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幻の流派を追え!!
■クエストシナリオ
担当:
久条巧
対応レベル:
‐
難易度:
‐
成功報酬:
-
参加人数:
16人
サポート参加人数:
-人
冒険期間:
2007年08月01日
〜2007年08月31日
エリア:
華仙教大国
リプレイ公開日:
09月06日04:17
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●リプレイ本文
歴史の道標
──燕京
久しぶりの燕京。
この街を出たときは、もっと活気が在った。
けれど、今の燕京には、あの当時の活気はあまり感じられない。
町の中を時々自警団や融資の武道家達が見回り、有事に対しての警戒をしている。
華仙教大国南方で起こった『昇竜の乱』。
その影響がここまで届いているのだろう。
──燕京裏通り・珍品堂
「あいや、とうとう見つけたアルカ」
久しぶりに店を訪れていた劉玲玲(ec0219)に、珍品堂の店長は驚いた声を上げている。
無理もない。
玲玲の腕には、真紅の『英霊布』が縛られていたのであるから。
「ふむふむ。で、英霊との契約は?」
そう問い掛ける太乙大人に、玲玲は一言。
「孫尚香です。そこで太乙大人にお尋ねしたい事があるのですが‥‥」
そう問い掛ける玲玲に、太乙と店長は肯く。
「劉備玄徳の英霊を持つ人をしっていますか‥‥」
その玲玲の言葉に、二人は瞳を丸くする。
「え‥‥ええ‥‥」
「アイヤァ。玲玲知らなかったアルカ? 実はウワわっ太乙大人ナニヲスルアルカヤメルアルフジコ‥‥orz」
何かを言いかけた店長の朽ちを手で塞ぐ太乙大人。
「この燕京にいますよ‥‥まあ、気長に探してみてください」
そう告げると、そのまま店長に店の奥に向かうように指示。
「そうですか。色々とありがとうございました‥‥」
そう告げて立ち去ろうとする玲玲。
と、入り口近くに置いてある箱をふと見る。
それには英霊布が治められている筈。
「太乙大人。この英霊布には一体誰が眠っているのですか?」
「誰も。まあ、あえていうならば、全ての英霊を呼び寄せます。かの猛将『呂布奉先』であろうとね‥‥」
──朱鈴殿
久しぶりに燕京に戻ってきた玲玲は、まずは朱鈴殿の完顔阿骨打の元を訪れている。
「ご無沙汰しています完顔師父」
抱拳礼でそう挨拶をする玲玲に、完顔師父はにこりと笑いつつ挨拶を返す。
「ご無沙汰しています。随分と見ないうちに、たくましくなりましたね」
そう告げる完顔師父。
「ええ。お蔭様で。師父も御変わりなく。どうやら英霊布も手に入れたようで、それは何よりです」
そう告げつつ、完顔師父はじっと玲玲を見る。
「随分とご無沙汰していますね。貴方の契約英霊は『孫尚香』ですか」
そう告げると、完顔師父は頭を縦に振る。
「御願いがあるのです。私の英霊が判るのでしたら、この地にいるという劉備玄徳の英霊を持つ方にお会いしたいのですが‥‥」
そう告げると、完顔は引き攣った笑いを見せる。
「え‥‥ええ‥‥そうですね。ではこちらでお待ちください‥‥ちょっと手配してみましょう」
そう告げて、完顔は退席。
玲玲はそのまま待ち合いの部屋でしばし茶をすする。
──そして一刻のち
ガラッ
ゆっくりと扉が開く。
「完顔さま‥‥あ、ああ‥‥これは失礼しました!!」
パアッと明るい顔を見せた玲玲。
だが、扉のほうに立っていたのは、この華仙教大国の元首である海陵王・憐泰隆であった。
慌てて抱拳礼を取る玲玲に、憐泰隆は手をすっとあげる。
「よい‥‥で、貴殿が孫尚香の英霊を受け継いだというのか?」
そう告げる憐泰隆に、玲玲は肯く。
「はい。それで、完顔師父に『劉備玄徳』の英霊を持つ方を紹介して頂こうと思いました」
