幻の流派を追え!!

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:16人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年03月01日
 〜2007年03月31日


エリア:華仙教大国

リプレイ公開日:03月21日18:11

●リプレイ本文

●背中で語れ熱き思い!!
──燕京・とある裏の通り
 冒険者達がこの華仙教大国を訪れて一ヶ月。
 あるものは首都燕京にて手掛りを求め、またあるものは遥か南方の地を目指す。
 強さを求め
 力を求め
 正しさを求め
 安らぎを求めていた。
 
「ふぅ‥‥一体どこにあるのですか?」
 疲れた身体を休めるように、路地裏の壁に凭れつつ月詠葵(ea0020)がそう呟く。
 英霊布が置いてあるという『珍品堂』を探し、すでに一週間。
 この燕京の裏道は殆ど網羅した筈である。
 にもかかわらず、珍品堂についての有力なてかがりは一つもなかった。
「どうでした? なにか手掛りは見つかりました?」
 蘭寛那(ec0186)が壁に凭れている月詠にそう問い掛ける。
 ちなみに寛那も英霊布を求め、月詠と同じ様に珍品堂を探していたのである。
 昼は燕京の城下街にある道場を巡り、そして夜は酒場を訪れ、いろんな人に話を聞いてみていた。
 共通することは、『求めても得られず。さりとて探さなくては見つからず』という謎解きのような言葉だけ。
 そのため、寛那は裏町をしらみつぶしに走りまわった。が、やはり見つける事が出来ず、頭を抱えていたのである。
「はぁ‥‥手掛りが全くありません。一体どこに言ったらあるのでしょうか?」
 月詠が溜め息をつきながら、寛那の横に座り込む。
「‥‥じゃあ、もう英霊布は余分はないの?」
 何処からか劉玲玲(ec0219)の声が聞こえてくる。
「んー。まあ、次の入荷が解らないけれど、入ったら取っておいてあげるよ‥‥但し、珍しい宝貝と等価交換だよ‥‥」
「それは大丈夫だけど‥‥それよりも質問があるの」
 そう告げると、玲玲は店主に静かに話し掛ける。
「英霊布って一体何枚存在在するのかしら? それに何時の頃から存在して誰が作ったのかしら?」
 そう問い掛けるが、店主は腕を組んで頭を捻りつつ唸る。
「うーーーーん‥‥ちょっと私には判りかねますねぇ‥‥」
 そんな声がする方向に、フラフラと引き寄せられた寛那と月詠。
「や‥‥やっと発見しました‥‥」
「店主さん、御願いです。私達にも英霊布を‥‥」
 月詠と寛那の二人が同時に頼み込む。
「あー、ああ、ちょっと待っていて。太乙大人を呼んできますから」
 慌てて店の奥に走っていく店主。
「ふぅ‥‥玲玲さん、助かりました」
「貴方の声で、ここを見つける事が出来ましたわ」
 そう告げて、取り敢えず店内を見渡す余裕も無くその場に座り込む二人。
「はぁ‥‥でも、私も今日、ようやく発見できたのですよー」
 そう告げると、玲玲は近くに置いてある様々な宝貝を手にとって見る。
 どれも珍しく、およそお金で買えるようなものはない。
「この店の宝貝はどれも一級品ね。これと同等の価値を持つ宝貝なんて‥‥」
 寛那がそう告げていたとき、店の奥から太乙大人が姿を表わす。
「これはこれは。英霊布について知りたいのですか?」
 そう玲玲に向かって話し掛ける太乙大人。
「はい‥‥」
 そう告げると、玲玲は先程店主に放した質問をもう一度太乙大人に話す。
「これがいつの時代から存在していたのか、私には判りません」
 そう告げて、太乙大人は懐から英霊布を取り出し、首に巻く。
「少なくとも、三国時代にはもう存在していたようです。但し、その当時はこれは魔力をおびた只の布、その身を護る為の『御身防護の布』だったようです。ですが、当時の英雄達と共に時代を走りぬいたその布には、其の手によって殺された多くの英雄の血が付着していました。それが長いときを得て、英霊達を呼び覚ます布という不思議な力を宿したというのが一説ですね」
 そう告げると、太乙大人は英霊布を取り外して箱にしまい込む。
「その布は何枚有るのですか?」
「さぁ? 私が知る限りでは10枚。うちの2枚以外にも、所有者が8名。それ以外の布については全く判りません。あ、先に行っておきますけれど、その8名のうち、英霊を呼び起こせたのは1名だけですからね」
 その補則が、その場の3名に希望を与えた。
「もしまだ見つかっていない英霊布があるのでしたら、それはどうやって探したら良いのですか?」
 その寛那の問いに、太乙大人は即答。
「英雄の足跡を訪ねてください」
 それだけを告げて、店の奥に戻っていった。

