幻の流派を追え!!

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:16人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年09月01日
 〜2007年09月31日


エリア:華仙教大国

リプレイ公開日:09月27日21:18

●リプレイ本文

●序章
 それはある日の事。
 華仙教大国南方・昇竜のさらに南での出来事。
「ふはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 口からゆっくりと樹を集め、張角仙人が体内の傷を癒していた。
「ずいぶんと酷くやられたようだな、張角」
 そう張角に話し掛けているのは、この南蛮の王である『孟獲』。
 古き王の名をそのまま継承しているらしいその男は、近くに座っている妻の『祝融』を見る。
「まったくだよ。張角ともあろう人が」
 そう告げる祝融夫人に、張角はゆっくりと口を開く。
「八跋衝使いがいた‥‥かなりヤバイ‥‥」
 そう二人に告げて、張角は外にでていった。
「田舎拳法が‥‥祝融、戦の準備を進めてくれ」
「あいよ。でも、昇竜という街も、これでおしまいだぁね。兀突骨もだすのかい?」
 そう問い掛ける妻に、孟獲はニィッと笑みを浮かべた。



●究極の選択
──南宋・臨安のちょっと先
 静かな境内。
 臨安奥にある山寺に、月詠葵(ea0020)と琴宮茜(ea2722)の二人がたたずんでいた。
 二人の目の前には、高順幾が、二枚の英霊布を手に立っている。
「さて‥‥それでは、英霊契約といくかのう‥‥二人のうち、どちらを呂布奉先殿が選らぶのか‥‥」
 そう告げて、高順幾は英霊布を二人に握らせる。
 そして一言
「偉大なる英霊・呂布奉先殿。この子たちは、貴殿の力を求めるものなり‥‥彼女達に力を与えて欲しい!!」
 そう高順幾が叫んだ瞬間!!
──ゴロゴロゴロゴロ
 天空に暗雲が広がる。
 
──ザッバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
 そして雷鳴が轟き、二人の間に落ちる!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
 絶叫をあげる二人。
 周囲に水蒸気が発生し、視界を完全に奪う!!
 近くに居たはずの気配も瞬時に打ち消され、辺りに何かあるのかという感覚がマヒした二人である。の
『‥‥一体、何があったのですか!』
 琴宮がそう呟き、周囲を見渡す。
『突然の雷鳴。近くに落ちたことは確かのようですね?』
 月詠もそう告げて、周囲を見渡す。
 だが、琴宮は月詠を見付けられず、月詠も又琴宮を見付けられない。
 お互いの気配は感じるような、でもそれすら近くに居るのだろうということだけ。
「ふーーーーむ。これは参ったのう‥‥」
 その光景を見つつ、高順幾は腕を組んで困り果てていた‥‥。



●強者どもが夢に見る
──燕京・華仙教大国統一大武会・龍王・決勝トーナメント会場
 各地の地区予選を勝ち抜いた猛者達。
 彼等はこの燕京に集まり、決勝トーナメント参加手続きを終えた後、それぞれが宿に向かう。
 大会主催からの宿の提供はあるものの、半分以上の選手が自分で宿を見付け、そこに向かっていく。
 そして荷物を置くと、彼等は街に繰り出す。
 英気を養う者や、宿の裏で訓練に明け暮れる者、酒場でのんだくれる者等など、様々な時間を過ごしているようだ。
 このような大きな大会ともなると、滞在時間がかなり長い。
 そのため、あらかじめ大会以外の仕事でやってくる人もいるようである。
 武道家でありながら商人。
 それもまた、珍しい光景ではないようで。

 巨大な擂台の中央で、陸潤信(ea1170)はくるりと周囲を見渡した。
 ここが華仙教大国統一大武会の決勝トーナメント会場で、潤信は大会前に、ここの空気に馴染むためにやってきた。
「ここまで来たんだ‥‥」
 目を閉じ、観衆を思い描く潤信。
 脳裏に浮ぶのは、びっしりと会場を埋めつくす観衆。
 その中に立ち、まだ見ぬ敵を相手に戦う自分。
 だが、ふと不安が心の中を駆け抜ける。
 なぜ強くなろうとするか。
 先月、問われた質問。
 そしてその答えを、まだ見出していない潤信。
 富や名声の為か?

