世界の守護たる道
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■クエストシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:‐
難易度:‐
成功報酬:-
参加人数:22人
サポート参加人数:-人
冒険期間:2007年05月01日 〜2007年05月31日
エリア:インドゥーラ国
リプレイ公開日:05月26日20:37
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●リプレイ本文
●悠久と永遠と
──インドゥーラ・ベナレス
静かに大寺院の門をくぐる僧侶。
その手には、一把の木簡が握られていた。
「これはシャリーナ僧正。本日はどのようなご用件で?」
若い僧侶が丁寧に僧侶に問い掛けた。
「星の告げだ。マカヴァーン大僧正の元に案内せい!!」
そう告げられ、若き僧侶は急ぎシャリーナ僧正を大寺院奥の間へと案内した。
──奥の間
静かに瞑想を続けているマカヴァーン大僧正。
その正面に結跏趺坐で座ると、シャリーナ僧正はやっくりと手にした木簡を床に広げ、マカヴァーンに話し掛けた。
「星の位置が微妙に悪しき方角に傾いている。混沌神の力か増大する。来月、そして再来月。覚醒する可能性が増えた‥‥」
そのシャリーナ僧正の言葉に、マカヴァーンも瞳をゆっくりと開く。
「早急に対処する必要があるか‥‥八部衆は二人を欠いているし‥‥12神将にも動いてもらうか‥‥」
インドゥーラ12神将。
八部衆の下に位置する、『アジーナ大寺院専属守護パラディン』。
僧正位の者の勅名でのみ行動し、守りに徹したパラディン達。
「それがいいだろう。それと、どうだ? 今回のパラディン挑戦者は?」
木簡をしまいつつ、シャリーナが問い掛ける。
「今月で、戦いの試練は終える。問題は来月からの試練だな‥‥」
そう告げるマカヴァーンに、シャリーナが溜め息をつく。
「ふぅ‥‥徳の試練か‥‥確か、5年前のパラディンの挑戦のとき、階段の試練と戦いの試練をクリアーしたのは?」
「全部で180名」
肯きつつ、告げるマカヴァーン。
「で、徳の試練をクリアーしたのは?」
「6人だけ」
「試しの試練は?」
「1人だけだったな‥‥」
そののち、沈黙が訪れる。
「‥‥今回、最後まで生き残るのはどれぐらいいるんだ?」
シャリーナの問いに、マカヴァーンがゆっくりと立ち上がりつつ、こう告げた。
「私は全てが生き残って欲しいと常に思っている‥‥」
そして退室。
一人残ったシャリーナも、ゆっくりと立上がるとマカヴァーンの消えた扉に向かってこう呟いた。
「その言い方だと‥‥残っても二人ぐらいか‥‥」
‥‥‥
‥‥
‥
●出会いと
──アジーナ大寺院・別塔
そこは選ばれた者のみが入るのを許された塔。
「‥‥まったく。中に入る事は出来ませんけれど、ちょっとここでまっていてくださいよっ」
一人の阿修羅僧が、ウィルマ・ハートマン(ea8545)にそう告げる。
ウィルマはこのアジーナ大寺院の大僧正であるマカヴァーン・ディアスに謁見を申し込んだ。
幸いなことに、それは許され、ちょうど瞑想をしていた大僧正の元に案内されたのである。
塔の中にある謁見室。
そこでウィルマは大僧正を待った。
──ガチャッ
やがて扉が拓き、二人のパラディンを連れたマカヴァーン大僧正が姿を表わす。
「さて。一体どんな用件かな?」
その場に座ると同時に、マカヴァーン大僧正はそうウィルマに問い掛ける。
「戦況について気になってな。古くからよくある膠着した状態なのか、戦士団の練度が落ちているのか、或いは彼奴らが勢い付くなんらかの要素が働いているのか」
