世界の守護たる道

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:22人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年08月01日
 〜2007年08月31日


エリア:インドゥーラ国

リプレイ公開日:08月31日04:15

●リプレイ本文

●真実を知る
──アジーナ大寺院
 瞑想の間。
 そので雄心と結跏趺坐のまま瞑想を続けているマカヴァーン大僧正。
 そして、その正面で、同じく結跏趺坐で座り、じせっとマカヴァーン大僧正を見ているのはウィルマ・ハートマン(ea8545)。
 今までの調査、そして実地見分。
 それらの中から、彼自身が導き出した幾つかの仮説。
 そして自分の見たビジョン、それらを全てマカヴァーン大僧正にぶちまけてのち、ウィルマはこう問い掛けた。
「で、件の新しき者たちは、徳とやらを上納分まで積めそうなのか?」
 沈黙。
 そしてマカヴァーン大僧正はゆっくりと瞳を開ける。
「徳の上納とは‥‥面白い事を。彼等がパラディンとなる為の徳、それはこの結界の再構成とは関係無い。今、我等が為すべき事は混沌の申し子の排除、モヘンジョ・ダロの結界の再構成。そしてパラディン候補生達は、これから世界を救うべく戦士となる為の試練をうけているだけに過ぎぬ‥‥」
 そう告げるマカヴァーン大僧正。
「ふぅん。詰まる所、我欲の深い冒険者がだな。いやいやそれ自体は悪いことではないが、そういう商売をやってきた者が、宗旨替えを実際にできるものかと思ってな」
「それは判らぬな。ただ、本気でパラディンとなる為ならば、己が真実を貫く為ならば、それは難しい事ではない。冒険者の全てが我欲深きものではない。純粋な意志をもつ者もまた存在する。そしてその力をもつ者を、阿修羅は見ている‥‥」
 その言葉に、ウィルマはとりあえず満足し、その場を後にした‥‥。



●第三の試練を越えて
──アジーナ大寺院
「‥‥」
 瞑想の間で瞑想を続けているのはマカヴァーン・ディアス大僧正。
 その周囲には八部衆の二人と、4人のパラディンが待機している。
「‥‥ほう‥‥」
 眉尻をピクリと動かし、マカヴァーン大僧正がそう呟く。
「み、見えたのか?」
「大僧正、パラディン候補生から、新たなるパラディンとしての道に進める者が出たのですか?」
 そう問い掛ける二人の八部衆。
 と、マカヴァーン大僧正は静かに頭を左右に振ると、手元にある木簡に何かを記す。
「道を進み、その背後に阿修羅の加護が見えはじめたのは2名‥‥」
 そう告げて、マカヴァーン大僧正は木簡に2名の名前を書き記すと、それらを他のパラディンに差し渡す。
 そして名が記された木簡は、更なる奥の間に安置された。
「先の2名には第4の試練ではなく、試しの試練を。担当は‥‥」
 その担当官の名前が告げられたとき、八部衆の二人は、背筋に冷たい何かが流れていくのを感じ取った。



●ラホール〜真実の瞳
──ラホール
 パラディン候補生達によって開放されたラホール。
 混沌の申し子達ももう町の中を徘徊しておらず、それらの元凶となった鉱山の坑道は完全に監視されている。
「‥‥ここにまだ何かがあると思うが‥‥」
 鷹見仁(ea0204)は坑道入り口で集っていた仲間たちにそう告げる。
「わしとしては、ここはこれ以上調べる必要がないと思うが‥‥」
 そう渋い顔をしつつ、バーク・ダンロック(ea7871)が呟く。
「それはまた、どうしてだ?」
「もし調査したとして、その結果今まで以上の魔物がこの奥に潜んでいた場合の事を考えてみよ。折角復興しはじめたこの街を、再び魔物が襲うのぢゃぞ? 今ここにいる住民達にさらなる被害が出る事を考えると‥‥」
 そう告げるバーク。
 確かにその可能性は高い。
 だが、全くなにもしないままというのも、鷹見にとっては歯痒いのであろう。
「確かに、バークさんのおっしゃる事も判りますが‥‥」
 シアン・アズベルト(ea3438)が、そう話を始める。
「ですが、まだ本当の意味で安全を確認できている訳ではありません。ここを封印するにしても、もう一度詳しい調査が必要であると私は思います」
「ということは、シアンはここの調査をしたほうがいいと?」
 バークの問い掛けに、シアンはニコリと笑いつつ肯く。
「うーーーむ‥‥」
 腕を組んで考えるバークであった。

