世界の守護たる道

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:22人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年02月01日
 〜2007年02月31日


エリア:インドゥーラ国

リプレイ公開日:-

●リプレイ本文

●はるばるきたぜ大聖堂
──インドゥーラ・ベナレス・月道管理塔横・入国管理局
 遥か異国より訪れし者たちが最初に訪れる場所、そこがこの『入国管理局』。
 月道が開かれて以来、多くの人々がこのインドゥーラを訪れるのだが、その中には諸外国で犯罪を犯した者たちも数多く含まれている。
 それら犯罪者が迂闊にインドゥーラの地を踏まないように創られたのが、この入国管理局である。
 月道を通ってきた者は、まずここで入国審査が行われ、諸外国で犯罪を犯した者たちは、ここで手配書に記されていないか調べられるのである。

 まあ、なにはともあれ、新たなるパラディンを向かえるべく門を開いたインドゥーラ。
 この日は、多くのものたちが訪れ、そしてまた本国に強制送還されていくのであった。


──ベナレス・ガンガー(ガンジス川)
 聖なる川ガンジス。
 ヒンズー教徒はこの川で沐浴を行い、罪を流し功徳を増すのである。
「ここがベナレスのガート(木浴場)ね。人が一杯居るわね」
 聖なる川ガンガーに祈りを捧げる為に、昏倒勇花(ea9275)はベナレス中央のガートを訪れていた。
「‥‥お前も沐浴しろ。罪と汚れを払い落とせ」
 逆立ちで座禅を組み、頭で重心を支えている『修行者(サドウ)』が、勇花にそう話し掛ける。
「私も入っていいのですか?」
 そう告げる勇花に、サドウは笑顔で頭を軽く左右に振る。
(駄目なのかな。でも笑顔だし‥‥どっちなんだろう)
 そう考えているうちに、別のサドウが勇花を川に連れていく。
「え? 何これ、ちょ‥‥」
 そんな抵抗も虚しく、勇花はサドウ達と共に着の身着のまま水に使っていった。
「もう‥‥やーねぇ‥‥」
 まあ、入っておけ。


──ベナレス中央
「ここがインドゥーラですか‥‥」
 興味深そうに通りを歩いている人々を見ているのは三笠明信(ea1628)。
 彼とルミリア・ザナックス(ea5298)、レヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)、シャロン・オブライエン(ec0713)、鳳美夕(ec0583)の5名は、まずアジーナ大寺院に向かう前に、繁華街に足をむかわせていた。
 この地の風習などを、住んでいる人々に接する事で知っていこうということであろう。
「この宝石。とてもいいデザインですね」
 レヴェリーはそう告げながら、露店の宝石商の元で様々な装飾品を見ていた。
「お嬢さんたち、外国から来たのね。私謎の露天商サッシーさん。インドゥーラ来たのなら、宝石身につけるよろし」
 そう告げて、様々な装飾品をみせるサッシーさん。
「随分と色々な宝石がありますね」
「それに、なんだか高そうだな」
 美夕とルミリアがそう呟きつつ、幾つかの宝石を手に取る。
「そっちの二人は男性ね。でも宝石身に付けるよろし。だいじょぶ、私外国でも商売している。ドコの国の貨幣でもOKね」
 そのまま男性用の宝石を三笠とシャロンにみせる。
「お、オレはいい。彼女達に見てやってくれ」
 サラリと髪を書き上げつつ、シャロンはそうサッシーさんに告げる。
「ああ、そう。残念ね。それじゃあ外国の人よくわからないから説明するね。もしアンタが観光でここにきているのならわたし、宝石すすめないね。でも、ここに長い間居るのなら、宝石は身につけるべきね」
 その話に、一同はしばし耳を傾ける。
「宝石は女性自身でもあり、お守りでもあるね。宝石には全てエフェクト(力)が宿り、持主を護ってくれるね‥‥」
 興味ありそうに耳を傾ける女性陣にくらべて、男性陣は暇そうである。
 但し、シャロンは耳だけはしっかりとサッシーさんに傾けていた。
「これはルビーね。太陽の力、貴方に自信と勇気与えてくれるね‥‥」
 一つ一つの宝石に宿る力を聞きながら、一同は一時の愉しい時間を過ごしていた。