 否!!

 心の中で問答を繰り返しているうちに見えてきた答え。
 
 生きる為‥‥

 今はそれでいい。
 ゆっくりと階段を檻、会場を後にする潤信。
 そして入れ違いに、潤信のように会場にやってくる武道家が一人、また一人‥‥
 彼等の表情は真剣そのものであった‥‥。

「猛虎拳使いの潤信だな‥‥」
 ある武道家がすれ違いにそう話し掛けた。
「ええ。貴方は?」
「お前は命を狙われている‥‥気を付けたほうがいい」
 そう小さい声で忠告をして、その武道家は功夫を始めた。
 潤信はその言葉が気になって仕方ない為、その真意を問いただそうとした。
 が、不思議な事に、潤信に忠告した武道家の姿はどこにも無かった。


──場所は変わって繁華街
 クビグビグビグビッ
 大勢の観客の見守る中、6人の酒豪達が己のプライドを賭けて呑む!!
 『華仙教大国統一大酒飲大会』と称されたいわば酒のみ大会。
 そこに飛び入りで参加した御堂鼎(ea2454)は、今、酒飲みとしての誇りが折れそうになっていた。
 酒を呑むのが運命と、いつもそう思って愉しく生きていた御堂。この大会には『ジャパン代表』ということにされてしまっているらしい。
 だが、参加者6名中2名までは既にギブアップしているのだが、あと3名が凄い。
 どれぐらい凄いかというと、酔いつぶれそうになっている御堂を横目に、談笑しつつ飲んでいるのだからたまらない。
「ヒック‥‥まらまららお‥‥まらのめろお‥‥」
 既に滑舌もおかしくなっている御堂。
──バタッ
 と、とうとうグロッキーの模様。

──そして宿
 参加賞の酒を抱きつつ、静かに‥‥やっぱり飲んでいる御堂。
 すでに弱いも覚めて、んでまた酔っている。
「このあたしが、あんなに早く酔いつぶれるなんてことは‥‥絶対にないっ!!」
 そう叫んで、空になった甕を数える。
「8‥‥9‥‥10‥‥ふふん。昨日の大会では5つつでギブアップだったのに、今日はその倍。やつぱり、あの酒には細工がしてあったようね‥‥」
──グビッグビッ
「ほほう。しかし負けは負け。酒飲みならばね愉しい酒を‥‥」
 御堂の前で酒を飲んでいる呂洞賓が、そう御堂に告げる。
「師父。ひっく‥‥一つお聞きしてよろしいですか?」
「かまわぬぞい‥‥」
「最後の酔八仙拳の師父・張果老どのは今、どこに?」
 師父に酒を注ぎつつ問い掛ける御堂。
「ふらりと歩くがよい。酒の向くままきの向くままにのう」
 ということで、御堂はフラリと町の中を散策もおど。


──場所は変わって朱鈴殿
「以上、これで今回の『昇竜の乱』の報告を終ります」
 大量の竹簡が置かれている執務室。
 その中で、蘭寛那(ec0186)が今回の件に付いての細かい報告を、完顔阿骨打に行なっていた。
「ふむ。なるほど‥‥では、張角異か数名の幹部は、南蛮の地に逃げていったのですか‥‥」
「はい。ですが、直に戦力を立て直して戻ってくると思われます。敵としては引き際がよく、まるで‥‥」
 その後の言葉が繋がらない寛那。
「こうなる事が判っていたようです‥‥か」
「はい、その通りなのです!!」
 ぱっと表情を明るくして、そう告げる寛那。
「となると‥‥厄介ですねぇ‥‥」
「ええ。敵の方には、確か‥‥魔星を肉体に降ろす宝貝があるそうです。今回の戦いでの報告にも、それらしい人が数名。確定しているのは一人ですが」
 そう告げて、その名前の記された竹簡を差し出す。
「ふむ‥‥となると、今後の対策を練る必要があるということですか‥‥」
「ええ。では、私はこれからの事を異色と考えなくてはなりませんので、これで失礼します‥‥」
 そう告げて、寛那はその場から退室。
「ふう‥‥大体これでよし‥‥あとは‥‥」
 そう告げて、寛那は建物の外に出て、とある酒場に入った。
 何か意味があるのではない。
 ただ、そうしなくてはならないような気がしたのである。

