幻の流派を追え!!

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:16人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年10月01日
 〜2007年10月31日


エリア:華仙教大国

リプレイ公開日:10月24日01:52

●リプレイ本文

●神龍(しぇんろん)
──燕京、様々
「‥‥つまり、神龍は時代の移り変わりを見ていたというのですか?」
 劉玲玲(ec0219)は、神龍についての情報を集めていた。
 この華仙教大国で、神龍を知らない者はほとんど以内。
 それぐらい、神龍の存在はこの華仙教大国にとって大切なものである。
 戦乱を起こす邪悪なる龍『邪龍』と、人々の為に戦いつづけた『神龍』。
 今、この時代でも、神龍と邪龍との戦いは続いているという。
 そして現在、人の姿を借りて、西涼の奥地に住んでいるという『神龍』に、この華仙教大国が動乱に廃蔦のかをお伺いして欲しいという、海陵王からの願いがあった。
 玲玲は、それを実行死よとしているのだが、いかんぜん情報が少なすぎる。
 そして一番の問題があった。
 それは西涼までの道程。
 実に、燕京から出発しても、馬車で約一ヶ月以上は掛かってしまう。
 今から出ても、直に戻ってきたとして、年末に燕京に到着。
 それでは事態が悪化してしまう恐れもある。
「龍珠道士ならば、星龍を召喚できると思いますけれど‥‥星龍ならば、神龍のことを知っているでしょうから‥‥」
 そうヒントをくれたのは完顔阿骨打師父。
「ですが、その龍珠道士がどこに居るのか解らないのです‥‥」
「ふぅーーーーむ。一星という龍受動しでしたら、この朱鈴殿に居ますけれど、今は出かけてしまっていまして。来週には戻ってくると思いますけれどねぇ‥‥」
 その言葉に、玲玲は一旦城の外に出て、別の方向から情報を捜しに向かった。

──一方、そのころの‥‥
「‥‥つまり、現在の成都方面への移動はあまり許可できないと?」
 そう海陵王の執務室で問い掛けているのは蘭寛那(ec0186)である。
 先日、曹飛延に『製菓にこないか』と誘われた寛那だが、自身の心に問い、曹飛延に就くべきではないと判断した。
 そのため、その事を完顔阿骨打師父に報告し、ことの事情を説明した。
 その上で、寛那もまた、現在の『西夏』の情況を教えてもらった。
 西夏皇帝を名乗る『曹飛延』によって、西夏は完全に独立。
 神聖歴982年に締結された『不可侵条約』は破棄され、新たなる軍備拡張を行なっているとの報告を受けた。
 西夏に繋がる街道、華仙教大国は全て封鎖され、許可なくては入る事も出来ない状況である。

「完顔師父に、成都へ調査に向かう事を御許しして頂きたかったのですが、直接海陵王様に報告し、指示を扇ぎなさいと告げられました‥‥」
 そう告げて、指示を待つ寛那。
「さて。この燕京から成都までは約一月半。時間が掛かりすぎてしまう為、直接調査に向かうのは得策ではないな‥‥」
 その海陵王の言葉に、寛那もしばし考える。
「だが、成都に直接向かうというのもよい方法だ。蘭寛那、可能であるならば、成都に向かう事を許す。これは街道を通る際に必要な『割り符』だ。もっていくがいい」
 そう告げられ、寛那は海陵王より一枚の割り符を受け取る。
「では、確かに御預かりします‥‥」
 そう告げて、寛那は部屋から出ていった。



●酒の美味い陣営は?
──西涼
 桃源郷にて一通りの試練を終えた御堂。
 『酔八仙拳体得』の言葉を得て、ついに免許皆伝‥‥まではいかないが、下山を許された模様。
「ひっく‥‥対語の試練は『私の酔八仙拳』を完成させろかぁ‥‥」
 フラフラとおぼつかない足取りで、酒を片手に通りを歩く御堂鼎(ea2454)。
「よう、おねーちゃん、随分といいかんじだねぇ‥‥一杯やっていくかい?」
 下心美枝見えの男達が御堂を誘う。
「いいわよぉ☆」
 そう告げつつ、御堂は店に入る。
 そして男達が御堂を酒で潰しに入り、そして皆が酒に潰れる。
 美味い酒を徳利一つだけ貰い、また御堂はフラフラと街を徘徊する。
 時折酒場で暴れている他の客を諌め、そしてお礼に酒をと作り一杯だけ貰う。
 そんな愉しい毎日を、御堂は送っていた。
「見付けました!! 貴方が『酔八仙拳の御堂」殿ですね?」
 そう告げて、御堂に近付く男達。
 今までとは違う雰囲気が御堂にも感じ取れた。
「あらぁ‥‥貴方たち、戦の香りがするわよぉ‥‥女を口説くのなら、化粧の一つでもしてきなさいよぉ‥‥」
 そう呟いて、御堂はフラフラと裏路地に入る。
「お待ちください。曹飛延様が、貴方を御探しなので‥‥」
 と告げて追いかけてくる兵士達だが、路地の奥を見て硬直する。
「私に用事があるのなら‥‥いつでも酒場に本人が来たらいいのよ‥‥伝えておいてね‥‥」
 そう告げて、路地の向うの『桃源郷』に消えていく御堂。
 やがて路地からその光景は消えて、桃源郷は姿を消した。

