BlowinonamicizieBlowinonCoraggio

■クエストシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:17人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年11月01日
 〜2007年11月31日


エリア:神聖ローマ帝国

リプレイ公開日:12月03日21:23

●リプレイ本文

 香辛料入りソースたっぷりの山盛りの肉のロースト、ラザーニャにラヴィオリ,砂糖菓子,パンは白パン、ブドウ酒は逸品,生チーズと旬の果物もふんだんに。ウナギのパイにチーズにブラマンジュ、牛乳で煮たソラマメ、果物、白パン。美味満載の食卓。
 さらに,食文化自体が、支配と被支配の枠組であり、いつの時代でも社会階層によって、食べるもの、食べていいものが非常に違い、しかもその違いこそ社会秩序を維持するための重要な規範であり倫理であったというのです。農民はブタのように食べるのが正しいあり方。エリートたちは洗練された料理を並べて会食し、ごちそうとともに連帯感と優越感も一緒に味わうのであった。政略結婚の結婚披露宴は、富と権力を誇示する政治的パフォーマンスの場になります。身分と食物の格には呼応しあう厳しいランクづけがてあり、ことにこのレオンハルト・リヒテンクラーク(ec1922)と、アウグスト大公家の息女、エリザベスの高位に位置づけられ、マクシミリアン皇帝とその子息達、更には7大選定候家の当主等も勢揃いし、レオンハルトからの注文通り、古典ローマ風に逆行した些か仰々しいものであった。
 しかし、ローマ文化復旧法の下では望まれるべき逆行ではあったのも事実である。
 この婚礼に先立って、早朝にレオンハルトは、未だボルドーに悪魔崇拝者の拠点が無いという確証は得ていない事を理由に、安全が確認されるまで、部隊の一部をボルドーに派遣し、調査を継続する書状を出していた。
 皇帝の動向を確認し、その間、全ての住民はボルドーから強制疎開させ、街は完全に隔離する措置に踏み切る。
 暫定的な措置ではあるが、教皇庁の者達も少しは動きやすくなるだろう、という言外の意味合いを含めてである。
(それに万一、彼等が敗れた時は、ベリアルの存在を隠す必要がある。
 存在を知られれば、他国が我が国に侵攻する格好の口実を与える事になる。
 例え倒せたとしても、完全に消滅出来なければ同じ事。
 真実を知った所で、悪戯に市民を不安がらせるだけだ───知らない方が幸せな事もある)
 当日、レオンハルトは新婦の館にエリザベスを迎えに行き、そこから馬車で大聖堂へと移動する。
 馬車の前後をボルドーより凱旋した帝国軍が護り、観衆の見守る中を神殿まで行軍する。
 馬車には自分と、新婦の叔父であるアウグスト大公にも同乗して頂く。
 アウグスト大公に同乗して頂くのには理由があった。
 公共の施設や屋敷の中では、どこに間諜が潜んでいるとも知れない。
 秘密の話しをするなら、観衆の見つめる馬車の中ほど安全な場所はない。
「大公閣下、無礼を承知で申し上げます。
 此度のベリアルの一件、ボルドーの件が片付けば、次は閣下へと追求の矛先が移るでしょう。
 選帝候の方々は、アウグスト家を分割し、自らに取り込まんと画策するやも知れません。
 そうなる前に、こちらから手を打つ必要があります」
 無言のまま、視線で話を続ける様に促すアウグスト大公。レオンハルトもその覚悟を確認した。ベクトルは判らないが、確かにひとつの決断をしたという事は感じる。
「具体的な方法ですが‥‥‥‥今の内に家督をご子息に譲る気は御座いませんか?
 糾弾する他の選帝候の方々に先んじて皇帝陛下に赦しを請い、アウグスト家の存続を願い出るのです。
 皇帝陛下がアウグスト家の存続をお赦しになれば、それ以上は選帝候と言えども追及は出来ない筈です。
 これが、閣下にとってもアウグスト家にとっても最善かと存じます」
「さすが、皇帝騎士の言葉には万金の重みがあるな───私もまだ若いが息子に跡を継がせて楽隠居するとしよう。その後は───そうだな父の様に修道院でも建てるか」
「直言お聞き入れ下さりありがとうございます」
 豪華な宴席ディィアーナ・ユーリウス(ec0234)は目を白黒させながら。
「一年以内に教皇庁の負担を二割減らし、貧しき者達への施しを二割増やす」という目標が達成されていないばかりか、教皇庁をローマへ戻す目処もたってないわ。
なによりもまず、資金不足なのが痛いわよね。
 聖なる母に仕える者として、あまりに世俗的になるのも問題だけれど、だからといって、先立つものがなければ目標へ到達することも難しいわ」