そう告げる玲玲に、憐泰隆は自信を指差す。
「このワシが劉備玄徳の英霊を持つ。見せてやろう」
そう告げて、手首に巻いてある布をほどく。
その下煮は、真紅の英霊布が巻かれていた。
「‥‥そ、そうでしたか‥‥」
玲玲のイメージ。
確かに英霊布をもつ者は高貴な身分であるという予測はしていた。
が、まさかこの国の元首がそうとは思ってもいなかったのであろう。
「おっと、そろそろ公務に戻らねばのう。ではこれで失礼する‥‥」
「海陵王殿。またお会いできますか?」
そう問い掛ける玲玲に、憐泰隆は肯く。
「いつでも来るがよい。自らの名を入り口で示せ。さればここまでは通れるようにしておこう」
そう告げて、海陵王は退室。
残った玲玲は、緊張感の解けないままにしばしののち朱鈴殿をあとにした。
●呂布奉先への道
──臨安のちょい先
高順幾の家で、ただひたすらに『文』を学ぶのは月詠葵(ea0020)。
この地が十常侍によって圧政を敷いているという事実、月詠には見捨てることは出来ない。
彼等を倒し、この地を平定しなくては。
今の彼等を見捨てること、それは即ち『義』に反する。
それは高順幾の教えを無視することであり、呂布奉先への道を自ら閉ざすことと鳴る。
そのため、月詠はただひたすら『文』を学び、街の人たちから十常侍についての情報を集めていた。
・十常侍には、武に強い配下が大勢居る
・十常侍達はそれほど強くはないが、その配下達がかなりの武練である。
・十常侍達の配下の中でも、呼延灼(コ・エンシャク)と呼ばれるものは別格であり、朧流双鞭使いであるということ
「‥‥こちらは私一人、相手は約20人の手練れと呼延灼ですか‥‥」
月末には再び十常侍達が見回りにやってくる。
その時には、彼等を相手にしなくてはならないのに、こっちの戦力は月詠一人。
──ギィィィィィッ
静かに扉が開く。
「私でよろしければ、御力になりますが‥‥」
そう告げて、やっくりと頭を下げるのは琴宮茜(ea2722)。
その後ろには、巨大な馬が一頭、じっとたたずんでいる。
「貴方は?」
「はじめまして。琴宮茜と申します。呂布奉先の英霊を求め、この地にやってきました。先程、ここの主である『高順幾』殿には挨拶をしてきまして。こちらで色々と御困りのようと伺いましたので、おちからになれればとおもいまして‥‥」
渡りに船とはこの事であろう。
「それは助かります。私は月詠葵、貴女と同じ『呂布奉先の英霊』を求める者です」
その言葉に、琴宮茜は驚きの表情。
「そうですか。では、お互いに頑張りましょうね」
「ええ。それにしても琴宮さんは随分と軽装ですね。この近くに住んでいらっしゃるのですか?」
そう問い掛ける月詠。
確かに、琴宮の荷物は長旅葉のものではない。
「旅の荷物は馬達に。私は赤兎馬でここまで‥‥」
その言葉に、月詠は慌てて外に飛び出す。
確かに、琴宮の荷物を積んでいる馬が2頭、その横に立っている巨大な馬が一頭。
その巨大な馬の鬣には、真紅の英霊布が結ばれていた。
「こ、これは‥‥英霊布、この馬はまさか、『赤兎馬の英霊』を降ろしているのですか?」
動揺する月詠に、琴宮はニコリと微笑む。
「ええ。それに‥‥」
そう告げて、琴宮は赤兎馬にこう告げた。
「赤兎馬、方天画戟っ!!」
──ヒュンッ
その瞬間、天より一本の方天画戟が飛来し、琴宮の足元に突き刺さる。
「‥‥貴方は、呂布奉先に認められたのですか?」
そう問い掛ける月詠に、琴宮は頭を左右に振る。
「私が認められたのはこの赤兎馬だけです。方天画戟は、これを護っていた赤兎馬から借りているだけ。私の自由には使えません」
それだけでもたいした物ではあるが、まずは十常侍との戦いである。
その為の算段を二人は考えはじめた。
●華仙教大国統一大武会・龍王地区予選
──霊州・ベスト8
眼の前に立っている者は7人の猛者。