──場所は変わって
「‥‥アンデット退治か‥‥ちょっと難易度高そうじゃん」
 ベナレス中央にある『冒険者ギルド』で、ウィルマ・ハートマン(ea8545)は壁に張付けてある依頼を見ていた。
 大量の依頼書、それらの殆どが魔物の討伐や村を襲うアンデット、正体不明の魔物との戦いなどである。
「まあ、ここでこれを見ていても話にならないじゃん。先に進むしかないか‥‥」
 そう告げると、ウィルマはアジーナ大寺院の方向へと歩き出した。


──そして山門前
 大勢の人々で賑わう山門。
 その手前で、一人のパラディンが何か説明を行なっていた。
「なになに? 何があったの?」
 ルミリアは人ごみをするりと乗り越えて、そのパラディンの前に立った。
 そして横に記されている立て看板を見て、成る程と納得。

──────────────────────
          告

 パラディンを目指すものよ。
 まずは試しの階段を越えよ。

 山門は毎日朝8時、大聖堂の鐘と共に開かれる。

 山門を越えて、夜8時の鐘が響くまでに階段を越えよ。
 さもなくば、再びこの場所に舞い戻る事になるであろう。

──────────────────────

 それはパラディンとなる為の第一の試練。
 それを見た冒険者達は、とりあえず其の日、自分達の狩のすみかや宿へと戻っていった。


●静かなる総本山・2月3日
──ベナレス・アジーナ大寺院
 山門を越えて、はてなき階段を駆け昇る。
 やがて見えてくる白き二つの塔。
 そしてその間に位置する荘厳な建物。
 それこそが、パラディン総本山であるアジーナ大聖堂。
 でも、まだ一行はそこまでたどり着く事が出来なかった。

──ハアハアハアハア‥‥
 息を切らせつつ、その階段を昇っているのは、鷹見仁(ea0204)。
「一体、どこまでこの階段は続くんだ‥‥」
「確かにな。だが、これも試練の一つだとおもうが‥‥」
 ヒースクリフ・ムーア(ea0286)が、鷹見の言葉にそう続けると、そのまま背後を指差す。
 山門はすでに見えない。
 果てなく続く階段のあちこちでは、疲労困憊して座り込んでいる冒険者の姿も見えていた。
「立ち止まると動けなくなりますよ。ゆっくりでも、確実に足を動かさなくてはね」
 マリウス・ゲイル(ea1553)が二人にそう告げると、そのまま追い越して上に向かう。
「ハアハアハアハア‥‥挨拶に向かうまでが、まず習練ですか‥‥」
 三笠がそうつぶやくと、横のシアン・アズベルト(ea3438)も静かに肯く。
「それ程、パラディンの選抜は厳しいものなんだろう。今はまず、上を目指すだけだ‥‥」
 シアンはそのあと、口をとざした。
 言葉を綴るほどに、耐力が失われていく感じがしたから。

──一方、最前列
 現在の所目、トップを走っているのはルミリア・ザナックス。
 やがて階段を越えて、広い石畳にたどりついたルミリアだが、その先に広がる階段を見て絶句。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ。これだけ気合いいれて駆け抜けてきて、まだ先があるの?」
 息を整えてからそう呟いた時、近くの小屋から拍手が聞こえてくる。
──パチパチパチパチ
「ようこそ、挑戦者。僕は『ラグナ』。ここまでたどり着いた者に、告げを与える為に推して参った」
 全身を白銀の装備で固めているラグナと告げた子供が、ルミリアに近付く。
「ふぅ〜。ここは何かしら?」
「一次休憩所。ここまで辿りつけなかった人は夜の鐘と同時に山門まで戻されるけれど、ここに辿りついた人は、ここの場所から再スタートになるだけ。まあ、ここで一休みしていって構わないよ」
 そう告げると、近くの石畳を指差す。
「ふぅん。成る程ねぇ‥‥」
 そう告げると、ルミリアはとりあえず後続がやってくるのをじっとまっていた。