──酒場
「‥‥蘭寛那さんですね。お待ちしていました」
 寛那が酒場に入った時、抱拳礼を取りそう話し掛けてくる男が一人。
「ええ。貴方は?」
「成都の曹飛延と申します。貴方の御力を御貸し頂きたく参りました‥‥」
 そう告げると、曹飛延は寛那を座らせて、人目をはばかってゆっくりと話を始める。
「私に一体。どんな御用ですか?」
 そう告げる寛那に、曹飛延は一言。
「燕京を落とし、華仙教大国を一つに。すでに成都、霊州は私の支配下にあります‥‥」
 その言葉に、寛那は茫然とする。



●対立する力と力
──燕京・ちょっと郊外
 1、2、3、4、5、6、7、8
 号令に合わせて紅小鈴(ec0190)が型を作る。
「次、2、8、5、1、4、1、7」
 それぞれの数字は型のナンバー。
 燃燈道人はその型の流れを教える為に、この特訓方法を思い付いたのであろう。
「‥‥ハアハアハアハア」
 やがて息も切れていく。
 燃燈道人の掛け声に会わせた型、それは瞬時に行ない、綺麗に止める。
 それを一回の掛け声につき5〜12。
「小鈴、型は単体で覚えるに在らず。一連の流れを一つとしなさい‥‥5、7、9、3、5、6、2」
──バババババババッ
 素早く型を作る。
 素早く流れを生み出す。
 が、まだ荒々しい。
「燃燈道人、これはキツすぎます‥‥」
 と、さすがの小鈴がグロッキー。
「どうきつい?」
「硬いのです‥‥一つ一つの型が。そこから流れるように‥‥どうしてもあちこちがつまづきます」
 そう説明する小鈴。
 だが、燃燈道人は小鈴の前で構えを取った。
「では、ナンバーを」
 そう燃燈道人が告げたとき、小鈴は手加減無用で次々とナンバーを並べる。
 だが、それらを全て、燃燈道人は綺麗に決めて行った。
「そ、そんな‥‥」
「まあ、そう思うのも無理はない。では、次に小鈴。ナンバーは5つつに絞る。いいか?」
 その燃燈道人の言葉に、コクリと肯く小鈴。
「2、3、1、5、4」
「鋼覇、流水、天霊、地郭、月牙っ」
 型の名前を次々と叫ぶ。
 だが、やはり旨くない。
「ふーーーむ。小鈴、常に力を100%にしない。流水の時は力なぞ殆ど0、月牙は逆に120%。抜くべき部分と入れるべき部分をしっかりと見極めるのぢゃ」
 そう告げて、再び訓練を始める。
 燃燈道人の朧拳は『盤古朧拳』。
 それゆえ扱える技の難易度はかなり高い。
「燃燈師父。盤古朧拳について教えてください」
 そう告げる小鈴。
 しばらくして、燃燈道人はゆっくりと朽ちを開いた‥‥。