霊州地区予選でどうにかベスト8まで戦い残った陸潤信(ea1170)は、じっと目の前の者たちを見てみる。
どの武道家も満身創痍、かなり疲労している。
潤信もかなり疲労はしていたものの、どうにかかここまで戦い残った。
ここまで勝ち抜くまで‥‥
風雅仙人からは、『猛虎拳』の使用は禁じられた。
『己の虎拳のみで‥‥それが最後の段階‥‥』
修行の中で、風雅仙人はそう告げた。
日々、猛虎拳の型の基本24型、それに繋がる24型の猛練を続けていた潤信。
第一回戦での少林寺との戦いから、自らに掛けていた何かを探す。
それが見つからないまま、それでも潤信は戦いつづけた。
そしてこの最後の擂台の上で、潤信は自分を見る大観衆のなか、なにが足りないかに気が付いた。
勝利への渇望
戦う理由
風雅仙人から学んだ、そして道中で道拳士から学んだこと。
それらを考え、潤信にとって足りないがなんであるか理解した。
この華仙教大国統一大武会・龍王で得られるのは『龍王』という名の、華仙教大国最強の称号。
それを得る為に、多くの武道家は己を鍛え、強くなる。
だが、風雅仙人は、潤信が第二回戦に進むときにこう問い掛けた。
『何故、強くなる?』
そのことが、ずっと潤信の脳裏を離れない。
『一体何故?』
弱き者たちを護る為
友との約束
強くなった先に得られる者は、果てしない戦いへの渇望。
後ろから付いてくる者たちに道を教える。
それが強く者たちの道。
風雅仙人は、ゆっくりと歩く者たちに道を示す。
そのために強くなり、そのために、今があるという。
だが‥‥。
──ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
喝采の中、潤信は我に帰った。
「ここにいる8人のうち、半分が決勝トーナメントに進める‥‥」
そう呟きつつ、周囲を見渡す。
(強い人たちを見る為にみんなが集っている‥‥)
自分の名前が呼ばれ、一歩すすんで頭を下げる潤信。
そして後ろに戻り、じっと戦う相手たちを見る。
どの人たちも強い。
猛虎拳が封じられた潤信では、勝てる見込みは五分。
それでも、潤信は戦う。
強くなるという道、その理由を求めて。
●北の狼となるか
──北京
バッハバババババハバッバッ
8月中旬。
紅小鈴(ec0190)は北京にやって来ていた。
目的は一つ、華仙教大国統一大武会・龍王・北京地区予選に参加する為である。
この半月、小鈴は燃燈道人と孫飛燕、そして彼の仲間である太史匡や呂紅蓮から、実践レベルでの修行を続けてきた。
其の日は、孫飛燕達は村から離れる事が出来なかった為、この北京には燃燈道人と共にやってきていた。
「久しぶりに都にやってきました‥‥」
周囲を見渡しつつ、茫然とする小鈴。
「ふむ、わしも久しぶりじゃからのう。まあ、ちょっと一休みでもするか」
「はい」
そうにこやかに告げて、小鈴と燃燈道人の二人は近くの茶屋に入る。
「はーーーっはっはっはっ。今回の大会、我が道場で地区予選は決まりだなっ!!」
豪快な声が店内に響く。
奥の席で、6人の武道家達が愉しそうに談笑しているようである。
「‥‥あの人たちを見て、どうおもいますか?」
茶を飲みつつ、燃燈道人がそう小鈴に問い掛ける。
「虚栄」
「ふむふむ。いい答えですね」
ズズズと茶をすする燃燈道人を、小鈴はじっと見た。
「どうしました? 私の顔に何か?」
「いえ、燃燈道人、どうして私に朧拳を?」
「資質ですね。誰でも朧拳を学ぶことができるのではありません。資質がないと駄目ですよ」
そう燃燈道人が告げたとき、奥の武道家の一人が小鈴達に話し掛けた。
「なんだ、あんたたちも朧拳つかいなのか? どの流派なんだ?」
「流派‥‥朧四鋼拳です」
小鈴がそう言い放つ。
まだ小鈴は、盤古朧拳を名乗る事を許されてはいない。