──桃源郷
「ひっく‥‥張果老師父、御土産〜」
 そう告げて、御堂は張果老に酒を手渡す。
 酔八仙拳会得者にのみ許されている、『桃源郷の解放』。
 如何なる路地にでも、どんな草原にでも桃源郷に続く道を作り、そこを通り抜ける。
 八仙に許された者のみにか使えない技であり、御堂でも、まだうまく使いこなせていない。
 それに、使うには『八仙』にお酒を手渡す必要が‥‥。
「どうじゃ? なにかあったか?」
 そう問い掛ける鉄拐李に、御堂は静かに酒を呑む。
「動乱さね。曹飛延と海陵王、この戦いがもうすぐ始まるよ‥‥八仙、私達はどうすればいい?」
 そう問い掛ける御堂に、八仙はこう呟く。
「御堂も八仙の仲間にはまだ遠い。が、ここの出入りを許されている者として告げておく‥‥愉しく、己の信じるままに‥‥」
 その言葉に、御堂は手にした徳利をいっきに飲み干した。
「そうだよねぇ♪〜」



●華仙教大国統一大武会・龍王・決勝トーナメント
──燕京・予選
 晴れ渡った日。
 擂台の上では、ゆっくりと深呼吸しているリクルド・イゼクソン(ea7818)が立っている。
 その目の前では、同じ様に衣服を直しつつ、擂台の下の師範と打ちあわせをシている楊夫人の姿があった。
 この試合を勝ち抜けば、リクルドは決勝トーナメントBに出場決定である。
「それにしても‥‥いい感じに仕上がってきたな‥‥」
 そう告げつつ、リクルドも擂台の下で見ている紅蘭の方を向く。
「リクルドさん、負けないでくださいね」
 にこやかに告げる紅蘭に、リクルドはニィッと笑う。
「大丈夫。紅蘭の家の玄武拳を信用していろ」
 そう告げると同時に、リクルド、楊夫人二人が擂台の中央に向かう。
「それでは燕京地区予選B予選決勝、始めッ!!」
──ドワワワワワワワワワワワワワワワワワ〜ン
 大きく銅鑼が鳴る。
 それと同時に、楊夫人は抱拳礼でリクルドに頭を下げる。
「正々堂々と御願いするアル」
 その言葉にリクルドも頭を下げて抱拳礼。
「こっちこそ‥‥では参る!!」
 そう告げると、リクルドは瞬時に間合を詰める。
 右腕の掌底で楊夫人の左肩を叩き込み、さらに踏込んで左脚での両脚払い。
──ドカッ!!
 肩口に一撃を受けたものの、楊夫人は素早く後方に下がり、体勢を整える。
「ふぅ。いい動きアルネ。では、今度はっちの番アルヨ」
 素早くジャンプし、さらに着地と同時に前方に回転しつつリクルドの肩口に『旋風脚』を2連撃で叩き込んでくる楊夫人。
──ドガガガッ
 一撃は受けたものの、弐撃目は躱わすリクルド。
「アイヤ。私の鳳凰旋風受止めた人ははじめてヨ」
 さらにトントンとリズムを取りつつ小さいジャンプ。
(鳳凰‥‥その名前のとおり、飛翔体勢からの攻撃が主体か‥‥相手としてはやっかいだけど‥‥)
 そのまま楊夫人の動きを観察し、一歩後方に進むように体重を移動させておくリクルド。

──そして、激しい打ち合いが続く‥‥

 すでに両者満身創痍。
 あと一撃がなかなか思うように決まらない‥‥。
 だが、その均衡をうちやぶったのは、楊夫人であった。
「これで終りアルヨ!!」
 素早く間合を詰めつつ、楊夫人が素早く飛び上がる。
「鳳凰旋子転体っ!!」 
 ジャンプし回転しつつ連続で蹴りを叩き込んでくる楊夫人だが。
「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ」
 大きく息を吸い込み、そして吐く。
 数歩下がり、楊夫人の蹴りを躱わしつつその着地点を見極めると、リクルドは右肘を楊夫人に叩き込む!!
──ドガッ
 それは楊夫人の胸許に直撃し、後方に吹っ飛ぶ。
 そのままさらに追い撃ちを書けるように、『玄武挂拳』『玄武蓋拳』と二つの拳戟を叩き込む。
──ドガガガッ!!
 その弐撃で、楊夫人は大地に転がる。
 そして起き上がることはなかった‥‥。

「勝者!! 玄武拳リクルドっ!!」
 会場から喝采の声が上がる。
 そして感極まった紅蘭が擂台の上に書けあがると、そのままリクルドに抱きつく!!