(お金を自ら稼ぐのは難しいから、やっぱりパトロンが必要になってくる。
しかも、教皇庁としての権威を失わない形であることが大前提。
 一方、同じ席で、ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)は根回しを始める。
「とうとう最終決戦がやってきたのだ〜。皆、覚悟は完了してるであるか? 余はできてるのだ。まず、各地へ魔王に関する密使を出さねばならぬであるなぁ。リストアップするのだ。まあ、丁度良く、神聖ローマの中枢はここに揃っているのだ」
 と言いながら、アウグスト家には魔王討伐への協力を要請。
「魔王に操られていた汚名をそれによって雪ぐのは如何かな? 要は『喜捨』であるな。特に、次の選帝侯家への根回しと、リヒテンクラーク子爵への連絡をお願いしたいのだ」 しかし、ローマ文化復旧法に反対し、同時にデビル側に操られていた事はアウグスト家の発言力を弱めていた。
 軍資金は出すが、兵は動かせない。なぜなら、銀の武器や、魔法の武器で装備した軍勢など存在しないからである。
 ナイトにしても魔法が違法とされている以上、打撃を与える術はない、如何に精緻な陣を組んだ所で効力が無ければ、まるでお話にならない。
 更にヤングヴラドは他の選帝侯家に。
 聖女騎士団は魔王ベリアル退治に専心し、二心無き事。また、アウグスト家にも罪を雪ぐべく喜捨を頂いている事。それらをふまえた上で余計な介入は無用のこと、そして徒に人心を惑わさぬ事を依頼する。
 それに関するフォローとしては、軍を動かせ、ではなく軍を動かすな、という事なので黙認される。聖女騎士団といえばカルブンクルスアニマを討ち取った猛者(一部には教皇に反旗を翻した特例もいるが)と、三魔剣を所持したものの、政治的な色合いをまだ帯びていない事から、どこの勢力も手出し倦ねている様だ。
 続けてアヴィニョンから来た教皇の手の者に確認。まずは魔王発見、討伐開始の報告。
 更にアヴィニョン駐留のテンプルナイト、ビショップにも連絡を頼む。しかし、大半が教皇庁への、デウス・アマデウス(ec0145)の凶刃を警戒して動かないという。 
 しかし、ベリアル討伐の暁には、その功績を以て、かつての教皇庁の発言通り、力量が足りている者を、テンプルナイトへ叙勲する事を、確認した。
・魔王討伐の総指揮官リヒテンクラーク子爵:魔王発見、討伐開始の報告。できれば、増援にして監査役(ルイスどのとか)の派遣を要請。
 そして、ボルドーへ最速、最短ルートを進むのだ、カエリー・シグヌムどの! と、勢い込んで探したものの、姿は見せなかった。アウグスト大公にそれとなく聞いてみた所、ボルドーで情報集めの最中だそうだ。
 さすがに主の関係者の結婚式だからと言って、国表に戻ってくるわけではない。
 一方、教皇庁ではディアルト・ヘレス(ea2181)が───。
「こちらから仕掛けたような物とは言え、それなりに対策はしませんと‥‥」
 と教皇に進言する。
 キンデルスベルグ騎士団から来た書状に対して、署名者の破門という対抗措置を取ったわけであるが、相手が自暴自棄になってアビニョンに攻め入ることも想定される。そのため、こちらもブラフでは無い事を示すために周辺の教会に号令をかけ兵を集め、諸勢力に対してキンデルスベルグ騎士団と事を構える用意がある姿勢を見せるよう具申し、教皇の許可が得られれば実行する。
 まず書状の内容について公開し、教皇の退位要求については教皇の権威を踏みにじる行為であり、3魔剣の所有権移譲については己が欲求を満たすためだけの横暴であると位置づけ、こちら側に正義があると云う事を示す。
 次に騎士団に対してこの書状の撤回並びに責任者の処罰を要求し、それが出来なければそれなりの措置(騎士団全員の破門等)を取ることを伝え、相手の挙兵に対抗するためにこちらも兵を集める。
 募兵に関しては、基本的には教会と騎士団との問題であるので教会所属の神聖騎士及びクレリックに対して行い、キンデルスベルグ騎士団に恨みのある領主達からの兵力供出の申し出に対しては、義勇軍として扱う。
 更にキンデルスベルグ騎士団の所有する銀山の収入の一部を献上させることで、その収入を民衆への施しに廻して教皇庁の権威の上昇させるため、またキンデルスベルグ騎士団の影響力の削減という一挙両得の手段を講じたのではないかと思い、敢えて策として提案する。
 このディアルトの告知は普く知れ渡り、神聖騎士、クレリックのみならず小貴族やナイトや傭兵団からも義勇兵が集まり、全ての采配はディアルトに委ねられる。世俗騎士達に対し解散令を出す。
 その一方でキンデルスベルグ騎士団から、使者が立ってきた。
 デウスなる者は騎士団から追放しました、と。
 
