世界の守護たる道

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:22人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年04月01日
 〜2007年04月31日


エリア:インドゥーラ国

リプレイ公開日:04月19日23:59

●リプレイ本文

●永遠と限りある時間と
──インドゥーラ・とある場所
 そこは何処かの古き遺跡。
 今は調査されていないそこを、一人の男が歩いている。
「・・・・全く。ここまで破壊する必要があったのかねぇ・・・・」
 そう呟きつつ、男は周囲を見渡した。
『お舘様。このあたりでよろしいのでしょうか・・・・』
 どこからとも無くそう声が聞こえる。
「お舘・・・・おいおい、せめて名前で呼んでくれ・・・・」
 そう呟くと、男は中空に文字を刻みはじめる。

──ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 やがて空間が湾曲し、どこからともなく一枚の黒曜石の石碑が姿を現わした。
「さて・・・・そろそろ祭りを始めるとしよう・・・・我が名『シヴァ・マハ=カーラ』の名において・・・・かの地への封印を解除せん・・・・」
 そう告げると同時に、石碑の表面に波が立つ。
 やがて石碑の表面が輝くと、キィィィィィィンという音が響きはじめた。
「これでいい。『7目巨人』、この地を守り、死守せよ・・・・」
『御意』
 そう告げると、男はそのまま何処かに立ちさって行った。



●ああっ、阿修羅様
──ベナレス・アジーナ大寺院
 そこは寺院内の広大な書庫。
「成る程ねぇ・・・・」
 大量の石版を横に並べ、ウィルマ・ハートマン(ea8545)が何か肯いている。
「どうです? 何か判りますか?」
 そうウィルマに問い掛けているのは、この書庫の管理人の一人・アムリタ。
「まあね。この世界の3柱の神であるセーラとタロン、そして阿修羅。その3柱の神々の影から生まれたのが、混沌たる影の神々ってとこか・・・・」
 そう告げつつ、ウィルマは別の石版を手にする。
「でだ。アシュラからは破壊神シヴァが、セーラからは混沌神ラリィミューン。そしてタロンからは司法神アートモニッヒって奴が生まれているじゃん・・・・こいつらと戦い、封じた英雄がアミジース。でも、それは本当の名前ではない。アミジースはこのアジーナ大寺院で授かった『名』、彼の振るいし剣カリスマレスもまた、石版に記されているものの中でもっとも多い呼び名。本来の英雄の名前は『シェーラ』、そして古いし剣は『神殺剣カリバーン』。
 どちらも遥か異国より舞い降りたと・・・・」
 その解釈に、あっけにとられるアムリタ。
「そ、そんな記述がどこに?」
「ここに・・・・ほら」
「あら?」
 そんなやり取りを続けつつ、ウィルマは独自に様々な仮説を打ち立てていく。
「自らの命と引き換えに、神々を一つの箱の中に封印・・・・と。ここが一番の難問じゃん・・・・どれどれ・・・・」
 しばし石版を見つめるウィルマ。
 そして数刻の後、ウィルマは幾つかの結論を見出した。
「伝承では・・・・ここに記されているとおりなら、アミジースっていう少年が、『カリスマレスという名の剣をもち、暗黒の神々と1000日間渡る戦いを繰り広げました。最後に彼は自らの命と引き換えに暗黒の神々を一つの箱の中に封印しました。この箱はパンドーラの箱と呼ばれ、名剣カリスマレスが形を変えた物と言われています。この箱が開かれるとき、パンドーラの箱は剣に戻り、再び戦いの中へと戻っていくと伝えられています』って書いてあるじゃん。けれど、今、このインドゥーラの地下、モヘンジョ・ダロでは混沌神の申し子とかが徘徊し、地上に向かって歩みつつあるっていう話。なら・・・・こういう仮説は成立しないか?」
 そこまで告げるが、まだアムリタはピンとこない。
「はて? アムリタよく判りませーーん」
──スパァァァァァァァン
 景気よくアムリタの後頭部をどつくウィルマ。
「モヘンジョ・ダロ。名前の意味はインドゥーラの古い言葉で『死者の丘』。そこを徘徊する者たちが混沌神の申し子、そして先の古い伝承・・・・まだ若いアムリタには理解できない伝承の影と真実・・・・良く判ったな」
 そうウィルマの背後から話し掛ける一人の男性。
 服装から、どうやら高位の阿修羅僧のようである。
「ジハッド様、ご苦労様です」
「ああ、気にするな。で、冒険者よ。貴殿の考えを教えて欲しい」
 そう告げられて、ウィルマはゆっくりと話を続ける。
「ま、いいか。英雄アミジースが命をかけて『神々を封印した』のはこの死者の丘の地下。そして神々を封じ、地上に出てこれないような結界を作り出したのが『カリスマレスの剣』。すなわち、カリスマレスとは、武器の名前だけでは無く、この使者の丘全てを地上と隔絶し、悪しき神々を封じるため巨大結界っていうところ、どう?」
 その言葉に、静かに肯くジハット僧正。
「で、あんた偉いお坊さんなら、一つおしえて欲しい」
 そのウィルマの言葉に、ジハットは頭を左右に振る。
「ああ・・・・それは・・・・OKだったな。そんじゃ。この石版に記されている『阿修羅の剣』っという奴と、こっちの『カリスマレス』、そしてこの『神殺剣カリバーン』。3っつの名前は違えど、同じもの?」
 その問いに、ジハットはしばし思考。
「ま、いいだろう。そこまで独自で解析できたお前に褒美だ・・・・ついてこい」
 そう告げられて、ウィルマは別の部屋へと案内された。

