全てが関連していると言う証拠は、どこにもない。岩舟も、実は違う目的なのかもしれなかった。
「話は分かった。どうやら、我らの他に卵を盗んでいるのは、その連中のようだ」
 一方、2人から話を聞かされたイェーガーは、フィアットの台詞から、そう推察する。と、彼が村に来ている事に気付いたルカは、彼にこう尋ねた。
「なぁ、何とか‥‥友好関係は結べないのか? 遺跡に問題があると言うなら、移動すりゃ良い気もするんだが」
 恐竜が脅威だとするなら、何か別の手段を考えれば良い。実際、アリススプリングスとて、決して恐竜に強い環境ではなかったが、皆が手を加えた結果、強化されたのだから。
「具体的には?」
「そうだなー‥‥交易とか」
 イェーガーに尋ねられ、ルカは自身の案を出した。
「ロシアとオーストラリアで、お互いの利益が出る物資とか、良いんじゃないかな」
 すでに、本国からは『胡椒とブランと、恐竜の骨と皮』と言う要求が突きつけられている。
「しかし、ロシアとやらに、果たして我々の望むものがあるのか?」
「そりゃあ、話し合ってみないと、わかんないだろ」
 あっけらかんとそう言うルカ。と、そこへ通訳をしていたミカエルが、こう切り出した。
「ねぇ、だったら懇談会みたいなのやっても良いんじゃないかしら」
 良く見ると、おめめに『宴会☆』ってな文字が浮かんでいる‥‥気がした。
「ふむ‥‥。確かに、お互いを知ると言うのは、良い事だ。英気を養うと言う意味でもな。場所は‥‥そちらで決めても良かろう」
 その様子を見て、イェーガーは考え込みながら、そう言った。相変わらず難しい表情をしているが、話の分からない御仁ではなさそうだ。
「あ、宴会なら、にぎやかし呼ばなくちゃ! 私、パープル先生にも知らせてくるね☆」
 るんるん気分で、出発用の荷物を持ってくるミカエル。しかし、その直後、恭也がこう言い出す。
「あれ? あいつら、シェルドラゴンで川下ってるから、今頃はもう海に近づいているんじゃないか?」
 出発したのは、確か月道が通じる前。そろそろ3週間にもなる。移動をペットに頼っているのだが、そんな障害を差し引いても、充分な時間だ。
「えー、それって、どれくらい離れてるの?」
「ざっと船で1週間分だなぁ。歩いていくと、その倍だ」
 頭を抱えるミカエル。正直、他の面々のように、高速移動するアイテムは、持ち合わせていない。
「それに、まだ残りの薬草手に入れてないだろう」
 ファンがそう言った。用意しなければならないものは山ほどある。行きたい場所も山ほどある。
「お前ら、まず役割を分担したらどうなんだ? 人には、それぞれ得意分野と言うものがあるだろう」
 そんな彼らに、イェーガーは若干呆れたような口調で、そう助言してくれるのだった。

●湖の底へ
 さて、その頃のグレートバリアリーフ御一行は、拾った少年に、事情を尋ねていた。
「なんか無いのか? 水中で呼吸する方法なんか、欠片も思いつかん」
「一応、水中呼吸の魔法は使えますが、私ではせいぜい6分がいい所です」
 東雲がそう尋ねると、彼はそう言う。おそらく、初級魔法しか持っていないのだろう。
「それでも、ないよりはマシよ。水中で呼吸できるようにしてくれるなら、何とかついていけるかもしれないし」
 気を落としかけた少年に、キャシーがそう言って励ます。と、セラが周囲を見回して、こう言った。
「この辺に、なにか埋まってないのかしら」
「そう言えば、離宮には大昔、客人をもてなす為の入り口があったとか噂は聞いた事がありますが‥‥」
 マーメイドだけならば、そんなものは必要ないので、余り使っていなかったらしい。その為、どこにあるかわからないそうだ。と、そこへ東雲がこう尋ねる。
「なぁ。そのマジックアイテムだかなんだかがある出口は、わかっているのか?」
「そこならば‥‥。客人用ですから、おそらく、離宮の入り口近くに繋がっているものかと‥‥」
 考えてみれば、当然の話だ。地上にいる客人を招くものなのだから、行き先はおのずと決まってくる。
「だったら、俺たちが首長竜を引き離している間に、その出口側から、たどってもらうのはどうだ?」
「あー。それならば、可能ですね」
 なるほど‥‥と、納得する少年。
「でも、泳げても水の中には恐竜さんがいるんです、よね。私達だけでは、水の中の恐竜さんを退治するのは大変、です‥‥。やっぱり、恐竜さんに気づかれないよう、こっそり遺跡まで行けたら‥‥それがいいのですけれど」
 湖では、いまだに首長竜の長い首が水上に突き出ている。その様子を見て、キャシーもこう言った。
