幻の流派を追え!!

■クエストシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:16人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年07月01日
 〜2007年07月31日


エリア:華仙教大国

リプレイ公開日:07月25日21:08

●リプレイ本文

●呂布奉先への道
──臨安のちょい先
「‥‥」
 黙々と大量の竹簡を呼んでいるのは月詠葵(ea0020)。
 英霊布を得る為の最後の試練・『文』『武』『義』の三つを示せという老師の言葉を実践すべく、まずは御前中、『孫氏の兵法書』をじっと読みふける。
 といっても、その全てではない。
 孫子の『軍争編』を深く理解し、それらを示す。
 そのためにも、ただひたすら読みつづけ、勉強をしている月詠であるが‥‥。
「ふぅ‥‥少し休憩‥‥」
 そう告げて、建物の外に出る。
 静かな風景。
 そのなかで、一人の老人がゆっくりと拳法の演舞を進める。
 ゆっくりとした足取り、それでいて無駄の無い手法。
 歩法と手法が綺麗に一つとなり、自然の中で流れるように動いている。
 月詠はしばし、その動きを眺めていた‥‥。



●戦いの序曲〜昇竜の乱〜
──南宋・首都南宋
 そこは、先日までとは流れている空気が違っている。
 白家の支配から開放された南宋首都。
 ようやく一般の人々の生活も元に戻ってきたという今、この土地には大勢の軍隊が集りつつあった。
 全ては『白家動乱』の際にえられた、昇竜での『黄巾賊』と『張角仙人』の氾濫に対して。
 集っている軍人はおよそ一万。
 ようやく取り戻した平和。
 そしてこれから始まるであろう戦に、人々は不安な日々を過ごしている‥‥。


──南宋・天奉道士のたたずまい
 毎日が訓練。
 といっても、技の型を学ぶのではない。
 朝早く起きての農作業、釣り、近くの村までの買いだし、戻ってきて農作業、水汲み、後片付け。
 ハードな毎日が続いている天狼王(ec0127)。
「‥‥なんたる平和すぎる生活」
 火の光を浴びて褐色に染まった肉体は、いつのまにか訳の解らないぐらいたくましい身体になっていた。
 余計な贅肉は落ち、引き締まった筋肉。
 見せかけの力ではない、実質な力。
 それらが毎日の日課で、作りあげられていたのだが‥‥。
「ふぅ‥‥いつになったら、師父は、訓練を始めるのだろう‥‥」
 ああっ。狼王、まだ自身の変化に気付いていない。
「恐らくは一度染み付いた我流の癖を抜く必要がある、か‥‥」
 その通りなのだが。

──そんなとある日の夜
「朧拳には、どんな歴史があるのですか?」
 そう問い掛ける狼王に、天奉師父は静かに一言。
「人ならざるものの流派が朧拳。そこから派生した『人の流派』が朧拳。いま、この地にある朧拳は人の朧拳。人ならざるものの朧拳を伝えるのは、拳聖一人のみぢゃよ」
「では、天奉師父がその拳聖?」
「ハッハッハッ。わしは拳聖ではない。ただの隠居じじいぢゃて」
「師父は『白虎王』の称号を得ていると聞きましたが、何故自身の道場を開かずにこうした生活を?」
 そう問い掛ける狼王。
「ん? わし、朧拳を己の利にはつかいとうないからのう‥‥」
「拳を継ぐ者たちを育成し、玄武王を代々受け継ぐ少林寺の例もあります。八跋衝もそうですが、朧拳が伝説に語られるに留まるようになったのは何故です?」
 しばしの沈黙。
「朧砕崩拳、朧四鋼拳、朧八極拳、朧戦嵐拳など、朧拳には色々な流派がある。が、今、それらを伝えるべく伝承者は、数少ない。わしや、北の老師のように、才あるものの育成をしているものはいるが、それでも一人のみ。朧拳は戦乱の流派、それを求める者が現われるときは、必ず世が乱れ、戦乱が訪れる。星の告げであり、変えがたき真実。ゆえに、こっそりと生きていた流派なのぢゃよ‥‥」
「そんな‥‥」
 と告げて、狼王は理解した。
 今、この地を始めとした南宋に広がる戦乱の影。
 それらもまた、朧拳を求める者たちが現われたからなので在ろうか?
「覚えがあるぢゃろう? まあ、乱を生み出す朧拳あらば、和を生み出す八跋衝あり。二つは大極に位置する。そしてそれらを監視するのが八仙拳ぢゃて‥‥さ、あすも早い。とっととねるぞ」
 そう告げて、師父は寝床に向かう。
 そして翌日もまた、狼王はいつものように日課を続けていくのであった。