──場所は変わって、とある建物の中
 深夜。
 窓から差す月の光。
 そして燭台の灯が、室内にいる8人の人影をおぼろげに照らし出す。
 その8人以外に二人、部屋の中央で『殺しあい』をしている最中であった。

『強力な宝貝ですか。では‥‥に行ってみてください。そこで開かれる『暝武会(やみぶかい)』に参加して勝ち抜けば、手に入れられますよ‥‥』

 その彰蔽平の言葉を頼りに、虚空牙(ec0261)はこの場所を訪れていた。
 そして厳子麗(ec0245)もまた、別ルートからの情報で此処を訪れ、見学させてもらっていたのである。
 二人の視線の先。
 そこは戦っている者たちではない。
 その向うにある、この武会の勝利者が『試し』の権利を選られるという伝説の剣『百辟刀』が、ふたりの目的である。
(‥‥あの覇気‥‥まさしく本物だな‥‥)
 小さな声で、子麗が空牙に告げる。
(ああ。勝利した者のみが『試し』の権利を得、そして所有者と認められればそれは勝者のものとなる‥‥か)
 百辟刀は自ら主を選ぶ。
 それ故、選ばれなかった者はそれなりの代償を求められるという‥‥。
 そんな危険なものであるが、二人にとってはこれほど強力な宝貝は存在しない‥‥。
 そして一つの戦いが終り、次の戦いが始まる。
「虚空牙、前へっ!!」


●引き継がれる意志
──十二形意拳・虎拳総本山
「‥‥」
 石段の上、昇る朝日を眺めつつ、陸潤信(ea1170)はじっと考えていた。

『我等は虎拳を守り、それを受け継がなくてはならぬ』

 その大僧正に言われた言葉を頭で反芻しながら、自らが何の為に虎拳の門を叩いたのか、又なぜ八跋衝という流派を会得したいと思い立ったのかを考えていた。
「俺は‥‥」
 ゆっくりと立ち上がり、潤信は演舞を舞う。
 拳が中空を斬り、脚が大地を踏みしめる。
 気が張り詰め、周囲にもそれがひしひしと伝っていくのを感じる。
「この一つ一つの技が、俺の今までの道。これを得る為に、血の滲むような努力を続けてきたのだが‥‥」
 鍛え上げられた四肢、鋭く研ぎ澄まされた意志。
 それらがすべて、この地で学んだもの。
 だが、それらを越える何かが、潤信を引き付けていた。

『‥‥聞いたか? たった5名でモンゴルの騎馬数百を止めた武道家がいるんだとよ‥‥』

 その風の噂が、潤信の脳裏を離れない。
 只の噂。
 だが、例え噂でも。
 自分の学んだ拳は、数百の騎馬を相手に戦うことができるものなのか?
 その問い掛けが心を締め付ける。
 求めていたものは、本当に『虎拳』なのか?
 疑問が脳裏を離れない。 
 そんな日々に、終止符を打ったのが『八跋衝道士探索』の掲示であった。

──ブゥン!!
 拳を修めると、潤信は流れる汗を拭う。
 そして意を決し、潤信は大僧正の元を訪れた‥‥。

──寺院本堂
「潤信。確かに数百の騎馬を退けた者たちは存在する。『朧拳使い』と呼ばれる者たちなら、それもまた可能‥‥」
「ならば大僧正どの。教えてください。私は、そのような者たちを前に戦ったとき、どれ程の『功夫』を積んでも太刀打ちできないのではないでしょうか? 私は‥‥虎の型に限界を見出したのです‥‥そのため、八跋衝の源流を求めようとしました‥‥」

