BlowinonamicizieBlowinonCoraggio

■クエストシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:17人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年06月01日
 〜2007年06月31日


エリア:神聖ローマ帝国

リプレイ公開日:06月19日16:28

●リプレイ本文

●神聖ローマ第5話:我ら挫けず、友ありや嬉からん
 ローマを出たディアルト・ヘレス(ea2181)は、酒精や、何か判りたくはないが妙に甘ったるい、脳髄をかき乱す様な香りを以てタラントの街の洗礼とされた。
 すきま風が吹き抜ける荒れ果てた、聖なる母の教会では情報収集するが───。
「あれは天災です、いつ破壊に訪れるかなど神を試す様なもの」
「それが聖職者の発言でしょうか?」
 その言葉に半ばビネガーと化したワインを一口、教会の神父は呷る。
「それは領主様もそうお考えなのでしょうか?」
「さあ、今頃は悠久の都ローマでよろしくやっているでしょう」
 酒場でディアルトは酒を奢るが、彼の知りたい、ドラゴンの飛行ルート、襲撃間隔、襲撃パターンに関しては意味のある返答は出なかった。
 強いて言えば、帰って行く方向が大まかに掴めた程度だろうか。
 火山帯だ。
 どうやら、酔漢達は檜の棒をにしたディアルトをクレリックと思っているらしい。
「この負け犬どもが」
 そんな愚民を見ながら、デウス・アマデウス(ec0145)が教皇庁から、送られてくる5本の魔剣を受け取るので到着がやや遅れた。特に破壊力に優れた訳でもなく、手になじんだり、ましてやドラゴンを討つ力など込められているものではない。
 単なる魔力の込められたノーマルソードである。
(教皇庁め、役にも立たぬガラクタを送ってきて───現場というものを知らん)
 そんな密やかな想いとは裏腹に、シリウス・ゲイル(ec0163)は空を飛ぶカルブンクルスアニマの飛行能力を奪う方法を模索していたが、精密な攻撃を可能とするポイントアタックなどの武芸を体得していなければ、振り回した攻撃が偶然に翼に命中するのを期待するしかない。
 それも相手を空中というリングから引きずり下ろしてからの話であったが───。
「どうも、山歩きとなると、馬は難しいね。カルブンクルスアニマ相手に怯まないでいられるかどうかも───重装備で行けば山歩きは老骨には響くものだよ」
「山といっても普通に山1つであれば住処はわかっているでしょうから、実際には山岳地帯の何処かなのでしょうが、その何処かというのが問題点になると思います。何しろ記録に残っていないのですから」
 ジュゼッペ・ペデルツィーニ(ec0207)がフォローを入れる。
 食料を節約しようと、街道筋でクリエイトハンドを使おうと考えていたが、善意であろうが、クレリックであろうが、魔法を使えば街道警備隊に通報される為、魔法の使用は控えてきた。
 尚、カルブンクルスアニマの全長は以前見た感覚からすると、尻尾まで含めて24メートルである。シリウスは───。
「これだけの巨体となると、すぐに空中から追い落とす術も見つからないね。騎士修道会を設立するには肉体のみならず、精神を使う必要もあるという事か。
 一番単純な方法は巣を探し出して、奇襲することだろう。
 入り口をどうにかして塞いで出れなくすれば飛行されずに済む。
 ただ狭い場所であれば、ブレスには注意しなければな。
 ブレスを吐かれる前に盾を持っているデウス殿の後ろに下がる」
「シリウス、皆はその巣を探し出すのにやっきになっているのだが。それにそれだけの巨体が出入りする住処ならば、塞ぐにも相応の手間がかかるだろう。おそらくその段階で気付かれてしまうのがオチだと考えるがな」
 デウスの左右で色の違う瞳で見つめられ、シリウスは苦笑いを浮かべる。
「とりあえずの方策を言ってみたまでだよ。まずは倒せる可能性をひとつひとつ挙げていく事で最終的な方法を絞り出す。もっとも我らの理想を貫く為には少しでも時間は欲しい所だがね。いざとなればデウス、君の盾を信頼してるがね」
 ファランクスを組む際、敗走して隊列を乱した時、パイクを捨てても罪には問われない。しかし、戦友を護るホプライとシールドを捨てれば重罪となる。
 これが古代のローマのスタイルである。