──一方、もう一つの決勝
 こっちは実に静かである。
 次々と相手を撃破してきた天狼王(ec0127)と、同じく一撃も受けずに勝ちつづけてきた早川小五郎の二人の対戦である。
 既に準備運動は終え、擂台の上で開始の掛け声を待っているだけである。
「それでは‥‥ハジメッ!!」
──ドワワワワ〜ン
 銅鑼が鳴り響く。
「‥‥」
 摺り足でゆっくりと間合を取る早川小五郎に対し、狼王はただ立って構えを取りつづけている。
(さて、どういう攻撃でくる事やら‥‥)
「では参る!!」
 そう告げられると同時に、狼王は空を見上げていた。
──ヒュンッ‥‥ドガッ
 そして大地に背中から激突。
「ぐっ‥‥い、今の攻撃‥‥は‥‥」
 痛みを気合で吹き飛ばし、ゆっくりと立上がる狼王。
「ほう、今の一撃を受けて立上がるか?」
 そう呟くと、早川小五郎は再び狼王に間合を取る。
「痛ててて‥‥今の一撃はかなり聞いたな‥‥一体どうやったんだ?」
 そう告げつつも、構えを切替える狼王。
「気合。天之浮橋という技だが‥‥理解できぬか」
 その言葉の刹那、スッと狼王の右に回りこむ早川小五郎。
──フワッ
 そして再び狼王の腕を掴むと、スッと狼王を中空に投げ飛ばす。
 そして大地に落ちてくる瞬間に、喉弐手を駆けて、いっきに対゛地に狼王を叩き込む!!
──ドガッ
 その一撃で、呼吸が止まり、意識が朦朧とし始めた狼王だが。
「ふぅ‥‥ジャパンの柔術。受けと組み主体かと思えば、どうして中々攻撃的だな」
 と呟く。
(どこも折れてはいない。打ち身だが的確に急所に入れてくる‥‥)
 ゆっくりと立ち上がり、構えを取る。
 不思議な事に、その構えを取りおわるまで、早川小五郎は攻撃してこない。
「いくらでも襲う機会はあったはずなのに‥‥」
「準備の出来ていない者を襲うというのは、野蛮な者のする事だ」
 その言葉に、狼王はニィッと笑う。
「あんたすごいよ‥‥なら、こちらも手加減無用だな‥‥本気で行かせてもらう」
 差際ほどまでの構えとは違う狼王。
「ほう。構えが‥‥いや、気が変わったか‥‥」
 そう呟くと、早川小五郎も構え、そして踏込んでくる!!
(大地からは足を外さず‥‥静で‥‥)
 スッと早川小五郎の動きに会わせて一歩引き、体を捻る。
 そしてスッと早川小五郎の胸許に手を添える。
「跳っ!!」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォッ
 その一撃で、小早川隆景小五郎の胴着は吹き飛び、その胸許に掌底の形の陥没が叩き込まれた!!
「グハァッ!!」
 口から地を吹き出し、その場に崩れる早川小五郎。
「勝負あり!! 勝者は星君朧拳・天狼王っ。決勝進出決定!!」
 完成が沸き上がる。
 そして擂台の下から医療藩が駆けあがり、早川小五郎の傷を確認する。
「大丈夫、衝撃のみでそれ以外の以上はないようで‥‥」
 その言葉を聞いて安心する狼王。
「人を殺すんじゃない、倒す為の拳だからな‥‥」
 そう告げて、擂台から降りていく狼王であった。



●大義名分と真実と動乱
──大同
 久しぶりの大同。
 琴宮茜(ea2722)と月詠葵(ea0020)の二人は、赤兎馬に跨がり久しぶりにこの地を訪れた。
 といっても、久しぶりなのは琴宮で、月詠は一緒にやってきたという。
「ようこそ、ご無沙汰しています‥‥」
 丁寧に頭を下げて二人を迎え入れてくれたこの街の太守『黄志狼』。
「こちらこそご無沙汰しています。御弦奇想でなによりですね?」
 そう告げる琴宮が、月詠を前に出して紹介する。
「この方は黄志狼さん。この街の太守です。こちらは月詠葵さん。縁あって、二人で旅をしています」
 そう告げると、月詠も頭を下げる。
「はじめまして。月詠です」
「丁寧に。黄志狼と申します」
 そんな挨拶ののち、二人は黄志狼の屋敷へと案内された。