 そこは、パラディン達の護るとある部屋。
 ジハットは胸の前で両手を合わせ、パラディン達に挨拶を行う。
「これはジハット殿。どうなさいました?」
「この者に、宝剣を見せるので。許可を」
「それでは」
 そんなやりとりの後、部屋の扉が開かれる。
 その部屋の中にも、パラディンが4名待機していた。

 そして部屋の中央にある巨大な石。
 そこに、いくつもの剣が刺さっていた。

「・・・・これはなんだ? 只の剣の博物館か?」
 そう告げるウィルマに、ジハットがとある剣を指差す。
「これはパラディンでも八部衆にのみ許された剣、ギルガメッシュだ。元々、これは『カリスマレス』を元に生み出された武具だな。そして、この穴には、かつて『阿修羅の剣』が納められていたと伝えられている・・・・先程の仮説、惜しいが全て別の武具であるという説もある。が、カリバーンとカリスマレスは同一のものだという説が濃厚だな・・・・」
 ふぅんという表情で、そのまま剣を見るウィルマ。
「他の武具は?」
「それらについては、外で。パラディンの中でも選ばれたものに与えられる法具です・・・・」
 一人のパラディンがそう告げて、二人を外に出す。
 
 そして武練場に案内されると、ウィルマは不思議な光景を目の当たりにした。
 パラディンが構えた三鈷杵。
 その中央から剣の刃が生み出された。
「へぇ・・・・」
「これが三鈷剣。そしてこっちが・・・・」
 そう告げて、ウィルマに一つの三鈷杵を手渡す。
「開放のコマンドは・・・・です。どうぞ試してください」
「面白いじゃん・・・・!!」
 すかさず三鈷杵を手前に差し出し、コマンドを唱える。
──シャキーーーーン
 その両端から、鋭利な刃が生み出された。
「さしずめ、三鈷双剣ってところ?」
「ええ。扱えますか?」
 その挑戦的な言葉に、ウィルマは三鈷双剣を構えて振りかざす。
 通常の剣とはかっての違う武具、それらを振回しながらも、ウィルマはそれをうまく扱う為の修練をしばらく愉しんでいた・・・・。
 
 そして。
 全身を汗まみれにしつつ、ウィルマがパラディンに一言。
「これ、譲ってくれ!!」
「それはできません。貴方が力を示し、阿修羅に認められれば・・・・」
 ならということで、ウィルマは三鈷双剣を返却する。
 そして再び、ジハットと共に資料室に向かうと、再び論議を始めていた。