「ブレスを空中から吐かれれば、それでなくても俯角で吐かれれば、前に誰が盾を持っていても炎は浴びせられる。あまり頼るな」
 ディアーナ・ユーリウス(ec0234)はそんな一同を見ながら───。
「カルブンクスアニマって強そうだから、いろいろ援助を請おうと思ったけど‥‥。
 やっぱり自力で何とかしないといけないのね───ビショップになる道は険しいのね! でも、そんな彼らが本当にどうして月道に行って帰れない程の事があるのって、余程大変な事なのね───でも教皇さまのお力になるためだもの、めげないわ! でも、山歩きね」
 この中で誰も山歩きに慣れているものはいなかった。地図も整備されておらず、あてになるものではない。
 それでも様々な想いを抱えつつ、山に踏み込む一同。
 カルブンクルスアニマが出るだけあって狩人のひとりもいない。
 満月を過ぎた頃合いで一同の頭上から、火山灰が降ってくる。この頃から一同の山歩きに慣れていない所から来る、堂々巡りや、ルートの取り具合の失敗、重装備の者のフォローに追われる事となった。
 そんな中、日輪を背にする形で、巨大な影が姿を現す。
「カルブンクルスアニマよ」
 ディアーナの秘めた艶やかな声と共に、一同は順列を組み、幾重もの白い淡い光に包まれながら、戦闘準備を整える。
 一方、魔法を展開し終えたディアーナであるが、背中のバックッパクを降ろして、銅鏡を出せないかと四苦八苦している。バックパックの中身はそう簡単に取り出せるものではない。
 何か白い淡い光を見て、向こうも思う所があったのか、ホバリングして不安定な空中の姿勢から、印を組み、淡い紅い光に包まれる。
「やっぱり、魔法を使ってきますね」
 20秒の時間ふたつの魔法をカルブンクルスアニマは唱えた。
 全身が紅い炎で包まれる。
「こちらは覚悟完了だ」
 シリウスがパイクを握る手に力を込める。
 そうこうしている内に上空を旋回する紅い竜。“ルビーの息”の異名に相応しき、灼熱の業火を一同に浴びせる。
 半球状の結界が炎を遮るが次の瞬間消失する。
「もう、諦めた。聖なる母よ、我に力を!」
 ディアーナの計算では、達人クラスホーリフィールドが直径15メートル、コアギュレイトが専門クラスで発動すれば、間合いが15メートルだから、一回ブレスを凌いだ後だったら、カルブンクスアニマは直接攻撃になるだろうから、コアギュレイトを試せるわ筈。
 と、踏んでいたが、実際のブレスは30メートル離れた所から打ち込まれた。
 完全な計算違いである。
 ともあれ、ホーリーフィールドを再展開する。
 その間にカルブンクルスアニマは空中でゆっくりと魔法を唱える。うなり声に韻律を含ませたそれを唱えると、褐色、青色、強い赤色、緑色、金色、銀色の六色の光に包まれる。
 そのまま、ディアーナが張り直したホーリーフィールド目がけて炎の息を吐きかける。 結界は打ち砕かれカルブンクルスアニマは目を細めた。やっぱりな───といった表情である。
 ディアルトは噂で聞き及んだ以上にカルブンクルスアニマが魔法を使いこなす事に恐怖した。
 それからは神聖魔法のホーリーフィールドの展開と、虹色の光に包まれたカルブンクルスアニマのブレスによる魔法合戦が繰り広げられる。
 白い淡い光が結界を紡ぎ出し、虹色の光に包まれたカルブンクルスアニマの息がそれを打ち砕く。
 近接したカルブンクルスアニマが羽ばたき暴風を打ちつける。
 翼によって発揮した乱気流は一同を転倒させかねない勢いで、魔法の展開する余裕を失わせる。
 しかし、ディアーナの高速詠唱は間一髪でホーリーフィールドを紡ぎ出し、乱流を阻む。
 とりあえず、魔力を補充する為、ソルフの実を囓り、結界を絶やさない様、懸命に魔法戦に挑む。
 結果、最終的にはカルブンクルスアニマが業を煮やしたのか、空中から大きく翼を広げて猛襲をかけてきた。
 その炎の牙は渾身の一撃はブレスに頼らずして、ホーリーフィールドを打ち砕き、一同に迫る───かに見えたが、予め二重に張り巡らされた小規模なホーリーフィールドにより阻まれた。
 ディアーナ、デウスが咄嗟に白い淡い光に包まれると、聖なる母の力で呪縛しようと、コアギュレイトの神聖魔法でカルブンクルスアニマの動きを封じようとするが、予め唱えられていた呪文は、フレイムエレベイション。抵抗力を上げるのにひと役買っていた。