「なんだ? こんな小娘が朧四鋼拳使いだぁ? まあ、俺達の朧四鋼拳と当たらないように神様に祈っているんだなっ!!」
そう笑いつつ呟いて、立ち去る武道家達。
「‥‥燃燈道人、わたしは、あの人たちにかてるのでしょうか?」
一瞬の不安から、そう問い掛ける小鈴。
「私や飛燕、そしてみんなとの修行は無駄ではありませんよ‥‥自分を信じてください‥‥」
その言葉の後、二人は受付に向かった。
●昇竜の乱
──昇竜
ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
街の中央を駆け抜ける南宋軍。
その両側から、大量の矢が雨の如く降り注ぐ。
建物の影、屋根に隠れていた黄巾賊が、中央突破してきた南宋軍に向かって迎撃を開始。
すでに街の人たちは後方に非難しているものの、逃げ遅れた者たちは巻き添えを食らわないように必死に建物の中で息を潜めている。
「あと少しで、敵の一角にぃぃぃぃぃ」
絶叫しつつ倒されていく南宋軍。
だが、果敢にも黄巾賊に対して戦いを続けていく者たちもいた‥‥。
──南宋軍本陣
「では、これですべての情報なのですね?」
南宋軍本陣に合流した蘭寛那(ec0186)が、現場で指揮を取っていた武将にそう問い掛ける。
燕京の海陵王の命令で、英霊布を身につけている寛那を、南宋軍は暖かく迎え入れたのである。
「はい。これで全てです。。敵戦力についてはおおよそのでしかありませんが」
そう告げられた寛那は、手元の資料と地図をじっと見る。
(‥‥私の中の陸遜伯言‥‥貴方なら、どう攻めますか‥‥)
そう英霊布に問う寛那。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
と、寛那の脳裏に様々な言葉が響く。
「正面街道に2000、そして左右に1000ずつ配備。左右はそれぞれ軽装の武道家を、正面は重装を1000、軽装を1000で、皮の巨大な楯を用意させてください。私が銅鑼で合図をすると兵士は前に、その時に合わせて後方から矢を展開。次の銅鑼で後方に、入れかわりで軽装で遊撃に。敵の意識をできるだけこっちに向けます。日がくれると同時に、左右から突入‥‥」
次々と指示を飛ばす寛那。
そして袁竜らもその作戦に加わり、正面から昇竜に突入する作戦が開始された。
──バギバギバギバギッ
次々と飛んでくる矢を、その体で受止めているのは荒巻美影(ea1747)。
「玄武八跋衝・護りの5っ!! 剛体練っ!!」
全身を亀の甲らの如く固くし、飛んでくる矢を最小限のダメージで押さえる。
羊守防(ようしゅぼう)よりもさらに上位の技であり、守りの八跋衝を特意とする美影の技(になりつつある)である。
「青龍八跋衝拳技の5応用3、鳳の1っ」
素早く敵の懐に飛込み、ショートレンジでの裏拳を顔面中央に叩き込んでいるのは鳳蓮華(ec0154)。
守りは全て美影が、そして攻めは蓮華が担当しつつ、敵正門に向かっていっきに突き進んでいく。
だが、敵の猛将もだまってはいない。
なによりも得意なる体術で、蓮華達に襲いかかる。
──ドガッバギッ!!
激しい剣戟を始める蓮華と敵の猛将・魯智坤(ろちしん)。
巨大な錫杖を振りかざし、美影と蓮華の前に立ちはだかる。
その一撃は、さすがの美影の守りですら、致命傷をおいかねない勢いである。
「なんとかここを突破できないと‥‥」
「後方からくる本陣が‥‥」
そう叫んでいるのも束の間。
体勢を崩した美影に向かって、魯智坤の一撃が叩き込まれた!!
──ヒュンッ‥‥ガギィィィィィィィィィィン
と、その間に突然上空から舞い降りた石動悠一郎(ea8417)が、敵の一撃を剣で受止めた!!
「ここは俺に任せろ!! お前たちは先にっ!!」
そう叫ぶと、石動は懐から真紅の英霊布を取り出し、頭に巻き付ける!!