●石碑とその傾向と対策
──バガン地下遺跡・ベースキャンプ
 いつものように探索の準備をしている一行。
 そして別チームのパラディン達も、色々と作戦を練りこんでいたり、出発の準備を行なっている。
「・・・・ナディール、ちょっといいか?」
 一通りの準備を終えて、鷹見仁(ea0204)が阿修羅僧のナディールを呼び止める。
「はい? 構いませんよ」
 そう告げつつ、ナディールが鷹見の方を向き直す。
「徘徊者や申し子について教えて欲しい」
 そう告げる鷹見の元に、マグナス・ダイモス(ec0128)、アンドリー・フィルス(ec0129)、アイザック・トライスター(ec0141)、エビータ・ララサバル(ec0202)が集ってくる。
「えーっと、どんなことでしょう?」
 そう告げるナディールに、鷹見は剣を見せる。
「例えば。俺の持っている『十握剣』は不死者に対しては強力な武器になるが、それ以外に対しては単に『魔法の武器』という以上の意味はない。徘徊者は不死者なのか?」
 その問いに、ナディールは頭を縦に振る。
「残念ですが。不死者でもありますが・・・・属性は神の眷族でもあります。通用するかも知れませんが、通用しないかもしれません。そして、誠に申し訳ありません。その剣では、傷を付けるのも難しいかも・・・・」
 そう告げつつ、鷹見の武器を指し示した。
「通用しない?」
「ええ。混沌神の申し子達には、強力な魔法付与したものでないと、通用しない事があります。実際、数打ちの魔法剣は命中しても叩き折られる事もありましたし・・・・でも、アンデットに対して強力な力をもつ武器であるならば、通用するかも・・・・」
 そう告げるナディール。
「ナディール、あんたはオーラを仕えるのですか?」
 そう問い掛けるマグナスに、ナディールは頭を縦に振る。
「私は阿修羅僧でして。オーラは使えません」
「そうですか。できればオーラの修行を行ないたかったのですが」
「オーラは常に鍛練。自分の中に常に宿っているもの、それを意識しつつ、無意識の中にそれを理解する・・・・。えーっと、確か・・・・こんなかんじでしたね」
 そう告げるナディール。
「オーラ。うーん・・・・パラディンの中にも、オーラを得意としてた人がいたのか?」
 そのアイザックの言葉に、ナディールは頭を左右に振る。
「はい。今はもうパラディンを引退して、諸国漫遊をしている人が居ます。オズ・テイラーという方です。元八部衆の龍位でして、現役を引退してからは、八部衆を始めとする様々な方にオーラを享受していました。あとは・・・・まあ、大寺院に戻れば、いろいろなパラディンさんがいますから・・・・それまでは、さっきの方法ですね」
 そう告げるナディール。
「ああ、ありがとう・・・・」
 そう告げると、ようやく一行は腰を上げる。
「では、まいりましょうか・・・・」
 エビータがニコリと笑いつつ、そう告げると、一行はさっそく全開の調査の刻に見た石碑の場所へと向かっていった。



●生きることと命の尊さ
──ベナレス東方地下遺跡のさらに地下
 周囲を見渡す。
 地底湖とその畔に作られた簡易ベースキャンプ。
「とりあえず、現在の保存食を確認するか・・・・俺は保存食20と満腹豆が20だ」
 ヒースクリフ・ムーア(ea0286)がそう告げて荷物の中の食糧を出す。
「私は0ですね・・・・」
 シアン・アズベルト(ea3438)が申し訳なさそうにそう告げる。
「私は25食ね・・・・」
 レヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)がそう告げて、25食を取り出す。
「俺は0だ。済まない・・・・」
 シャロン・オブライエン(ec0713)がそう告げると、横で濡れた服を乾かしている鳳美夕(ec0583)がにこやかに一言。
「私は2つね。全部でいくつ?」
「えーっと。20と20と25で・・・・65食か・・・・結構あるな」
「ふむ。ということは、囚われている少女を助けたとして、6人。一人10食というところか・・・・」
 ヒースクリフの言葉に続いて、シャロン・オブライエン(ec0713)がそう告げる。
「最大で10日。それ以内に少女を救出し、出口を探さないと・・・・」
 レヴェリーがそう告げてゆっくりと立上がると、周囲をグルッと見渡した。
 それほど広くない空間。
 横には地底湖が広がっている。
 そして洞窟の壁には、小さいが3っつの横に伸びている洞窟がある。
「・・・・アーマーレオンが何処に向かったのか・・・・それが判ればいいんだけれど」
 そう告げて、美夕が足跡を探す。
 だが、どこにもそれらしいものは存在しない。
「魔法が使えないというのが、問題ですね・・・・」
 シアンがランタンを構えつつ、洞窟の一つを覗く。
「地面の苔が削れているような所がひとつもない・・・・琥珀獅子のような巨体が歩いたのでしたら、足跡ぐらいは残っている筈ですが・・・・」
 頭を捻るシアン。
「それと・・・・これはちょっと嫌なことなんですが・・・・」
 そう皆に告げるシアンに、一同が視線を送る。
「何か判ったのか?」
 そう問い掛けるシャロンに、シアンは指に填められているオーガパワーリングを見せた。
「・・・・装備品の魔力、これも封じられているかんじなんですが・・・・」
 オーガパワーリングを付けていてもなお、荷物を以前より重く感じているシアンならではの観察力。
「馬鹿な・・・・」
 そう呟いて、ヒースクリフも指のプロテクションリングの感覚を感じる。
 だが、特になにも感じない。
「つまり・・・・怪我をすることも許されないっていうことかしら?」
 レヴェリーの言葉に、シアンが肯く。
 リカバーポーションの力すら奪う空間。
 そんな所で琥珀獅子と戦うということは、死ぬということに等しい。
「それでも先に進む。あの子を助ける・・・・」
 シャロンのその事はに、一同は肯くと、さっそく行動を開始した・・・・。