──復興作戦
「よーーしっ。次はこっちの建物だ!!」
「了解。中の掃除は終っているから、外回りの補強ね‥‥」
 アンドリー・フィルス(ec0129)とレヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)の二人は、町の中を駆け回って復興作業を行なっていた。
 今回の一見で、大勢の人たちが変える家も失っている。
 そんな人たちの為に、損傷の少ない建物を修理して回っていたのである。
 ちなみにレヴェリーは、自腹で120Gを街の復興にと阿修羅僧に手渡したのであるが、それは丁寧に断わられた。
 もしここでそれを受け取ったら、別の所での復興の際にも、レヴェリーは自腹を切る事があるかもしれない。
 それは自分自身が生きていく糧を失ってまで‥‥ということにもなりかねない。
 120Gではなく、ソノ分を自らの労働奉仕でという事で、話は纏まったらしい。
 また、アジーナ大寺院からの復興資金も届けられた為、まずはこのまま復興を続けることとなった。
 年の内部に避難所を作り、またなにかあったときにそこで凌げるようにというアンドリーの意見から、街のあちこちにそれらを設置。
 鉱山区画と都市区画の間に防壁を作り、そこでも魔者たちを止めることができるようにという案も成立。
 それらの作業が急ピッチで進むと、アンドリーも鉱山区画へと戻っていった。
 
──そして再び鉱山区画
「こっちの御善立ちは整っている。あとは安心して調査に専念してくれ」
 暗黒の空間に向かう準備をしていたシアンとアンドリーにそう話し掛けているのは、アイザック・トライスター(ec0141)。
「ああ。万が一の刻は頼む」
「どうやらこの空間は、完全に光を遮断しているようですから‥‥何かあってもおかしくアリませんから」
 そう告げるアンドリーとシアン。
 シアンは、この暗黒空間に様々な方法で光を注いでいた。
 ランタン、魔法による光、はては、太陽光を鏡によって屈折して直接自然の光を送り込む。
 さらには自身のオーラ魔法の発動光での実験。
 それらの全てが完全に吸収され、空間を光によって照らす事は出来なかった。
「となると、やっぱりこれか‥‥」
 アンドリーとシアンは、長いロープを準備し、そを命綱として身体に縛り付けると、その端を残っているアイザックと鷹見に手渡す。
「もし何かあったら、あとは頼む」
「そのときは、急いでここを封印してください‥‥」
 そう告げて、アンドリーとシアンは暗黒空間に飛びこんでいった‥‥。



●命と名誉と
──デリー
 その少年は輝いていた。
 先月の武道大会での優勝、そしてカーストアウトし、『シュードラ』の地位を得る事が出来た。
 まだカーストの中では最下層ではあるものの、少年は今までにない『許された身分』の中で、命を実感していた。
「‥‥ふぅん。優勝した少年は無事だったみたいねぇ‥‥」
 少年をずっと護衛していたマグナス・ダイモス(ec0128)とフェイ・グリーンウェル(ec0238)は、少年を見守りつつもそう呟いているルミリア・ザナックス(ea5298)にこう返答を返していた。
「全く、何事もなく平穏でした。カーストアウトから戻ったとはいえ、また以前のように心無い仕打ちをうけているのではということも考えたのですが‥‥」
 そう告げるマグナスに続いて、フェイがこう続ける。
「洗礼を受けてから、誰も少年を虐める者はいません。むしろ、カーストの中の仲間として認められているようなんです。少年を虐めていた人たちも、彼を許し、また、少年も今までの仕打ちを許し、普通に生活しているのですよ‥‥」
 その二人の言葉に、ルミリアは頭を捻っていた。
「カーストインさえ出来たら、その身分は保障される‥‥うーーーーん」
 まだしばし長考。