──南宋南部・少林寺
 バキィィィィィィッ
 激しい音と同時に甕がくだけ散る。
 その手前で、掌打の構えをしている葉雲忠(ec0182)が、やれやれといった顔をしていた。
「くぅぅぅぅっ。惜しい。これが成功したら、10回のうち5回の成功ぢゃったのにぃぃぃぃ」
 そう叫ぶ雲忠に、于文中師父がニコニコとしながら近づいてくる。
「まあよい。この訓練は毎日続けなさい。さて、それでは午後からは本格的に訓練に入ろう‥‥」
 そう告げられ、いよいよ本格的に朱雀八跋衝の訓練に入る雲忠であった。

──そして午後
「‥‥ここは?」
 小さな御堂に連れられた雲忠。
 その内部の壁には、朱雀八跋衝の基本型が一面に書き記されていた。
「朱雀継承の儀。これらの絵には、朱雀の技が全て記されている。但し、順番はその通りに在らず、これらの中から正しい型のみを見付け出し、己自身の朱雀八跋衝を築きなさい‥‥正し、基礎から外れた肩になれと、酷い目にあうからな‥‥」
 そう告げられて、雲忠は御堂の中央で壁に記された絵をじっと見渡す。
「ふぅむ。これらの中から自分の流れを見つけると‥‥じゃが、それは朱雀の基礎を外れてはいけないと‥‥うーーーむむむむ」
じっと壁を見渡した後、さっそく雲忠は始まりの型を取る。
「制動、翼を広げて抑揚‥‥」
 静かに両腕を広げ、体内の気を練りはじめる。
「飛翔、そして静かなる滑空‥‥」
 身体を低い体勢に、そしてさらなる練りこみ。
「一転して獲物を見つける瞳、そして鋭い爪による攻撃!!」
 眼の前にある仮想敵に対して、爪を立てた掌打を叩き込む。
「そこから生み出される一撃から、更なる一撃へ!!」
 爪を立てた腕から、肘を素早く曲げて一撃を叩き込む!!
 そこまでの一連の流れで、全身に走る疲労。
「ぐぅつ‥‥何処かに無理がある‥‥基礎のまま、基本を忠実に‥‥しかし‥‥」
 そしてガクッと膝をつく。
 そこで全ての窓が拓き、風が御堂に流れてくる。
──ギィィィィィィッ
 正面の扉が開き、于文中師父が入ってくる。
「ふむふむ。では、今日はこれまでぢゃな‥‥」
「まだぢゃ師父。一休みしたら、もういちど‥‥」
「朱雀継承の儀は、一日に1度のみ‥‥身体を休めて、また明日に‥‥」
 そう告げられ、雲忠は止む無く立上がる。
 全身の気が全て抜き取られたような疲労の中、それでも雲忠の瞳には炎が宿っていた。