──そして
「ほほーーーーーう。それは‥‥」
 驚きの表情でそう告げる黄志狼。
 琴宮は黄志狼に、無事に呂布奉先の英霊を手に入れる事が出来たと告げ、実際に二人がそれぞれ英霊召喚をしてみせた。
「呂布奉先は、二人を主として認めたのですか‥‥」
 その黄志狼の言葉に、月詠はとまどいの表情を見せる。
「というより‥‥私達は二人で初めて一人前。不完全なままの英霊契約。正式に認められたのではない‥‥」
 と、月詠は告げるが。
「ふーむ。それは貴方の思い過ごしでしょう。英霊はその意志によって主を選定する。貴方たちに選ぶ権利があるのではなく、英霊が選ぶ権利を持っているのですよ? 貴方たちはその意志を示し、それに呂布が呼応した。呂布は二人のうち一人に絞る事が出来なかったので、二人に全てを託したのでは?」
 その言葉に、月詠は一瞬救われた。
「でも‥‥」
「そうですよね。月詠さん、折角ですからご披露しましょう」
 その琴宮の言葉に、月詠が肯きたちあがる。
「まずは‥‥僕の呂布から‥‥」
 瞬時に英霊を降ろす月詠。
 室内の気が圧縮され、そしていっきに爆発する。
 月詠に英霊・呂布奉先が舞い降りる。
「これが、僕の呂布奉先‥‥」
 瞬時に剣を引き抜くと、軽く演舞を見せる。
 そして月詠は、呂布の動きに驚いた。
 今までの自分よりも大胆で、それでいて正確無比。一部の隙も見せない動きであり、それに力強さが見えかくれしている。
(‥‥でも‥‥神霊体の方が‥‥)
『惑わされるな、月詠葵』
 そう心に声が響く。
(貴方は‥‥呂布?)
『いかにも‥‥貴殿は勘違いをしている。二人で一人の呂布奉先ではない!!』
 意識との会話。
 それは外には聞こえない。
 ただ、月詠が演舞を続けているように見えている。
(ですが、私の中に降りた貴方。その力は、神霊体とは比べ物に成りません)
『当たり前だ。今、貴殿の中の私はかつて中原を駆け抜けていた呂布。だが、神霊体は私と君達によって作られた新たなる『進化した呂布』。今の力が物足りないと感じるのは当然である‥‥』
 そう告げられて、月詠の動きが止まる。
(では、貴方は私を一人前と認めて?)
『貴殿の力は、この私が判って居る。自信を持て、今、『世界最強の浪人』である貴殿に、華仙教大国最強の猛将の英霊が宿っている事を‥‥』
 その言葉と同時に、月詠は英霊解放する。
 その表情には、一転の曇りもない。

「では、次に私が‥‥」
 そう告げて、今度は琴宮が英霊召喚を開始。
 月詠とは違う繊細な動き。
 恐らくは『英霊契約した人間』のポテンシャルアビリティにも関係しているるのであろうか、月詠ほどの力強さと大胆さはない。
 が、細やかな動きと、その感覚は、月詠を上回る。
 さしずめ、月詠が『猛将・呂布奉先』ならば、琴宮は『知将・呂布奉先』というところであろう。
 そして琴宮もまた英霊解放を行うと、今度は二人で同時に神霊召喚にはいる。
 二人の肉体が一つとなり、一人の呂布奉先となる。
『黄志狼殿。これが私達の『神霊体・呂布奉先』です‥‥』
 二人の意識も一つになり、ひとりの呂布奉先となる。
 普段から時間があれば訓練していた賜物であろう。
「‥‥これは驚きましたねぇ‥‥」
 そう告げる黄志狼の前で、二人は神霊解放を行ない、元の二人に戻る。
「‥‥此処の呂布だけでなく、さらに強くなった呂布まで‥‥これならば‥‥」
 そう告げて、黄志狼は頭を左右に振る。
「何かあったのですか? 僕達で宜しければ力になります」
 そう告げる月詠に、琴宮も肯く。
 と、黄志狼は机の中から、木簡を取り出して二人に見せた‥‥。



●華仙教大国統一大武会・龍王・決勝トーナメント
──10月1日 燕京・決勝トーナメントA
 ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
 激しい歓声が会場に響き渡る。
 いよいよ始まった決勝トーナメントA。
 その日は第一回戦。 
 8っつのカードが組まれている。
 控え室では、それぞれの選手が自分の出番を今か今かと待ち望んでいた。
 そんな刻、案内役が呼びにやってくる。
 ゆっくりと呼吸を整えつつ、会場への長い廊下を歩きはじめた。


──虚空牙(朧拳)vs楊小竜(蚩尤八跋衝)
「それではぁっ。いよいよ決勝トーナメントを開催いたしまっす!! 第一回戦第一試合、虚空牙 対 楊小竜っ!!」
 怒鳴り越えとも取れる多き憩えで、進行役が戦士湯を紹介。
 その声に合わせて、ゆっくりと階段を昇っていく両選手。
「よろしく御願いします」
 そう告げつつ、握手を求めてくる楊小竜に、虚空牙(ec0261)も握手を返す。
「一つ聞きたい‥‥お前の流派『蚩尤八跋衝』とは? どこで学んだものだ?」
 そう問い掛ける空牙に、楊小竜はニコリと笑いつつ。
「南宋の西、中原よりも北にある小さな村です‥‥そこで、蚩尤八跋衝を教えている師父がいますよ」
 そう告げると、楊小竜は開始線に戻っていく。
(蚩尤八跋衝か‥‥これは後で道師父に聞いてみる必要があるか‥‥)
 そう心の中で呟くと、空牙も構えを取る。
──クックックックックッ
 どこからともなく聞こえる笑い声。
 それは空牙の脳裏に響く。
(またか‥‥またオレを支配するのか?)
 それは、空牙の中の殺戮本能。
 今までは存在していなかったそれは、空牙が朧拳を蚩尤から学んだときに生み出されたもの。
 それまでは理解していなかったが、この大会に参加し、少しずつ判ってきた。
「それでは‥‥。はじめっ!!」
 審判が手を振り上げる。
 それと同時に、楊小竜が素早く間合を詰めてきたが‥‥。