──一方
 埃の積もった隠し通路。
 その中を、アレーナ・オレアリス(eb3532)は進んでいた。
 藩王の居城。
 その地図を広げて、一つ一つを埋めていった結果、古い水路からの隠し通路をアレーナは発見。
 そこを辿って、藩王の居城に忍び込んでいた。
『どうしても腑に落ちないのよね‥‥』
 そう心の中で呟きつつ、アレーナは隠し通路から城内に出る。
 そこは古い地下区画。
 積もっている埃から、そこは今は使われていない事を示している。
『地下施設‥‥けれど、ここは今は使われていない‥‥』
 ゆっくりと周囲に意識を集中しつつ、アレーナは地下を歩く。
 そしてその奥に在る扉にたどり着いたとき、アレーナは扉の向うから聞こえてくる嘆きの声を耳にした‥‥。
『誰か人がいる‥‥この声は‥‥聞いた事のある声‥‥』
 扉に耳を当てて、その向うの声の主を探るアレーナ。
 そしてその声の主が、藩王アーガーハーンのものであることを確認すると、じっとその声の内容を聞取っていた。

 それは、魂の鎮魂歌。
 無念の中に散っていった子供達に捧げる贖罪の歌。
 藩王自らが、死んでいった子供達に許しを乞うていた。

『‥‥どうして‥‥藩王は自分の行った罪を認めているというのか?』
 アレーナの脳裏をよぎる疑問。
 アレーナの中での藩王は悪である。
 
 宗教が認めなければ、それは人ではない。
 法が認めなければ、それは人ではない。

 ローマ至上主義を嫌うアレーナには、この国のカーストすらおかしい。
 人として生きている、命があるのならば全ては平等である。
 だが、カースト、そして神聖ローマはそれを許さない。
 それらの法のもとで生きている藩王は、アレーナにとっては許す事の出来ない存在であった。
 その藩王が、人知れない地下で子供達の為に嘆いている。
 その真実が、アレーナに動揺を生み出していた。

──一方・ルミリアはというと
 二人の報告をうけた後、ルミリアは単独であることを調査していた。
 それは『静かなる錫杖』の存在。
 この街に在る古い建物や、古きを汁老人達に、色々と話を伺っていた。
 そして聞き出した幾つかの真実。

・静かなる錫杖は、無念の中で死んでいった魂を静める
・先代藩王は、自らの行った罪を償う為に、その錫杖を使ったが、その後に死去。杖は行方不明となる
・今の藩王は、先代藩王の死去した後に選ばれた者である
・藩王アーガーハーンには、大切な妻がいたが、その妻をカーストアウトによって嬲られ、その時の怪我による病によって妻は死去した。
・その妻の遺言を、藩王は今でも護っているらしい‥‥

 その遺言が何であるのかは、藩王以外は誰も知らない。
 そして藩王は、各地の冒険者達に『静かなる錫杖』を探すように命じていた。
「その錫杖を、死んでいった妻の魂を癒す為なのカ、それとも別のことに使うのか‥‥いずれにしても、真実を知るのは藩王のみか‥‥」
 ルミリアは、そこで全てを知る事を止めた。
 それ以上は、藩王の心を踏みにじる行為になりそうな感じがしたから。