──南宋・昇竜
 沈黙が街を支配している。
 子供は愚か大人の姿すら見えない街。
 中央街道を歩いているリクルド・イゼクソン(ea7818)は、そんな不思議な光景に戸惑いを感じていた。
「今までの街では、こんなことは無かったんだが‥‥参ったなぁ‥‥」
 道をきくにも、店はしまっている。
 酒場は扉を閉じたまま、どうやら中からこっちを見ているらしい気配はあるが、どうしたものかとしあんする。
「すいません!! ちょっと人を訪ねたいのですが‥‥このあたりに宋江という人が住んでいると聞きました‥‥どちらにいるのでしょうか‥‥」
 そう酒場にむかって叫ぶ。
 だが、返事はない。
「あーあ、ダメダメ。余所者の言葉に、いまは耳を傾けないよ‥‥」
 そうリクルドの後ろから話し掛けつつ、朱蘭華(ea8806)が歩いてくる。
「貴方は‥‥」
「私は蘭華。ここの先の道場の門下生ね。おばちゃーん、お酒っ!!」
 そう蘭華が叫ぶと、少しだけ扉が開く。
「ほら、早く早く‥‥」
 中から一人の女性が手招きをする。
 と、それに従い、二人は中に入っていった。

──ということで、桃花酒家
 ふたりは暗い酒場の席に座ると、そのまましばし待つ。
「随分と暗い雰囲気ですね‥‥一体なにがあったのですか?」
「ん、戦さがはじまるからねぇ‥‥」
 そう呟きつつ、蘭華は酒の入った大甕を二つ、天秤竿に括りつける。
「お代はここにおいとくね。あと、この人の探している宋江ってしっている?」
「宋江先生は、張角につかまってしまったから、今はどこにいるか判らないわねぇ‥‥」
 そう告げる酒場の女将。
「捕まって? 何があったのですか?」
「黄巾賊の徴兵を止める為に、一人で張角の所に向かったんだよ。で、結局そのまま戻って来ていないのよね‥‥」
 そう告げる酒場の女将に、蘭華は肯く。
「なら、行く所がないっていうところでしょう? ちょっとおんぼろ道場だけれど、うちに来なさいよ。宋江っていう人についても、これかせら対策を考えたほうがいいからね‥‥」
「済まない」
 ということで、リクルドと蘭華の二人は、とりあえず黄月哉の待つ道場へと向かった。


──その沖合、
「はい? 引き返すのですか?」
 まもなく昇竜。
 定期船の甲板上では、大勢の客がザワザワとざわめいている。
 というのも、あと半日で昇竜にたどり着くという距離までやってきているというのに、ここにきて定期船は引き返すということになっているらしい。
 そのため、荒巻美影(ea1747)は甲板上で引き返すことを説明している船員にそう問い掛けていた。
「首都燕京からの伝令なんです。昇竜に向かう街道及び航路は全て封鎖し、昇竜に向かっている定期船は全て南宋に引き返すようにと‥‥」
 そう告げる船員に、夜桜翠漣(ea1749)も更に問い掛ける。
「一体、昇竜で何がおこっているのさ?」
「黄巾賊が昇竜を占拠、軍隊を編成して、戦の準備を始めているそうです‥‥」
 その言葉に、甲板上の客達はさらにざわめく。
 中には、やむを得ないと引き返す事に同意して意気消沈しているものもいる。
「なら、あそこで降りるので、御願いだから泊まってください。私達は、どうしてもあそこに向かわないといけないんです‥‥」
 そう力説する鳳蓮華(ec0154)。
「ううーーーむ。仕方ありません‥‥ちょっと戻った所に小さな港があります。そこの沖で止めますから、あとは小舟で上陸した下さい‥‥」
 ということで、夜桜と荒巻、蓮華の三人は小舟に荷物やらなんやらを積み込、何度か往復して無事に港に到着。
 そこからいっきに封鎖された街道ではない古い道を駆けて、どうにか昇竜に到着した。