──ゴトッ

 大僧正の前に『御許証明木簡』を差し出すと、潤信は静かに口を開いた。

「私は‥‥天と地を分かつ獣の一派として、12支を越えた虎を求め、改めて旅に出たい」
 それが潤信の意志。

「うむ。ならば虎拳を極めよ‥‥」
 そう告げると、大僧正は静かに立上がる。
「まだ潤信は奥伝。皆伝となり、その身を猛虎の如く鍛え上げよ」
「教えてください。この虎拳から皆伝者は出ているのでしょうか? もし出ているのであれば、その方はどこにいらっしゃるのでしょうか?」
 そう告げたとき、大僧正がスッと構えを取る。
 今までに潤信が学んだ事のない構え。
「一つだけ見せよう。そして潤信、貴殿も又、これから始まる果てしない道を進むが良い。拳の技極めしものの最高の呼び名『一騎当千』を得る為に」
 そう叫ぶと同時に、大僧正の全身から気が放たれる。
 放たれた期は巨大な猛虎を形取り、縦横無尽に駆け巡っていった。
「猛虎跳撃。皆伝者のみに使える技だ。華仙を歩き、猛虎の教えを学んできなさい」
 そう告げると、大僧正はその場から立ちさって行った。


●脚の流れと気のめぐり
──竹薮と手形
 バシッバシッ‥‥
 竹薮の中から音が響く。
 青龍八跋衝の修練を開始して既にかなりの日数が経過している。
 石畳での特訓から、次の特訓に入った一行。
 老師曰、『竹薮にて脚型と手形を辿りなさい』。
 そう告げられて、一行は道場裏手の山に有る竹薮にやって来たのだが‥‥。
「え‥‥ここで?」
 そう呟きつつ、荒巻美影(ea1747)は眼の前に広がる竹薮をじっと眺める。
「足跡って言っても、地面師かありませんが」
「それに、この密集した竹薮でどのように訓練したらいいの?」
 そう呟いている夜桜翠漣(ea1749)と鳳蓮華(ec0154)に、葉雲忠(ec0182)は静かに告げる。
「おそらく、一と記されているここが最初の場所です‥‥」
 竹薮のある所に、一と記された石版を確認。
 その後で、先に見える竹を指差す。
「あれが一手目の竹ですね。文字が『一右』ってかかれていますから」
 そう告げると、雲忠は最初の場所に立つ。
 そして呼吸を整えて、ゆっくりと頭の中で歩法を反復し、脚裁きを始める。
──バッ‥‥バババッ‥‥
 一定のリズムで進む雲忠。
 そしていよいよ最初の打撃用竹にたどり着くと、右手で一の場所を殴るが‥‥。

──ゴッ‥‥

 体勢がかなり崩れていく。
「あ、そこ、ひょっとしてこうかな?」
 蓮華がそう告げて、歩法を始める。
 そして打撃の所にたどり着くと、足をそのままに腰を捻り、右の裏拳を叩き込む!!
──パン!!
 弾けるような心地好い音。
 そして打ち込んだ後の脚の位置が、丁度次の位置に続いている。
「ふぅん。間違った場合はたけの音が違うということか‥‥」
 そう呟く荒巻。
 そして一人一人、一定の時間を置いて竹薮での修行を開始した。


●酔えば酔うほど酔っ払う
──小さな農村
 グビッ‥‥グビッ‥‥
 村の中の小さな茶屋。
 そこで御堂鼎(ea2454)はのんびりと酒を交わしている。
 彼女の横に座っているのは、旅の女性。
 この村には、旅の最中にフラリと立ち寄ったのだという。
「ぷはーーーーーーーーーー。旨し!!」
「ええ。いいお酒ですねぇ‥‥ぐびぐび」
 そんな感じで呑むわ呑むわ、すでに甕が二つ空っぽになっている。
「そういえば、あんたの名前‥‥なんだったっけ?」
 ほろ酔い気分でそうえ問い掛ける御堂に、女性はにこやかに笑いつつ一言。
「何仙姑(かせんこ)ですわ。よろしくね、お嬢さん」
「何仙姑ね。あたしは御堂鼎。まあ、色々とあって、今は呂洞賓っていう人を探しているのよ‥‥」
──カチーン
 杯を交わしつつ、そう告げている二人。
「あら。呂洞賓をお探しで。何か彼に?」
「ああ、あんたは知合いなのか。実は、あたいは呂洞賓に『酔八仙拳』を教えて貰ったことがあってね。まだ修行が終っていないから、稽古をつけてもらおうとおもってね‥‥」
 そう告げる御堂鼎(ea2454)に、何仙姑はニコリと微笑む。
「酔八仙拳は8人の仙人に学ぶ必要がありますよ。呂洞賓の主儀容が終ったのでしたら、次はこの私ですね‥‥」
 そう告げると、何仙姑はゆっくりと立ち上がり、少しずつ店の外に向かって歩きはじめる。
 その優雅な動きに、御堂は目を奪われてしまっていた。
「これから教えるのが私の技ですので‥‥また別の街に向かい、そこで別の仙人に教えを受けてくださいね‥‥」