──そして
 ルミリア、アレーナ、フェイ、そしてマグナスは、それぞれの得た情報を交換した。
 ウェイとマグナスは、今月の武道大会の後、今月の優勝者が教われるという事件に立ち会い、その犯人を追い詰める事が出来た。
 先々月、そして今月の優勝者の少年を襲ったのは、『カースト』の中でも上位の身分を持つ戦士。
 その目的は、優勝した少年のが手にした賞金が目当ての犯行。
 先月の少年はフェイ達がガードしていた為、手を出す事が出来なかったようである。
 今月は、フェイ達がガードしていないであろう今月の優勝者を襲ったのだが、残念ながら今月の優勝者もフェイ達が別々にガードしていた為、今回のような結果となってしまったらしい。
「まあ、これで洗礼をうけた子供達が襲われるという事件は減るじゃろう」
「子供を殺した戦士は寺院での裁きをうける事になりましたし‥‥あとは、藩王の真実です」
 そう告げる二人に、ルミリアも自分の調べた事を説明した。
「‥‥という訳。残念だが、藩王の心の中までは、我が輩は見とおすことは出来ぬ‥‥けれど、直感だが、藩王は『悪ではない』」
 そうキッパリと言い切るルミリアに、アレーナも頭を縦に振ると、静かに話を始めた‥‥。



●冒険者街というかんじの外国人街
──アドラス
 さて、今現在何が起こっているのか説明しましょう。

──キン‥‥バキッ!!
 とある船の甲板で、三笠明信(ea1628)が船員と大立ち回りをしでかしている模様です。
 藩王からの許可を得、査察許可を受け取った三笠が行なっていたのは件の外国船の入港に対しての査察、そしてこの国からは持ち出し禁止の貴重な資源と魔法かなにかによって眠らされ、箱に詰められた少女達が発見されたのである。
 当然、その場に居合わせたのは三笠だけではない。
 今回の件で協力要請したパラディン、そして三笠と共にその場に居合わせたフィリックス・トゥルム(ec0139)である。
「全く。正体が知られた以上は、口封じに殺す‥‥か。雑魚のやる事だな」
 そう呟きつつ、フィリックスは素早くカタールを構えて敵の中に飛込んでいく。
 その横では、三笠が小太刀で次々と船員をノックアウト。
 殺さないように細心の注意を払いつつ、どうにかフィリックスと三笠、そしてパラディンで件の外国商船を制圧した。
 
──その頃の外国人街
 緩衝地帯については、色々な問題点があった。
 中でも、それらを監視・管理する存在が必要であること。
 それには、このアドラスで、外国人やアドラス市民からも信頼の厚い者が必要という事になり、ヒースクリフ・ムーア(ea0286)は尤もその存在に近いであろう『外国人酒場』の出資者と接触に成功した。
「出資者って‥‥あんたか?」
「アンタとは失礼だな‥‥」
 『エチゴヤ』という看板の掛かっている道具屋。
 そのカウンターで、ヒースクリフは出資者である『エチゴヤの親父』と話を始めていた。
「実は頼みがあるんだが‥‥」
 そう切り出すと、ヒースクリフは現状を包み隠さず説明し、エチゴヤの親父に協力を求めてみた。
「ああ‥‥無理無理。そんな余裕はないから‥‥」
 と、最初のうちはけんもほろろに追い払われていたヒースクリフだが、何度もしつこく訪ねているうちに、ついに親父が根負け、外国人居留地『外国人街』の設立協力を約束してくれた。
 そうなるとあとは早い。
 協力的な商船を片っ端から当たり、人材を確保。
 その側では、エビータ・ララサバル(ec0202)がアドラス市民に対しての説明会を開催。
 定期的に説明会を開催し、質問その他を受け付けつつも、外国人街の有効性を説明していたる
「戒律を守れない外国人なんだぞ? 町の中でどんな事をするのか解らないじゃないか?」
「ですから。彼等の住まう『外国人街』は封鎖された区画となります。彼等はそこからアドラスに出ることは出来ませんので、アドラスしないでは戒律を犯すような事はありません」
「そうなると、外国人を相手にしていた店の収益が減るのでは?」
「外国人街辞退を有料とします。また、今まで外国人に対して商売をシていた人たちは、虚皮受け手外国人街での商売をする事が出来ます。この場合、彼等の街は『インドゥーラの法ではまもられない』と言うことを念頭に入れてください。外国人街で戒律を持ち出すのは逆にタブーとなります」
 次々と質問に対して解答を続けるエビータ。
 やがて、アドラスの市民の半分ほどが外国人街の受け入れを認めた為、藩王シャルマの名において、正式に『外国人街』が設立された‥‥。