──ということで昇竜
「ひっく‥‥あやあや、おさんにんさん、そんなに急いでどちらまで‥‥ヒック」
 昇竜の街の外れ、締められた酒場の外で酒を飲んでいるのは御堂鼎(ea2454)。
「あなたはいつぞやの、こんな所でお会いできるとは奇遇ですね‥‥」
 そう告げつつ、月詠が御堂に話し掛ける。
「私達は、この街にいる『宋江』という人を探しているのですが」
「どこに住んでいるかしりませんか?」
 夜桜翠漣(ea1749)と蓮華もそう問い掛ける。
「さぁねぇ‥‥あたしもここにきてまだ数日だからねぇ‥‥権鐘離(けんしょうり)師父、なにか知っている?」
 横で飲んでいる老人にそう問い掛ける御堂。
「うむうむ、宋江は張角に捕まって奴の城に幽閉されたままぢゃな‥‥グビグビグビグビッ」
 そう告げて、杯になみなみとそそがれた酒を呑む権鐘離。
「と」(夜桜)
「ら」(美影)
「わ」(蓮華)
「れ」(夜桜)
「た」(美影)
「ですっぇぇぇぇぇぇぇぇ?」(
人の絶叫)
「うむ。お嬢さん達も、急いでここを離れなさい。ここは悪い街、まもなく戦が始まるからのう‥‥」
「私達は、宋江師父にどうしても会わなくてはならないのです」
「ふぇぇぇぇぇ。いよいよ朱雀八跋衝かと思ったのにぃぃぃぃぃ」
 荒巻のあとで、蓮華がそう呟く。
「ほっほっほっ。ということは、お前さん達、林彪から宋江に渡してこいと告げられてきたな」
 その権鐘離の言葉に、夜桜が懐から『球の入った腕輪』を見せられる。
「これですが‥‥」
「ならば、それを宋江に渡してきなさい。林彪め、この事を知っていて、卒業の印を渡したとはのう‥‥グビグビグビグビッ」
「どういう事でしょうか?」
 そう問い掛ける美影に、権鐘離が肯く。
「敵の数はおよそ5000。城内にいるのだけでも100以上。黄巾賊の猛者達を相手に、いかにして張角の城に突入、幽閉されている宋江の元にたどり着くか‥‥」
‥‥‥
‥‥

「ええええええええええええええええええええええええええっ(美影&夜桜&蓮華)」
 まあ、絶叫もでるわいな。
「さてと、御堂、ここではなんぢゃから、とりあえずワシの知人の所に向かうとしよう。そこのお嬢さん達も‥‥」
 フラリとした足取りで立上がると、権鐘離は4人を連れてトコトコとあるいていった。

──黄月哉道場
「はーーーーーーーーーーーーーっはっはっはっ。蘭華、酒だ酒、酒をもってこい!!」
 道場では、いま正に大宴会モードに突入。
 黄月哉と南華老仙、そしてやってきた知人の権鐘離、その弟子の御堂がまるでザルの如く酒を飲み干していく。
 厨(くりや)では、慣れない手付きで酒の肴を作っている美影と朱蘭華(ea8806)、そして夜桜が大戦争モード。
「ハァハァハァハァ‥‥黄師父、酒を買って来た‥‥」
「って、飲みすぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい」
 門から飛込みつつ、リクルドと蓮華がそう道場ののんべ組に叫ぶ。
「はっはっはっ。愉しいさけも旨し、これまた名月。風が流れ、水か囁く‥‥」
 そう告げる黄月哉に、蘭華が飛び蹴り!!
──ドガッ
「風が笹やき、水が流れる。日の灯と月の陰り、雲と風の中で、人として飄々と‥‥だろうっ!!」
 突然の来客で、いっきの盛り上がっている黄月哉道場。
 だが、翌日には、いつもの静けさが取り戻された。



●赤壁〜劉玄徳の英霊を探すことにて候
──赤壁・英霊の眠る丘
 華陀老師の元、蘭寛那(ec0186)は日々勉学にはげむ。
 その側には、ようやく得る事の出来た英霊布がある。
 今はまだ使いこなせないけれど、いつか必ず使える日が来るまで。
 寛那は日々己の功夫に磨きを駆ける。
 そんなある日。