「我が名は石動悠一郎っ。猛将・趙雲子龍の英霊を身に宿し、この昇竜での乱を治める為に推参したっ!!」
腰から抜いた『霊刀アマツミカボシ』を構え、そう叫ぶ石動。
「ほほう‥‥なら、こっちも挨拶といこう。我が名は魯智坤。この身には、天狐星・魯智深(ろちしん)を宿すっ!!」
その叫びと同時に、両者激突。
激しい一騎打ちが始まった‥‥。
さて、突然上空からやってきた石動。
彼は先月までは遥か彼方の地に居た筈なのに、どうやってここに来たのかというと‥‥。
成都・太史袁の元で、分かれの挨拶をすませた石動だが、なんとか急ぎ昇竜に向かいたい。
その様を見て、太史袁が石動に化し与えたのが、成都で保管されていた『孫行者』の超宝貝・筋斗雲である。
昇竜までほんのひとっとびでやってきたそれは、再び成都へと飛んでいく。
さて、話を戻そう。
石動と魯智坤の一騎打ちを横に、蓮華と美影の二人は再び正門に向かう!!
すでに正門前は、寛那の策により左右から突入した南宋軍と黄巾賊で乱戦状態である。
──シュンッ!!
鋭い矢が、門を護っている黄巾賊の胸を貫く。
リクルド・イゼクソン(ea7818)は後方の高い建物の上から、次々と黄巾賊だけに狙いを定めて、矢を放っている。
「‥‥ふう。あの子の父親で無い事を祈るしか無いか‥‥」
そう呟きつつ、リクルドは仲間たちを護る為に矢を放つ。
射程距離はほぼぎりぎり、そして乱戦であるにも関らず、リクルドは味方には傷を付けずに敵だけを射る。
──スカァァァァン
そのうちの一本が、守りの八跋衝を駆使している美影にも直撃する。
(痛いっ‥‥この角度はリクルド?)
が、すでに打ち合わせはすんでいた為に、美影は気にしない。
「あっちゃあ‥‥あとで食事でも奢りますから‥‥」
そう呟きつつ、、再び矢を構えるリクルドであった。
──その頃の
(囚われているのは、この奥‥‥)
夜桜翠漣(ea1749)は敵本陣内部に侵入、囚われの宋江殿や人質達を捜していた。
かなり危険ではあるものの、他の八跋衝訓練生達が正面で樹を引いている今がチャンスなのであろう!!
「宋江殿っ‥‥どこですか‥‥」
そう告げつつ、老を調べていく翠漣。
「ここですよぉ♪〜」
と、奥のほうからのんきな声が聞こえてくる。
「ここですよ‥‥ここですか?」
そう呟きつつ、翠漣が到着した場所はしっかりとした作りの牢獄。
扉にアル小さい窓から中を見ると、両手足に枷が填められ、壁に大の字に固定された青年がいる。
「宋江どのですね。御助けに参りました。私は林彪師父の元で玄武八跋衝を学んだ夜桜と申します」
そう告げて牢に手を掛ける。
──ドガッ‥‥バギッ‥‥
だが、その頑丈な牢はどうやっても破壊できない。
「夜桜さんとやら、気は使えますか?」
そう中で呟く宋江。
「オーラでしたら」
「では、同じ要領で、丹田に気を集めてください‥‥」
いきなり始まった朱雀八跋衝のレクチャー。
──フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
体内の気が高まる。
「では、それを全身に‥‥身体を駆け巡らせた後、右腕と脚、腰に集中。比率は、脚に4腰に3、右腕に3‥‥」
いきなりの言葉に、翠漣は動揺するが、それでもどうにか制御。
「で、できました‥‥」
「では、そのまま構えて!!」
その言葉に、素早く身構える翠漣。
「玄武八跋衝・剛剣の3っ!!」
そう内部で叫ぶ宋江。
その言葉と同時に、翠漣は扉に向かって正拳を叩き込む!!!
──ドガガガガガガッ!!
鋼鉄製の扉は裂け、後方に吹き飛ぶ。
「ふふん。対したものですねぇ‥‥」
そう呟きつつ、中では宋江が自分で枷を破壊し、ゆっくりと床に立っていた。
「宋江殿‥‥あたたたたたたっつっっっっったったったっ」
駆けていこうとする翠漣だが、突然足腰に劇痛が走り、そのまま宋江の胸に向かって崩れる。
──抱しめッ!!