──ズガッ‥‥

 その横を空牙が通り過ぎる。
 その右腕には、楊小竜の首から上だけが握られていた。
──ザワザワザワザワ
 ざわめく会場。
 一瞬で起きた狂気に、会場は騒然となった。
「し‥‥勝者‥‥虚空牙っ‥‥治療班、急いで甦生手続きをっ!!」
 審判の声と同時に、複数の治療班が擂台に駆け昇ってきた‥‥。
「‥‥駄目だ‥‥また押さえられなかった‥‥自分の中の狂気を‥‥」
 フラフラとしつつ、空牙が擂台から降りていく。
 なお、この試合で空牙は勝利したものの、ヤりすぎという事で厳重注意を受けた。
 もし対戦相手の甦生が間に合わなかったら、空牙は殺人の罪に問われていたかもしれない‥‥。
 

──紅小鈴(盤古朧拳)vs王羲英(羅漢拳)
 血塗られた擂台が清められるまでに、1刻の時間が経過していた。
 この間に、紅小鈴(ec0190)はずっと瞑想を続け、盤古朧拳特有の呼吸法を続けていた。
「紅小鈴殿、御時間です」
 その案内人の呼び声に、小鈴はゆっくりと廊下を歩く。
 そして擂台に出たとき、改めて自分がどんな所にやってきていたのかを理解した。
 大勢の観客が自分達を見ている。
「はっはっはっはっ。お嬢ちゃん、ここは初めてかな?」
 そう告げるのは、対戦相手の王羲英。
「はい。すごいですね‥‥」
 ぐるりと周囲を見渡しつつ、そう告げる小鈴。
「そうかそうか。まあ、今日は頑張りなさい‥‥」
 と告げて、王羲英は開始線に立つ。
 そして小鈴も線まであるき、ゆっくりと構える。
「それでは‥‥はじめっ!!」
──ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドトッ
 審判の掛け声と同時に、王羲英と小鈴が突如間合を詰める。
 そこから生み出される激しい連撃の雨。
 お互いが、相手の連撃を受け流し、叩き込む。
 それがずっと繰り返されていた。
(速度が互角‥‥手数も五分で‥‥)
 そうこころで呟く小鈴。
「ふむふむ。いい速度じゃな‥‥では、こっちもそろそろ本気でいくぞ?」
──ドガガガガカガガッ
 その王羲英の言葉と同時に、小鈴はがんめんと 胸部に12発の正拳が叩き込まれ、擂台の下にぶっとばされた。
「い‥‥いたた‥‥今のは‥‥」
 頭を押さえつつ、小鈴が擂台の上に戻る。
「拳聖・王羲英か‥‥相手が悪かったか‥‥」
 擂台の下で、燃燈道人がそう小鈴に告げる。
「け、拳聖‥‥そんなぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 擂台に昇った小鈴を、ショックが襲う。
 華仙教大国統一大武会で得られる『玄武王』『朱雀王』『白虎王』『青龍王』の称号とは別の、華仙教大国最高の称号。
 それが『拳聖』。
 強さだけではなく、全てが揃った者にのみ、国王から送られる称号。
 今、小鈴の前に立っているのは、その『拳聖』を受けた武道家である。
「さて、盤古朧拳使いのお嬢さん、そちらもそろそろ本気で‥‥」
 王羲英がそう告げる。
 と、小鈴も仁王立ちの施政を取り、両手を胸の前にあわせる。
「把ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 息吹が体内を駆け巡り、新たなる力が沸き上がる。
「これが盤古朧拳です!!」
──フッ‥‥
 その言葉と同時に、小鈴の姿が消えた。
 だが、王羲英はじっとその場を動かない。
 そして
──ダン!!
 突然、王羲英が正拳を右正面に叩き込む。
 と、その先には、腹部に正拳がめり込んだ小鈴が立っている。
「ぐはぁっ!!」
 口から血を吹き出し、擂台に崩れる小鈴。
「うむうむ。基礎修練の差じゃな‥‥」
 そう告げると、王羲英は身動きの取れない小鈴を掴むと、擂台の下の燃燈道人に投げる。
「し、小鈴選手、戦闘不能により、勝者、王羲英っ!!」
──ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
 歓声が、遠くなっている意識の向こうで聞こえてくる。
(あ、あれは私のじゃない‥‥)
 悔しい。
 あれだけ修行したのに、負けた。
 その悔しさの中、小鈴は意識を失っていった。


──葉雲忠(八跋衝) vs憐泰隆(最強流)
 歓声の冷めやらぬまま、次の試合の選手が擂台に上がる。
「続いて第三試合っ!!」
 その審判の声に、擂台の下で待機していた憐泰隆が擂台に昇る。
 対戦相手である葉雲忠(ec0182)の姿は、どこにもない。
「ふむふむ‥‥棄権したか‥‥それもまた試練」
 そう納得している憐泰隆。
 そして、その頃の雲忠は、燕京から離れる馬車に揺られていた‥‥。
「戻ったらさっそく修練に入る。玄武、そして白虎の師範のもとで、雲忠‥‥覚悟はいいな?」
 その林彪師範の言葉に、雲忠は一言『ああ‥‥』とだけ告げていた。