『蘭寛那に問う。何故我が力を欲す?』
 そう英霊布が問い掛けてくる。
「私は‥‥普通の人が普通に暮らせるよう、お手伝いをしたいです。そのためには、ときに多勢や権力にも刃向かわなくてはいけないかもしれませんが、そのために、武を生かす智を、そして、智で描いたことを実行できるだけの武を求めます」
 そう英霊布に告げる寛那。
『ならばよかろう。必要あらば我が名を呼べ‥‥』
 それは、寛那に取って必要な名。
 長い間求めていた名前。
「私が欲する名。それは陸遜伯言‥‥」
 そう告げて、寛那は華陀老師の元に向かう。
 そして一通りの挨拶を終えると、そのままさらに南華していった。
 目的の街は『昇竜』。
 動乱に積まれた街。

──一方・孫尚香の英霊布はというと
 風吹く赤壁の丘で、薙刀を握り締め呟くのは竜玲玲。
「孫尚香は国や家に‥‥全てが縛られた生涯だったのね。でもあたしには縛るものは何一つない。自分の意思で道を切り開く事が出来る」
 そう告げると、何かを決意する玲玲。
「『孫尚香』や『陸遜伯言』の英霊布があるくらいだもの、『劉備玄徳』の英霊布もあるはずよね。だったら持ち主に会いに行ってみようかしら」
 気合一新、玲玲はそう告げて華陀老師の元に向かう。
「老師、この世界には『劉備玄徳』の英霊布をもつ者もいるのですよね? 私はその人に会いに行きます‥‥」
 そう告げる玲玲に、華陀老師は遥か東を指差す。
「燕京に向かいなさい。玲玲の持つ英霊布が、劉備玄徳の元に導いてくれるでしょう‥‥」
 その言葉に、玲玲は静かに肯くと、すぐさま旅立ちの準備を開始した‥‥。



●霊州〜武の道は険しく
──霊州は熱く燃えている
「猛虎拳の型、基本は24。そこらさらに繋がる型が24、絶招はまだ教えられぬが、この48の肩をまずは治めなさい‥‥」
 風雅仙人に猛虎拳の全型を教授して貰う陸潤信(ea1170)。
 静かにそう告げられて、潤信は横に並んで肩を繋ぐ風雅仙人に習う。
「腕は真っ直ぐに‥‥」
 そう告げつつ、ゆっくりと同じ方をなぞるが、今ひとつしっかりとしない。
「ふむふむ。余計な力が入っているようぢゃな。もっと腕から力をぬかぬと、この動きには繋がらぬ」
──ボッボボボッ
 ゆっくりとした動きから一転して、激しい手法が始まる。
 力が入りすぎると硬い動きとり、遅れが生じる。
 あくまでも求められるのは自然体、そこからくる瞬発力。
「猛虎の激しい力の根幹。あれは‥‥」
「溜めと力の開放。この猛虎拳の師はこれらを納めた道士達と、猛虎そのものにあり」
 そう告げつつ。風雅仙人は再び型を始める。
 そして潤信もまた、型を続けた。




●道の先
──大同
 平和を取り戻した大同。
 董印は捉えられ、城の地下に囚われている。
 あとは、元々の主である黄志狼が戻ってくるのをじっと待つばかり。
 街の中での事については、琴宮茜(ea2722)にはよく判らない為、街に残っていた黄志狼の臣下に託す。
「董印が倒されて、すぐに伝令は出ているから‥‥遅くても今日には戻ってくる筈‥‥」
 街の城門の外で、赤兎馬に餌を揚げつつそう呟いている琴宮。
──ピクッ
 と、赤兎馬が耳を立てて、街道の向うを見る。
 遠くから走ってくるのは、早馬で出ていた伝令と、その後ろを走ってくる馬車であった‥‥。
「黄志狼さん、無事でしたか‥‥」
 