単刀直入にそう問い掛けるウィルマ。
「今は膠着状態から、少し体勢が悪い方向に傾いている。星の流れが悪しき力に傾きつつある」
そのまましばし沈黙する。
「で、それは好転するのか?」
沈黙を破るように、ウィルマが問い掛ける。
「うむ。新しき血、新しき剣。それが星を良き路に導く‥‥」
「新しき血は新たなるパラディン、新しき剣は、封印の剣『神殺剣カリバーン』っていうところか」
「察しが良いな。新しきパラディンは『戦いの試練』。そして新たなる剣は『霊峰ヒマラヤ』の刀匠の元で‥‥あとは時期を待つ‥‥」
その言葉に肯くウィルマ。
「それが判ればいい‥‥」
そう告げて、ウィルマは頭を下げてその場から外に出た。
●書庫で戦う
──アジーナ大寺院・書庫
「‥‥」
大量の石版や年度版、木簡竹簡を広げて、フォン・ラーマ・ルディア(ec0226)はなにやら調べ物の真っ最中。
「6つ腕の神‥‥阿修羅がそれであるけれど‥‥形状が違うし‥‥」
アジャンター石窟で出会った6つ腕の神像。
それが何であったか。
「古い魔王群‥‥と、こっちの‥‥」
あちこちの資料を引っかき回しつつ、なんとか見付け出した古い竹簡。
「ああ‥‥えーっと‥‥古き民の信ずる神々‥‥ディーヴァ神族と、その神の妃で‥‥え?」
ふと目にした書に記されている記述。
そこには、例の6つ腕の神の名前が記されていた。
『破壊と殺戮の女神・シヴァの神妃カーリィ・ヴィーナ』
「‥‥アジャンター石窟に封じられているのは古代ディーヴァの神々‥‥その長たるものがシヴァ・マハ=カーラ、アスラと‥‥ふむふむ、ディーヴァでは、阿修羅は破壊神になっている。インドゥーラの神話って、面白い」
様々な神話を見ていると時間が足りなくなってくる。
とりあえず、アジャンターに封じられているものたちについての資料を纏め、フォンは皆のもとに一度戻っていった。
●護られた少女
──インドゥーラ‥‥とある村
そこは小さな村。
先日救出した少女とその兄を連れて、一行は村までっやってきていた。
幸いな事に、少女のいた村は遺跡入り口からはそれほど遠くはない。
2日もあるけば、十分たどり着く事が出来た。
「おお。無事にもどったか‥‥」
そう告げつつ、一人の老人が少女達の元にやってくる。
そしてその背後から、少女達の両親がかけより、二人を抱しめた。
「どうしてこんなことを‥‥あれほど、あそこに近寄っては駄目といったのに‥‥」
よほど心配だったのであろう。
母親は二人に諭すようにそう告げると、そっと抱しめる。
そして父親は、その場にいたヒースクリフ・ムーア(ea0286)に頭を下げる。
「子供達がご迷惑を御掛けして‥‥」
「ああ、それについては大丈夫だ。こっちも皆生き残っている。それよりも聞かせて欲しい。どうして子供達があの中に入ってきたのか?」
「もしよろしければ。必要であれば、私達も力をお貸しできるかもしれませんわ」
レヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)がそう父親らに告げると、しばらくして長老が皆にこう告げた。
「ここでは‥‥とりあえず私の家へどうぞ‥‥」
──そして長老の家
小さく質素な作り。
その家の中央にある居間で、一行は長老から話を聞いていた。
「全ての始まりは、地上に現われた石碑からなのですじゃ‥‥」
そう告げると、長老は瞳を閉じ、なみだを流す。
「ここから少し差き、森の奥に『黒曜の石碑』姿をあらわしてのう。それ依頼、森の中を奇妙な獣が徘徊しているのぢゃよ」
「奇妙な‥‥それは琥珀色の獅子では?」
鳳美夕(ec0583)がそう問い掛けると、長老は静かに肯いた。
