BlowinonamicizieBlowinonCoraggio

■クエストシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:

難易度:

成功報酬:-

参加人数:17人

サポート参加人数:-人

冒険期間:2007年05月01日
 〜2007年05月31日


エリア:神聖ローマ帝国

リプレイ公開日:05月21日20:53

●リプレイ本文

●全てを失いながら、我ら挫けず
 神聖ローマ帝国は今や歴史のターニングポイントとなるべき地点に近づいていた。ただ、問題は中にいる者の誰もが───皇帝から奴隷まで───それに気付いていない事であった。

●神前裁判
 ジャンヌへ銀の凶刃を向けた、レオンハルト少年の凶行を目撃したルイス・フルトン(ec0134)の心中はまさしくカオスであった。
 試練である。これで死ぬようならばジャンヌもそれまでである。そうはならないだろうが───しかしレオンハルトの台詞が気にかかる。何者かにろくでも無い事を吹き込まれたか。だとしたらそれは誰だ。見ず知らずの人間の言葉を容易く信じるとは思えない。だとすると可能性があるのは旅の仲間か。怪しいのはフォスか? ならば、騎士には命を賭けて主張すべき時がある。
 想いとは裏腹に動いた事は、荷物を投げ捨てジャンヌとレオンハルトの許へ駆け出していた。
 エリー・エル(ea5970)ががジャンヌに駆け寄るのを眼の端で捉えると、凶器を手にしたレオンハルトにディザームを仕掛けようとするが、それまでもなく呆気なく手から取り落としていた。
「貴様、何をしたか判っているのか」
「魔女を───神聖ローマを揺さぶる魔女を討ったのです」
 襟を掴んで揺さぶりながら言葉を継ぐ。
「魔女だと。不満があるならば正面から話し合えばいいではないか。事もあろうに背後から襲い掛かるとは言語道断、騎士を目指す者がすることか。恥を知れ恥を」
「騎士が騎士道を守るべき相手は騎士道を守る者のみ───異貌のものには騎士道は適用されません」
「何だと
 怒りに任せてレオンハルトを両手で襟を持って吊り上げる。
「吐け誰に何を吹き込まれた。吐くんだレオンハルト」
「弟がそれでは喋れません。フォス神父が深夜ぼくらを集めた勉強会でジャンヌさまは異端で無知で、悪魔に魂を売った魔女なので、この銀の短剣と清らかな心を以て討ちなさい、と仰ったのです」
 と、シャロームが横から割って入る。

 フォス・バレンタイン(ec0159)は───。
「誰がそんな事を言いました? 私は『魔女の可能性がある』と言っただけですよ」
───と主張。逆にジャンヌが『聖女』である確たる証拠が無い事を指摘させてください、私がおふたりに告げたのは『もしかすれば彼女が『異端者』もしくは‥‥『魔女』の可能性があるかもしれませんからね。貴方がたはまだお若い。しかし、だからこそ柔軟な考えを持ってものを考える事が出来ると思いこの事をお伝えしたのです』という事です」
 そのフォスの主張に、バラン・カリグラ (ec0735)は怒りのポージングをしながら
「おにょれフォス・バレンタイン! 七代祟って許すまぢ!! 現に聖女さまはテンプルナイトの奥義を発動するという奇跡を起こされたのだ! おぬしが知らないだけだろう!?」
「はて、初耳ですね。ともあれ、七代祟ろうにも私は信仰と神聖ローマ帝国と結婚していますので、子は成せませんがね。そのテンプルナイトの奥義が魔法だとすればそれはローマの法に反する事になりますね」
 その後、フォス自身はジャンヌを聖女ではないのではないかと疑っているという事を明かした上で、ジャンヌが本当に聖女であるかどうか疑惑がある事(無知、血統、『奇跡』を起こしてはいない事)を指摘、兄弟を擁護する。
 兄弟についてはクレルモンに預ける様に提案。ジャンヌを刺した以上、一緒に旅は出来ないと主張。
 バランのポージングの裏で河童膏を使って、ジャンヌの傷口にエリーが癒しを施すと、ジャンヌの顔に赤みが差してくる。
「ジャンヌちゃん、大丈夫なのかしらん?」
 と言ってヒーリングポーションを更に取り出す。
 バランが、それイッキ、イッキと煽る中、ジャンヌの傷は確実に癒えていく。
クローディア・ラシーロ(ec0502)は───。
「聖女様の盾となる決意を固めながら‥‥何もできないなんて‥‥しっかりして下さい! 聖女様!」