──そして
 大同でしばし『呂布奉先』の情報を集めていた琴宮。
 呂布の石碑を調べていても、新しい情報は一つもない‥‥。
「中原を流離い、頼る宛もない‥‥そののち、呂布は徐州の劉備玄徳の元に‥‥ですか」
 歴史にならうならば、劉備玄徳の元へ。
 劉備玄徳の英霊布を持つ者については、琴宮は心当りがあった。
「この国の元首、海陵王。貴方が劉備玄徳の英霊を持っているのなら、貴方の元に呂布は訪れる‥‥」
 そう呟くと、琴宮は赤兎馬に跨がり、そのまま燕京を目指した。



●剣の街
──成都
 長い長い船旅。
 袁竜の元から旅立った石動悠一郎(ea8417)は、いよいよ目的の街である成都にたどり着く。
「‥‥ここが成都か‥‥と、こ、こら野次郎っ」
 フラフラとした足取りで、愛馬の野次郎が街道を歩く。
 まっすぐ、ただひたすらまっすぐに、目の前の役場であろう城まで。
 そして城の前に立ち止まると、野次ろうはその場でゆっくりと座り込む。

──ブヒヒヒヒヒン

 歯を剥き出しにして軽くいななくと、じっと石動を見つめる。
「ここがそうなのか? お前には判るのか‥‥」
 そう告げると、石動は荷物を降ろして背負い、正面の役場に向かって歩きはじめる。
「成都街役場にいかな御用か? 旅人よ」
 正門入り口で、二人の御衛士が石動にそう問い掛ける。
 しばし考える石動。
 だが、何かを決意すると、懐から勾玉を取り出して、掌に乗せ、それを示す。
「この城の地下に眠る、趙雲子龍の英霊を宿す剣を求めて、遥か燕京より参りました」
 と、丁寧に頭を下げつつ告げた。
 その言葉に、御衛視達は驚いた様子。
 一人はその場で立ち止まり、。石動にここで待っているように嫁げて、もう一人は奥に走っていった。
(南無三‥‥)
 礼をつくした相手に、この国は礼で返す。
 そう教えられてきた石動のもとに、一人の男性が歩いてくる。
「ようこそ、剣に導かれたものよ‥‥私はこの成都の太守を務めている『太史袁』と申します。まずはこちらへ‥‥」
 そう告げて、太史袁は石動を役場の中に招きいれる。
 そして、そのまま地下に向かう回廊を進み、その奥にある扉まで石動を案内した。
「この扉の奥に?」
「ええ。私が先代『趙雲子龍』の剣の所持者より承った剣が眠っています。今から20年前、月道を強行突破した『悪鬼』と名乗る朧拳の伝承者により、趙雲子龍の英霊を持つ『趙孔劈(ちょうこうへき)』は英霊を肉体より引き離され、数日後、その命を失いました。そのトき、死ぬ間際にこれを預かり、この地に封じていました‥‥」
 そう告げると、太史袁は扉を開く。
 古き台座に突きたてられた一振りの剣。
 それは石動の脳裏に語りかけてきた剣そのものである。
「一つ教えて頂きたい。どうして私のような流れのものに、剣を?」
 どうしても腑に落ちない溜め、そう問い掛ける石動だが。
「はっはっはっ。誰も貴方にそれを渡すとは行っていません。剣が自ら所有者を選びます。正確には、剣に巻かれている『英霊布』がね。貴方のように、この剣を引き取りに来たものは大勢居ます。けれど、誰一人として、引き抜く事に成功したものはいません‥‥ですから、誰にでも、所有者となるチャンスはあるのです」
 そう告げると、太史袁は石動を剣に向かわせる。
「これを引き抜くのか?」
「いえいえ。そんな大層なものではありません‥‥剣を握ってください。阿斗は貴方の運命の導かれるままに‥‥」
 そう告げて、太史袁は一歩下がる。
「ふぅ‥‥ここまでたどり着いたんだ。あとはやるしかない!!」
 意を決して、石動は剣に手をかけた。