●ナアスの邪人
──パトナ攻防戦・8月7日
 古き寺院。
 鳳美夕(ec0583)は底を訪れ、ナアスの邪人についての情報を探しも止めていた。
 このパトナには数多くの集落が存在する。
 そしてそれの数だけ寺院が存在するのなら、そのうちの何処かにナアスを封じる、もしくはナアスを滅する事のできる方法を捜していた。
 今いる寺院ですでに12ヶ所目。
 美夕は、ゆっくりと差し出された巨大な剣を身構えようとして‥‥持ち上がらない。
「お、重い‥‥」
「両手で構えてください。その『ジャヤ・スバンダの封剣』は、切り付けたものの力を根こそぎ奪うことができるのですから‥‥」
 その阿修羅僧の言葉に、美夕は半信半疑。
 だが、それを信じている彼等の好意を裏切ることは出来ないと、美夕はそれを愛馬に括りつけて皆の元に戻っていった。


──パトナ攻防戦・8月10日
「えーーっと、ここに黒曜の石碑。で、川の中の影がこの辺りに集中していてね‥‥」
 フォン・ラーマ・ルディア(ec0226)が『ナアス対策本部』で地図を広げつつ皆に説明。
 フォンは上空からの偵察により、石碑とナアスの現在位置を把握し、それらを一同に説明していた。
「なら、その石碑の封印を先に行なったほうがよいのでは?」
 そう問い掛けるのはレナード・ガーランド(ec0215)。
「確かにその通り。出来る事なら、その封印作業を行なってしまいたいのですよ」
 そう告げるフォン。
 そして翌日、フォンとレナード、そして同行阿修羅僧とこの地の阿修羅僧によって、石碑封印作戦が開始された。


──パトナ攻防戦・8月11日
「‥‥これで最後っ!!」
 石碑の周囲を結界によって固定。
 さらに4人の阿修羅僧が同時に儀式詠唱を開始。
 彼等の使う儀式詠唱はかなり特殊であり、フォンはそれを唱えることは出来ない。
 それでも、周囲の者たちに対しての加護を続け、レナードが石碑とその周囲に対しての警戒を続けた事により、石碑は輝きを失い、その周囲の結界が輝きはじめた。
「‥‥これで、この石碑は力を失いました‥‥」
 汗を拭いつつそう告げる阿修羅僧。
 とにかく、これで石碑からの力の放出は阻止する事が出来た。