──そして後続部隊・中盤
 どっかりと腰を据えてしまっているのはウィルマとレナード・ガーランド(ec0215)、フォン・ラーマ・ルディア(ec0226)、フェイ・グリーンウェル(ec0238)、コルネリア・ブルームハルト(ec0260)、鳳美夕の6名。
「はあ‥‥もう限界じゃん‥‥どうしてあいつらは軽々とあがっていけるんだ? 理解不能じゃん?」
「まったくです。私には理解できません」
 ウィルマの呟きに、レナードが相槌を打つ。
 そのちょっと下では、フォンとフェイ、鳳の3人がグロッキー状態。
「まずは一休み。体力が整ったら、また上がっていきましょう。今日上がれなくても、必ず踏破できる日が来ます!!」
 コルネリアのその励ましに、他の5人もとりあえず肯くと、体力の回復をじっとまっていた。
 なお、そこから下には、かなり大勢の冒険者が座り込んでいたりするから、ここの連中はまだましであろう。
「お‥‥おいら、阿修羅僧になるためにきたのに‥‥」
 フォンはそう呟きつつそこで静かに羽根を休める。
 まあ、共に頑張ろうとした根性は認めよう。
 だが!!
 これもまた君の運命。合掌。
 

──再び一次休憩所
 次々と第一の階段を突破した者たちが、一次休憩所に到着する。
 到着した者たちには、待機していた阿修羅僧が食糧と水を与えていた。
 そこで冒険者達は、今一度この第一の試練の難しさを感じ、次の階段へむかう為の体力を養っていた。

「あたしは、まず大僧正さまの所までいってから、このインドゥーラの『さぶらひ(侍)』になるのよ☆」
 そう告げているのは、昏倒勇花(ea9275)。
 実に乙女チックな『男性』である。
「それは難しそうだな」
 そう昏倒に告げているのはアレーナ・オレアリス(eb3532)。
「どうして?」
「確か‥‥入国管理局の話だと、この国には『侍』は存在しない。貴方が侍になる為には、まずは『使える武家』が必要なはずだ」

──昏倒ショ〜ック!!

「え? でも、国に使えれば」
「国に使えるのは侍では無く、私のような騎士。そしてインドゥーラには、騎士は存在しないな」

──昏倒ショ〜ック。パート2!!

「え、でも、アジーナ大寺院に使える騎士は在った筈‥‥」
「それが『パラディン』だ。大寺院に使える為には、パラディンになるしか方法はない‥‥」

──昏倒ショ〜ック。パート3!!

「あああ‥‥」
 昏倒、ここで夢破れる‥‥のか?

──一方、別の場所
「美夕は大丈夫かしら」
 仮面を付けた騎士レヴェリーが、横に座っているルミリアにそう告げる。
「体力が問題よね。大丈夫だといいんだけれど」
 そのルミリアの言葉をききつつ、レヴェリーは食事を取った後、近くにいた阿修羅僧に問い掛ける。
「この先、まだ道はかなりあるのですか?」
「ええ。まだここは最初の半分にも到達していません」
 その言葉をきいて、さらに気を引き締めるレヴェリーとルミリア。
「それにしても、まだここで半分にならないのか‥‥」
 近くでそう呟いていたのはマグナス・ダイモス(ec0128)。
「そのようですね」
「まあ、体力には自信があるし、ここから先の階段もなんとか突破してみせるか」
 ニィッと笑いつつ、そう告げるマグナス。
「しかし、貴殿達も大変だな」
 食事を受け取りつつ、阿修羅僧に告げているのはアンドリー・フィルス(ec0129)。
「これも修行です。私達阿修羅に仕えし僧は、日々鍛練を惰りません」
「ふむ。ちなみに一つ問いたい。この階段、貴殿ならどれほどで上がれる?」
 その言葉に、阿修羅僧はニコリと笑いつつ一言。
「半日もあれば」
「それも修練の賜物か」
「ええ。私達は戦士殿やパラディン殿と共に、モヘンジョ・ダロにむかう事を許されています。それもまた修練として‥‥」
 そう告げると、阿修羅僧はそのまま別の人の元へと食事を持っていった。