──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン

 脳裏に走る様々な記憶。
 剣に残されていたのであろう残留思念と、封じられし英霊。
 それらが石動の脳裏を駆け巡った。
 長坂を単騎で駆け抜ける趙雲。
 その風景画石動の頭の中を駆け巡る。

『強きものを下す力が欲しいのか‥‥』

 そう問い掛けてくる趙雲。
「違う。弱きものに差し伸べる手、その力が欲しい!!」
 そう叫ぶ石動。
 と、脳裏の趙雲がニィッと笑みを浮かべる。
『君と共にゆこう‥‥我は趙雲、字は子龍‥‥』
 やがて、石動の手にした剣がボロボロと崩れていく。
 そして手の中に残ったのは、一枚の英霊布。
「‥‥どこまで趙雲の力を具現か出来るか‥‥それは‥‥貴方の力量にも関ってきます。もっと己を鍛えてください‥‥では、地上に戻りましょう」
 そう告げて、太史袁は石動を地上へと導く。
 その途中で、石動の意識はフッと途切れた。
 緊張がようやく解けたのであろう。
 次に意識が戻ったときは、石動は宿の寝台の上であった。
 


●幻の流派
──とある山の中
 森の中を駆け抜け、山を下り、谷を走る。
 基礎トレーニングは即ち走る事。
 全ての基本である肉体を限界まで鍛え揚げ、そこから一つ一つの技の修練に入る。
 道(タオ)道士が虚空牙(ec0261)に示したのは、そんな鍛練法。
「‥‥下界では、華仙教大国統一大武会の予選が始まるのう‥‥」
 歩法を教えつつ、タオ道士が空がに告げる。
「まだだ。俺はまだ、蚩尤の技を得てはいない。それを身につけなくては、大武会になど参加できない‥‥」
 そう告げる空牙に、タオが一言。
「‥‥蚩尤の技か。それがどういうものであるか、知っているわけでもあるまいしのう‥‥」
 ババッと道式二十四形意拳の構えを作るタオ道士。
「人の使える技ではない。それがどんな流派なのかさえ、俺は知らないからな‥‥」
「‥‥朧拳。それが蚩尤の使う流派じゃよ」
 その言葉に、空牙も驚きの表情。
「いや、それはないだろう? 朧拳の使い手は『天奉道士』だろう?」
「うむ。天奉道士は、蚩尤の使う朧拳を人の技に完成させた人物。まあ、人手はなく仙人じゃがのう‥‥」
 そう告げて、タオは空牙がみたことのない構えを取る。
 そして始められた演舞。
 残念なことに、それらの動作は緩慢としていたにもかかわらず、空牙には殆ど見えていない。
 まるで霞が掛かっていたかの如く。
「これが蚩尤の朧拳じゃよ‥‥見えていたのならまだ資質はあるが‥‥見えていたか?」
 その言葉に、空牙は頭を左右に振る。
「じゃろうのう。見えていたら人ではない。それに、この技を身につける事が出来たのは、私の知る中でもただ一人じゃからのう‥‥まあ、そのものはもう、この地にはいないが‥‥それはよい。さて、続きをしようか‥‥」
 そう告げられて、空牙は再び基礎訓練に入る。
 まだ望みは捨てていないのだから‥‥。



●北の狼
──北京
 激しい戦いの日々。
 血塗られた手をじっと眺めつつ、沈み行く夕陽を見つめている紅小鈴(ec0190)。
「昨日は5人殺した‥‥今日は3人だけ‥‥」