「私は『異端者か魔女の可能性があるかもしれない』と言っただけです。誰も彼女が魔女や魔物で我々を騙して旅をしているだとか、彼女を始末しろだとかなんて事は一言も言ってはいませんよ」
 両者共にフォスの方に体を向けるとズンズン近づいていく。
 フォスの元にルイスが歩を進め。
「フォス殿、貴方か」
 手袋を外すとフォスに叩きつけて宣言する。
「何故とは問うまい、貴方に決闘を申し込む」
 エリーは───。
「そんなことしても結局、何も解決しないよ」
 続けてクローディアも。
「‥‥何故あのような事を‥‥? 怒りはあります。でもとにかく話を聞かないと‥‥彼の『魔女』という発言も気になるし、まさか初めからこうする事を狙っていたの‥‥?  ジャンヌ様、あなたが回復したら、彼らの事については処遇をお任せします」
「そうだよ一緒に行動するって決めたのは、ジャンヌくんで、私達はそれを了承したんでしょ。なら、ちゃんと最期まで面倒見てあげないとだめじゃないの?ダメだから見捨てるんじゃなくって、正しい道に導くのが私達、大人の役目でしょ」
 といつもとの態度とは裏腹に真剣に説得する。
 しかし!
「私は戦いを望んでいませんよ───そこの神聖騎士さまが子供の戯言を真に受けているだけで」
 とフォス。
「黙れ! その口、剣にて正してくれる!」
「結局、ノルマンとの戦争以降、この国は何も変わってないじゃない。こんなの間違ってる‥‥まず、レオンハルトくんに聞きたいのは自分の意志でこんなことをしたのかだねぇん。
 ちなみにぃ、教えられたことってのもぉ、自分の意志じゃないよぉん」
 兄の言ったとおりです、と返すレオンハルト。半言半句間違い在りません。
「ジャンヌくんを私は聖女っていうかぁ、危なっかしい女の子って感じでしか見たことないよぉん。レオくんも同じ。私も同じひとりの人。みんなも同じ様に悩んだりするんだよ。それに世の中、ダメな大人ばかりでレオくんにこんなことさせちゃってゴメンねぇん。今からでも遅くないんなら、レオくんに色々と教えてあげたいんだけどいいかなぁん?」と母性を剥きだしにした笑顔を向け、長身にものを言わせ、レオンハルトの頭を撫でる。「魔女というのはフォスさんに吹き込まれたのですね?
‥‥そうですか、ではジャンヌさんの力になりたいと考えていたのではないのですか? あれは嘘だったのですか?
 ジャンヌさんに関しては街娘だったのがいきなり聖女に祭り上げられたのです。多少らしくないところがありますがそれも含めて選ばれたのです。聖なる力も発動させていますし力は申し分ないでしょう。これから我々がこの国のために導いていけばいいのではないでしょうか?
 君の目で見てどのあたりが魔女と感じたのでしょうか? 君の目はにごってはいませんか? 友の目にある塵は見えても、自らの目の前にある大きな梁から目を背けていませんか?」
 ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)も場の収拾をつけようと、街道筋での戦いに異を挟む。
「決闘は漢の浪漫は大いにやってほしいのであるが、聖女様ご一行の内紛が公になるのもよくないのだ。この決闘はまあ、偽装しておくのだ。思いつかないので、人目の届かない所でやるという事で」
 だがしかし、ジャンヌちゃんの力が本物かどうか確認するには、実際にジャンヌちゃんに神聖魔法を使ってもらうのが一番確実であろう? おっと、これは違法であったな。
 しかし、仮にジャンヌちゃんが街娘だったとしても、とにかくもう『聖女』は誕生してしまったのだし、いまさら引っ込められないのだ。『真贋』はもはや状況を作る要素の一つに過ぎないのだ。聖女とご一行様は存続すべく装うのだ」
「『聖女』ですか」
 唇の端を歪めて笑うフォス。
「その言葉、宣戦布告と判断する!」
 ノエルがそこへバックパックから荷物を引っ張り出し───。
「これは裁判ですね。被告人と告発者の間で行われる。代理人は互いに要りようがありませんね」
 ユーリア・レオ・フォルティ(ec1663)が入り込んできて
「で、決闘という話だが。ところで両人、何を賭けるのかは決めているのだろうな?」
「出て行けという積もりだ」
 と、ルイス。
「こんな戦いに何の意味がある? おまえは実につまらないプライドに命を懸けているに過ぎないんだぞ。私としては特に含むところはありませんので、ルイス殿の平和に暮らす権利を剥奪するつもりですよ。再起不能にしたい所ですが、神前決闘では血の一滴が白布についた段階で勝敗は付いていますからね。あとは聖なる母がどちらを正しいと見なすかのみでしょう」
 神聖ローマ帝国の裁判は罪は神によって裁かれるべきとの考えがある。互いに聖職では退き様がないだろう。ましてや同意無しの決闘代理人など有り得ない。
 ノエルは3メートル四方の白い布を地面に敷き、手の空いた面々でその周囲に溝を掘り、介添人として、フォスはあえて、シャロームを指名。ルイスはエリーを選んだ。
 決闘者はそれぞれに剣と(互いに同等の品で在る為、互いの合意が成立した)3枚の木製の盾を介添人に持たせ、手当と盾の交換の準備をさせる。
 溝を越えて外に出るか、手傷を負って布に血が付くかまで続けられる戦いとなった。
 ルイス一旦、間合いを取ると腰の剣を抜き放つ。
「抜け、貴方が正しいなら」
「神聖ローマ帝国とそれに付き従う者は常に正しいのです」
 最初の一撃は剣で切り掛ると見せて、ルイスは左手でロザリオを握り締めながら、高速詠唱で白く淡い光に包まれながら、ホーリーを放つ。ホーリーは相手の霊的な部分を攻撃する魔法で、出血を伴わないが、魔法に弱いフォスには確かに利いた。
「偽神父め、貴様は邪悪だ!」
「神に許しを請え。アーメン」
 抵抗に失敗したのではなく、デビル並みに邪悪だったため抵抗の余地がなかったのだと、言外の強引な断言で神の使徒を自認するフォスの動揺を誘うルイス。
 その隙に乗じて続けて一歩踏み込み左手でディザームを仕掛ける。受けられるが、落とすほどフォスはヤワではない。更に斬撃と死角からの蹴りを組み合わせて攻め様とするが、そこまで残心がない。
 返すフォスの一撃が振ってきた。
 ルイスの血が滴った。
 勝負あり。
「残念ですね。非合法である魔法を使って尚、倒せないとは───ローマの法を破り、挙げ句に決闘に敗れたあなたには、宣告通り平和喪失刑が相応しいでしょう。如何なる店もあなたと売り買いせず、暖を取ろうにも誰とも暖かさを分け合えず、如何なる宗派の墓地も貴方を拒むでしょう───奴隷身分に落とされなかっただけ幸せと思いなさい。それが私の『慈悲』です───失せろ、偽神聖騎士!」
 名誉と共に平和に暮らす権利を失った神聖騎士ルイスは一同の視界から退散せざるを得なかった。
 傷を全て癒したジャンヌにユーリアが語りかける。