●八跋衝・恋心横恋慕
──昇竜・朱雀道場
「‥‥ゆっくりと気を感じて。意識を丹田に‥‥」
 朱雀八跋衝師範の宋江が、眼の前であぐらを書いている一行にそう告げる。
 朱雀・即ち気功の訓練。
 オーラとは同じ様で、これまた違う。
(意識を丹田に‥‥)
 ゆっくりと呼吸を繰り返し、気を感じようと必死な荒巻美影(ea1747)。
 その横では、夜桜翠漣(ea1749)が立ったままで『体全体の気を操る法』の訓練。
(最初は弱く‥‥全身を包む薄い絹衣のように‥‥)
 目に見えない気が翠漣を覆う。
 そしてじっとそれを感じ取り、衣の厚さをコントロール。
──バシュッ
 そして失敗し、気の衣が弾け飛ぶ。
「ふぅ?まだまだですねぇ」
 溜め息を突きつつ、そう呟く翠漣。
「でも、もう第二段階。早いですわよ」
 意識を戻し、美影がそう呟く。
 共に訓練をしているものの、この気についての訓練は他の人と異なる。
 気は一人として同じものを持っている者は存在しないという。
 それゆえ、修練方法もそれぞれバラバラ。
 宋江殿が一人一人に見合った訓練方法を教えてくれているのである。
「宋江師父、質問があります!!」
 片足で立ち、『朱雀の羽ばたき』という肩で底止している鳳蓮華(ec0154)が、近くで見ていた宋江師父に話し掛けた。
「そのまま、話をどうぞ」
「宋江師父ほどの人が、何で黄巾賊に捕まってたのかなー?」
 そう告げる蓮華に、宋江はニコリと笑った。
「敵の内部に潜入するためです」
「つまり、敵を内部から破壊すると?」
「いえいえ。黄巾賊に囚われている人質たちの安否を確認する為ですよ。あの牢獄はいつでも抜け出せます。けれど、そこで私が脱走したら、残されている人たちにとってよろしく在りませんからね‥‥」
 そう告げて、今度は近くの翠漣の元に。
「つまり、人質たちの安全の為に、わざと捕まっていたのですか?」
 その翠漣の言葉に肯く宋江。
「ええ。それに林彪から貴方たちがこっちに向かってくることはシフール飛脚で聞いていましたから」
「それで、蓮華が渡した『卒業証』を持って、ここに来いと指示を‥‥」
 美影が告げて、全員が納得。
「ということです。さて、午後からは全員で型の勉強。明日はまた朝からそれぞれのメニューを‥‥急いで仕上げる必要はありませんが、白虎師父の元に向かう時間も必要でしょうから」

──????

 その何か異痛そうな口調に、全員が頭を捻る。
「宋江師父、白虎師父の元に急ぐ理由はなんですか?」
 美影が問い、そして全員は戻ってきた答えに絶句。
「4っつの八跋衝を修めるまでの時間。それも、継承に必要な要素なんですよ‥‥」
 はい、全員で絶叫。
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ』
 ということでしたとさ。



●ありがとう、また何処かで出会える事を
──昇竜
 朝。
 大気が澄み切った時間。
 石動悠一郎(ea8417)は師父である袁竜と共に河原に向かう。
 綺麗な川の気、澄み渡る森の気、大地、風、全てのものから気を集める。
 石動はかろうじて、その目に見えない気という者を肌で感じる。
 口から醉、体内を巡らせて再び吐き出す。
 呼吸の中に、気を取り入れる。
 それが袁竜の最初の教えである。
「袁竜師父、袁式気孔拳の基礎だが、拙者はどれぐらいまで会得しているのだ?」
 そう告げる石動に、袁竜は落ちている枯れ枝を拾い、それを石動に手渡す。
「気の循環で、この枯れ枝に再び命を灯すまで‥‥というところですね」
 そう告げて、袁竜もまた近くの枝を手に取ると、気を巡らせる。
 枝についていたつぼみが綻び、見る見るうちに開いていく。
「‥‥信じられない。これも袁式気孔拳なのか?」
「ええ。破壊の気と再生の気。この大極である二つを自在に使いこなす事こそ、袁式気孔拳の極意になります。ということで‥‥」
 再び基礎訓練に入る石動。
 まだ石動の使う気では、枯れた植物に命を与える事も出来ない。
 尤も、袁竜曰、枯れ枝は枯れているのではなく、『内部に命を眠らせ。止めているだけに過ぎず。気を当てる事で活性化させただけです』との事。