 華仙教大国北方の守りである万里の城塞。
 そこの警護を務めている曹飛延らとともに、ここの守りを行なっていた。 
 使いなれていない武器の使い方を覚え、それらを知ることで素手での対処も出来るようになった。
 飛燕の様な剛体術や、燃燈道人の柳体術(りゅうたいじゅつ)はまだ使えない。
 虎拳からの派生として、小鈴は朧拳を取り入れている。
 ここ数日、毎日のようにモンゴルからの襲撃が在った。
 それも偵察程度のものから、小規模であるが合戦を様するものまで。
 そのたびに、小鈴は戦いに出る。
 今日もまもなく日が暮れる‥‥。

──城塞近くの村
「‥‥」
 沈黙の中、ただ黙々と食事を取る小鈴。
「?」
「今日はいつになく静かじゃな。なにか在ったのか?」
 窓辺で月を眺めつつ、酒を飲んでいる燃燈道人が、そう小鈴に問い掛けた。
「私の中の朧拳。それは人を殺めることの出来る拳。でも師父、私はふと思うのです」
 そう告げる小鈴に、飛燕も箸を止める。
「朧拳。最源流は兎も角としても、天奉道士の知名度とその道場の存在、そして各地で見聞きする分派‥‥幻と呼ばれるには多過ぎるような気がします。私はまだ、朧拳の方は知っていても、その歴史は知らないのです‥‥」
 そう告げる小鈴に、燃燈道人が静かに話を始める。
「朧拳か。表立って知られている、最源流技を使えるのは天奉道士のみ。だが、小鈴は知っておいていいだろう。朧拳の最源流技は一つ。天奉道士もその分派の一つにすぎないと‥‥」
 その言葉に、小鈴は耳を傾けていた。
「朧拳の最源流技を使うのは、戦神・蚩尤。彼の使っていた技が朧拳なのじゃよ‥‥」
 そう告げると、燃燈道人は酒を一口飲み、喉を潤す。
「では、天奉道士の朧拳は?」
「蚩尤の使う朧拳は、人には使えぬ。あれを『人を殺す朧拳』にまで高めたのが天奉道士、『神を殺す朧拳』として昇華させたのが道(タオ)道士。そして『全てを滅ぼす朧拳』として昇華させたのがわし、燃燈道人となっている‥‥」
 そう告げると、飛燕も静かに肯く。
「では、朧拳は三つの流派。ですが、この華仙教大国には、数多くの朧拳使いが存在します‥‥『幻の流派』と呼ぶには‥‥」
「数多くの『朧拳もどき』があるだけに過ぎぬ。正式継承者はほんの一握りのみ。ワシの朧拳は今は飛燕が、そしてその次に君に受け継がれる。飛燕の仲間たちが使える朧拳は『朧四鋼拳』。飛燕の朧拳は『盤古朧拳』。天奉道士の元には、今、彼の持つ『星君朧拳』を伝えられるかどうか、試験が始まっているようじゃな‥‥」
 そう告げると、再び小鈴が自分の中で何かを反復。
「では、盤古朧拳と星君朧拳、そしてもうひとつですか?」
「ああ。タオ道士の元で学んでいるであろう『伏羲朧拳』。まあ、あれは一呑みで覚えることができる稼動カ、甚だ疑問なのじゃがな‥‥この3っつが本物の覇皇朧拳であり、過去にこれらを学んだ者たちから見取り稽古で人伝に伝えられているのが、今、各地に存在する朧拳じゃて。本当の朧拳使いは、数を数えられる。それゆえ『数多く存在する幻の流派』なのじゃよ」
 小鈴もそれで納得が行く。
 朧拳と呼ばれているものが、如何に凄いものであるかを‥‥。

 そして翌日から、小鈴は再び特訓を始める。
 今はまだ『朧四鋼拳』の訓練。
 だが、いつかは最源流技の盤古朧拳を学ぶ為に‥‥。


 戦乱。
 ついにそれは始まりました。
 昇竜と南宋の戦い。
 それに巻き込まれる民。
 
 所変われば大武会の予選も始まり、いよいよ華仙教大国は動乱の時代にはいります。


(第7回に続く・・・・・・)