「側面攻撃だ。まずは片方の翼をやる。片方の翼がなければ飛ぶのは困難になるだろう」 シリウスがパイクを振りかざし一撃必殺の攻撃を打ち込む。向こうも力任せの打ちつけ故体勢を崩している為、こちらも渾身の一撃が放てる。
 しかし、全力の一撃を持ってしても、パイクの大重量を乗せた一撃でさえもかすり傷を負わせるのが限度であった。
「莫迦な!」
 ディアルトが出所不明の曖昧な知識によれば、シリウスの一撃は中傷を負わせるに値する一撃の筈であった。
 とはいえ、目前の光景はそれを凌駕している。
「ディアルトくん話が違うのではないかね?」
 シリウスは全身から脂汗を流していた。
 更にホーリーフィールドを展開するが、炎を帯びた牙を以てして、噛み砕かれる。
 近距離ではホーリーフィールドの位置を調整する必要がある。
 コアギュレイトによる一撃必殺を狙うが、抵抗力を上げたカルブンクルスアニマの前には確実に魔力を弾かれていった。
 シリウスは返す一撃で、深々と右胸を抉られる。それでもエンペランの見切りで左胸への直撃は避けられていた。
 ホーリーフィールドをジュゼッペは再展開しようとするが、悪意を持つ対象、カルブンクルスアニマの為、上手く魔法を成就できない。
 二枚展開出来なければ、一呼吸にふた噛みしてくるカルブンクルスアニマの攻撃の前には無意味である。
 展開しては砕かれ、展開しては───。
 一同はもれなく牙の洗礼を浴び、おのが装束を鮮血で塗らしていた。ポーションで癒しても返す牙で深手を負わせれる。
 コアギュレイトによる呪縛からの一撃必殺はとうとう完成しなかった。
 しかし、ポーションを呑んだ事による目標の分散で致命打を負った者はいない。
 永い3分間で一同はずたずたにされていたが、ふと空を見上げたカルブンクルスアニマが羽ばたくと宙に舞い、近くの火山目がけて飛んでいった。
「あれが巣───なのか?」
 ディアルトが出血の中から呻く。
 それに反駁する体力は一同には残されていなかった。
 幸運な事に、カルブンクルスアニマの追い打ちは無く、タラントまで全身を灼け爛れた姿を一同は晒すのであった。
 教会に行っても、それだけの疵を直す神聖魔法の使い手はいないという。
「ともあれ───だ」
 全身包帯だらけシリウスが苦痛をおして、一同に訴えかける。
「多分、カルブンクルスアニマに対して、我々の最大の破壊力である私の一打も決定的にはならない訳だ。向こうが怪しげな魔法を解除できれば、ブレスの猛攻は防げるかもしれながいが、ニュートラルマジックは確か、相手に抵抗されれば意味がない。これが利いている様ならばコアギュレイトによる金縛りで方がついている」
「つまりは相手が抵抗できる魔法は無意味という事だろうか?」
 ジュゼッペが慎重に言葉を選ぶ。
「自分たちを強化する魔法の方が有効という事かしら? グッドラックとか」
 と、ディアーナが積極的に意見を出す。シリウスは頷いて。
「それは福音かもしれない。相手の使っていた魔法は俗に言う精霊魔法の六色の色が入り交じった光を出していた。まさか、全ての精霊魔法を使いこなすという意味ではないだろうが。火の精霊魔法は確実に使っていたな。さすがに火のミドルドラゴンというだけの事はあるが。ともあれ、トシのせいで五感も鈍れば、精霊魔法への抵抗力も低くなる。まあ、相手はブレスの方が確実にダメージが入りそうだがね、ノルマンの離反の際に精霊魔法の使い手と戦った事はあるが、一撃で相手を行動不能にする程の深手を与える───以前受けた、カルブンクルスアニマの息程の威力を持った者はいなかった。まあ、幸運な事に火の精霊魔法には一撃で相手を行動不能にする類の魔法はなかったがね。クイックラストという金属を錆びさせる魔法があるが、使わなかったな───使えなかったのか」
 シリウスがノルマン独立戦争を思い起こして、精霊魔法の解説をする。何しろ魔法が御法度の神聖ローマでは、精霊魔法の知識が少なすぎるのだ。
「しかし、十字軍に人が集まらなくて良かった。自分たちの面倒も見られないのに、数ばかりの面々では───」
 自分の最大の一撃でも沈まないカルブンクルスアニマの前に数ばかりいても死体が増えるだけだろう。
 攻城兵器でも使えば相手を牽制できるが、火山帯で運用するには途方もない手間がかかる。 シリウスはそう結論づけるのであった。
 やはり、山岳に不慣れなのは不安材料である。退却戦になったら、無事帰れるかは判らない。
 まずは疵を治すのが先決であろう。