 静かに歩く姿。
 女性特有の、ちょっと艶めかしい雰囲気。
 それでいて、酔八仙拳特有の酔った歩法。
 そこから繰り広げられる、鋭い肘撃の数々。
 それらを、御堂はじっと見ていた。

──一方、同じ村
「そろそろ仕事を切り上げるぞ!!」
 畑の外から、超吼明が石動悠一郎(ea8417)に話し掛ける。
「ああ、判った。吼明殿ももう上がるのか?」
 額に流れる汗を拭いつつ、石動はそう超吼明に声を掛けた。
「ああ。また夜にでも遊びにこいよ‥‥、お前の故郷の話を、色々と聞かせてくれ!!」
 そう告げれると、超吼明は自分の家に向かって歩いていった。
「さて。それじゃあ戻るか。馬次郎、帰るぞ」
──ヒヒーーーン
 いつしか、この村の生活にすっかりと解けこんでいた石動。
 昼間は畑の手伝い、そして夜は武術の訓練や村の人に頼まれて仏像を彫っていた。
 超吼明とも畑での付き合いもあり、色々とこの村での生活がすっかすりと馴染んでいった石動であった。

──超吼明の家
「ジャパンという国は、実に不思議な国なんじゃねぇ‥‥」
 超吼明の母がそう石動に話しかけている。
 食事の時に、石動はいつものようにジャパンでの色々な話をしていた。
「まあ拙者の場合はジャパンではさして珍しいことは何もないがな、貧乏な武家の長男が弟に家を任せて放蕩三昧といった所だ。でも、拙者に言わせて貰えば、この華仙教大国も不思議な国だ‥‥超吼明殿の持つ英霊布。それは噂では、選ばれし人物にしか使えないと聞く。超吼明どのはどのようにして選ばれたのだ?」
 核心をつくようにそう問いかける石動。
「ああ、俺の場合は、これを生まれたときから持っていたからかなぁ‥‥」
 そう告げて超吼明が懐から取り出したもの。
 それは‥‥。


●戦え、そして全てを得よ!!
──燕京・十二形意拳擂台賽
 ワーーーワーーワーーワーーーーー
 大勢の観客がひしめく小さな道場。
 中庭に武会用の石の舞台が作られ、観客はそこから離れた所でざわざわとざわめいている。