「うむ。その獅子は生きる者、とくに人間を無差別に襲って‥‥その口から吐き出される息は、命を石化させる力を持つ‥‥ワシの息子達、この村を護っていた青年達は、次々とその息にょって‥‥」
そして沈黙。
「だから、ぼく達は洞窟の奥に咲いている花をとりにいったんだ!!」
「どんな病気もまたたくまに治すって言う、神秘の霊花『アンブロディア』を捜しに」
そう告げると、少女達はその場に座る。
「でも、二人じゃ危ないですよ‥‥もうあんな無茶したら駄目ですから!!」
シアン・アズベルト(ea3438)が子供達を諭す。
それに肯くと、子供達はしばらく沈黙。
「まあ、無事だったのがなによりだが。一つ教えて欲しいんだ。あの琥珀獅子に捕まってから、ずっとどうやって生き延びていたんですか?」
そのシアンの問いに、少女は胸許に下げられているお守りを取り出して見せる。
「これが護ってくれたの‥‥」
それは小さな石。
淡く青く輝くその石からは、なにか魔力を感じさせていた。
「なにか魔法の力を付与しているんだな。ずっとなにも食べなくて平気だったのも、その力なのか?」
シャロン・オブライエン(ec0713)のその問いに、少女は静かに肯く。
「お爺さんのお守り。あたしがずっと小さかったころに、もうずっとおじいちゃんだったの。その人がくれたお守り」
そう告げたあとで、長老が言葉を続ける。
「それは古き民の『剛剣士ル・フー』殿から受け取った守りの石ぢゃよ‥‥それを作る術はとうに失われていたが、ル殿は時折我々の目を盗んで地下に下りていく子供達を護っていてくれたのぢゃ」
「その剛剣士ルさんは、今はどちらにいるんだ?」
レヴェリーが問い掛けるが、長老は頭を左右に振る。
「わからぬ。ル殿は剛剣士でもあり、刀鍛冶でもある。また何処かの地で剣を打っているのかもしれぬ‥‥」
そう告げつつ、長老は霊峰ヒマラヤを見る。
そして言葉はそこで止まった。
とりあえず一行は、そのまま子供達と別れ、元々いたベースキャンプへと戻っていった。
●アジャンター石窟
──古より来たるものたち
「うっわー」
廃墟。
元々はアジャンター石窟の入り口であった場所。
今はもう、外観が『なにものかによって』破壊され、内部に入る事もかなわない。
「まったく。一体何者が、これをこんなにしちゃったんでしょうか?」
レナード・ガーランド(ec0215)がそう告げつつ、瓦礫の撤去作業を開始する。
「まったくよ。これから調査を始めようってときに、こんなになってしまったのは。明らかに何かが『後ろ』で暗躍している証拠ですね」
フェイ・グリーンウェル(ec0238)も同じく瓦礫の撤去作業を開始。
「だが、どうやら崩れているのは入り口付近だけのようだな‥‥ここから風の流れる感じがする。もう少しというところだろう」
フィリックス・トゥルム(ec0139)が大きな瓦礫を撤去しつつ、道を広げはじめた。
そしてコルネリア・ブルームハルト(ec0260)は、それらの瓦礫を横に纏めつつも、周囲に危険がないか気を配っている。
「‥‥今、ここを襲われたらひとたまりも‥‥」
──すっ
と、コルネリアがそこまで告げたとき、何者かが彼女の視界を横切った。
透き通った人間。
聡明に見えた男性。
「?」
慌てて周囲を確認するが、どこにもそれらしい人は見つからない。
「‥‥敵襲!!」
皆に注意を促す為、コルネリアは叫ぶ。
と、作業をしていた仲間たちが慌てて抜刀し、周囲を確認した。
「コルネリア!! 敵は?」
フィリックスの叫びにコルネリアが周囲を確認。
「さっき、すぐ目の前を‥‥」
だが、周囲にはなにも存在しない。
「なにもいないよー」
キョロキョロと見渡すフォン。
だが、何も感じない。
「そんな‥‥さっき確かに‥‥」