「これで、ジャンヌくんのお役目も終わりだねぇん。気が早いけどぉ、これからぁ、どうするぅん。私と一緒に世界でもまわるぅん。見聞は広がるよぉん」
 と、エリー・エル(ea5970)は英雄になってしまった後のジャンヌの将来の展開を心配する。
「そうかもね───でも、どこに行けばいいのか判らない。私の世界はオルレアンで止まっていたから」
「じゃあ、余計に世界を見ないと。神聖ローマだけが世界じゃないって判るよきっと。
 それにしても、ベリアルの真の姿っていっても、罠かもしれない、と思っていっても行くしかないんだよねぇん、気合を入れるのよぉん」。
 ボルドーに覚悟を完了して、向かう聖女騎士団に、ルイス・フルトン(ec0134)が合流。
(ベリアル討伐か───聖女殿もボルドーに来るらしい。胸の血が騒ぐ。唐突な別れは、たった数ヶ月前の出来事なのに。まるで数年前の事の様だ。聖なる母よ、罪深い我が身なれど今一度だけ聖女の剣と成る事をお許しください)
 フッ、今更神に祈るとは。既に神の地上代行者に見放されているというのに。
ふたつの神託のうちひとつは成就した。ならばふたつ目も、だがそれは断じて容認出来ない。例え神を敵に回してもだ。
 しかし、口に出しては───。
「迷ったのだがベリアル討伐に私も参加する。宜しく頼む」
 の一言であった。
 