「そうねぇ。首長竜さえ、こちらに来てくれるなら倒しようはあるのよね。水中では絶対に無理、岸にある程度近くて浅いところは‥‥、注文通り来るかしら?」
 だが、その解決法は、意外な所から出てきた。
「あら。だったら良い方法があるわよ」
 うふふふふ‥‥と不気味に笑うパープル女史。側にいた東雲が、顔を引きつらせて、回れ右するが、逃がさないとばかりに、彼女はその首根っこを押さえてしまった。
「こう言う危険任務は、言いだしっぺがやるもんよねぇ? 東雲くん♪」
「ま、ましゃか‥‥」
 そのまま器用に右腕で彼の首を締め上げる女史。そして、キャシーにこう尋ねた。
「キャシー、ロープの在庫ある?」
「え、ええまぁ‥‥。記録用の奴だけど」
 記録用の皮を束ねていたロープを手渡す彼女。と、パープル女史は、それを東雲に結び付けさせ、こう宣言。
「さぁて、いい子で餌になってもらいましょうかぁ!」
「ひぃやぁぁぁぁぁ! ごめんなさあぁぁぁぁいいっ!」
 そのままどぼーーーんっと湖へと蹴り込まれる東雲さん。くるっと回頭してきた首長竜に追いかけられ、あわてて逃げる羽目になる。
「よし。今のうちよ!」
「いいんでしょうか‥‥」
 パープル女史が、ライトハルバードを手に、岸辺から近づくよう指示。申し訳なさそうな表情で、自身の武器をもちだすさくらに、彼女はきっぱりとこう言う。
「大丈夫よ。あのくらいじゃ、死なないし」
「けど、この人数じゃ、倒せないでしょ‥‥。傷つけるのが‥‥やっとだと思うし」
 セラの重藤弓でも、軽傷を負わせるのが精一杯だろう。いや、かすり傷しか追わせられないかもしれない。
「どうでも良いから、早くしてくれぇぇぇ」
「はいはーい。一生懸命マラソンしてて頂戴。倒さなくていいわ。引き剥がすだけでいいの!」
 せかされて、パープル女史は仕方がないわねーと言いたげに、湖岸に併走し始める。
「仕方ないわね。えぇい」
 それを見習い、セラもダブルシューティングを放つ。だが、やはりかすり傷だった。
「そう言う事なら、何とかなりそうね! 上手くひきつけて!」
 と、キャシーが山岳騎士の名に相応しく、自身のバルディッシにオーラパワーを付与する。見た目にも勇壮なそれは、オーラの力を得て、威力を増す。
「東雲! セラに合わせて! キャシーん所まで持ってきなさい!」
「わぁった!」
「了解!」
 パープル女史の指示にあわせ、キャシーの元まで走ってくる東雲と、彼を援護するように、ダブルシューティングを放つ。せかされるように、岸へと近づく首長竜。
「よぉーし、いい子ね! こっちにきなさいっ!」
 その鋭い牙を見る限り、中に入り込んでなんて戦法は使えない。しかし、岸にさえ寄ってくれれば、いくらでも対処のしようはある。
「はぁっ!」
 ばしゃんっと岸辺の水をはねて、キャシーが軽く飛び上がる。スマッシュの要領で、振り下ろされるパワーバルディッシュ。
「ぎゃーーー!」
 その卓越した技能は、首長竜に決して軽くない傷を負わせていた。致命傷ではないが、怯む首長竜を見て、パープル女史は、こう叫ぶ。
「よし。今のうちね。さくら! ミーファ! その子を頼んだわよ!」
「はははははいっ!」
「逃げるのらーー!」
 その間に、さくらとミーファが、少年にウォーターブレスを付与されて、水の中へと潜っていく。
「さくらさん、こっちです!」
 マーメイド少年は、その姿を本来のものに戻していた。そして、水の回廊を抜け、離宮の正面玄関へと案内していく。
「この塔が、水面まで続いているみたいです」
 その広場には、天空まで届くように、装飾の施された塔が立っていた。潜って見ると、壁にはレリーフが示されており、水面は木の枝で覆われているのが見える。
「えぇい。まだか〜!」
「1匹だけなんだから、我慢しなさい!」
 水面では、暴れまわる首長竜を相手に、まだ走り回っている東雲がいた。パープル女史も、攻撃よりは霍乱に徹している。そんな中、少し離れた場所にあった木の影から、さくらの声がする。
「皆さん! こっちです!」
 見ると、木に隠されるようにして、石造りのゲートが開いていた。祠のように見えるそれが、離宮への入り口なのだろう。
「しまった! 竜が!」
 しかし、結構な深みにあるそこに、ばしゃばしゃと首長竜が泳いでくる。
「邪魔はさせないわよ!」
 ぶぅんっと、キャシーの斧がうなりを立てる。そこへ、セラが矢を打ち込み、動きを止めていた。かなわないと知ったらしい首長竜は、悲鳴をあげながらくるりと回れ右。