そう説明するコルネリアに、フェイはとりあえず周囲を警戒しつつ、作業をすることを皆に提案し、作業を続けた。
そして翌日の夕方、入り口の撤去作業は終了用し、いよいよ内部潜入が開始されることとナった。
●古きものの集いし舘
──南方遺跡群
ガサガサツ‥‥
古き舘より少し離れた森。
そこに今後のベースキャンプを設置するルミリア・ザナックス(ea5298)。
今回の目的は、この古き舘の調査。
その為にも、1度ベースキャンプを設置して、腰を据えての調査が必要となったらしい。
「どうだ?」
バーク・ダンロック(ea7871)が、周囲で作業している仲間にそう問い掛ける。
「ベースはOK。ここから見える限り、建物の内部に誰かがはいっていった形跡は今の所かんじられない‥‥」
アレーナ・オレアリス(eb3532)がそう告げて、とりあえず作業を止める。
「こっちもOKですよ。昏倒さん、そっちはどうですか?」
三笠明信(ea1628)が、馬を止める為の場所を作っていた昏倒勇花(ea9275)にそう問い掛ける。
「馬の設置場所も完成。さて、どうするのかしら?」
そう呟きつつ、昏倒も完成したばかりのベースキャンプに戻ってくる。
「正面からいくしかないだろう」
そのルミリアの言葉に、一同は静かに肯く。
「では‥‥」
そのままアレーナが正面扉前に立ち、ドアを叩く。
──ドンドン
「失礼する。何方かいらっしゃらないか?」
礼節を欠いてはいかぬと、アレーナがそう叫ぶ。
その後方では、ルミリアや三笠、昏倒、バークがいつでも抜刀できるよう準備を取る。
──シーーーン
そのまま扉に耳を付けて、音を聞きとる昏倒。
「足音なし‥‥人の呼吸音なし‥‥」
そう呟いて後方に合図を贈ると、昏倒は素早く扉から離れた!!
──ドッゴォォォォォォッ
そして入れ違いにルミリアが扉に向かってバーストアタックを叩き込み、一撃で扉を粉砕した。
そしてさらにバークと三笠が飛込み、左右に向かって構えを取る。
「‥‥静かすぎますね」
「ああ。そして異様なかんじだ」
三笠はそのまま武器を降ろす。
バークは近くの調度品や床を見る。
「人がすんでいる気配があるか‥‥」
見ると、どこにも埃一つなく、塵も積もっていない。
「何方かいらっしゃいませんかーーーーーーーーーーーっ!!」
アレーナが再度叫ぶ。
が、その時。
──ドシューーーーーーーーーーーーーーーーッ
突然アレーナの首筋から血が吹き出す!!
「何っ!!」
咄嗟に後方に飛び、左手で首筋を押さえ、血が吹き出すのを止めようとするアレーナ。
そして入れ違いにルミリアと三笠が師優位を見渡す。
だが、どこにもなにも感じない。
「‥‥何処だ!! 出てこい!!」
そう叫ぶが、何も反応がない‥‥。
そして
──ブチブチブチブチっ!!
ものすごい力で、三笠の右腕が引きちぎられた!!
「ぐあっ!!」
咄嗟に腕を庇い、右腕で千切られた腕を拾い上げる三笠。
失ってしまわなければ、阿修羅僧のナラミルヴァが繋いでくれる。
すでに居間、アレーナの首に手ををかざして、その出血を止めている所である。
「三笠殿っ。どこだ、ででこい!!」
ブンブンと剣を振る昏倒。
だが、手応えはどこにもない。
「‥‥1度引く!! 殿は引き受けた!!」
バークの叫びに、一行は1度後方に下がる。
そして、扉のない入り口から外に飛び出すと、1度ベースキャンプに戻っていった。
●伝承の部族
──ビュー族の村
調査を始める前に、一同はこのバガンを守護するというビュー族の村を訪れていた。
ちなみにアンドリーはアジーナ大寺院でビュー族についての情報を探していたが結局目新しいものは見つからなかった。
そもそもビュー族が現在この地にどれだけ残っているのか、それらについての情報もない。