──パトナ攻防戦・8月12日
「ふぅ‥‥全く。なんで付いてきてくれなかったんだ?」
 二人の男性ナーガと、一人の旅人を連れて、上泉蓮華(ec0178)が戻ってきた。
 今月早くに、蓮華はフォンからナーガのムラに付いての説明をうけた。
 そしてその脚で、ナーガの村に向かい、今回の件での助力を扇ぐことにしたのである。
 残念ながらナーガ達は力を貸しては暮れなかったものの、一人の旅の魔術師を紹介してくれたのである。
 そしてそのまま魔術師と同行し、パトナにやってきたのである。
「こっちはこっちで、色々と殺る事があったんだよ♪〜」
 そう蓮華に告げるフォン。
 そしてそのフォンに、ナーガは頭を下げた。
「先月は色々と愉しい時間をありがとうございます。ナーガの戦士・クゥェルと申します」
「同じくナーガの戦士・アーミティッジと申します。この方は旅の魔術師の‥‥えーっと‥‥」
 頬をボリボリと掻きつつ、必死に名前を思い出そうとしているアーミティッジ。
「わったっしっはぁぁぁぁ♪〜 旅の魔術師ぃ♪〜 なっまっえっはぁぁ♪〜」
 長い顎鬚とくねくねと曲がった魔導師の杖を手に、歌うようにそう告げる魔術師。
 っていうか、魔術師ってなによ?
「ハモンと申しますぅぅぅぅぅぅ♪〜」
 そう告げると、ハモンと名乗った老魔術師は丁寧に頭を下げた。
「‥‥蓮華、この方は今回のナアス対峙に助力してくれるのか?」
 そう問い掛けるレナードに、静かに頭を縦に振る蓮華。
「この方は、魔法のエキスパート。そう、今回も色々と助力してくれる‥‥」
 そう言い切ったものの、紹介されたハモンは近くで様子を見ていたシャロン・オブライエン(ec0713)の方に歩いていく。
「そこの素敵な御兄さん。どうやらその武器の取扱に困っているようですねぇ♪〜」
 ちなみにシャロン、ルミリアから預かった『龍殺しの「コレブラン」ドラゴンスレイヤー』を振りかざしていた。
「‥‥別に。俺は、もう迷う事を捨てた‥‥」
 そう告げて、再び構えを取るシャロン。
 と、その背後を通り過ぎ様に、ハモンがシャロンにのみ聞こえるようにそっと一言。
『なら、どうして男の真似など‥‥パラディン候補生の貴女がどうして‥‥』
 その言葉にハッとして、ついハモンに向かって剣を構えてしまうシャロン!!
「き‥‥貴様‥‥今なんといった?」
 剣を握っていた腕が震える。
 胸の鼓動が激しく高鳴る。
 顔は紅潮し、口許に笑みが浮かび上がる。
「いえ、私はどうしてかなと思っただけでして‥‥ではでは。15日には魔物を倒してしまいましょうねぇ♪〜」
 そう告げて、ハモンは宿に向かっていった。


──パトナ攻防戦・8月13日
 ヒュンヒュン!!
 美夕が持ってきた巨大な剣『ジャヤ・スバンダの封剣』。
 今ここに居る候補生で、これを真面に振回すことができるのは蓮華と昏倒勇花(ea9275)の二人のみ。
「昏倒‥‥貴方の使っているあの『剛剣術』だけど、今度私にも教授して欲しい‥‥」
 そう剣を振るう昏倒に話し掛けるのは美夕。
「あらあら。別に構わないわよ‥‥けれど、もう少し肉体鍛練の基礎をしっかりと覚えておかないと駄目よ‥‥」
 そう告げて、昏倒は美夕に『ジャヤ・スバンダの封剣』を手渡す。
──ズン!!
「えっ?」
「この剣を片手で振り回せるようになったら、教えてあげるわ」
「そんなの無理よっ‥‥い、今の私じゃ‥‥」
──ズシーーーーーン
 美夕の手から『ジャヤ・スパンダの封剣』が零れ、大地にめり込む。
「もう。これは力で振るう剣じゃないわよ‥‥こう‥‥」
 そう告げつつ、昏倒は剣のコントロールを説明する。
 力で制御するのではない、身体のバネによる制御。
 そうする事で生じる作用と反作用、それらを遠心力によって制御。
 説明の意味は理解したものの、美夕はまだそれを体では表わせない。
「ふうん‥‥これって、影衣の技と同じか‥‥」
 美夕から『ジャヤ・スパンダの封剣』を受け取ると、それを昏倒のように軽々と扱う蓮華。
「ど、どうして‥‥」
「まあ、気合だな」
 そう告げて、それを大地に突きたてる。
「気合でどうなるものか」
 そう告げつつ、レナードも剣の柄に手をかける。
 そして勢いよく身体を捻りつつ剣を抜くと、ブゥンと反動で振回し、ふたたび大地に突き刺す。
──ハアハアハアハア‥‥
 その一瞬の動作だけで、レナードの息が切れた。
「こ、こんなもの真面に仕えるかっ!! とりあえず明日からの作戦を組み立てるから、全員集ってくれ‥‥」
 そうレードが告げて、一行はいよいよ明日からの作戦の為に集った‥‥。



