それゆけ、オーストラリア探検隊!
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■クエストシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:‐
難易度:‐
成功報酬:-
参加人数:17人
サポート参加人数:-人
冒険期間:2007年02月01日 〜2007年11月31日
エリア:オーストラリア
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これから紡がれるは、熱き開拓の物語。
未開の土地を切り開き、強大なる恐竜を退け、未知なる存在を探索し、新たなる世界を作り出す物語。
その発端は、北の王国‥‥ロシアより始まっていた。
「では、これより定例報告会を始めます」
王宮の一室。国王ウラジミールを交え、定期的に開かれる各地からの報告会。そこには、月道からの報告書があった。羊皮紙につづられたそのタイトルには、『オーストラリア概要書』とある。記した者の欄には、『第二次調査隊:ヒノミ・メノッサ』とあった。
「これによると、オーストラリアと言うのは、恐ろしいモンスターが徘徊する大陸のようだな」
「第一次調査隊の折にも、同じ報告が来ている。いかに伝説の主人公とは言え、間違いないだろう」
本当にヒノミ・メノッサが書いたかどうか定かではないが、報告書の内容は、信じる事にしたようだ。それには、こう綴られている。
『私、ヒノミ・メノッサは、第二次オーストラリア調査隊に同行し、この広大な大地にあるものを、つぶさに観察し、記録にとどめる事になった。王国に住む者達にとっては、にわかには信じられぬ事象ばかりだが、この報告書に書かれていることに、嘘偽りはない。神と精霊に誓って』
初めに書かれていたのは、第一次調査隊が、多大な犠牲を払い、判明させた事‥‥月道の繋がった場所が、遺跡である事。その遺跡に、古代に滅んだはずの神聖王国ムゥの紋章が記されていた事に触れている。
それでは、偉大なるヒノミ・メノッサの記述に基づき、オーストラリアへと足を踏み入れてみよう。
『ようこそ、アリススプリングスへ』
そう記された遺跡へ着くとそこは、真夏の気温だった。いや、ロシアの夏よりも、ジャパンの夏よりも、さらに気温が高い。遠くには、薄く煙を噴き上げる山まで見える。遺跡の周囲は、多少開かれてはいたが、それこそ急遽立てられた小屋らしきものが数十軒ほど軒を連ねている程度で、村と言うよりは、ただの集落に近かった。
ぎしゃぁぁぁぁぁ!
不意に、遠くから獣のような泣き声が聞こえた。見上げれば、巨大なシダに覆われた森の向こうを、頭が細く長いトサカのような骨質の飾りをつけた大きな翼と、くちばしを持ったモンスターが、群れをなして飛んでいく。隣の奴に聞いたところ、プテラノドンと言う恐竜らしい。
このような危険で野蛮な場所に、何故人々は集うのだろう。尋ねると、調査隊の1人は、はるか遠くにうっすらと見える白銀の岩山をさしてこう言った。
「あれが見えるか? あれは、ブランの山だ。今は、恐竜がいて近づけないが、掘り出す事が出来れば、一生遊んで暮らせる富が手に入る」
ブランと言うのは、通常岩の中に消し炭のようにぶつぶつと紛れ込んだ状態で見つかる。それがうずたかく積まれているとは、途方もないもののようだ。
「なるほど。確かに、第三次調査隊を送るべき価値のある大陸だと言う事はわかった」
報告書をそこまで読んだロシア王国国王ウラジミールはそう言った。調査隊からは、ブランの他、豊富な希少金属の存在をうかがわせる。それに何より、報告書にはこうあったのだ。
『この遺跡の他にも、あちこちから神聖王国ムゥの噂が聞かれる。ここは昔、ムゥの一部‥‥いや、都だったのかもしれない』
ムゥとは、はるか昔、先史2大文明のうちの一つで、神々の住む国であったと言われている古代高度文明・宗教王国。魔法王国アトランティスとの戦いによって、その大地ごと天空へと吹き飛ばされたと伝えられている。ジーザス教を国教とするロシア王国にとって、それは探索に値する文明だ。
その遺跡の一つであるアリススプリングス。月道の開く場所でもあるそこでは、調査隊の生き残りや、入り込んだ商人達によって、集落が形成されていた。
「えぇと、今日の当番は‥‥」
マクドネル山脈のふもと。周囲を湿地に覆われ、遺跡に身を寄せるように立てられた小屋では、住民‥‥ほとんどは調査隊の生き残りだ‥‥が、交代で恐竜達の襲撃を見張っていた。
「西の湿地には、マイアサウラが巣を作りやがったからなぁ‥‥」
「あれ? 東で子連れのムッタブラ見たぜ?」
「マジか? 俺、こないだそこでステゴケラスに追いかけられてさぁ。大変だった‥‥」
王国の者達には、聞きなれない名前が並ぶ。彼らが口にしているのは、全てアリススプリングスの周囲に住む恐竜達。比較的温厚で、デビューしたばかりの冒険者でも、数人揃えば何とかできるレベルの恐竜だが、それでも出来るなら手を出したくない者達だ。
「北には何かあったっけ?」
「アルケオ三連星が陣取ってる」
アリススプリングスの周囲にいるのは、比較的大人しい恐竜ばかりではない。小型とは言え肉食の恐竜もいる。しかも‥‥3匹。いかに小型とは言え、肉食性。よく昆虫や小動物を追っているが、パラやシフールなら、食料にされかねない。
そうして、入植者と言う名の住人が、その日を生き延びる為の相談をまとめていた時だった。
「大変だ! 南の湿原に、アロサウルスがうろうろしてる!」
「「「なにーーー!」」」
ざわめく人々。それもそのはず、アロサウルスと言うのは、全長10m以上はあると言う、巨大な肉食恐竜だ。
「なんでそんなのが‥‥」
「おおかた、死肉の匂いでもかぎつけてきたんじゃないのか? こないだ、ステゴサウルスが死んでたし‥‥」
「と、とにかくバリケード固めないと!」
「俺らだって物資は決して豊かじゃないのに」
ぶつぶつと言いながら、南の防御を固める住民達。月道が開くまで、この遺跡を恐竜達に踏み荒らされるわけには行かない。
「ムゥの精霊様。どうかご加護を」
「戦争に負けた王国に祈っても、加護は少ないと思うけどな」
遺跡に輝く、まるでジーザス教のシンボルに酷似した浮き彫りに祈る彼ら。たとえ、既に力などなくとも、今はわらにもすがりたい気持ちに違いない。
救援者、求む!!