「‥‥はじめまして。パラディンに鳴る為の試練を受けている冒険者のアンドリー・フィルスという。色々と話を聞かせて欲しい」
そう丁寧に頭を下げているのはアンドリー・フィルス(ec0129)。
その後ろにはマグナス・ダイモス(ec0128)、アイザック・トライスター(ec0141)、エビータ・ララサバル(ec0202)が待機している。
「こんななにもない土地にようこそ。ささ、立ち話もなんですから、入りなさい」
そう告げられて、一行はビュー族長老の家に案内された。
「さて、本日はどのようなご用件で?」
チャイと呼ばれる飲み物を差し出しながら、長老はそう一行に問い掛ける。
「この国の古い歴史を教えて欲しい‥‥」
そう告げるアンドリー。
「さて‥‥この私はそれほどこのインドゥーラに詳しくはありませんよ‥‥それに、古い歴史といっても色々とあります。何を知りたいのですか?」
「なら‥‥我々の歴史から消えていった真実というのは‥‥」
何かを期待してそう告げるアンドリー。
「真実‥‥消えていった真実ねぇ‥‥」
しばし考え込む長老。
「それもありませんね‥‥全ては真実。伝えられし伝承は、それが正しいと信じられて伝えられた者であり、私達がそれらの『真の姿』というのを知っているとは思えません。もっとも、私達は私達に伝えられた伝承を信じているし、皆さんの元につたえられた伝承は知りません。比較のしようがないのです‥‥」
そう告げられたてから、一同は沈黙。
「あの‥‥皆さんはこのバガンの守護を行なっているのですよね?」
エビータがそう問い掛ける。
「ええ。そうですよ。私達ビュー族は、このバガンの蓋を閉じる役目を受けています」
「では、それは一体どういうものなのでしょうか? 阿修羅神の加護によるものなのですか?」
「それもあります。まあ、私達には、私達に伝わる流派というのが存在します。我々ビュー族の血にのみ連なるわざというものが‥‥」
そう告げたとき、アイザックがなにかにきがつく。
「その技は、混沌の申し子と戦う力でもあるのか?」
「ええ。ですが、私達の技は、『封じ』の力が主体ですので」
そう告げて、長老はすっと立上がる。
「こちらへどうぞ‥‥」
そのまま外に出ると、一人の青年が一同の前に出てくる。
「クルス、『魔封じの6』を見せてあげなさい」
そう告げられて、青年は静かに頭を左右に振ると、ゆっくりと印を組み韻を紡ぐ。
──キィィィィィィィィィィィィィィィン
やがてもう一人の青年が印の手前に剣を放り投げたとき、その剣は空中に固定された。
「これが封じの6。対象をその場に固定します」
スッと印を解くと、剣は血からなく大地に落ちる。
「そ、その技を教えてくれませんか?」
そう頼み込むアンドリーだが。
「これは教えられません‥‥すいませんですじゃ」
と断わられたようである。
──バガン地下、アンドリー達とは別エリア
「ハアハアハアハアハアハアハアハア‥‥」
肩で息を切らせつつ、上泉蓮華(ec0178)が武器を構えていた。
その前方では、阿修羅僧のニルヴァと八部衆の影衣十兵衛、そしてパラディンのマイティが血を流しつつ構えていた。
「クスッ‥‥ここから先は進ませないわん!!」
そう微笑みつつ、目の前の女性は素早く魔法を発動させた!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォオオ‥‥
爆炎の炎が影衣達を襲う。
だが、その炎はマイティの魔法によって中和された‥‥。
バガンを調査していた影衣とマイティ、ニルヴァの3名にくっついて、今月も蓮華は遺跡調査を行なっていた。
だが、その奥で一行は黒曜の石碑を発見、すぐさま封印を開始するニルヴァを嘲笑うように、突然石碑が吹き飛んだ!!