 首都ローマからフィレンツェに舞い戻ってきたトゥルエノ・ラシーロ(ec0246)にジョヴァンニ・セラータ(ec0232)は一言。
「悪名ばかりが高まっていますよ」
「‥‥」
 自分がやれる事は戦う事だけだ、そう腹に決めたトゥルエノであったが、その悪名は街道筋の情報として、官憲の間を伝わっていた。奴隷解放ではなく、何をしたいのかさっぱり判らない酔狂者としてである。
 無論、奴隷の間に情報のネットワークなどある筈もなく、無責任な解放者の情報など都市を離れれば、もう伝わらない。
「確かに乱暴ね。風を吹かせるにはそれしかないけど───それももう終わりにするわ。 ジョヴァンニ、交渉はそちらに任せるわ。
 貴方は私を利用して。
 でも、万一のことがあっても決して私を助けに来ちゃ駄目よ―――!」
「クレメンスさんにもそう言っておきますよ」
「あの人も頼りにならないから───どこか穴があるからね」
「逆にマルモンロイド家と直接、証拠に残す様な跡を残すギルドの幹部もいない様で‥‥逆に気になる話が───密偵からの又聞きなので───」
「舌ばかり長い男は嫌われるわよ」
「ずばり、言いますと会話をギルドの準幹部級のものが行っているので、会話相手を確認しようとしたら、そこには誰にもいなかったという。にも関わらずその準幹部は窓を開け放したという事です。その密偵はレンジャーですが、デビルが蟲にでも化けて入り込んだのではないかと」
「デビル───クレメンスの出番じゃないの?」
「いつ来るか、周期的に来るのか? それとも何か向こうの用件があったか時のみ来るのか? 判らないのですよ───監視はつけておきますがね。しかし、トゥルエノさん相手の武器を破壊して、肉体は傷つけない。その態度は立派だと思いますが、飛び道具に関する注意はしないと」
「そうね、相手もコナンとかカールスの使い手だとこちらの武器も破壊される。不滅の武器防具など無いにしても、削り合いだとこちらが数の上で不利になるわ。ソードボンバーで吹き飛ばせば、相手を傷つけてしまうし───痛し痒しよ。どちらにしてもデビルが相手だと、誰かレンジャーでバーニングソードかクリスタルソードを使えるメンバーを揃えてもらっていざという時に対処するとしましょう。こんな時ヴィヴィが傍にいてくれたら‥‥って思うわ。クレメンスって隠密行動カケラも出来ないし」
「ともあれ、相手と話し合いのテーブルを平和に進めようと思うのでしたら、義賊もどきなどという選択肢は止めて下さい。少なくともこちらの方が今は格下なのですから」
 それから二日後であった。トゥルエノが押し入った家の護衛であるレオンの達人により、素手での当て身を水月に食らい昏倒したのは。
 トゥルエノは装備品を全部引き剥がされ、美しい裸体を隠すもの無く恥辱のまま、全裸で中央広場に磔にされる。食事は一日一度口に押し込まれるニンニクのみ。そして、仲間が除名に来るならば免罪にしてやる、さもなければ剣闘奴隷かなぐさみものだ。引き取りの期限は期限は7月1日とラテン語、ゲルマン語、ジャパン語、イギリス語、アラビア語で記された看板が脇に立つ。
(だから言ったでしょう? 来ちゃ駄目って───ジョヴァンニ、クレメンス)
 周囲の不躾な視線を遮る術のないまま、トゥルエノは念じるのであった。