──ジャーーーン!!
 銅鑼が鳴り響き、龍の姿を象った人形と、それを操る人たちが舞台に上り、華麗なる舞いを見せる。
 やがてそれが終ると、いよいよ主催者が舞台に上り、挨拶を行う。
「これより、十二形意拳擂台賽を開始します。皆さんの功夫、愉しみに拝見させてもらいますので‥‥」
 そう告げると、主催者は自分の席に戻る。
 そして進行役の女性が、舞台に入れ代わりに上り、対戦相手を呼び出す。
「‥‥ああ、本当に基礎しかできていない‥‥大丈夫か、俺?」
 リクルド・イゼクソン(ea7818)はドキドキしながら自分の名前が呼ばれるのをじっと待っていた。
 そのまま戦いは進み、いよよいリクルドの出番となった。
「東、玄武拳のリクルド。西、七星蟷螂拳の汎(ハン)。構えて、礼!!」
 その声に、リクルドも舞台に昇ってじっと相手を見る。
 鍛え上げられた筋肉、しなやかな四肢。
 そして全身に刻まれた大量の傷が、汎がかなり手練れの武道家であることを示していた。
「それでは、始めっ!!」
 その掛け声と同時に、汎は静かに腰を落とし、蟷螂拳独特の構えを見せる。
 それに対して、リクルドはこれまた基本の構えのみ。
「はっはっはー。そんな構え、子供でもしないぞ。好きだらけであろう!!」
「そんなこといったって、俺はまだ基礎までしか出来ていないんだっ!!」
 汎の素早いしなやかな攻撃をリクルドは腕で受止め、次々と裁く。
「貴様、その動きが基礎だけだというのかっ!!」
 一歩下がって、汎がそう叫んだのだが。
 その汎の動きと同調するように、リクルドもまた踏込んで、その顔面に向かって拳を叩き込む!!
「一星玄武拳‥‥だったか?」
 そうリクルドが呟いた時、すでに汎は後方に吹き飛んで意識を失っていた。
「‥‥玄武という名前から、八跋衝の流れと思っていたのですが‥‥」
 擂台賽を見ていた夜桜がそう呟く。
「ええ。私達の学んできた青龍八跋衝とは、動きも型も別物。ひょっとしたらと思っていたのですが‥‥」
 荒巻もそう告げるが、雲忠だけは別意見であった。
「最後の一撃だけは、『竹薮右の38』と同じ打ち込み型だったか‥‥それも気のせいか?」
 そう告げると、二人は頭を捻っていた。


●南宋良いとこ1度はフォアチャァァァァァア!!
──南宋
 とある小さな家。
 南宋の街からちっょとだけ離れたその家の前で、ある戦いが繰り広げられていた。
「ウッヒャアギャガァァァァァァァァァァ★△×■」
 絶叫を上げているのはこの家の主である曹飛延。
 そしてその正面では、着物の裾を整えている琴宮茜(ea2722)が静かに立っていた。
 触り魔の曹飛延から身を護る為に、琴宮はあらかじめ『ライトニングアーマー』を発動させていた。
 そして思ったとおり、いきなりお尻を触ってきた曹飛延が電撃を受け、絶叫を上げていたのである。
「あ、ああ、ちょっと取り乱してすまない‥‥」
 どうにか体裁を取り繕うと、曹飛延は琴宮にニコリと話し掛けた。
「今日は‥‥まさか俺と祝言を?」
「いえ‥‥貴方の‥‥首に巻いてある布を触らせて欲しいのですが‥‥」
 そう告げる琴宮に、曹飛延はにっこりと笑いながら琴宮に布を手渡した。
「只の布だが‥‥ほら」
 そう告げて琴宮に布を手渡す。

──キィィィィィィィィィィィィィィィン
 大勢の武将が戦い、血を流している。
 そして脳裏に響く何かの声。
『天啓を持って告げる。誰の力を望む!!』

「私が欲するのは‥‥呂布奉先!!」
 そう琴宮が告げた直後、身体に何がか入って来る感覚があった。
「呂布奉先?」
 その言葉に反応して、曹飛延が問い掛ける。
「ええ。あ、ちょっと私の好きな英雄でして‥‥」
 そう告げているさなかにも、曹飛延は琴宮の胸を触ろうとするが。

──シュンッ!!