「これまでの事は謝ります。ですから‥‥協力をさせてください」
 更に先行していたフォス・バレンタイン(ec0159)が現れた。
「謝罪しますので、ベリアル退治に力添えさせてください」
 と融和策を打ち出してきた。
 その言葉を聞いたマリウス・ゲイル(ea1553)曰く───。
「細かい経緯は存じません、しかし、騙したデビルが悪いのであってフォスさんは悪くありませんよ。彼を見ているとキャピーの件を思い出しますね」
 と、ノルマンでの体験談を切りだす。
 一方、エリーは、仲間は多い方がいいしぃ、心改めてくれるならぁ、一緒に協力してもらってもいいんじゃないかなぁん、と楽観的。
 フォスの顔を見たルイスは一瞬、眉をしかめるが。ポーカーフェイスを取り繕い完全無視を決め込む。敵の敵は味方だから呉越同舟だという理論なのだろう。
 シリウス・ゲイル(ec0163)は聖なる母の教えに従い、勿論許した。
「こちらからも共闘をお願いしたい。デウス殿も共闘に応じれば良いが‥‥」
───と続ける。
 しかし、強行派が残っていた。グイード・ルークルス(ec0283)である。
「協力してくれるつもりがあるならそのまま消えてください。いるだけで邪魔です。つきまとうなら排除します」
『私はジャンヌ様に嫌われた阿呆です』と書いた看板を胸につけて、ジャンヌ様の後をついて回るバラン・カリグラ(ec0735)であったが。
「嫌われていても、ジャンヌ様のお側を離れるわけにはいかんのじゃー!‥‥‥ぐすん」
 ヘビーアックスを構え、全筋力を解放し、雄叫びと共にエンゲージ。
「デビルに操られ、悪の尖兵となったエセ神父に情状酌量の余地無し。地獄で徹底的に猛省せよ!!」
 受け止めたフォン神父の盾を砕き散らし、更に深々と肩口に斬り込む。出血量は夥しく、駆け出しの冒険者ならそれだけで死亡していたろう。
「やめてー!」
 エリーが叫ぼうとするが、グイードも続けて全重量を乗せたデュランダルを打ち下ろす。
 フォスは倒れ伏した。
 それでも尚、腕の力のみで下半身を引き摺りながら、ジャンヌに詰め寄るフォン神父。
「聖女騎士団のクローディア・ラシーロ。ジャンヌ様の盾! 何者であろうとジャンヌ様に指一本触れさせません!」
 クローディア・ラシーロ(ec0502)がそのフォスの前に立ちはだかる。フォスは地獄の悪鬼の様な妄執を乗せてジャンヌに言葉を飛ばす。
「私には戦わねばならぬ『使命』がある。おまえはなぜ戦う?」
「ローマを住みやすくする為───」
「ウソをつけ───おまえはただ『聖女』だと言われたから戦っているのだッ! おまえが戦っているのは状況にすぎん。しかし、私は違う。自ら過酷な生き方を選び、後悔はしていない!お前には内から湧き上がる衝動はあるまいッ。そんなクズは! 私の前から去れェエエエ――ッ!」
「いけない! それでは死んでしまいます!」
 フォスは手当をしようとするノエルの癒しの手を払いのけた。もっとも、ノエルの力ではどうしようも無いほどに傷ついていたのであるが。
「人には『使命』がある‥‥肉体的に小さき『命』なぞ超越した大いなる『使命』が!! 呪われろッ! おまえ等は皆ッ! ‥‥未来なぞないッ!!」
 そこで、フォスは舌をかみ切る、反射的に舌が縮こまり、溢れる血とともに気管を塞いでいく。
「おまえなぞ‥‥教皇や貴族のような思いあがったカスどもの傀儡に過ぎない‥‥それをこれから思い知っていくのだな‥‥」
「かわいそうな人。相手が何を持っているか、ではなく。何を持っていないか───ただ、それだけでしか理解しようと出来ないなんて」
 ジャンヌは一滴の涙を、立ちはだかるクローディアを排除しようとブーツの足首を掴む、フォス神父の手袋に落とす。
「哀れむな───魔女が!」
 それがフォス神父の最後の言葉であった。
「この神聖ローマはどこか間違っている」
 フォスの指をブーツから引きはがしながらクローディアは呟く。
 エリーさんの言葉は私の心に今も見えない棘の様に刺さっている‥‥でも! 今はそれを考える時じゃない。今はこの世を乱せし悪魔ベリアルの討伐が第一。それは必ずこのローマとそして世界にとって良い結果をもたらす事になると今は信じられます。ジャンヌ様とそしてこの『聖女騎士団』の皆と共にある少なくとも今だけは、感じる感覚は、私は『白』の中にいるということ‥‥『正しいことの白』の中に私はいる‥‥!
 埋葬を終えた所で、シリウスは満月が登った夜空を眺めて───。
「ベリアルが満月の夜のボルドーを指定したことについてだが、満月の特定の場所といえば、月道であろう。
 ボルドーには謎の月道か何かがあり、それをなんらかの形で利用したいのだろうと考える」
 そこへヤングヴラドが自分の意見を小声で述べる。