 フォス・バレンタイン(ec0159)は戒めが解かれると拳を鳴らし───。
「どうやら、皆さんにも良心の呵責があったようですね、良いでしょう。私は寛大ですから今までの事は不問にしておきましょう。『聖女さま』それでよろしいですかな?」
「私は構わないわよ。みんなのおかげで疵も癒やしてもらったし。でも、あなたが皇子達を真夜中に個人授業していたのは───納得しかねるわね」
 そのジャンヌの言葉に応じて、バラン・カリグラ(ec0735)も筋肉を誇示しながら、ずずいと迫る。
「悪いのはおおむねワシじゃ。だが、筋肉は正しく。聖女さまはもっと正しい」
「反省の見えない人ですね‥‥」
「敵に回るならその時にぶった斬る方が清々する。いっそそうしてくれ」
 そう言って、満面の笑みを浮かべるユーリア・レオ・フォルティ(ec1663)。


 グイード・ルークルス(ec0283)は前に出て───。
「まだ、全ての真相が正されたわけではなく、このままクレルモンに行くのは危険というか愚の骨頂。皇子方から話を聞きましょう。少なくとも短剣の出所は確定すべきです」
 そこでようやく話を振られたヒエロニムス兄とレオ弟は、それぞれ微妙に色味の違う銀髪をフォス神父に向けた。
 そこで夜の『勉強会』が何月の何日に繰り広げられたか、その日時に食い違いが出てくる。
 少なくともフォス神父の申告した会よりは10回は多く『勉強会』が繰り広げられている。
 フォス神父の証言を信じれば───だが。
「私は今回の証言内容を『内密に』と言ったはずです。なのにその後ジャンヌさんを刺せと言ったのでは全く逆の行為ですよ。おかしいとは思いませんでしたか?」
「そもそも聖なる母に恥じない行為をしていれば、内密に───という事もないかと思いますが」
 と、ヒエロニムス。
 少ない照明で、人目を忍んでの事であるから、話を聞いている内に、誰の話も信用出来なくなってくる。
 そして、あの運命の日の前夜に銀の短剣がふたりに渡された日を境に夜の『勉強会』は終わりを告げた。
「銀の武器を使えとは───私の『偽物』も『聖女さま』を魔物とでも思っていたのでしょうね?」
 ユーリアも真性にフォス神父がふたりに短剣を渡したとは思えなくなってきていた。
「ジャンヌ殿確認する。ふたりに遺恨はないな? 告発するものが居なければ罪は発生しない。誰にも知られずに倒れた木の折れる音は鳴らなかったのと同じ事」
「自分は記憶にないけど、みんな色々やってくれたし、生きているからには遺恨はないわ」
「───結構。ならば、カエリー、カエリーはいるか?」
「後ろに」
「心臓に悪い奴だ。ルーエル聖騎士伯とつなぎを取れそうな人物は居ないか?」
「来月取り立てで50Gだな。聖騎士伯城館の教会での司教の師に当たる人物が隠遁している。場所は今地図に書く。紙代は50Gにコミだ」
 さらさらとペンの音がした跡、トゥールズ近辺と思しき紙が置かれていた。
 それに応えてヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)曰く。
「はてさて、疑惑が疑惑を呼び、さらなる不和を生み出す。
 だが、しかし!
『ジャンヌちゃんは聖女か魔女か』
 このような人智を超えた現象の真贋を我らの論争のみにて判断するのは僭越というものではあるまいか。
 そもそも我らの目的は魔剣探し、これこそ『聖女』を証明する伝説であり試練なのだ。 コレを乗り越えてこそ『聖女』と呼ばれるべきであるのに
 今から論争とは、気が早すぎるのだ。
 無論、決闘裁判の信憑性を疑うものではないが。今、この状況でこれ以上聖女御一行の戦力を減らすのは聖女の敵に利を与え、魔剣捜索も不利になるのみなのだ。
 ここは一度勝負を預けて、魔剣発見のために共闘するのだ。
 聖女魔女論争は魔剣が見つかってからいくらでも行えばよかろう。
 魔女ならば多分、魔剣は扱えないはずであるし。
 少年てゆーか皇子2人も、こうした理由から処分保留にしとくほうがいいかと。なまじ処分しても後が面倒であるし、不問にしても不満が残るのだ。
 しかし、迎えの者とかが現れたらお迎えするであるが」
「多分、皇帝騎士の誰かが少数の手勢を連れて迎えに来るでしょう」
 とはシャローム。
「この状況をこれ以上混乱させたくないはずですから」
 それらの言葉に対しエリー・エル(ea5970)は───。
「こちらの戦力を削ぐ作戦かもしれないからぁ、演技でもいいからぁ、みんなが仲直りした振りするのはどう? 旅の目的はぁ、ジャンヌくんを無事に届けるってことだしねぇん。ジャンヌくんのためと思えばぁ、演技するのも苦じゃないでしょぉん!」
「そうですねぇ‥‥私の信仰が許す限り」
「ワシの筋肉、疼いて叫ぶ、偽神父を倒せととどろき叫ぶ」
「この状況では如何にも不自然すぎるかと」
「みんな意地悪なのねん‥‥よぉしぃ、今回は私は得意じゃないけどぉ、バックアタックを教えちゃうよぉん。起こったことはぁ、ちゃんと反省して次へつなげることが大事なことだしねぇん」
 とジャンヌに対しエリーはいつも通りに変わらず接するが、相変らず───。
「このふわふわヘアバンドなんかぁ、似合うと思うんだけどなぁん」
 と、マイペースで物事を進めようとして、教師としての力量の無さも披露した。