●出会いと別れと命のやり取り
──ベナレス南方地下・とある廃墟の寺院
「ふぅ。これで大体は片付きましたか」
 三笠明信(ea1628)が掃除を終えた寺院の部屋を見渡しつつ、そう告げている。
 これから先の調査の為のベースキャンプを、この寺院に設置しようというのであろう。
 幸いな事に、今は亡きダ・カー殿が色々な生活道具を残してくれた為、簡易ベースキャンプとしては十分な作りになった。
 そしてそのまま、巨大な石版を発見した場所に向かう一同。

──石版の広場
 高さは約5m。
 横幅2mほどの漆黒の石版。
 それが、広場の真ん中に立っていた。
「・・・・嫌なかんじですよねぇ・・・・」
 同行阿修羅僧のナラミルヴァが、一同にそう告げる。
「ああ。一見した所、只の石版に見えるが・・・・我もこの石版に危険を感じる」
 ルミリア・ザナックス(ea5298)がそう告げると、アレーナ・オレアリス(eb3532)がそっと石版に触れる。
「文字が刻まれている感じは・・・・」
 そう告げると同時に、アレーナの脳裏を様々な感情が走る。

 恐怖
 嫉妬
 狂気
 悲しみ
 快楽

 それらが奔流となり、アレーナの中を駆け抜けていった。

──バッ!!
 素早く石版から離れるアレーナ。
「こ、この石版は・・・・危険すぎる・・・・繋がっている・・・・混沌の中に・・・・」
 そのまま脳裏を走ったものを感じ、それがなんであったのか考えるアレーナ。
「表面には文字らしきものが・・・・ないか・・・・なあ、ナラミルヴァ、この石版についてなんか知ってたら教えてくんねぇか? ダメなら無理にとは言わないが」
 バーク・ダンロック(ea7871)がそうナラミルヴァに問い掛ける。
「石版ですか。残念ですが、まだ調査の段階で、詳しいことはまだなにも判っていないのです」
 そう告げるナラミルヴァ。

──バッ!!
 と、突然昏倒勇花(ea9275)が腰の刀に手をかけて、素早く横の通路に向かって身構えた。
「貴方は誰かしら?」
 そう問い掛けた先。
 そこには、インドラの古い民族衣装を身に纏い、様々な装飾品で着飾った一人の男性が立っていた。
「ああ・・・・パラディンではないのか・・・・まあいい。私はシヴァ。その石碑には近づかないほうがいい・・・・」
 そう告げて、ゆっくりと一同に歩み寄るシヴァ。
 そしてその気配に、一同が不意に武器を構えた。
 それは本能のなせる技。
 全員の背筋を冷たい物が流れ、身体が微かに震えている。
「こんな所に無作為にいるとは。貴殿は『混沌の申し子』か?」
そう問い掛けるルミリア。
「申し子? ああ、眷族達のことか。まあ、王たる神の意識体の一人というところだな。さ、判ったら下がりたまえ・・・・」
 そう呟くシヴァ。
 だが、そこで引き下がるほど、パラディン候補生は甘くはなかった。
「ナラミルヴァ・・・・援護よろしく!!」
 瞬時に手の中にオーラソードを生み出すと、バークはそのままシヴァに向かって切りかかる!!