「『破滅の魔法陣』だと!? なおさら危ないではないか。
 ということは、それを行う前に阻止しなくてはならんな」
 その言葉に対しグイードが慎重論を述べる。
「前回ボルドーであった戦闘で多数の死者が出ているので、ベリアルはその魂で真の肉体の復活の儀式を行っているのではないか?
 いろいろな混乱も裏でベリアルが仕組んでいたはず。このまま放置しておけばローマ全土に混乱が広がると思われる」
 そこへ複数の修道僧に伴われた、ジュゼッペ・ペデルツィーニ(ec0207)が合流する。
「サー・ゲイル、そしてみなさん、いつぞやアビニョンでお会いして依頼ですか?
 戦争で治安が悪くなっていそうですので、戦後の後始末として復興の手伝いを致している所です───お手紙は頂きました、微力を尽くしましょう」
 その手紙とはシリウスが予め教皇庁にビショップ、テンプルナイトをベリアル戦に寄越して欲しいと綴ったものである。
 ともあれジュゼッペの当初の意図としては、元サクソニア領にはローマから執政官が派遣されるので、まずはその方と顔合わせをして打ち合わせをした上で、近在の教会に要請し、各教区の責任者に十数名の神聖騎士と、修道士を数人お借りし戦傷者の手当や配給を組織的に行いたいというものであった。
 私財を以てそれに報いようとジュゼッペは考えていたジュゼッペであったが、ジーザス白の教えに従い、修道僧はそれを丁重に断り、奉仕に励むのであった。
 そのための資金は、所持金で賄える範囲で提供をします(それほど私財はありませんが ジュゼッペ自身も癒しの力を以てボルドーの復興活動に時間を割くつもりであったが、先の戦いでは敵陣にいた身として、恨まれている可能性を鑑みて、少々の情報操作をしていた。
 あらかじめ先の内乱について、サクソニアの開戦の根拠とした勅命書がもともと奪われた品であった事。指導者ヤーグルを殺害したのは、かの『悪名高い』キンデルスベルク騎士団である事。焼き打ちを仕掛けたのも同騎士団である事。信徒に噂を広めてもらったのであった。噂という形をとっているが全ては紛れもない事実であった。その融和策は功を奏してジュゼッペと教皇庁に向けられる憎悪の矛先を逸らし、仮にこの地でキンデルスベルグ騎士団の活動があるとして、情報戦を仕掛けられた場合のイニチアシブヲを取る事が出来るはずであった。
 もっとも、信徒は破門者との接触を禁じられるという事、つまり平和喪失刑の逆シチュエーション、に陥る筈なので、キンデルスベルグ騎士団方は真っ当に、教皇庁の悪評を広める事などできないではずである。
 その様な道理よりもユーリア・レオ・フォルティ(ec1663)を突き動かしているものは
『ローマを騒がせた悪魔の討伐』という一念であった。
「具体的にベリアルの足跡を追うのは現地到着後。
 探しても直ぐに見つからない様な場合は悪魔崇拝者を辿って調べて行く」
「残念だが、お探しの私はここだ」
 哄笑に一同が振り向いた先にはベリアルの巨漢があった。
「よくも人の故国を散々に掻き回してくれた物だな‥‥ベリアルッ!」
 ユーリアが獅子吼する。
 それを諫める様にグイードは───。
「あなたの相手はこの私です。このデュランダルと共に再び眠りにつくがいい」
「再び? 残念ながら私は封印されるような間抜けな真似をした事はなくてね」
「台詞の長いやつめ!」
 そこへルイスがアドバイスを入れる。
「三魔剣をベリアルが受けきれない様にした上でなければ、攻撃が向こうにされるおそれが大きい、タイミングを見計らって攻撃して欲しい」
「今は耐えろ───?」
 ジャンヌが手短に述べる。
 うなずくルイス。
 バランがすまなそうにしながら。
「わしの一撃で少しでも手数を減らしたいが、『ジャンヌさまの為に』そこでデビルにダメージを与えられる魔法を何か、かけてもらえんだろうが。この右腕に宿る脳みそではどうにも魔法が使えないのじゃ」
 グイードがピンク色の光に包まれながらグイードの研ぎ直されたヘビーアックスにオーラパワーを付与していく。
 シリウスも周囲の人間にレジストデビルをかけていった。
 そうしている間にもベリアルは羽ばたきながら間合いを詰めていく。
 ジャンヌが攻撃が出来ないのなら支援をしようとカリスマティックオーラを発動して、皆の支援に努める。
「ぬぉー、1日にデビル2体とはハードじゃい」
 バランが、デビルにカウントされているフォス神父に壊滅的なダメージを与えた攻撃を放つ。しかし、大振りなモーションを読まれて躱される。
「聖女騎士団、奮起せよ!我らの大義をデビルに示せ! テンプルナイトの意地、見せてみせる!」
 シリウスが声を枯らし、クルスグラディウスを腰だめに、ベリアルにつきかかる。
 