「パラディンとなる為には、まず何をするべきなんだ‥‥」
 そう阿修羅僧に問い掛けているのはフィリックス・トゥルム(ec0139)。
 その横では、アイザック・トライスター(ec0141)と上泉蓮華(ec0178)、エビータ・ララサバル(ec0202)、シャロンの4名が、今到達したばかりで疲労困憊の身体を休めていた。
「幾つかの試練があります。この階段を越えるのも一つの試練。実際に昇って頂くと判りますが、階段自体はそれほど高くはありません。なんといいますか‥‥山門を越えた所から、階段は別の存在とおもって頂いて結構です」
 そのフィリックスに向けられた言葉を聞きつつ、アイザックが一言ボソリと。
「アジーナ大寺院はヒマラヤ山中ではないのか‥‥」
「そのようだな。この場所も、ベナレスとかいう土地の外れだし‥‥」
 そう告げつつ、階段の下を見る蓮華。
 階段の下には、もうなにも見えない。
 霧のようなもので周囲も包まれており、その場所が『全く別の場所』であることを示していた。
 なお、本来ならばかなり上位で昇りきっていた筈の蓮華だが、途中で階段を踏み外して転落していったことは内緒だ!!
「それにしても、貴方が上から落ちてきたときはもう駄目と思ったわよ‥‥」
 そう蓮華に呟くエビータと、横で肯くシャロン。
「全くだ。おかげでまきこまれて、あわや山門の外に放り出される所だったぞ‥‥」
 そのシャロンの言葉に、頭を掻きつつ豪快に笑う蓮華。
 コケて転がってくる蓮華を躱わそうとしたエビータとシャロン。
 だが、交わしきれずに直撃し、3人でまとめて転げ落ちていったのである。
「はーーーーっはっはっはっ。まあ、そう言うな。もしお前達に何かあったら、その時は俺が!!」
 フンッと腕の筋肉を膨張させてそう呟く蓮華。
「まあ、余り己を過信しすぎないようにな‥‥」
 表情一つ変えずアイザックはそう呟くと、再び食事を続けていった。

──そして第二の試しの階段手前
「あんたパラディンだろ!!」
 休憩所で休んでいたバーク・ダンロック(ea7871)が、奥の階段手前で『結跏趺坐』で瞑想していたラグナに問い掛けていた。
「ん? ああ。そうだけど?」
「いやぁ、やっぱパラディンはかっけーな。正義のためにのみ戦う聖なる騎士。うんうん、俺もきっとなってみせる。あ、俺はバーク・ダンロック。あんたの名前を聞かせてくれ」
「僕はラグナ。階級は八部衆の『夜叉位』に位置する。今回は、大僧正様のご命令で、ここでパラディン候補生を監視しているだけだから‥‥」
 そう告げると、ラグナは再び瞑想に入った。
「よし、それじゃあとっとと逝ってくるか!!」
 そう叫んで第二の階段を駆け昇るバーク。
 その姿を、休んでいた誰もが見届け、そして静かにこう思っていた。

 もうすぐ日がくれるのに‥‥

──ガラァァァァァァァン

 やがて周囲に響き渡る鐘の音。
 そして一行が見届けた階段の遥か後方に、バークが姿を現わした。
「はい、御苦労さん‥‥」
 その肩をトン、と叩きつつ、フィリックスが食事を差し出す。
「無駄な体力を使わない事だな‥‥」
 
 そんなこんなで、第一の試しの階段を突破した一行は、一次休憩所にて朝までの愉しい一時を過ごしたとさ。


●ベナレス・とある宿
──冒険者酒場・カター・サリット・サーガラ
「‥‥」
 愉しく陽気な酒場の中で、沈黙している一行があった。
「‥‥体力がないから?」
 そう呟いているのはレナード。
「ここにいる人たちの感じからだと、そんなかんじだね‥‥」
 美夕のその言葉に、一同は静かに肯くが、一人、頭を捻っている人物がいる。
「私は体力にはそこそこ自信がありますわ。それなのに、どうして昇りきる事が出来ないのでしょう?」
 フェイが腕を組みつつ、そう呟く。
「他に昇っていく人たちを見ていましたけれど、確かにあの階段を昇っていくときには、全身から力が抜けていくかんじはしているようです。けれど、それをどうにか克服しているのは、なにか秘密があるのではないでしょうか?」
 コルネリアの言葉に、各々が階段での出来事をもう一度思い出してみる。
「女性だから昇れないということはないみたいね。私の友達のルミリアやレヴェリーは軽々と昇っていったし」
 美夕の言葉に、皆納得。
 女性だからという事ではないようである。
「となると‥‥各々の体力か? だとすると、昇れるまで俺は昇りつづけるだけだ‥‥」
 シャロンはそう吐き捨てるように呟くと、そのまま席を立つ。
「何処かに出かけるのですか?」
「ああ。ちょっと夜風に当たってくる。あとは任せる‥‥」
 そうレナードに告げると、シャロンは外に歩いていった。
「兎に角、明日、注意して昇ってみて、色々と検討してみましょう」
 というフェイの言葉で、其の日は御開きとなった。