その翠漣を優しく抱しめる宋江。
(あ‥‥宋江殿って‥‥長髪黒髪の美形で優しい‥‥)
頬を赤くそめる翠漣。
なんだ、そのピンポイントな照れ方は?
「ふうん。今の配分は脚に3腰に2、腕に5ですよ。まだまだ自分で思っている配分と、体の中の配分が噛み合っていませんねぇ‥‥」
そう呟きつつ、翠漣の脚と腰に手を当てて気を注ぐ宋江。
温かい波動が翠漣の中に染み込み、痛みが消えていく。
「ああ、宋江様‥‥☆」
ボーーッとする翠漣。
だが、すぐさま宋江が真剣な表情になる。
「さて、急ぎましょう。風の流れが変わりつつあります‥‥」
「はい!!」
そう告げて、宋江は翠漣と一緒に外に向かう!!
──その頃の導士狩り
チリーーーーーーーーーーーーーーーン
鈴の音が響く回廊。
そこは敵本陣地下通路。
夜桜と共に侵入した朱蘭華(ea8806)は、一番厄介な導士を叩き臥せる為、別通路で敵を調べていた。
そして隠された地下通路を発見し、そこに飛込んだのはよかったのだが、どうやらそこは大当たりの模様。
「参ったわ‥‥いきなり‥‥」
スッと拳を構え、虎拳の構えを取る蘭華。
その向うからは、符は異臭漂う死体がユラリと歩いてくる。
それも5体。
「さてさて、ここは死者の回廊。ここに足を踏込んだ以上、貴様はここでぬっころす」
そう置くから響く声。
そして死体はゆっくりと蘭華に近寄り、次々とその爪を突きたてていくが。
「おあいにくさま。ここは狭い通路ですから、貴方たちにも逃げ道はないわよねっ!!」
ゆっくりと両手の掌を合わせ、そして右腰の位置まで下げる。
──覇ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアア
気を高め、丹田から全身に。
そして全身から掌に。
気を高め、気による球を作り出す。
「見様見真似っ、猛虎拳奥義・長距離爆虎掌っ!!」
そう叫んだ瞬間、両手を前に突き出す。
──ポムッ‥‥
一瞬何かが飛んでいった感覚。
だが、何も見えない。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
やがて、前進してきた死体たちが目に見えない衝撃によって後方に吹き飛び、破壊されていく。
目に見えない気。
爆虎掌のそれを、ただ遠くまで飛ばすだけの技。
オーラショットとは違う、気の技。
──チリーーーン
だが、まだ奥から鈴の音がする。
そして純白の武胴着を身につけた、一人の武道家がゆっくりと姿を表わす。
その額には、一枚の符だが張付けられていた。
「さて、茶番はそこまで。やれ、我が最高傑作吠功夫(バイ・カンフー)っ!!」
その言葉と同時に、吠功夫と呼ばれた武道家が神速で蘭華に向かって間合を詰めた!!
●幻の都
──??????
そこは古い建物がひしめく廃墟。
御堂鼎(ea2454)は次なる酔拳道士を求めて、楼蘭へと向かう。
道中、桃源郷を無意識のうちに抜け、たどり着いたのがこの古い廃墟であったらしい。
「なんだろうねぇ‥‥このエキゾチックな光景は‥‥」
そこは、今までに御堂が見てきた『華仙教大国』とは一線を越えた感じである。
誰も居ない、人の気配も感じない、そしてなにより‥‥
「あーーーーーーーーーーーーーーーっ。お酒、酒、あたいの酒っ!!」
買い置きしてきた酒もそろそろ底がつく。
いつもなら道中の酒場で買い込んでいたのであるが、今回はどうやら途切れさせてしまったらしい。
「‥‥ここは何処なのよーーーーーっ」
そう呟く御堂。
「ここは‥‥魔境都市。歴史と世界から切り離された都市ですわ」
そう告げつつ、一人の女性が御堂の前に姿を表わす。
「‥‥ここにいたの。探したわよ、藍采和師父」
そう告げて、御堂は素早く藍采和の前に進む。「あら‥‥まあ、そんなに急がなくても、まずは稽古の前に今までの型を見せてね」
「そ、その前に‥‥酒。御酒を分けてくださいっ!!」
そう絶叫する御堂。
「クスクスクスクス‥‥いいわよ、ホラ」
そう告げて、小さい徳利を見せる藍采和。
「ああっ‥‥ありがとうございます!!」
そう告げて手を伸ばすが
──ヒョイッ
その手をスルッと抜ける藍采和の徳利。
「あら? こっちよこっち‥‥ほらほら‥‥クスクス」
と、うまく歩法と体術で御堂が伸ばした手を躱わす藍采和。
「‥‥ふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
荷物を置いて、ゆっくりと構える御堂。
「このお酒はただの酒じゃないわよ。伝説級、それもこの地にしか存在しないわ‥‥」
その藍采和の言葉に、御堂は素早く踏込む!!