──黄月哉道場
 沈黙。
 重く冷たい空気。
 道場の中央で、朱蘭華(ea8806)が師父である黄月哉に教えを乞うている。
「ふむふむ。気封じの点穴を突かれたか‥‥」
 先月の戦い。
 そこで蘭華は敵にうち勝ったものの、点穴を打ち込まれて気のめぐりが狂わされた。
 そして樹を使った技が全て使えなくなっていたのである。
 これは蘭華の奥義である『爆虎掌(ばっこしょう)』が打ち出せないということ。
 どうしてもこれを解除しなくては、ここから先の『更なる高み』には向かえない。
「どうですか‥‥」
「蘭華、手を出してごらん‥‥」
 そう告げられ、蘭華は黄師父煮てを差し出す。
 それを掴み、ギュッと握ると、黄師父は蘭華にこう問い掛けた。
「今、大量の気を送ったのだが‥‥感じたか?」
「いえ‥‥全く‥‥」
 動揺している蘭華は、とりあえずそれだけは告げられた。
 だが、何も感じ取れない自分ノからだに、今は絶望感がフツフツと湧き出している。
「黄師父。御願いです‥‥私を元のからだに戻してください。気を使うのでしたら、師父にはこの点穴の解除方法はわかりますね?」
 そう告げられて、黄師父はそっぽを向く。
「判る‥‥が、今のお前にはちょっと荷が重い」
 その言葉に、蘭華はムッとした。が、直に落ち着いて、師父に頭を下げる。
「それでも‥‥猛虎拳を継承できなくなるぐらいなら‥‥」
 その言葉は真実。
「ならば‥‥」
 そう告げて、黄師父は瞬時に蘭華の頭部の4っつの点穴を突く。
──ビシィィィィィィィィィィィィィィィィィィツ
 その刹那、全身を雷が駆け巡り、目眩と吐き気と劇痛が襲いかかる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。うっ‥‥うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 絶叫を上げて転がる蘭華。
 だが、黄師父はそんな蘭華を見て一言。
「点穴崩し。じゃが、その痛みと苦しみは7日間続く‥‥それに耐えられないようなら‥‥そのまま痛みに狂い死ぬ。猛虎拳を継承するのなら、その痛みを越えてこい‥‥」
 そう告げると、黄師父は部屋から出て行くと、札を扉に張付ける。
『封っ!!』
──ビシッ
 部屋全体が結界に包みこまれる。
 蘭華はそこから出る事も出来なくなった‥‥。
「ウグッウガッアァァァァァッグァァァァァァッ」
 喉をかきむしり、痛みからでる叫びも声にならない。
 だが、蘭華はその試練を越えなくてはならなかった‥‥。



●岩をも穿つ
──南宋・とある山奥
 崖越しに静かに瞑想しているのは天狼王(ec0127)。
 天奉師父の告げた『試練』。
 それを為すまでは、新たなる修行に入る事が出来ない。
「昔どっかで聞いた事があったな。内弟子として流派に入るってのは、その流派の理に基づいて生活する事、だったか」
 そう言い聞かせて、静かに立上がる狼王。
 今までの自分は『我流』の武道家。
 だが、今は『星君朧拳』の門下生。
 今までのような生き方では駄目という結論に立った。
 つまるところ、星君朧拳で息を吸い、星君朧拳で眠り、星君朧拳で飯を食い、星君朧拳で歩き、星君朧拳で用を足す。
 生活の全てを星君朧拳にまで高める事が重要。
「一挙手一投足の全てを星君朧拳にて為す。生活こそが修行なり、と。今一度初心に戻ってやってみるか」
──パーン!!
 両手で頬を叩き、気合を入れる狼王。
 そしてまずは呼吸法から全てを変化させていく。
 それは、狼王にとってはかなり厳しい生活になった。
 ちょっとでも気を抜くと、直に元の『我流中心』の生活に戻る。
 それを意識しつつ、狼王はその場でしばし基礎訓練を開始したのであった。