──陸潤信(猛虎拳) vs天暗星楊心(七星拳)
 ゆっくりと擂台を降りていく憐泰隆。
 それと入れ代わりに擂台に昇ったのは、天暗星楊心と陸潤信(ea1170)の二人。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。長かったぜい!!」
 ゴキゴキッと拳を鳴らす天暗星楊心。
 その前で、潤信が静かに深呼吸する。
「そうですね‥‥では、参ります!!」
 開始線で抱拳礼をする潤信。
 相手も抱拳礼で構えたのだが、包む手が右と左が逆になっていた。
 それはすなわち、『殺す』という意志の現われ。
──ダン!!
「‥‥なるほど。貴方が、私を‥‥」
 一歩踏込んで、拳を前に出す潤信。
「本当にながかったぜ‥‥済まないが、この擂台の上で死んで貰う‥‥」
 そう告げると同時に、天暗星楊心がいっきに間合を詰めてくる!!
「フンっ!!」
──ドガガガガガガガガガガカッ
 瞬時に正拳、肘撃、再び正拳と連鎖的に叩き込んでくる天暗星楊心。
 だが、潤信はそれらをオーラボディとデッドorライブで耐えぬく。
「くそっ‥‥丈夫な奴だな‥‥」
「誰に頼まれて、私を殺しにきたのですかっ!!」
 がっちりとガードしたまま、潤信がそう問い掛ける。
「依頼人の名前は明かせないな‥‥」
──ドガガガガガガガガガカッ
 再び連鎖連撃を叩き込む天暗星楊心。
 だが、やはり潤信には聞いていない。
「くそっ‥‥この‥‥このっ‥‥」
 ダンダンと相手の攻撃に雑な部分が見えてくる。
──ゴッ!!
 そして一瞬の隙を付いて、潤信が反撃開始。
 素早く『猛爪撃』を叩き込む。
 虎拳カウンターでのストライク!!
 それが綺麗に天暗星楊心に決まる。
「ぐはぁっ!!」
 慌てて後方に下がる天暗星楊心に、続いて潤信の一撃が決まる!!
──ザン!!
 「猛虎推爪っ!!」
 猛爪撃の猛虎拳バージョン。
 踏込みが強化され、さらに深く相手の肉体を穿つ。
「グファッ!!
 口から血を吹き出し、大地に崩れる天暗星楊心。
「さあ、教えて貰おう。誰に雇われた!!」
 倒れている天暗星楊心の髪を掴み、そう問い掛ける潤信。
「そ‥‥それは‥‥」
 そう告げた瞬間、
──ゴギッ!!
 天暗星楊心が、潤信の股間を蹴り上げた!!
「教えるとおもうかよ、この間抜け野郎‥‥」
 そう笑いつつ呟くが。
「だと思った‥‥」
 しっかりと左手で蹴り上げてきた足をガードしている潤信。
 そして思いっきり拳を引くと、『劈拳』を顔面に叩き込む!!
──ドゴッ
 その一撃で、天暗星楊心は気絶。
「勝者、陸潤信っ!!」
 審判の言葉に、潤信は周囲の観客に対して抱拳礼を取る。
「さて‥‥ゆっくりと教えてもらう‥‥」
 戸板で運ばれていく天暗星楊心のあとを、潤信はゆっくりとついて行った‥‥。



●羽ばたいて、そして駆け抜けろ!!
──昇竜?八跋衝道場
 静かに境内で、絶叫がこだまする。
「げ‥‥限界‥‥」
 御堂から転がるように落ちてくる荒巻美影(ea1747)。
 奥義継承の儀。
 そこで美影は色々と考えた。
 共に修行している夜桜翠漣(ea1749)と鳳蓮華(ec0154)。この二人とは修行内容が違う。
 それはどうしてか?
「”氣”には固有の”波”があり”色”がある。‥‥これって手掛かりにならないかしら?」
 そう考えた美影の、気の波長を変える作戦。
 そしてそれは見事に失敗し、御堂の中で溢れた気の暴発に巻き込まれた!!
「そうじゃないわよ‥‥普段から纏うのよ‥‥気をね。そうすれば、自分に一番『自然』な型が見えてくるから‥‥」
 そうアドバイスしているのは翠漣。
 ちなみに、すでに継承の儀はクリアーしている模様。
「自然に‥‥ですか」
「そう。まずはゆっくりとで構わないので、気を意識して‥‥」
 翠漣の指導に、美影がゆっくりと肩を取り直す。
 気を感じ、それと一体になるイメージ。
「そう、その調子で。あとは、それが日常いつでもできるようにならしていけばいいですよ。そうなれば、無意識に自然な流れで出来るようになるから」
 確かに、その方法だと、波長の違う人でも簡単に練習できる。
「多謝(ありがとう)。早速試してみるわね‥‥」
 そして、美影も再び猛特訓度に突入。