 レオンの基本という幹を修得していれば、バックアタックなどの枝葉末節の業は自ずからついてくる。確かに教師が居れば心強いが、教師当人に教育者としての素養がなく、自分自身もその業を身につけていなければ、ただ教師側の自己満足で終わるだけである。
 しかも、死角から攻撃するという前提があれば、刺客の入り込む隙も容易い。
 教師としての素養を持つ、クローディア・ラシーロ(ec0502)からすれば、危険な事この上無い修行であった、すぐさま止めにはいる。
 そんな光景を見ながら、ユーリアはノエルに問いかける。
「色々隠しているのは承知しているが。差し支えない範囲で話してみぬかね? 聖女襲撃の段階でミミクリーが使えた要員は君しかな居ないのだよ」
 或いは試練として疑心を問う目的でフォス神父に化けたとか。まるで黒のクレリックの様だが」
「あなたは目的は何ですか。ジャンヌさんを『聖女』とする事‥‥それとも魔剣を手に入れる事、もしくは手に入れる事で何かを成そうとしているのですか」
「皆さんを混乱させた挙げ句、長い話になりそうですが、この姿を見せれば納得していただけるでしょうか?」
「いや、聞きたく無いのねん」
 とエリーは背中を向けて耳を塞ぐ。
 そんな行いにもノエルは柔和な笑みを浮かべると背中から白い白鳥の如き翼を生やす。
 エンジェルであった。この世界のエンジェルはデビルに堕する事など少しでも教会に行った事のある者なら考えも浮かばない。
 フォスは当然その思想の実践者である。
 エンジェルは絶対的なデビルの敵対者である。
「ぼくの本性は三魔剣をカール大帝率いる神聖ローマに持ち込んだロー・エンジェルです。ローマ市の守護天使サマエルさまのお使いとして地上に現れました。
 元々は三魔剣の内、最強の力を持つものは『デュランダル』のみ。あれは天使が対魔王戦を前提として創った全てを切り裂く、ブランの刃を持つ『格闘用剣型決戦兵器』なのですよ。
 その脇士であるオートクレールとジョワイユースもまた、只の扱いやすく切りやすいだけの武器とは一線を画しています。
 そして、魔剣の使命は魔王とも呼ぶに相応しい上位のデビルを倒し、封じる事。
 デビルはそのデビルごとに相応しい特別な倒し方をしなければ、地上での仮初めの肉体を破壊されてもそのエッセンスは地獄に舞い戻り、幾星霜を経た後に地上に再び顕現します。もちろん、地上に舞い戻るにも相応しい手段がありますが、天使を生け贄に捧げるなどするのも強力な魔王とも呼ぶべきデビルを召喚するのに相応しい手段です。自分はその生け贄にされかかりましたが、デビルがまだ本復しておらず、星辰の定まらぬ故、相応しき刻が来るまで封じられる事となりました。当時の神聖ローマの辺境、今のノルマンにおいての事件です。冒険者の方々に助けていただいて、天界に一度帰還しましたが、伝説の神聖ローマを救う聖女が生まれるという事件から、何か神聖ローマを救わなくてはならない事態に陥っていると推測したサマエルさまが使者としてぼくを送り込んだのです」
「それがフォス神父を騙った原因?」
「天使は万能ではありませんよ。人の子と同じように聖句、聖印、合掌を経て呪文を行使しなければなりません。フォス神父に化けるにはぼくの体格では無理があります」
 その言葉にヤングヴラドは───。
「ノエル君は神聖魔法の奥義とか補助魔法とか、どこで覚えたのだ? 特に補助魔法などは、なんとか覚える方法が無い物であろうか?」
「ぼくはセーラ神がその様にお造りになられたので。その様な力を持っています。高速詠唱以外の魔法の補助魔法は皆、天然自然に持っているものです。それと勘違いされておられるようですが、ぼくは魔法の解説は出来ても、カリスマティックオーラの様な特殊な神聖魔法を行使する事は出来ませんよ。あれは人の子の業です。フォス神父はぼくが何をしたいかを聞きましたが、ぼくの使命は三魔剣に現在封印されているであろうデビルを解き放ち、地獄に送った後。この神聖ローマをカール大帝の世に戻す事。おそらくその為にジャンヌさまが救国の聖女として地上に送り込まれたのでしょう」
 クローディアがか細い声で尋ねる。
「では、ジャンヌ様が生まれるから伝承があったのか? 伝承があるからジャンヌ様が生まれたのか? どちら」
「それは鶏と卵のどちらが先かを議論する様なものです。ぼくには答えを出せません」
「私はジャンヌ様のお言葉『魔剣よりも一枚の盾が欲しい』とのお言葉は何よりも嬉しいです。運命がどちらであろうとついていきます。私はジャンヌ様の盾となろう。
 今までも思ってきた事だけど。
 いま何よりも強くそう決意を固めることが出来ました。これも天使からの託宣かもしれませんね」
 熱いものがクローディアの頬を伝う。
 どんなことがあっても‥‥彼女を護る盾となろう。
「それはそれとしまして‥‥ジャンヌ様はご自身で自覚されているようにまだまだ騎士道にも聖職にも勉強が足りません。
 それはジャンヌ様の教育係を担った私にも責任のある所。まだまだしっかりと学んでいただきますからね。バックアタックだって、レオンを学べば基礎はできているのですから。まあ、私だってエンペランの基礎を囓っただけですけど、流派に優劣はありません。
 肝心な事は教皇様に任じられたテンプルナイトとして、天使にも皇帝にも恥じる事のない態度ですから───」