●華仙教大国統一大武会・龍王地区予選
──南宋
 ザワザワザワザワ
 擂台賽を身に集った大勢の観客。
 其の日は、まだフリー対戦、間もなく行なわれる『龍王地区予選』参加の為の権利を得る為に、武道家たちはとにかく戦っていた。
「林彪師父、今、擂台に昇っている武道家は、対したことがないようぢゃが」
 そう問い掛ける葉雲忠(ec0182)。
「そうだな。実力的には雲忠と五分、実践経験で雲忠がやや振りというところだろう」
 そう告げる林彪に、雲忠が問い返す。
「青龍八跋衝をつかってもなのか?」
 だが、そんな雲忠の言葉に林彪は一言。
「まさか、ここの予選を抜けるのに八跋衝がもう必要なのか?」
 そう告げられる。
「いやいや、どんな敵に対しても、全力でぶつからせて貰う、その為の八跋衝ぢゃよ」
 どんな敵にも手加減はしない。
 その雲忠の心意気や良し。
「ふぅん‥‥でもねぇ‥‥せめて1回戦は八跋衝なしで、今までに培ってきた基礎訓練で十分行ける筈だな」
 その林彪の言葉は、俗に言う『絶対命令』であろう。
「うむ。ならばそうしよう‥‥」
 ということで、雲忠は八跋衝抜きでの一回戦となってしまったとさ‥‥。



●英霊を持つ者
──燕京
「‥‥美味い」
 とある店の軒先。
 椅子に座って、茶をすすりながら団子を食べる劉玲玲(ec0219)と、その横で座って同じく茶をすすり、団子を食べている海陵王。
「ね、ここの団子は絶品なんだからぁ‥‥」
 そう告げつつ、海陵王・憐泰隆に団子を進める玲玲。
「成る程のう。これはもう少し、世間を広く見る必要があるのう‥‥」
 そのままパクパクと団子を平らげる。
 その皿の枚数、実に25枚。
「しかし、こうして執務から離れるのも、たまにはいいのう‥‥はーーーっはっはっはっ」
 豪快に笑いつつ、そう告げる憐泰隆。
「あの、海陵王殿。お聞きしてよろしいですか?」
「うむ、なんだ?」
「英霊布について、どう思いますか?」
 ある意味、核心を突く問い。
「何も‥‥英霊の力を宿すもの。但し、英霊が所有者を認めた者にのみということから、『埋まっている才覚』をもつ者が英霊を得る事で、それを解放する。ようはきっかけの一つと、ワシは思っている」
 そう告げると、御茶をズズズと飲み干す。
「海陵王殿は、『劉備玄徳』の英霊を持つのですよね? それはどうやって手に入れたのですか?」
「これは我が家に代々伝わっていただけだ。この国の嘔吐ナったときには、もう手にしていた。もっとも、その時代には、まだ英霊を降ろす事は出来なかったがな‥‥」
 そう告げると、海陵王は静かに立上がる。

──パカラッパカラッパカラッパカラッ
 
 遠くから早馬が駆けてくる。
 そして海陵王の前を走り去ったとき、馬上より大量の矢が海陵王に向かって叩き込まれた!!
──バキバキバキバキバキッ!!
 だが、瞬時に動いた玲玲と海陵王の二人で、その矢を全て大地に叩き落とす!!
「ふん‥‥ここ最近の暗殺者は、随分といい動きをしてくれるのう」
 そんな呑気な事を告げる海陵王だが。
「冗談ではない。暗殺未遂ですよ!! 直に手配を掛けたほうが」
「無駄無駄。あれだけの手練れ、証拠を残しているとも思えない。馬や武器はこの街で手に入れたものだろうし‥‥」
 玲玲の焦りに、海陵王はあっさりとそう告げた。
「心当りは?」
「成都の曹飛延か、北京の孫飛燕、そのどちらかの手のものだろう。曹飛延は『曹操孟徳』を、孫飛燕は『孫策伯符』の英霊を宿す。『董卓仲潁』の英霊を宿す董印はすでにこの世に存在していない。いよいよ、この国もやばくなってきたなぁ‥‥」
 そう告げると、海陵王は拳をパーーーーーンと打ち鳴らした。
「成都の曹飛延って‥‥成都が陥落したのですか?」
 そう慌ててといかける玲玲に、海陵王もまたゆっくりと口を開く。
「古き歴史とはちょっと違うがな。成都、西涼、霊州の3っつ、これを修める『西夏』は曹飛延によって制覇。北京とその周辺は孫飛燕らによって治められている。このわしが治めているのは『燕京』とこの華仙教大国」
 おおっ、いぶし銀!!
「その話は、今暫くは自分の心の中に止めておいて。さて‥‥次に向かいましょ」
 そのまま玲玲は話題を変えた。
「なら、私に出来る事ない?」
 その言葉と同時に、しばし長考する海陵王。
「おお。ならば、西涼に潜入して、神龍(しぇんろん)にお伺いを立てて欲しい。この華仙教大国がまた動乱にはいるのか‥‥」
 その言葉に、ポカーンとしている玲玲。
 さて、どうなる事やら‥‥。