「これは躱せないのねん!」
 と、左右からホーリーレイピアとマインゴーシュの華麗なコンビネーションでエリーが迫る。ベリアルの翼を狙った連携であったが、強固な魔力の障壁により減殺。さらにデッドオアライブ、そして、デビル魔法レジストゴッドによってほとんどダメージにはならない。そして、この武器による攻撃はデビル魔法『エヴォリューション』により以降ダメージを受けなくなる。
戦場が選べるならば地面を直接臨めるところを、ヤングヴラドが聖槍グランデビエを以て、はじき飛ばす。通常なら落としはしないが、神敵には行動に制限がかかる範囲では話が異なる。
「むぅ、どう見ても、ブランの杭には見えないのだ、残念なのだ」
「そんなものがあったら、真っ先に破壊するが、何か?」
 結構余裕なベリアル。
 そこへマリウスが全体重を乗せた拳を見舞う。
 所詮魔法を乗せた所で生身の人間の拳では自分をどうこうする事はできないとベリアルを踏んで蹴られるに任せていたが、ふれあった瞬間、体力勝負にもつれ込ませる。敬虔なジーザス教徒のマリウスには神の加護があり、ベリアルには神の怒りがあった。
 そのまま背中から転倒するベリアル。
 何かを念じてこの地域から転移しようとするが、それはクローディアの手による結界により阻まれる。
「ジャンヌ様に神のご加護があらん事を! 聖女騎士団に栄光あれ!」
 そのままエリーから借りた槍で突き刺さる。
「今こそ神託の刻! ユーリア参る!!」
 ルイスが最後の止めの前、ジャンヌに提案する。
 傍に近づき瞳を覗き込んで囁く。
「ジャンヌ殿」
 まるでその身にデビルが乗り移ったが如き甘く情熱的な誘惑を試みる。
「運命に逆らってみたいと思われませんか?」
「‥‥」
「この10ヶ月、貴方にとって意に染まぬ日々だったはず」
「‥‥」
「神と魔剣に復讐したいと思われませんか」
 ジャンヌは無言。
「思われるならば、私の剣と貴方の魔剣を暫し交換しましょう、ベリアルを倒すという聖なる母と魔剣の計画の結末は変わりませんが、「私がそれをなす事で因果律にどの様な影響を及ぼすか───少なからず彼らの計画に影響が出る事は必定です」
「ジャンヌ殿早く!」
 グイードが促す。
「貴方の意思を示す時です。偶には運命に抗うのも悪くはない」
 そして、次の瞬間───オートクレールはルイスの手の中にあった。
 ベリアルが立ち上がろうとした瞬間、三本の魔剣が翼と心臓を射貫く。奇しくもそれはフォスの墓の上であった。
 その瞬間、ベリアルを中心に冷たい波動が通り抜けていくが、一同の心臓をひと撥ねさせる程度の効力しかなかった。
「神託は果たされぬ。ジャンヌの命は聖なる母にもデビルにも渡さんぞ」
 ただひとり、ルイスを覗いて。
 ルイスの心臓は永久に鼓動を放棄した。
 同時に剣劇の音が鳴り響く。ジュゼッペの供回りの修道僧と神聖騎士達が装備がばらばらな一団と切り結んでいた。
 悪魔信者かと、ジュゼッペがサーチフェイスフェルを使うが、彼らの信仰は狂信の域にまで達していた。
 彼らを率いるのは片眼を赤々と光らせる精悍な男。
「こんなところでこのデウスが敗北するわけがないッ!」
 ジャンヌを狙って無数の矢玉が飛ぶが、クローディアの展開していたホーリーフィールドによって阻まれる。
 予め、ボルドーに潜伏。ジャンヌとベリアルとの戦いを静観し、ベリアルとの戦いが決し、『魔剣』でベリアルを封印するタイミングでジャンヌ勢に奇襲をかけ、『魔剣』奪取とジャンヌ抹殺を謀ったのであった。
「若造が、栄誉に狂ったか! 今、ローマにデビルを復活させてどうする!」
 シリウスの言葉が飛ぶが、デウスは意に介さない。
「『魔剣』は我が手にッ! この国はもう駄目だな。私が新しい国を作るしかない。『魔剣』の力によってな‥‥」
 ジャンヌはルイスと交換したセンチュリオンソードを構え、デウスと切り結ぶ。
 鮮やかな剣舞の中、エリーが割って入る。
「平和って、個人個人が感じるものであって、ひとりでも幸せになれないらそれは平和なんかじゃないよ。誰かの犠牲での平和は平和じゃないんだからね」
 と真剣に切りだす。デウスは耳を貸さない。
「私にとってジャンヌくんは聖女じゃなく娘みたいなものなんだから」と彼女は私たちと同じ人間であることを主張して立ちはだかる。