 其の手を軽く薙ぎ払うと、琴宮は後ろに軽く飛ぶ。
 そして着地した刹那、直にでも反撃が出来るような構えを『無意識のうちに』取っていたのである。
「ヒューーーッ。何処かで武術を学んできたのかい? すごくいい動きをしているねぇ‥‥構えから察するに、南派かな?」
 そう告げる曹飛延。
 だが、琴宮は今の自分の動きに同様していた。
「‥‥こんな力‥‥私の力ではない‥‥私の中の‥‥呂布奉先?」
 そう呟く琴宮。
 そしてハッと何かを思い出し、曹飛延に向き直る。
「ねえ? あの時確か『もし英霊布なら、それに『認められた者』が手に取ったとき、『天啓を持って告げる。誰の力を望む!!』とか語りかけてくるらしいからなぁ‥‥』って言いましたよね」
「ああ、それがどうかしたのか?」
 サラリとそう告げる曹飛延に、琴宮はゆっくりと諭すようにこう告げた。
「その時一つ思わなかったのですか? これが本当は英霊布で自分と呂洞賓って人は『認められた者』ではなかったって事を」
 その言葉に、曹飛延は腕を組んで唸る。
「あーーーー、成る程。それは考えていなかったなぁ‥‥」
──はい?
 その言葉に、琴宮は意識が遠くなりそうになった。
「それってつまり‥‥」
「この俺が、選ばれない訳ないじゃん。ということは、これは本物ではないということ。それに呂洞賓っていう人がもしあの人だったとしたら、選ばれるわけないしねぇ‥‥ま、あんたは選ばれたのか?」
 そう問い掛ける曹飛延に、琴宮は試しに『月桂樹の木剣』を引き抜くと、外にある岩に向かって構える。
「‥‥無理無理。その木剣が砕けるだけだって‥‥」
 そう告げる曹飛延だが。
──ゴキッ
 琴宮が腕に力を込める。
 そして絶妙な間合と力のバランスで、目の前の岩に向かって木剣を振り落とす!!
──ドッゴォォォォン‥‥
 粉々に砕けた岩。
 そして木剣には傷すらつかない。
(呂布奉先‥‥この力が‥‥凄い)
 震える腕を、魂を押さえつつ、琴宮は木剣を納める。
 そして英霊布を外し、呂布奉先に別れを告げる。

『我が力必要ならば‥‥布に呼び掛け、我を呼べ‥‥』

 スッ‥‥
 琴宮の中から呂布奉先が消える。
 そして曹飛延の方を振り向いてニコリと微笑んだ。


──場所は変わって
「‥‥白家ってのは、こんなにろくでもないとは‥‥」
 天狼王(ec0127)は南宋の街で、白家についての聞き込みを行なっていた。
 あちこちの家や店、酒場での噂など、それも出来るだけ穏便に、目立たぬように続けていた。
 それらをまとめた結果、意外なことが判明した。

 本来の白家は『羅漢拳』の継承道場の一つである。が、現在は『白式剛双拳』とかいう看板が掲げられていた。
 白家が今のような状況になったのは、大体半年ほど前から。それまでは平穏な雰囲気であったが、白家を訪れた『李閃門(り・せんもん)』とかいう檀家性と、その弟子達が白家を訪れ、看板を賭けて戦った事から始まる。
 それは表向き『小擂台賽』として開かれ、多くの流派道場が参加していたが、李閃門の目的は、白家にのみ伝えられている『白式一百八零羅漢拳』の奥義を盗み出す為だという。
 そして李閃門の思惑通りに、裏で暗躍していた彼等の弟子たちが細工を施し、白家の敗北という形で幕を閉じたらしい。
 今のこの街は白家(正確には白家を語る李閃門の一派)によって牛耳られ、高額の税を納めなくてはならなくなっていた。
 払えないものは李閃門の手下達によって山に連行され、そのまま戻ってこない。
「‥‥それにしても‥‥これからどう動くか、それが問題だな‥‥」
 酒場で饅頭をかぶりつきつつ、狼王は今後の事について色々と考えていた‥‥。


●船の旅から冥土へと
──臨安→広州→昇竜
 のどかな船旅もいよいよ終点。
 朱蘭華(ea8806)は久しぶりの故郷の空気をむね一杯に吸い込むと、懐かしい風景をじっと見渡した。
「‥‥ふぅ〜。あまり郷愁は感じないわね」
 いきなり解説無視かよ!!
「広州ではなにも情報を得られなかったけれど、ここなら‥‥」
 そう呟きつつ、蘭華は広州で紹介された『とりあえずは安全らしい安宿』へと向かう。
 表通りにはあまり人の気配が無い。
 だが、ちょっと路地に入ると、そこからは『きけんな香り』が漂ってくる。
「完顔師父からのシフール便は届いていないし‥‥まあ、船長の商会のあった宿でこれからの作戦‥‥と‥‥」
 そう呟きつつ、紹介された建物の前にたどり着く蘭華。