──その頃の御堂
「‥‥天井が見える‥‥」
 朱雀継承の儀に再度挑戦しているのは鳳蓮華(ec0154)。
 まずは御堂に入ると、そのまま床に台の時になって、天井をじっと見上げていた。
(うーん、確かに今まで修得した全てを、根こそぎ壊されちゃうのは困るし怖いけど‥‥だからと言って何もしない訳にもいかないんだよね)
 そう心の中で呟くと、ゆっくりと上半身だけを起こし、周囲の壁を見渡す。
 大量の型が記されており、それらの全てが、異なった型を表わしている。
「この全てを使うわけではなく、私にとっての『朱雀八跋衝』の型を組まないといけないのよねぇ‥‥」
──バッ!!
 まずは青龍八跋衝の型を作り出す。
 気をベースとしない為、これはまったく問題ない。
──バババババハバッ
 続いて玄武八跋衝。
 鋭い体術と力強い意志力。
 これもまったく問題なし。
──スッ‥‥
 そしていよいよ朱雀八跋衝に入る。
 今までの動きと連動させて、自分に無理の内動きを。
──スッ‥‥スススッ‥‥
(不思議。こんなに落ち着いているなんて‥‥)
 蓮華はそう心の中で思いつつ、型を続ける。
 すでに恐怖心はない。
 体が感じるままに、水が流れるがままに。
 そして一通りの型を納めたとき、御堂の扉がゆっくりと開く。
「よし、鳳蓮華、朱雀継承の儀を成し遂げた事を認める!!」
 宋江師父がそう叫ぶ。
「ふぅ‥‥た、助かったぁ‥‥」
 そう呟くと、蓮華は近くの草原で大の字に転がった。

──そして
 蓮華が朱雀継承を終えてから3日後、なんとか美影も継承を終えた。
 その日は3名とも御堂に入れられる。
 中央には宋江がたち、目の前の三人にゆっくりと話し掛ける。
「のこるは白虎のみ。残された時間はあと22日、11月の10日までに修得しなくては、全てが水の泡となる‥‥」
 そう告げられると、一行はゴクリと息を呑む。
「宋江師父。最後の白虎八跋衝の支障はどこにいるのですか?」
 そう問い掛ける翠漣に、宋江静かに肯く。
「伝説の地『崑崙(こんろん)』にいる。その場所に向かうのならば、これを‥‥」
 そう告げると、宋江は古い鍵を取りだし、入り口の扉に突き刺す。
──ガキガキガキガキ
 ゆっくりと鍵を回し、そして扉を開く。
 一行の目の前には、巨大な草原。そしてその向うにある小さい城が目に入った。
「これが崑崙。いくのなら覚悟を決めて。なぜならば」
 そう告げた時点で、すでに蓮華が飛込んでいる。
「一度入ると、崑崙の管理人に出会うまでは出られぬのでそのつもりで‥‥」
「そういう事は、先に説明してぇぇぇぇぇぇ」
 扉の向こうで絶叫をあげる蓮華。
 と、その蓮華の後ろから、一人の人物がやってくる。
「はじめまして。私は太子翁。今後ともよろしく」
 そう告げると、太子翁は蓮華に向かって一言。
「それじゃあ、さっそく始めようか‥‥もう時間がないのだからね‥‥」
 と告げて、様々な武器を取り出した。
「蓮華君だったかな? 八跋衝の4っつの流派に付いての簡単な説明をしてみてください」
 そう告げる太子翁に、蓮華はゆっくりと解説を開始。
「えーーっと。八跋衝は5つつの流派があります。一つは歩法と手練の『青龍』、一つは外功と内功の『玄武』、一つは気の『朱雀』、そして一つは器械の『白虎』、最後が『麒麟八跋衝』ですよね?」
「うむ、グゥゥゥレイトォォォォォォォォォォ。その通りです。ではまず、貴方が会得した三つを見せてください」
 そう太子翁に告げられ、蓮華は今までの型を演舞する。
 その姿を見ていた美影と翠漣もまた、扉を越えてくると太子翁に挨拶。
「始めまして。夜桜翠漣です」
「荒巻美影です。よろしく御願いします」
 そう告げる二人。
「おーい宋江、この二人も正式継承か?」
 そう扉に向かって問い掛ける太子翁。
「ええ。頼みますよ‥‥」
 と告げて、扉はゆっくりと消えていく。
「それじゃあ、二人にも型を披露してもらおうかなと‥‥蓮華はこれ」
 そう告げて、太史袁は二つの剣を蓮華に手渡す。
「これは?」
「その二本を使って、今の型総べてをなぞってみろ。少しずつアレンジし、剣を有効につかえるようにな‥‥」
 そう告げられて、蓮華は早速トライ。
 その後、美影と翠漣の二人も武器を使った『器械』を学びはじめた。



●失ったもの、とりもどせないもの
──昇竜
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 目の前の傀儡人形に掌底を叩き込みつつ、朱蘭華(ea8806)が絶叫している。
 散らかっていた道場の掃除を終え、蘭華は早速特訓を開始。
 目標は『黄式猛虎拳継承者』の証し。
 それを求めて、蘭華は黄師父に問い掛けたらしい。
「残りの時を掛けて。猛虎拳を継承するに値する腕と心と気の器を磨かせて下さい、師父よ」
 そう問い掛けて、黄師父は真剣な表情で道場奥の倉庫から、5体の傀儡を引っ張り出してきた。
「それじゃあ‥‥」
 と告げて、傀儡の額に札を張付ける黄師父。
 やがて、傀儡はゆっくりと動きだし、猛虎拳の構えを取る。
「師父、この傀儡は一体‥‥」
「一応は宝貝。わが黄式猛虎拳の初代がから伝わる継承傀儡。代々の黄式猛虎拳継承者は、これらから型と戦い方を学んできた‥‥で、蘭華、黄式を継承するという事がどういう事かわかるな?」
 その言葉に、蘭華は静かに口を開く。
「黄式猛虎拳は代々伝承者は一人のみ、そして伝承したものは、次の伝承者に全てを伝えるまで、負ける事は許されない‥‥」
 その言葉に、黄月哉は肯く。
「‥‥左様。正式な戦いという場に置いての敗北は、継承者の死を意味する‥‥。なら、今宵より、継承の為の修行に入る‥‥」
 そう告げると、黄月哉は外に出ていった。
 残った蘭華は、静かに傀儡の前でゆっくりと型をなぞりはじめた‥‥。