──ドサッ

 渾身の一撃。
 それは間違がいなく、シヴァに命中した。
 だが、シヴァは一歩も動かず、それを身体で受止めていた。
「・・・・良く練りあげられたオーラだな。が、傷を負うほどではないか・・・・」
 そう告げると、シヴァはバークの腕を掴んで、そのまま後ろにバークを投げる。

──ズサササーーーーッ
 素早く受け身を取り、そしてバークは低い体勢で戦闘モードを続行。
「・・・・偉大なる阿修羅よ!! 彼の者に力の加護を!!」
 ナラミルヴァが近くにいたアレーナに加護を付与。
「この石版に用事がある・・・・か。面白い。王とやら。必要ならば、我等を越えていけ!!」
 そう叫ぶと、ルミリアは全力でシヴァとの間合を詰める。
 そして『みたことのない体勢』で、シヴァに向かって渾身の一撃を叩き込んだ!!
「ご、剛剣術!!」
 アレーナはルミリアの技を見て、そう叫びつつ、シヴァに向かって『同じ攻撃』を仕掛けた!!

──ドッゴォォォォォッ

 ルミリアの一撃はシヴァの右肩を切断し、アレーナの一撃は左脚を大腿部から切断した。
「ふん。古き剣術か・・・・でもまあ、愉しかったぞ・・・・」
 そう告げると、シヴァは悠々と転がっている大腿部を拾い上げて、足を接続。
 まるで魔法のように、傷がみるみるうちに塞がっていく。
「・・・・まだ甘いわよ・・・・」
 そう告げる昏倒。
 そのまま全力でシヴァに接敵すると、同じく剛剣術でシヴァの右腕を切断!!
「・・・・面白いな・・・・にんげ・・・・」
「・・・・油断しすぎだ・・・・」
 と、丁度背後から、バークのオーラソードがシヴァの頭を横薙ぎに一閃した!!
 と、そこでシヴァの頭が真っ二つになる。
 さらに三笠が、残った胴部に向かってダブルスマッシュを叩き込む。
「これで・・・・おしまいです・・・・」
 剛剣術はまだ使えない三笠。
 いや、その場の誰もが、『使えるレベル』には到達していない。
 その一撃で、すでに全員がその場に崩れ、指一つ動かせない。
「・・・・発動したのが・・・・奇跡・・・・か・・・・」
 ダ・カーの使った剛剣術。
 それの練習を一同は行なっていた。
 ただの1度見ただけの見取り稽古。
 成功率は砂粒程度。
 それでもやらねば死ぬ。
 その業しか通用しない。
 そして成功したが、もうなにもできない。

──キィィィィン
 と、突然ナラミルヴァが一同の元に向かって駆けこみ、素早く印を組み韻を紡ぐ。
「阿修羅よ・・・・我等を護る力を・・・・シャクティ・マンダラっ!!」
──カキィィィィン
 と、全員を包むように、半球体のバリアが発生した。
「・・・・どう・・・・した・・・・んだ・・・・」
 アレーナがそう告げつつ、ゆっくりとナラミルヴァの方を見る。
「・・・・ば・・・・か・・・・な・・・・」
 その向う。
 ちょうどバリアの外で、シヴァが傷一つ付いてない肉体で、その場に立っていた。
「・・・・いいタイミングたな。けれど、貴様達の体では、あの技は制御できない。ダ・カーの足元にも及ばないな・・・・」
 そう告げると、シャクティ・マンダラのナラミルヴァに向かって、シヴァが静かに呟く。
「もう手はないか・・・・なら、そこでじっと見ているんだ・・・・」
 そう告げると、シヴァは石版に手を振れる。
「・・・・覚醒せよ・・・・我等が門、我等が主、シヴァ・マハ=カーラに新たなる輝きを・・・・」

──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン

 突如、石版から漆黒の輝きが発せられる。
 そしてそれは消えることなく、その場で輝きつづけた。
「これでいい・・・・さて。私は次の仕事に向かうとしよう。冒険者諸君・・・・もっと強くなりたまえ・・・・」
 そう告げて、シヴァはその場から離れていく。
 一行が元の力を取り戻すまで、それから約10時間を必要とした・・・・。