●アジーナ大寺院へ
──一次休憩所
 早朝。
 鐘の音が鳴り響くと同時に、1度休憩所に待機していた一行は再び階段を昇りはじめた。
「‥‥あ‥‥これはちょっと‥‥」
 昨日までとは何か異質な力を感じる一行。
 鷹見は13段上がった途端、全身から汗が吹き出してきた。
「確かに、この異様な力。尋常ではないな。身体にかかる負荷は、鍛えあげられた肉体では跳ね返す事が出来ぬか‥‥」
 ヒースクリフも15段昇った時点で動けなくなっている。
「まだそこまで昇れたからいいですよ‥‥僕はここまでですからね‥‥」
 マリウスにいたっては、まだ6段目。
 同じく三笠も6段目にしてストップ。身体から汗が吹き出し、脚ががくがくとしてくる。
「大地に。階段に力を吸われているような‥‥そんな感じですね‥‥」
 そこまで告げると、三笠はついに階段に腰掛けてしまった。
「なにを甘い事を言っているんだ!!」
 そう石畳で叫んでいるのはシアンである。
「その通り!! こんな階段、気合で上がっていくんだっ!!」
 シアンの横で叫んでいるのはルミリア。
 ちなみに二人とも、階段の一段目を昇った時点で意識を失った模様。

「こ‥‥この程度でぇぇぇぇぇぇぇ」
 力任せに這いずりあがっていくのはバーク。
 それでも28段目にして意識を失い、その場で停止。
「ふぁ‥‥ファイトォォォォォォォォォォォォォ」
 腹の底から叫びつつ、崩れているバークに手を伸ばすのは、30段目にして身動きが取れなくなった昏倒。
「い‥‥いっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥」
 昏倒の声に身体が反応しないバーク。
 とりあえず二人に合掌。

「それにしても、昨日とは違ってこう‥‥身体の中の力が外に奪われていく感じだな」
 8段目に腰掛けて休んでいるアレーナが、遠ざかっていく意識をどうにか引き止めつつ告げていた。
「そうね。昨日は力を試されていた感じね‥‥今日は‥‥意志の強さかしら?」
 アレーナの横に腰掛けてそう告げているのはレヴェリー。
「そうかもしれませんね。意志の強さ、心の強さを試されているのでしたら‥‥アレは‥‥納得行きません‥‥」
 レヴェリーの二段上、10段目でどうにか立ち止まっているマグナスが、ずっと上をヒョイヒョイと駆け昇っていくアンドリーを指差した。

「あと少しか。いい感じだな」
 ゆっくりと階段を踏みしめつつ上がっていくアンドリーと、その横を無言で昇っていくアイザック。
 現在、この二人以外の殆どの冒険者は身動きが取れなくなっていた。
(階段で基礎である肉体の能力を見ているのだろうか? もしそうであれば‥‥パラディンとなるには、まだまだ修練が足りないという事か‥‥)
 心の中で呟くアイザック。
「お、見えてきた‥‥あれが正門だな‥‥」
 やがて、アイザックとアンドリーの二人の視界に、アジーナ大寺院にむかう正門が見えてきた。