 一方、トゥールズでは遍歴の騎士の格好をしたルイス・フルトン(ec0134)と、特に目的もなくついてきた秦美鈴(ec0185)が郊外の岩山で巨大な岩の扉を見つめていた。
 最近になって何か新しい文字が彫りつけられた様だが、ふたりの学識では読めない。何語かの見当すらつかない。
 聖女ご一行に学識深い人物は居ない。主に筋肉と聖書で構成されている。
「こんな時バラン当たりがいれば、手加減一発岩をも砕くという所なのだろうが───」(注釈:さすがに無理である)。
「動かすには相当の人数が必要だろう。この岩戸を創った人物は団結力を試している?」
 その頃、レオンハルト・リヒテンクラーク(ec1922)は精兵を募り、ランナバウト子爵の家を強襲していた。
 流石に寡兵で不意打ちをかけられると───自分は散々ペテンをやったにも関わらず、自分がペテンにかけられるとは露程も思っていなかったランナバウト子爵はレオンハルトの剣の前に散った。
(おかしい───脆すぎる?)
 どれくらい斬れば、人が死ぬか、その程度判らないレオンハルトではない。しかし、それにしては脆すぎた。
「男爵閣下!」
 激戦の下を駆け抜けた兵隊が、ランナバウトの城の地下にあった拷問所へと案内する───正確にはその奥の祭壇のある小部屋に───そこは腐乱死体の山であった。
 幾何学的な模様が辺り一面に書き散らされ、血で書かれた文字は。
『我は無価値なる者───汝を価値あるものとしよう』
「悪魔崇拝か───」
 レオンハルトは呟いた。
「これも大事だが、今は勅書を探す事だ。総員手分けして探せ!」
 勅書は家人によると、深夜に持ち出されたという。
 蝙蝠の様な翼の羽ばたきと共に───。
 レオンハルトは背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 既に天使と悪鬼の戦場が始まっていた。