●そして南宋
──玄武道場
「はい、次はそのまま‥‥青龍の演舞を10」
静かな道場。
そこで葉雲忠(ec0182)は玄武八跋衝師範の林彪師父から教えをうけていた。
まずは恒例の、どこまで基礎が出来ているかを知る為の訓練。
青龍八跋衝の型を100、そして朱雀八跋衝の型を100なぞる。
「青龍・拳技の5応用2っ!!」
──シュンッ
大気を切断する青龍の手刀。
そのままゆっくりと腰を静め大地に平伏すほどに近付く。
「朱雀・脚功の2っ。飛翔跳躍!!」
脚に樹を集め、脚力を高め、鳥のごとく飛び立つ。
それらを始めとした流れを日がくれるまで続ける雲忠。
「ふう、合格。明日からは玄武八跋衝の基礎ね‥‥寝床は好きな所を使ってよし、食事は自炊、以上‥‥」
それだけを告げると、林彪は踵を返す。
「林彪師父、明日からの訓練は?」
そう問い掛ける雲忠に、林彪は一言。
「そこの新品の石畳に、青龍八跋衝の足跡が残るまでは基礎。午後からは玄武の方と演舞‥‥ではでは‥‥」
そう告げて、立ち去る林彪。
「明日から‥‥ふむ」
ゆっくりといしだたみに歩きだし、雲忠はゆっくりと青龍の型をなぞりはじめる。
身体中から汗が吹き出し、足腰がガクガクするまで‥‥。
今は一つでも、型を習い続ける。
満点の空に寝付きがゆっくりと傾いていった。
●蚩尤との戦い
──とある山の中
グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
引きちぎられた腕。
砕かれた脚。
そして大量の血と目の前に広がる8っつの巨大な石版。
それら石版には、複雑な文字が記されている。
そして大地には、八極の陣。
虚空牙(ec0261)は、今、死に掛かっている。
「色々とありがとうございました。では‥‥」
空牙は、お世話になった道仙人と美影に分かれを告げ、蚩尤の元に向かった。
全ては蚩尤の技、星君朧拳最源流技を学ぶ為である。
簡単に死ぬつもりはないが、生きては戻れぬ可能性もある。
「道師父、俺のような風来坊に教えを頂き、心より感謝します。美影、これまで修行に付き合ってくれてありがとう。俺一人ではここまで辿り付けなかったかもしれない」
それが、分かれの言葉であった。
だが、一人で蚩尤の元に向かうのは得策ではないと道仙人が判断し、一緒に蚩尤の元に同行したのである。
そして目覚めた蚩尤と対峙した空牙は、教えを乞う。
「蚩尤よ、どうか、あなたの武術をお教え願いたい。あなたはかつて人に、その武術を伝えた。
そして今、あなたはこの時代、この場所に目覚めた。そのことに意味はあるはずだ」
その心意気に、蚩尤は笑う。
「オモシロイ‥‥シヌホドツライシュギョウ、キサマニタエラレルカ?」
そう告げられ、蚩尤の修行が始まった。
深き山の奥に作られた『八卦陣』。
その中が蚩尤との修練の場所。
そこで死んでも、朝には生き返る。
失った血肉も再生する。
だが、魂は削られていく。
そんな中で、空牙は一体どれ程の『肉体の死』を体験しただろう。
食事は毎朝美影が持ってきてくれる。
それは蚩尤も許してくれていた。
基礎訓練などない。
ただひたすら戦う。
但し、その戦いの中で、蚩尤はときおり『坎』『巽』『乾』と叫ぶ。
それが八卦陣に記された64卦に繋がるものであり、それぞれの技や動きを記すものである事を知ったのは、8月も終りの時期であった。
●天と地と
──天奉道士のおうち
ヴェアアアアアアアアアアアアアアアア!!