●光溢れる世界・・・・そして闇の中の巣窟へ
──アジャンター石窟地下・位置不明
 ぐるりと続く壁。
 静かに周囲を調査していたフィリックス・トゥルム(ec0139)は、今いるその場所が閉鎖空間である事を確認した。
「・・・・丁寧な作りの壁だが・・・・参ったな・・・・」
 しばし、壁を調べていくことにしたフィリックスと、その近くではコルネリア・ブルームハルト(ec0260)が様々な考えに思考を巡らせている。
「どうにかして脱出する方法は・・・・」
 風を感じるにも、今居る所は行き止まり。
 今までやってきた通路には、既に瓦礫が崩れて道はない。
「・・・・どうです?」
 マリウス・ゲイル(ea1553)が天上に向かって何かを呟いている。
 と、空から一匹のエレメンタルフェアリィがゆっくりと下りてくる。
 そして、頭を縦に振ると、なにもなかったようなことを示す。
「マリウスさん、其の子は?」
 エレメンタルフェアリィを見て、フェイ・グリーンウェル(ec0238)がそう問い掛ける。
「いつのまにか、付いてきていたみたいですね。私に懐いていますから、ちょっと頼んでみたのですが・・・・」
 そう告げると、自分の周囲をパタパタと飛んでいるエレメンタルフェアリィに微笑むマリウス。
「そう。何か判ったら教えてくださいね。ハルミットさん、何か役に立ちそうな魔法はありますか?」
 そう同行阿修羅僧のハルミットに問い掛けるフェイ。
「残念ですが・・・・探査系魔法は持ち合わせていないのです」
 ガックリと肩を落とすハルミット。
「・・・・周囲にはなんにもないし。壁は石を積み込んで作ったかんじだね。まあ、気になるといえば・・・・」
 上空からフォン・ラーマ・ルディア(ec0226)がゆっくりと下りつつ、一行にそう告げる。
「暗いから良く判らなかったけれど、この先、地面に何か紋様が彫りこまれているんだよ・・・・」
 おっと、いい目しているフォン。
「・・・・駄目だな。どうやらあれはトラップだったらしい・・・・」
 通路を調べていたレナード・ガーランド(ec0215)が、調査を終えて帰還。
「トラップですか?」
 そう問い返すコルネリアに、レナードは頭を縦に振る。
「ええ。細かい瓦礫などを調べてみたんですが。あの像に何かが仕掛けてあったようです。先の方は完全に崩れていて、私達でも動かすことは困難でしょう・・・・ですが気になります。あの像」
「そうなんだよ。おいら、あれをどっかで見た事あるんだけれど・・・・」
 フォンが色々と思考する。
「あ、大寺院で見たのかなぁ・・・・腕がいっぱいあって・・・・でも・・・・うーーーーーん」
 あ、思考が限界か?
「古き神々・・・・混沌神・・・・ヴァリトラの魔王群・・・・古き民に聞けばおいら達の知らない事、何か知ってるかな? 古き民にも敵意ない人がいたらいいんだけど・・・・子供とかいないのかな・・・・もしいたら仲良くなれたらいいのにな、そしたら何か話し聞けるのに・・・・ハルミットのおっちゃん、古き民って何?魔王群や混沌神って古き神々の事なの?」
 そう問い掛けるフォンに、ハルミットが何か頭を横に振る。
「いい考えですね。古き民は、この『モヘンジョ・ダロ』に住まう人々。古くからこの地に住んでいた民です。彼等の中にはいくつもの信仰があり、それらが様々な神を奉っていた」
 そう話を始めるハルミット。
 とりあえず、時間が惜しい為、フォンの発見した紋様に移動しつつ、話を続ける。
「例えば、この地の地下に眠ると伝えられている混沌神を崇拝するもの、魔王群と呼ばれる存在を信仰する悪しき民など。中には我等が神である阿修羅を信仰するものもいますが、それはごく僅かです・・・・」
 そのハルミットの話を聞きつつ、一行はフォンの見つけた紋様のある場所にたどり着く。
 それは巨大な魔法陣。
 古きヒンドゥの言葉により梵字が刻まれ、そして中央には巨大な『扉』が配置してある。
「ハルミットさん、何かわかりますか?」
 フェイが静かに問い掛ける。
「・・・・うーん。かなり古い魔法のようですね。文字配列など、私の知らないものばかりです・・・・そして、この扉の紋章・・・・」
 何か頭を捻りつつ、ハルミットがそう呟く。
 扉は魔法陣の中央に立っていて、その片側にしか紋章は刻まれていない。
「何か判るのですか?」
 そう問うレナードに、ハルミットは頭を左右に振る。
「かなり古い・・・・古き民の刻印・・・・記されている文字は・・・・真理と門・・・・あ!!」