・第一試練:試しの階段通過者
 アンドリー・フィルス
 アイザック・トライスター


──視点を戻そう
「‥‥どういうことかしらね‥‥」
 一段目の階段にすら昇れないエビータと、同じく一段目で意識を失って崩れ落ちた蓮華、同じく二段目にして失神したフィリックスの3人は、階段から降りて石畳に座り込み、何か対策を練りはじめていた。
「試してみるか‥‥」
 フィリックスが階段の前に立ち、意識を脚に集中する。
(体内のオーラを脚に集中‥‥)
 フィリックスはオーラパワーを発動させると、そのまま脚にオーラを蓄えたまま階段を上がりはじめる。
「‥‥いける!!」
 そのまま遅れを取り戻したい所だが、近くで座ってじっとフィリックスを見ていた仲間に一言『オーラだ‥‥』と告げて、駆け足で階段を駆け昇っていった。

「成る程ねぇ‥‥」
「オーラパワーならばっ!!」
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ
 体内を駆け巡る気を足元に凝縮。
 そして今までよりも脚の感覚が世軽くなったのを確認すると、エビータと蓮華もフィリックスの後を追いかけた!!

「な!!」
 突然後方から駆けあがってきたフィリックス、エビータ、そして蓮華の姿を見て、鷹見は絶句。
「悪いな。先に行かせて貰う」
「ということだ、スマンなぁぁぁぁ」
「それじゃあ、おっさきにねー」
 フィリックスと蓮華、エビータはさら速度を上げて会談を駆けあがっていく。
 途中で休んでいる仲間たちを尻目に、さらに速度を上げてついに最上階まで突破!!


・第一試練:試しの階段通過者
 アンドリー・フィルス
 アイザック・トライスター
 フィリックス・トゥルム
 エビータ・ララサバル
 上泉蓮華

──ジャァァァァァァァァァァァァァァァァァアン
 ここで無残にも鐘が鳴り響く。
 いったいいつのまに時間が経過していたのだろう。
 そんな感覚のまま、一行は一次休憩所のある石畳まで強制送還となった。


●そして夜
──アジーナ大寺院
 静かな寺院の中を、5名の冒険者が歩いていく。
「御苦労さまです。大僧正さまがお待ちです‥‥」
 案内の僧侶につれられて、一行はそのまま大寺院中央にある『瞑想の間』へと案内される。
 
 広い空間。
 その中央に、結跏趺坐で『空中静止』しているマカヴァーン・ディアス大僧正が座っている。
「御苦労であった‥‥」
 そう呟きつつ、マカヴァーン大僧正がしずかに立つ。
「貴殿らはパラディンとなる為にこの地を訪れたのか?」
 静かに問い掛けるマカヴァーン。
「俺は‥‥『道』を求めてはるばるインドゥーラにやってきました。そのために、私はこの地に帰依するつもりです」
 丁寧な口調でそう告げるアンドリー。
「道は険しく、様々な試練がまっているであろう‥‥くれぐれも己を過信せずに‥‥」
 アンドリーにそう告げた後、マカヴァーン大僧正はアイザックに向き直す。
「騎士の誇りに掛けて我、アイザック・トライスターは人々を守るため悪と戦い続けることをここに誓う」
 アンドリーのあと、アイザックは一拍おいた後、マカヴァーン・ディアス大僧正にそう告げた。
「うむ。期待している。良い輝きを持つ瞳だ。ただしき道を進みなさい」

「フランク代表の騎士としてやってきた。で、俺は何をすればいい。何をすれば認められる」
 それがフィリックスの記した言葉。
「試練を越えよ。門は狭く果てしない。何をすれば認められるか‥‥それは己で考えてみよ。自ら道を開くのも又試練なり‥‥」
 きつい口調でマカヴァーン大僧正がそう告げる。
「パラディン選定の道が開かれたという事で参りました。大僧正様にお尋ねしたい事があります」
 そのエビータの言葉に、マカヴァーン大僧正は頭を楯に振る。
「今回、新たなるパラディンの選定が行われたのは、如何なる理由でしょうか?」
 実直な問い。
「このインドゥーラの大地の下、モヘンジョ・ダロ遺跡には、古くより『混沌神ラリィミューン』が封じてある。その封印が近年弱まり、かの眷族達がこの大地を侵食しようとしている。その結果、多くの民が傷つき、命を落としていく大惨事が起きつつある。パラディン選定は、彼の混沌神の申し子をこの地より排除・封印する為である‥‥」
 重い口調でそう告げるマカヴァーン大僧正。
「ならば、私もパラディンとなるべく道を歩きたいと思います」
 そのエビータの言葉に肯くマカヴァーン大僧正。