その中から、全身を鱗に覆われた女性が姿を表わし、いきなり全員に向かって爆炎龍・改の魔法を叩き込んできたのだ。
「‥‥参った‥‥覚醒済み石碑か‥‥」
マイティが傷を塞ぎ、剣を構える。
「覚醒済み‥‥なんだ?」
咄嗟に蓮華はニルヴァに問い掛ける。
「覚醒済み石碑。黒曜の石碑の中でも、シヴァによって覚醒された石碑のことだ。内部に封印されていた申し子が『本来の力』を取り戻して解放されたっていうこと‥‥蓮華、判ったら逃げろ!!」
ニルヴァの叫び。
だが、蓮華は剣を構える。
「へへへ‥‥そんな言葉で俺が下がるとでも?」
オーラを高めつつ、そう笑う蓮華。
そして影衣とマイティが女性と戦い、蓮華とニルヴァが後方で援護するというシフトになった。
一方的な戦い。
女性の攻撃は影衣とマイティを確実に蝕んでいく。
「ぐっ‥‥こんな馬鹿な‥‥この攻撃は‥‥」
立ち上がりつつ、影衣がそう吐き捨てる。
「まだ生きていたのねん。じゃあ、そろそろこっちも『本気』でいかせてもらうわん☆」
そう告げた瞬間、女性の姿が変形する。
脚は一つとなり巨大な胴となる。
そして伸びつつも太くなり、巨大な竜の胴を生み出す。
上半身は鱗に覆われ、その手は鋭く、頑丈な刃を形成する。
──シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
口から吐き出される言葉は何かを威嚇するように。
「馬鹿な‥‥八大龍王‥‥ナーガラージャだと‥‥」
マイティがガクガクと震えつつそう呟く。
そして、その光景に、蓮華の全身は恐怖に凍りつき、身動きが取れない!!
「いかにも。愚かなる人よ。その身を紅蓮の炎に焦がすがよい!!」
そう呟くと、ナーガラージャはマイティに向かって紅蓮の炎を吐く!!
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
その炎の中で、マイティはシャクティ・マンダラによって生み出された結界の中で身を間もっていた。
──ビシッ!!
と、突然その結界に亀裂が走る!!
「駄目だマイティ!! ウシャシスで中和を!!」
影衣がそう叫び筒ねナーガラージャに向かって剣を叩き込む。
だが、その分厚い皮膚を貫く事は出来ない。
──バキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
そして炎の熱に耐えきれず、結界が破壊された。
「うぁ‥‥」
それがマイティの残した最後の言葉。
マイティの身を包んだ紅蓮の炎は、瞬時にマイティを消し炭にした‥‥。
「ニルヴァ!! 蓮華を連れて逃げろ!!」
そう叫ぶと、影衣は素早く印を組み韻を紡ぐ。
「影井殿、それは危険です!!」
そう叫ぶニルヴァ。
だが、影衣は詠唱を続ける。
「なんだ‥‥どういうことだ!!」
そう吐き捨てる蓮華の手を引き、ニルヴァがその場から離れる!!
「待て、影衣を見捨てるのか!! そんなことできねぇ!!」
──パシィィィィッ
ニルヴァの手をはじき、蓮華は剣を構えて走り出す‥‥。
●阿修羅への道
──月末・アジーナ大寺院
広い空間。
中央にマカヴァーン大僧正が結跏趺坐で座っている。
その周囲を、大勢のパラティンと阿修羅僧が取巻き、一心不乱に祈りを続けている。
そして中央正面。
一人の冒険者が座っていた。
「偉大なる神、我等が阿修羅よ‥‥彼の者に、聖戦士パラディンとなる道を進む事を、お許しください‥‥汝、いまこの時よりインドゥーラの民となり、阿修羅の教えを守ことを誓うか‥‥」
マカヴァーン大僧正の言葉に、座っていた男は肯く。
その刹那、全身が灼熱の炎によって焼かれた。
熱い。
だが、それは皮膚を焼く熱さではない。
男の魂が焼かれている。
そして男はその試練を声、新たなる路『パラディン候補生』となった‥‥。
阿修羅の使徒となるべく、全ての戦いを納めるべく。
そして女性の候補生は別室に集められ、今後は以下の戒律を護るようにと告げられた。
・仮面の着用
・パラディンとなるまで、若しくはなってからの婚姻の禁止
・宝石を身につけること
●書記官の追記
今月、この刻のパラディン候補生となった冒険者は、以下の通り。