●9月〜二つの道
 第3の試練。
 それを終えたパラディン候補生達は、アジーナ大寺院へと戻ってくる。
「あ、皆さんご苦労様です‥‥」
 にこやかにそう告げて、コルネリア・ブルームハルト(ec0260)が皆を出迎える。
 ちなみにコルネリアは、第3の試練の遠征地に向かわなかった為にこの時点でパラディンへの道を断たれてしまった。
 その為、今はこのアジーナ大寺院で阿修羅に付いての教えを1から学びなおす事になったようである。
「早速ですけれど、マカヴァーン大僧正がお呼びでしたよ‥‥」
 そのコルネリアの言葉に従い、一行は大僧正の待つ広間へと向かった。

 そこには、大勢のパラディンと阿修羅僧がたたずみ、候補生達を厳しい目で見つめていた。
 そして奥から大僧正が姿を表わすと、ゆっくりと口を開いた‥‥。

「第3の試練、御苦労であった。来月より第4の試練に入る‥‥第4の試練は『生の試練』である‥‥」
 その言葉をゆっくりと聞きつつ、一同は真剣な目で大僧正を見つめていた。
「『生の試練』、期間は9月1日より10月15日までの45日。候補生一同は、各々、このインドゥーラの自分の好きな場所に向かい、すきに行動してよし。但し、単独坑道は禁止とし、最低でも2名以上での行動を取ってもらう。当然ながら、この帰還も同行阿修羅僧はついて行くので」
──ザワザワザワザワ
 空気が変わった。

 肉体と精神を試す 『階段の試練』
 戦う術を試す   『戦いの試練』
 そのものの徳を試す『徳の試練』

 ならば、この『生の試練』とは、何を見るのであろうか?

 そしてさらに、大僧正は爆弾宣言を行った。
「なお、今から名を呼ぶ者は、この『生の試練』をうける必要はなし。このまま最終試練である『試しの試練』に入ってもらう!!」
 この言葉には、パラディン達もざわついた。
 過去、数多くのパラディンへの試練はあったが、『生の試練』をうけずに最終試練に入るというのは数えるほどしか無い。
 そしてそれらをクリアーした者たちは、自然と実力を身につけ、『八部衆』の位にまで上り詰めているのである。
 すなわち、今から名を呼ばれる者は『八部衆候補生』としてその実力を大僧正に認められた者である。

「まず一人目‥‥アンドリー・フィルス」
 その刹那、候補生達の目がアンドリーに向けられる。
「そしてもう一人‥‥アイザック・トライスター」
 やはり視線はアイザックに。
「二人は来月10日より『試しの試練』として、パラディンと二人一組でモヘンジョ・ダロ地下に挑んでもらう‥‥アンドリーのパートナーは『迦楼羅位マトゥラー』。アイザックのパートナーは『夜叉位ラグナ』。以上である」
 そう告げて、大僧正はその場を後にする。



●第4の試練・移動先一覧
 第一回〜第7回までに登場した場所全て、及び、図書館にて確認できる『地誌・風土記』に示されている場所に移動可能。
 必ずチームを組むこと。
 なお、チームには一人のどうこう阿修羅僧がつきます。


●試しの試練・移動先一覧
 異動先選択は候補生(アンドリー、アイザック)が行ない、それに八部衆パラディンが同行。
 必要ならば『阿修羅僧』の手配を行なってもよいし、さらに2名までの『候補生の随伴』も許可。
 この場合の『随伴候補生』は、これに参加する事で『生の試練』をうけたこととなる。

・バガン地下遺跡・最下層多重結界
・ベナレス東方地下・次元回廊
・ベナレス南方地下・立体構造区画
・ベナレス中央地下・石碑による転移階層
・ベナレス北方地下・果てしなき暗黒空間
・アジャンター石窟地下・48の闘士の待つ回廊

 以上、それぞれ健闘を祈る。

(第8回に続く・・・・・・)