「今のうちに、遺跡を調べて見ましょう」
 こうして、無事首長竜を撃退した彼らは、遺跡のゲートを通り、水中の離宮へと探索を広げるのだった。
 だがこの後、彼らはもう少し、奥へ進んだ大冒険を繰り広げる事になる。

●道は二つ
 その大冒険の結果、彼らは不思議な船を手に入れていた。マーメイドの村で、長く使われていたと言う船。それを、人間が乗れるよう改造し、使わせてもらうことになったのだ。
「これで、だいぶん時間短縮になったらね」
 船は、中の宝珠に触れると、自動で進む仕掛けになっていた。外を直接見る事は出来ないが、敵が来れば教えてくれる。そんな不思議な船の中央で、船長気分にひたりつつ、そう言うミーファ。
「ここからは、歩いていかなければなりませんね」
 地図に寄れば、このまま川を下り続けると、グレートバリアリーフとは、逆側の海に出てしまうそうだ。王子様とやらが、どっちに行ったかは定かではないが。
「しかし、すごい所ね。あそこにあるのは、山脈かしら?」
「はい。グレートバリアリーフを守る、グレートディバインディング山脈です。あれがあるが故に、我らは陸の恐竜から襲われずに済んでいると聞いています」
 キャシーが風景を記録しながら、遠くに見える山々を指して尋ねる。と、少年はその向こう側に、目指すリーフがあると、教えてくれた。
「結構な高さなのに、雪は被ってないわね‥‥。どうしてかしら」
「さぁ‥‥。でも、火の山があるとは聞いています。誰も確かめたものはいませんが」
 山々の下の方は、豊かな緑で覆われている。しかし、裾野は荒れた大地、そして山頂部分は、深い雲に覆われて、見えなくなっていた。
「なるほど。それは踏破しがいがありそうね」
 山岳騎士として、長くウェールズの山で暮らしていたキャシー、その山並みに、いたく興味をそそられたようだ。
「きしゃあ」
 と、そんな彼女達を出迎えるように、草原の影から、体長1m、高さ20cmほどの、小さな恐竜が顔を出す。
「あらかわいい」
 目を輝かすさくら。こんな小さな恐竜までいたらしいのは、知らなかったのだろう。
「掃除屋さんって言ったところね」
 キャシーがそう言った。その口元に、さらに小さな昆虫が、ぴくぴくと動いている。集団で現れた彼らの中には、ごくごく普通のトカゲまで加えている始末。
「ちょい待て。そいつらがいるって事は‥‥」
 周囲を見回すと、岸から少し離れた場所に、30m弱の巨大な肉の塊が転がっていた。
「うわぁ。すごい‥‥」
 感嘆するキャシー。それは、良く見ると巨大な恐竜の死体だった。四本足で太い胴。長い首。
「ディプロドクスですね。何者かに狩られたのでしょう」
 少年がそう言った。かなり巨大な部類に入る恐竜で、概ねこういった水辺や湿地に住んでいる。総じて温厚なこの恐竜は、時折肉食恐竜に狙われるそうだ。
「って、あんなモン狩るのがいるの!?」
「はい。ティラノならば、おそらく問題なく倒せるものかと‥‥」
 目を丸くするセラに、頷く少年。と、その話を聞いたキャシー、あんぐりと口を開ける。
「まぢ? いるの? ここ」
「ええ。彼らは平原の他、こういった岩場にも住んでいるそうです。私も実際に見た事はありませんが、気をつけるようにといわれています」
 見れば、死体の周囲には、爪のある三本指の足跡が、そこかしこについていた。
「この死体の状況じゃ、この辺りにいるわね‥‥」
 しかも、ディプロドクスの死体は、まだ血の匂いの残る、殺したてほやほやの状態だ。耳を澄ませば、遠くからティラノの叫び声が聞こえるような気がする。
「どうします? ここを歩いていくのが、本国へ行くには、一番早いんですが‥‥」
 川を下り、半島を回る事も出来る。その方が危険は少ないかもしれないが、今度は2週間ほど余分に時間がかかってしまう。
「なんか、ないの?」
「私1人なら、何とか隠れられるかもしれませんが‥‥」
 この人数+ペット達だと、ティラノから隠れきるのは厳しい。何しろ、目の前に広がるのは、荒野とも呼べる台地だったから。
「何か、別の手段を考えなきゃいけないわね」
 ため息つくパープル女史。
「でも、それが冒険って事でしょ?」
 キャシーが、目の前に起きている事象を書き記し、そう言ってくれる。
 山、川、海。恐竜に荒野。記録すべき事は沢山ある。揃った材料を活用するのは、自分たちなのだから。

今回のクロストーク

No.1:(2007-04-10まで)
 遭遇してみたい恐竜がいたら、教えてください。