絶叫が響く天奉道士の家の裏。
天狼王(ec0127)はあいかわらず、激しい訓練を続けていた。
「道士、道士の朧拳は確か星君朧拳という名前でしたよね‥‥」
ズタボロになっている狼王が、天奉道士に問い掛ける。
「うむ。それがなんじゃ?」
「星君朧拳に必要な要素とはなんでしょうか? 武道にはそれぞれの要素が存在します。脚のバネ、腕の力、筋肉のバランス、気の流れなど、その流派によって、様々な特徴があります。そしてそれらの要素の元に、流派としての理念もまた存在すると。それを知りたいのです!!」
ゆっくりと身体を起こし、そう問い掛ける狼王。
「ふむふむ。いいこころがけじゃのう。では、説明するが、絶望をかんじないことぢゃな‥‥」
そう告げて、天奉道士はゆっくりと話を始める。
「朧拳最源流技、そこからの分派は全部で3っつ。ワシの星君朧拳、道仙人の伏羲朧拳、燃燈道人の盤古朧拳。で、そこからの分派でさらに朧四鋼拳や朧砕崩拳などが存在する‥‥」
ゆっくりと話を始める天奉道士。
「天・地・人。この世界はこの三つの要素から成り立つ。そして朧拳は、それらと戦う為に生み出された。生み出したものは伝説の戦神・蚩尤。人を滅ぼす星君朧拳、人を天を滅ぼす伏羲朧拳、そして全てを滅ぼす盤古朧拳。それが流れとなっている。狼王、今、お前が学んでいるるのは、人を滅ぼす技ぢゃよ‥‥」
──ゴクリ
息を呑む狼王。
「では、俺が学んでいるのは人殺しの技‥‥」
「人聞きの悪い。人と戦う星君朧拳と覚えよ。狼王には殺人技など教えてはおらぬ!! 全てはそれを受け継いだものの心にある。受け継いだ者が悪ならばそれは殺人技となり、善ならば活殺技となる。全ては表裏一体、大極なのじゃよ」
そう呟いて、天奉道士は大地に大極図を記す。
白と黒の大極。
その中に在る、黒の中の白の点、白の中の黒の点、それぞれを指し示す天奉道士。
「例えば。これは極論じゃが白は善、黒が悪とする‥‥だが、どんなもののなかにも大極は存在する。それがこの点‥‥すべてはこのバランスから成り立つ‥‥」
そのまま淡々と大極についての講義を続ける天奉道士。
そして日がくれて、ようやく狼王は講義から離れる。
「天奉道士、さっきの話なんだが、俺の学んでいる星君朧拳には、どんな要素が必要なんだ?」
真剣に問い掛ける狼王に、天奉道士は一言
「全部ぢゃな‥‥」
──ズドーーーーーーーーーーーーーン
いきなりどん底に叩きつけられた狼王。
「な、なら。もうそろそろ華仙教大国統一大武会・龍王地区予選も始まっているんだろう。それに参加しても構わないか?」
「それは構わぬ。世界を知るのもまた修行ぢゃよ」
「ありがてえ。なら、ついでに教えてくれ。ここ一ヶ月のハードな修行で、俺にはどれぐらい星君朧拳が身についているんだ?」
そうにこやかに問い掛ける狼王。
「ん、まだ基礎もできておらぬな‥‥」
──ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
なんかこう、全てを否定されたようなかんじの狼王であった
次々と決定する決勝トーナメント参加者達。
彼等の中の、誰の頭上に栄光はが降り注ぐのでしょう。
そして、平和を取り戻した昇竜の復興。
だが、その背後で動いている影。
まだまだ、この華仙教大国は平和な時代にはならないようで‥‥。
(第8回に続く・・・・・・)
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