「拙者、ジャパンは上野国、上泉家の三男蓮華と申す。大僧正の御声に応え、聖戦士となるべく馳せ参じた次第」
 威勢良くそう叫ぶ蓮華。
「道は果てなく険しい。それでも進むか?」
 そうマカヴァーン大僧正が蓮華に問い掛けるが、蓮華はソレに対してすっぱりと自分の意見を告げた。
「さっき話にでていた、混沌のなんちゃらっつーのは、アレだろ? 俺の大事な肉野郎どもを屠っちまう、『百害あって一利なし』なヤツらだっつーじゃねぇか。んなヤツぁ、ブッ倒すに限るしな」
 まあ、屈託なく本心を告げる蓮華に、マカヴァーン大僧正は頭を縦に振る。
「それで、頼みがある。パラディンの影衣十兵衛殿と同行したい。俺はインドゥーラに入って日が浅いから、ジャパン語話せるヤツの方が都合がいいし、早くインドゥーラに馴染めるからな」
 と告げる。
「ここに集っている5名については、明日の夕刻、次なる試練の場所を告げよう。蓮華、貴殿の希望は聞いた。善処しておく。以上、下がってよし!!」
 その言葉に、一同頭を下げる。
 そしてそれぞれ、時院内に設けられた宿舎へと連れられていった。


●2月最終日〜果てしなき攻防
──一次休憩所
 ザッ!!
 ゆっくり身体も休めた。
 気力も充実した。
 朝霧の立ちこめる中、ウィルマとレナード、フォン、フェイ、コルネリア、美夕の6名は、疲れた身体を癒し、いよいよ最終喚問へと向かう。

 この階段を昇りきったとき、初めて大寺院の姿が出てくる。
 そこにたどり着くこと。
 それが、彼等の目的である。

・第一次休憩所〜大寺院正門組
 ウィルマ・ハートマン
 レナード・ガーランド
 フォン・ラーマ・ルディア
 フェイ・グリーンウェル
 コルネリア・ブルームハルト
 鳳美夕


──同、頂上山門
 そこには大勢の阿修羅僧やパラディン候補生が集っていた。
 御前中は基礎体術とオーラの訓練、そして午後からは学術講習が行われる。
「戦い方は人それぞれ。貴殿達には今まで培ってきた技術と経験があるだろう。まずはそれらを磨き、さらなる力に昇華する。15日間のここでの訓練の後、5人1チームで実践に加わる。ここのメンバーは仮メンバーとして、阿修羅僧である『ナディール』と共に『バガン遠征』ニ参加してもらう‥‥」
 先日ここまで上り上げた冒険者達もここに集められ、『影衣十兵衛』と名乗るパラディンから直接始動を受けることとなった。
 無事に階段の試練を追えた一同。
 だが、ここからが本当の試練。
 マカヴァーン大僧正大僧正との謁見も追え、いよいよ冒険者は次の関門に挑む。
「チームを組んだら私の所に来てください。そこで貴方たちの進む道を選んで頂きます。任務期間は3月15日から5月31日まで。その間の調査スケジュールは皆さんで組んでください」
 そう告げると、女性パラディンは静かにその場に座る。
「任務中の食糧などは?」
「任務期間中の食糧及び水はこちらで用意します。15日分ずつ準備しておきますので、都度各地のベースキャンプで配給として受け取ってください」
 ということでいよいよ遠征が始まる。
 既に出発したエビータやシャロン、上泉、アンドリー、アイザックも一次帰還し、新たにチームを編成する事になる。

 なお、遠征に選べる場所は以下の通り。
 一つの場所にいくつものチームが向かっても構わない。
(全てモヘンジョ・ダロ遺跡です)

・バガン地下遺跡
・ベナレス東方地下
・ベナレス南方地下
・ベナレス中央地下
・ベナレス北方地下
・アジャンター石窟地下

 様々な思惑の中、修行は始まった。

──To be continue......

今回のクロストーク

No.1:(2007-02-10まで)
 大寺院に向かうまでの山門を越えた所から試練が始まります。大寺院にたどり着けなかった場合どうしますか?