●第6話予告、友ありや嬉からん、勇者たる者恐れありや?
次回舞台となる予定の都市
1)ローマ(奴隷『制度』関係)
2)フィレンツェ(奴隷解放関係)
3)トゥールズ(聖女? 魔女? 関係)
4)タラント(竜狩り関連)
5)クレメンスの隠れ里

A)得物に物を言わせる
B)舌先三寸
C)情報集め
D)人集め
E)教える/教えられる
F)フリー

※1.行動はアルファベットと数字を組み合わせる事、アルファベットは幾つつけても構わないが、その分描写は薄くなる。数字はひとつのみ。身体はひとつしかないのだ。
※2.宗教やクラスチェンジの希望などはしたいな〜、ではなく。クラスチェンジしたい、宗旨変したいと明言する事。あくまでロールプレイとして迷っている描写が欲しければその旨書き添えること。
 但し、クラスチェンジには教皇に認められるなどの条件を満たしている事は肝要である。 尚、明示されていない為、恐縮であるが、特にジャパン、華国、インドゥーラなど東洋への移動を前提としたクラスチェンジ条件もある。
 これらの外国への移動はクエストシナリオでは対処できない為、ご容赦されたい(インドゥーラ、華国も現在は移動は不可能)。

●三魔剣データ補足
・デュランダル:ロングソード+2 EP17 格闘補助、オールスレイヤー(全ての存在へのスレイヤー能力)、特殊※)
 天使により対魔王用の格闘用剣型決戦兵器として作られた使命をもって鍛えられた剣。刀身はブランで出来ている。

・ジョワイユース:ロングソード+2 格闘補助、呪文封印『レジストデビル初級』、デビルスレイヤー、特殊※)

・オートクレール:ノーマルソード+1、EP6 格闘補助、呪文補助、呪文封印『ニュートラルマジック初級』、特殊※)

・三魔剣の特殊能力、三本セットの魔剣で、地上の肉体を大地に縫い止められたデビルは、地獄に戻ることが出来ず、復活も出来ない。現在も何かのデビルを封印しているが、ノエルくんは石化中な為、何が封印されているかは知らない。

今回のクロストーク

No.1:(2007-06-04まで)
 あなたの頭が上がらない人は? 特定個人、組織、イメージでも可。

No.2:(2007-06-02まで)
 自分と冒険の仲間がまとめて瀕死の状況に陥りました。ヒーリングポーションは一本だけ。どうします?

No.3:(2007-06-04まで)
  あなたは子供の頃、どんな人間と思われたかったですか?

No.4:(2007-06-06まで)
  聖女関係者への質問です。ノエルくんが詳しい事情を教えてくれ、と言われて「語ると余計事態が混乱しそうですが‥‥」と行ってます。真実を聞きたいですか? 賛成2/3で離します。

No.5:(2007-06-10まで)
 明日(来月)の栄誉の為に、不名誉な事も甘受できますか?

No.6:(2007-06-10まで)
 自称天使の言い出す、悪魔の陰謀というものを信じられますか?(聖女向け)

No.7:(2007-06-10まで)
  トゥールズの三魔剣の主にはそれぞれ誰が相応しいと思いますか?(ひと組でも可)