──同、河原にて
 早朝。
 朝靄の立ちこめている中、石動悠一郎(ea8417)は静かに座禅を組んでいる。
 心を一つに。
 鏡のごとく研ぎ澄ます。
 周囲に存在する全ての気を感じ取り、そしてそれらと同化する。
 そうすることで、全ての気をもつものの力を感じ取ることができる。
 眼の前に置いてある枯れ枝。
 その先にある小さな蕾。
 石動はそれをそっと手にし、意識を蕾弐週中している。
(‥‥生きている‥‥眠っているだけだな‥‥)
 その蕾から微かに感じる息吹を、石動は微かに捉える事が出来た。
「破壊の気と再生の気‥‥大極に位置する二つの気を自在にコントロールすることが大切‥‥」
 そう呟くと、石動はそっと枯れ枝を手に取る。
──フッ‥‥
 ほんの僅か。
 蕾が弾けないように、優しく気を注ぐ。
 破壊ではなく再生の気。
 やがて、蕾はほんのりと開きはじめる‥‥。
「袁竜師父。これが、貴方の教えたかった気なのですね‥‥」
 そう告げて、大地に枝を刺す。
 その先には、優しく花が咲いていた‥‥。

──そして
 昇竜復興。
 その為には、まず南蛮に逃げていった黄巾賊をなんとかしなくてはならない。
 いつまた張角達が戻ってくるカ、それが不安でたまらない人たちの為に、石動は昼間、街周辺を巡回していた。
 石動の提案で新たに編成された自警団も機能し、街は以前の明るさを取り戻しつつあったが‥‥。

「‥‥」
 その夜。
 石動の元に届けられた布。
 その中には、真っ二つに砕かれた玉璽が納められていた。
「これは‥‥袁竜の‥‥一体なにがあった!! 袁竜師父に、何がおこった?」
 使いの者の肩を揺さぶり、そう叫ぶ石動。
「袁竜は、曹飛延に氾濫した者として処刑された‥‥それは、袁竜が最後に、石動に託すと告げた者だ‥‥」
 そう告げると、使いのものは振り返り、前に進む。
「袁竜‥‥すまない‥‥礼を言う‥‥」
 そう告げると、石動は砕けた玉璽を懐にしまう。
「気にする必要はない。我もまた、我が君主の命によってきただけの事‥‥」
 その低い声に、石動は呟く。
「君主‥‥貴方は‥‥曹飛延の‥‥」
「いかにも‥‥名は夏侯蓮。曹飛延殿の命によってやってきた」
──ガギィィィィィィィン
 その刹那、石動は剣を引き抜く。
 だが、夏侯蓮もまた、つるぎを引きぬいてその剣を弾いた。
「怒りは目を曇らせる。今はまだ、我と戦うときではない‥‥」
 その言葉に、石動は剣を修める。
「す、すまない‥‥つい‥‥」
 大切な師父の死。
 そしてそれを告げに来たもの。
 華仙教大国西方を統一しようとしている曹飛延。
 様々なことが、頭の中をよぎっていった。



 西夏の独立。
 それに友王戦乱は、いよいよ本格的になります。
 西夏皇帝『曹飛延』、北方の守護者『孫飛燕』、そして華仙教大国元首『海陵王』。
 この三つの精力にり、華仙教大国は新たなる戦乱に突入しようとしています‥‥。
 そして、いよいよ『華仙教大国統一大武会・龍王・決勝トーナメント』も大詰め‥‥
 11月に行なわれるベスト16の戦いは、どんな決着が付けられるのでしょうか。


・決勝トーナメント・ベスト16
 
 虚空牙(朧拳)  vs天狼王(星君朧拳)
 陸潤信(猛虎拳) vs憐泰隆(最強流)
 リクルド・イゼクソン(玄武拳)vs王羲英(羅漢拳)
 アレキサンダー・王(虎拳) vs飛四龍(太極拳)
 王院(蟷螂拳) vs赤狐(秘宗拳)
 鎮観(通臂拳) vs一撃必殺斎(六合拳)
 莫允(莫家拳) vs『玄武王・海燕』(少林寺)
 『朱雀王・白眉道人』(白眉拳) vs宗陽(白鶴拳)
 龍孔(五行拳) vs李林怜(少林寺)

 以上が、ベスト16です。
 勝ち抜くたびに再び対戦相手の抽選が行なわれます。


(第10回に続く・・・・・・)