──ヒュルルルルル

 だが、そこは廃墟と化した建物が存在するだけであった。
「おや、そこの建物は先日『黄巾賊』に襲撃されてねぇ‥‥一族郎党、皆殺しになったんだよ‥‥」
 通りすがりの老婆が、蘭華にそう説明する。
「黄巾賊? それってあの?」
 古い歴史に存在する名前。
 張角と名乗る、古き教祖によって起された農民達の反乱。
 彼等は目印として、黄巾と呼ばれる黄色い頭巾を頭に巻いてた為、黄巾賊と呼ばれていた。
「ああ。張角仙人とかいう男がその頭首さ。あんたも、奴等に見つかる前に早く身を隠すんだよ‥‥」
 そう告げて、老婆はその場から走り去っていく。
「ふぅーむ。これは‥‥予定外に危険ですか」
 そう告げたとき、蘭華は周囲を取り囲む気配に気が付いた。
「うへ‥‥えへへ‥‥女だ‥‥」
「ジュルッ‥‥久しぶりにいい女だ」
「ああ、張角様に貢げば、俺達も報奨を貰える‥‥」
 頭に黄巾を巻いた男達が、好色そうな目で蘭華を見る。
「まあ、飛んでくる火の粉は払うのが信条‥‥」
 そう告げると、蘭華は素早く構えを取り、そのまま背後に向かって全力疾走!!
(冗談。手前の奴等は対した事ないけれど、後ろの奴はどうみても皆伝クラスの腕前じゃないの‥‥)
 そう呟きつつ、蘭華はただひたすら走っていった。


●襲撃と防衛と一騎当千
──北京よりさらに‥‥
 ヒュルルルルルル‥‥
 風が草原を駆け抜ける。
 遠くで馬の駆ける音。
 それを耳にしながら、紅小鈴(ec0190)は静かに『万里の城塞』の上で、演舞を舞う。
 その下で、孫飛燕が小鈴の上達ぶりをじっと見ていた。

 この村に来てから、小鈴は村人の一人となり、村に住まい、畑仕事を手伝っていた。
 そして早朝と夕方は、孫飛燕の訓練を見学し、その後で見取り稽古を行なっていた。
 そんな日がしばらく続き、ある日、孫飛燕が小鈴に告げた。
「とりあえず、基礎は出来ている。ボクの動きを見て稽古をシていたのでしょうから、何処まで見とれているか成果を見てあげましょう」
 そう告げられて、小鈴は城塞の上に連れていかれた。
 そして、足元では孫飛燕とその仲間たちが、小鈴をじっと見ている。
「‥‥失敗は許されない。けど、かたくなったら負け。いつものように、自然に‥‥風と一体となって‥‥」
 一つ一つの動作をかっちりと繋げていく小鈴。

 壱の鋼・腕から型へ
 弐の鋼・肩から胸へ
 参の鋼・胸から腹へ

 そして丹田から全身へ
 全身から腕へ

 気の流れをゆっくりと。
 そして確実に身体の隅々まで。

 そのまま演舞を続けていると、突然曹飛延が小鈴に向かって構えを取る。
「五の鋼・気壁っ!!」
 そう叫ぶと同時に、曹飛延は腕から『気で練り上げられた獅子』を小鈴に向かって放つ!!
「うわっ!!」
 瞬時に小鈴は15の構えを取り、両手を前にかざす!!
「紅式朧四鋼拳・気壁っ!!」
 瞬時に手から放たれた気が、一瞬だけ壁となる。
──おおおおおお!!
 それを見ていた一同が感嘆の声を上げる。
 が、気壁は瞬時に消え去り、変わりに孫飛燕の放った『鋼気獅子』が襲いかかる。
「あーあ。いいところだったんだがなぁ‥‥」
「一瞬だけかぁ‥‥」
「おかしらの目は確かなんだけれどなぁ‥‥」
 そんな事を告げつつ、一人、また一人とその場から立ちさって行く。
 そして最後に曹飛延が。
「功夫を積みなさい。そして自分の力を知るのです‥‥」
 とだけ告げて、立ちさって行った‥‥。

 まもなく4月。
 この華仙教大国に、乱世の風が流れはじめる。

──To be continue......

今回のクロストーク

No.1:(2007-03-06まで)
 英霊符を求める者たちに問う。
求める英霊の名を一つあげよ!!