・鷹見 仁
・ヒースクリフ・ムーア
・三笠 明信
・シアン・アズベルト
・ルミリア・ザナックス
・バーク・ダンロック
・昏倒 勇花
・レヴェリー・レイ・ルナクロス
・マグナス・ダイモス
・アンドリー・フィルス
・フィリックス・トゥルム
・アイザック・トライスター
・エビータ・ララサバル
・レナード・ガーランド
・フェイ・グリーンウェル
・鳳 美夕
・シャロン・オブライエン
そして、パラディン候補生となった者たちに、次の試練が言い渡された。
「汝、この時より阿修羅の示す戦い以外の争いを忘れよ。新たなる地に向かい、『慈悲と献身』を身につけよ」
その大僧正の言葉の後、一行に一人のパラディンが説明を始めた。
「えーっと、来月から3ヶ月間、皆さんは遠征地にて『慈悲と献身』を身につけてもらいます。方法は自由、貴方たちの思いつくままに。今回も5名で一つのチームで、それに阿修羅僧が一人同行します。フォンさんもこれには同行して、貴方自信も『慈悲と献身』を身につけてください‥‥」
遠征地一覧
・デリー(海路片道9日)
古き町。貴族達による支配された土地。
──起こっている主な出来事
「さて。今宵の宴はどのような催しで愉しませてくれる?」
「はっ‥‥奴隷道士の戦いを‥‥拳奴として生きの良いものが数名‥‥」
静かな食事の席。
この地方を治めるマハラジャ(領主)、アーガーハーンは、副官にそう告げた。
と、副官もいつものことと理解しているのか、数名の子供達をアーガーハーンの前に見せる。
綺麗に着飾った子供達。
だが、其の手には手械が、脚には鎖つき鉄球が繋がっていた。
「よい。今宵の宴にいいだろう。子供達よ、戦え。そして『生き残った』ものには、自由と金をやろう‥‥」
このアーガーハーンの言葉で、おどおどしていた子供達の瞳が、精気溢れるようになった。
「明日からしばらくはこれを続けよ。それと、大至急カター・サリット・サーガラを探せ‥‥」
そう告げられて、副官は退室した‥‥。
・パトナ(海路片道2日)
ベナレスの流れに身を寄せる緑の町
──起こっているできごと
ここ最近。
パトナ沿岸のガンガー(ガンジス川)に魔物が住み着いていた。
その魔物は夜中に陸地に上がり、畑や果樹、はては家畜を貪り食らうという悪行を行なっていた。
そしてつい最近。
畑の警護をしていた村人が襲われ、喰われるという事態がおこった‥‥。
パトナでは、夜中には家から出るなというお振れが出たが、昼間、母成るガンガーで沐浴をしている時に魔物に襲われたら危険ゆえ、昼間でさえガンガーに近付く人たちはいない。
母成る川にて沐浴を行なえないという苦痛は、村の人たちから活気を奪っていった‥‥。
・アドラス(海路片道14日)
インドゥーラ南部の町、経済・文化の中心地
──起こっている出来事
アドラスには多くの商人が集っている。
それゆえ、経済か゛活性化し、諸外国から訪れる人々も多い。
人がああ苦集っていると、当然様々な事件も起こっている。
宗教の違い、文化の違い。
挨拶や日常的なことでさえ、すぐに揉め事になってしまう。
ここ最近は、この地を訪れる観光客と古くからこの地に住んでいる使用人との間でいざかいが耐えないらしい‥‥。
・ラホール(海路片道9日日+陸路片道16日)
ヒマラヤ山脈西方の町
──起こっているできごと
この付近は宝石の産地。
この地で採掘される宝石は、インドゥーラ全域はおろか、諸外国にまで輸出されているという。
また、最近は鉱山資源についても確認され、噂では『ブラン鉱脈』が発見されたとかで、ラホールでは採掘ラッシュが始まっていた。
危険を省みず鉱山を掘り進む人々。
それゆえ、事故も頻繁に起こっていた。
そして、あの日の事件。
掘削している最中に『古きものの遺跡』にぶちあたり、封印されていた魔物がラホールに押し寄せてきてからは、街全てがゴーストタウンのように活気を失っていたという‥‥。
──To be continue.....
今回のクロストーク
No.1:(2007-05-07まで)
全てのパラディンを目指す者に問う!!
新たなる路『パラディン候補生』としての祝福を受けるか?