「女子供!! 大儀を知れ! やめろ貴様ら‥‥オレをよく見ろッ! ふさわしいのは誰か!? もう一度よく考えろ!この世で『魔剣』を持つにふさわしい王は誰か!? ジャンヌ、『魔剣』を支配するには貧弱なものではつとまらないッ!!」
 だから、おまえも土壇場で手放したんだろう!
 よくも!!こんなーッ!‥‥とるにたらない‥‥小娘のために‥‥!! この地べたに吐き出されたタンカスどもが!! この私に対して‥‥!! 『魔剣』を支配するのはこのデウスだァアアアアアーッ。くおのッ!!ガキィガァァア」
 息も絶え絶えになって血の海に沈むデウス。
 グイードはベリアル封印の地に澄み、守り役を買って出た。
 封印した場所に人が立ち入れないような処理をしなければならない。魔剣を抜けば復活してしまう。
 報告には戻らず、この付近に住み着いてベリアルを監視するようにしたい。
「星をみながらのんびりすごすのがいいかな。
 ベリアルがいなくなったからといって平和になったわけではない。これからも大変だろう。私はこの地でベリアルを見張っていようと思う。できればしかるべき封印の可能な人を探して処置をしてもらいたいのでそういう人がいれば連絡をもらえるとありがたい」
「それはムリでしょう」
 と、ノエル。
「その為の三魔剣なのですから。これがその然るべき処置です」
「ならばしばらくは陰気な墓守となるか。しかし、月と星とがあるのなら、悩む事はないか」
 事件終了後
 ユーリアはローマに戻り、『混血の』テンプルナイトが悪魔の退治に大きな役割を果たした事を強調。ローマ至上主義の見直しを進言。
「そもそも、魔剣が誰の物であったかを忘れた訳ではありますまい。‥‥この国は、今一度カール大帝により護られたのです」
 フランクの王によりな。
 そして、神聖ローマ皇帝は教皇により聖別されなければ、ドイツ王でしかない。
 ともあれ、アウグスト家にはベリアルの足跡が残されている事が彼女の主張の価値を相対的に弱めた。今後は、封印したベリアルを殺しきる方法を探す。
「私は気が短いのだよ。‥‥息子の代に託すなどと悠長な事を言ってられるか。とっとと方法を見つけてブチ殺してしまいたいのさ」
‥‥決着は、己の手で付けたい。
 ブランの聖釘は持ち出されたと聞いた。第一に其れを探しに行く。
 ローマ国内の探索は皇帝陛下や教皇猊下などに任せ、私は必要ならば国外に出る。
国外にでる許可が必要ならば『ベリアルの完全なる駆逐のため』と理由をつけ許可を取り付ける。
「‥‥その際、私の地元‥‥ローマ北部だが‥‥がまだ無事であるなら、皇帝直轄地として安全を保証して貰いたい。
 最早遠くなった話だが‥‥故郷は故郷だから、な」
 トゥルエノ・ラシーロ(ec0246)とジョヴァンニ・セラータ(ec0232)がレオンハルトとランナバウトで交渉した結果、ランナバウトの代官として、クレメンスが就任する事になった。
 それを最後にトゥルエノとジョヴァンニは歴史の表舞台から姿を消す。
 ノエルも何処とも無く姿を消し、神々の運命の仕掛けが新たに軋み出す。
 ジャンヌはエリーと別れて、自らの瞳で新世界を見ようと旅立つ。
「さようなら、なのねんローマ、もう誰も抱きしめてくれない都」
 下旬に教皇庁から、テンプルナイトとして叙任を受けたもの達は自分の信仰と、弱き者の盾として冒険の旅に出る。
「いやー、今度はイギリスであるか? まあ、風と波の赴くままに進むのである」
 ヤングヴラドはシリウスの騎士団の停止令を自然体で受け入れ、若さのまま進み出すのであった。

 これらがローマに訪れた一年足らずの嵐の結果であった。

●勇気ある誓いと共に、戦ふ者に華の芳を

今回のクロストーク

No.1:(2007-11-10まで)
 レオンハルトさん、トゥルエノさんからボルドーで重要な会わせたい人がいる旨の手紙が来ました。
 ついたのは各種宴席一段落してからです。
 どうしますか?

No.2:(2007-11-09まで)
  ベリアル退治に向かったみなさん。フォス神父が今までの事は謝るから、強力させてくれと申し出てきました。リアクションをどうぞ。

No.3:(2007-11-10まで)
  全員に質問です。この1年近くで神聖ローマは良くなったと思いますか?