●街と山と
──とある山の麓の小さな街
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 絶叫を揚げつつ擂台の上で転がっているのはみたことのない武道家。
 その前に、口許に笑みを浮かべた虚空牙(ec0261)が立っている。

 蚩尤との特訓を続けて、一体どれぐらい死んだだろう。

 だが、その死の中から、空牙は確実に何かを見出している。
 それが何であるのか、それを実践してみたいという事で、空牙は蚩尤に許可を貰って、『華仙教大国統一大武会・龍王・予選』に参加した。
 だが、自分に出来る事がなんなのか判らないまま、空牙は一回戦の相手を『焼き滅ぼし』た。
「‥‥朧拳にこんな力が‥‥」
 じっと腕を見る。
 そこには、空牙の腕に巻きつくように、炎の形の異形の魔物が記してある。
「これと、蚩尤の朧拳を組み合わせる‥‥」
 そう叫んで、拳を一つに併せる。
 蚩尤の教え、道道士教え。

 そうして完成したのが、まさか『人を殺せる技』であったとは、思いも寄らなかったであろう。
「それでは‥‥第二回戦に入りたいとおもいます!!」
 
────ワーワーワーワーッ

 歓声が沸き上がる。
 その中で、空牙は何か、不思議な感覚に身を静めている。
「‥‥この会場の全員‥‥殺したら愉しいかもなぁ‥‥」
 蚩尤との特訓。
 それは空牙の腕に新たなる力を宿しただけでは無かった。
 空牙自身が、破壊と殺戮の衝動に駆り立てられている。
 それは判って居る。
 だが、その快感に逆らう事が出来ない‥‥。


 一つの乱が終りを告げると、新たなる乱が始まる。
 華仙教大国西方・西夏。
 新たなる王・曹飛延が古き血筋の名を戴き『曹孟飛延』を名乗り、西夏皇帝の位に就く。
 ほんのわずかの時間で西夏全てを掌中した曹飛延の目的は、華仙教大国全土統一。
 そんな中、いよいよ『華仙教大国統一大武会・龍王・決勝トーナメント』が開催される‥‥。



●ということで
──燕京、大擂台賽
 ズラリと並んだ64名の武道家達。
 れからの一ヶ月、彼等は戦いつづける。
 華仙教大国最高の称号を得る為に。

・決勝トーナメントA
 第一回戦(10月1日、第二回戦は10月5日)

 虚空牙(朧拳)  vs楊小竜(蚩尤八跋衝)
 紅小鈴(盤古朧拳)vs王羲英(羅漢拳)
 葉雲忠(八跋衝) vs憐泰隆(最強流)
 陸潤信(猛虎拳) vs天暗星楊心(七星拳)
 葉雲忠(八跋衝) vsステラ・エルシード(我流拳技)


・燕京予選B・南宋予選B(勝ち抜くと決勝トーナメントBに組み込まれます。10月1日に一回全試合)
 リクルド・イゼクソン(玄武拳)vs楊夫人(鳳凰拳)
 天狼王(星君朧拳)      vs早川小五郎(柳生流徒手体術)


(第9回に続く・・・・・・)

今回のクロストーク

No.1:(2007-09-19まで)
 劉玲玲(ec0219)に問う。
海陵王の頼み『西涼に向かい、神龍にお伺いを建ててきて欲しい』というのが発令しました。実行しますか?

No.2:(2007-09-19まで)
 朱蘭華(ea8806)に問う。
『いかなる犠牲を払っても、封じられた気穴を取り戻すか?』