報告書はそこで途切れていた。おそらく、ヒノミ・メノッサも騒動に巻き込まれているんだろう。
「月道管理局からは、この危険な恐竜を密輸しようとした者達が後を絶たないと報告されております。ここはやはり、月道を閉鎖した方が‥‥」
「バカを言え。向こうで調査を続けている第二次隊はどうなる。今までどおり、厳重な管理下においておけばよかろう」
会議に参加している者達は、賛成反対様々だ。
「陛下、いかがいたしましょう」
王国顧問ラスプーチンが、ここでも口を挟む。しばらく考えていたウラジミールだったが、やおら‥‥こう言った。
「調査を、冒険者に頼んでみてはどうだろうか」
ざわめく会議。国家の一大事を、彼らに頼んでもいいのか‥‥と言うのが、大半の感想だ。
「第一次調査隊は、15人しか戻ってこなかった。第二次調査隊は、いまだ消息のわからない状態だ。ブランの鉱脈は、我が王国にとって潤いとなるが、これ以上犠牲を出すわけにはいかない。つまり、ここに書かれている恐竜達と、対等以上に渡り合える存在でなければならない!」
確かに、冒険者達の中には、ドラゴンと一対一の勝負が出来ると誉れのある者もいる。恐竜とはすなわち、恐ろしき竜と書く。竜退治の物語に、目を輝かせたのは、何も冒険者ばかりではないだろう‥‥。
こうして、王室から正式にお触れが出された。冒険者ギルドばかりではない。各種貴族や商人等を通じ、王国全土に大々的に募集がかけられたのである。
さて、その頃。
「だ、そうですわ〜」
「ふぅん、恐竜ねぇ‥‥」
ゲルマン語の講義帰りらしいお琴ちゃんに、侍女同士の間で噂になっていた、15人の勇者話と、ヒノミ・メノッサが実在するかもしれない話を聞かされたパープル女史はこう語る。
「でも、あの禁断の書を書いたヒノミ・メノッサが、こんな‥‥巨大モンスターしかいないような場所に、入り込むと思う?」
「言われて見れば、そうですわねぇ‥‥」
はたと気付く彼女。そして、ある事を思い出す」
「そう言えば、先輩に聞きましたけど、オーストラリアにはすごく綺麗なサンゴ礁と言う海があって、そこに、まるで南方のお魚のような、ステキなマーメイドさんが、いらっしゃったとか‥‥」
お琴の話では、その先輩は、南方の海に楽園があると話していたそうだ。嘘か真か知らないが、マーメイドの美少年を夢見て、ヒノミ・メノッサが調査隊に加わっている事は、想像に難くない。
「おぉい、王室から通達だ! 第三次調査隊が、大々的に公募されるようだぞ!」
「へぇ‥‥。なんだか面白そうね」
その文面には、こう書いてあった。
【第三次オーストラリア探索隊募集! 腕に覚えのある者は、恐ろしき竜の徘徊する未開の大陸にて、調査護衛に同行せよ!】
むろん。出自も性別も種族も、そしてそれまでの経緯も、まったく問われはしない‥‥と。
【以上を募集すると共に、海千山千の猛者を率い、厳しい監視の目を盗んで紛れ込む恐竜密輸の商人を取り締まる団長も、立候補していただきたい。ただし、それ相応の力を持つ者を!】
興味を示した女史が、実際応募したかは定かではない。
だが、恐竜の闊歩する遺跡の山に、麗しき美少年の伝説が加われば、彼女でなくとも、魅力溢れる未知の大陸に違いない。
挑戦者、求む