──ギィィィィィィ・・・・

 突然扉が開く。
 そしてその向こうには、暗い空間が広がっていた。
「・・・・どういうこと?」
 コルネリアがハルミットに問い掛けるが、ハルミットは絶句するだけである。
「・・・・今の所、進む道はこれ一つだねぇ。どうする?」
 フォンのその問いに、答えは一つだけであった。



●見よ、これが筋肉の輝きだ!!
──バガン地下ベースキャンプ
 大勢のパラディンが集っている。
 次の石碑についての報告を受けた一行が待機し、それを破壊するための準備をしているようである。
「影衣殿。オーラについて教えて欲しいのだが・・・・」
 それは上泉蓮華(ec0178)。
 先日、オーラの練りこみが足りないと言われた蓮華が、その場にいる影衣十兵衛にそう訪ねていた。
「ああ,ちょっと練ってみろ?」
 その影衣の言葉に、蓮先はオーラパワーを発動させた。
「ほう、いいかんじだな・・・・」
 別の所で話をしていたパラディンが、蓮華のオーラに気が付いてそう告げる。
「オーラの技は幾つ使える?」
「オーラパワーとオーラショットの二つだ」
 影衣の問いにそう告げる蓮華。
「攻撃主体か。まあ、特性はそれぞれだから構わないか・・・・だが、少しムラがあるな・・・・」
「影衣殿、俺にあんたのオーラを見せてくれ」
 その蓮華の言葉に、影衣は瞬時にオーラパワーを発動。
──ペタペタ
「すげぇ・・・・」
 そう呟きつつ、蓮華は影衣の筋肉をペタペタと触る。
「・・・・何か判ったか?」 
「あんたのオーラは、俺は真似できねぇな・・・・ペタペタ」
 そのまま触りつづける蓮華。
「さて、そろそろ出発だな、お前は今回も付いてくるのか?」
「ああ。当たり前だ。俺はアンタと一緒に行く。その為に、俺はここにいるんだ」
 そうキッパリと告げられると、影衣としては悪くない。
「判った。後で皆に紹介するから・・・・それまで身体を休めておけ・・・・」
 そう告げて、影衣もまた細かい打ち合わせに向かった。



●阿修羅への道
──月末・アジーナ大寺院
 静かな朝。
 今までとは違った朝。
 その日、朝からフォンは緊張していた。
 聖なるガンジスで沐浴を行ない、香炉から流れる香で身を清める。
 そして大量の線香が焚かれた部屋で阿修羅僧と共に読経を始める。

 午後からは大寺院にて阿修羅に付いての講義を受け、そしていよいよ夜。

 大寺院奥の間。
 大勢の阿修羅僧がその場に座り、じっと時を待つ。
 やがて一人のシフールが阿修羅僧の正装でその場に現われ、正面に座る。
 奥からは、マカヴァーン大僧正が姿を表わし、その阿修羅僧に祝福を与える。
「汝、フォン・ラーマ・ルディア。阿修羅の教えのもと、ただしき道を歩むか?」
 低く重い声。
 それが奥の間に響きわたる。
「はい。私、フォン・ラーマ・ルディアは阿修羅の教えのもと、僧侶として生きる事を誓います・・・・」

 其の日。
 新たなる阿修羅僧が、大寺院で生まれた・・・・。



 5月。
 パラディンとしての修練もいよいよ佳境。
 引き続き、遠征に向かい、己を示せ・・・・。
 一つの場所にいくつものチームが向かっても構わない。
(全てモヘンジョ・ダロ遺跡です)

・バガン地下遺跡
・ベナレス東方地下
・ベナレス南方地下
・ベナレス中央地下
・ベナレス北方地下
・アジャンター石窟地下

──To be continue......