「ローマではテンプルナイトになるために火竜に挑む者までいる。本意では無いかも知れぬが、君の手にした力は、そういった領域の物なのだ。
 こんな面倒事はこれからも増えるだろう。覚悟はしておいたほうが良い」
「ただ、君にも味方がいないわけではない。エリーやクローディア辺りは信用しても良いだろう。ちょいとあの坊主はいけ好かないがね‥‥私か?はは、自己申告など当てになるまい?」
 一方でフォス神父の証言と、双子の証言の食い違いがある。フォス神父にしても銀の武器など持っていれば、誰かが手入れをしてる所なりなんなりを見た者がいるだろうし。
 双子が偽証をしたとしても必然性がまるでない。
 しかし───。
 ユーリアはノエルに依頼した。
「ノエル、貴殿にデティクトアンデッドを依頼したい。このふたりが真性見たとおりのものか、それとも否かを」
「判りました僕を信じて頂けるなら───何しろデティクトアンデッドは当事者。つまり僕にしか事の真実を知る事は適いません。エリーさんも合わせて矛盾が無ければ───という事で」
「いいわよん。この子達にやましい所がないか、確かめる位。でもね、レオンハルトくんにシャロームくん、嘘は止めた方がいいわよん。まあ、この魔法じゃ確かめる術もないけどね」
 奥まって人が居ない事を確認して、ふたりはそれぞれ、白い淡い光に包まれる。
「何にも感じないわ。当然よねん」
「こちらもデビルもアンデッドも反応ありません」
「そうか、それは良かった。では、こうなった以上、身の証を立てて貰わねば埒が明かぬ。君達が何処の誰か。其れを顕す証拠を出し給え。
 出来ぬというならこの場で斬り捨てる。君達は既にそれだけの事をしている」
「持っていません。奪われました───」
 と、レオンハルト。
「今更詭弁を───」
 とユーリアは腰に手をやるが、エリーが想い留めさせる。
「話は最後まで聞いてみるのよ。で、納得が行かなければ、私を斬ってから、この子達をどうこうしなさい。で、どうなのん?」
「信じて貰えるか否かは判りませんけれど、包み隠さず言うならば、僕の本名はヒエロニムス・カースン。弟はレオンハルトではなく、レオ・カースン。現皇帝マキシミリアン3世の実子です。宮殿から皇帝家の伝令書を───無断で持ち出し、皇帝特権でここまで来たのですが、途中でその伝令書を奪われてしまい、特権無くして旅は出来ず、偶然ここまでたどり着いただけの事です。元々聖女さまに憧れて合流しようとしたので、聖女さまの目前で行き倒れたのはまさしく聖なる母のお導きに他ならないでしょう」
「カエリー、カエリーはいるか?」
 と、ユーリアは突然騒ぎだし、それに応えてどこからともなく黒髪黒髭に顔を埋もれさせた人物が現れる。
 星座を名に抱く男、カエリー・シグヌムだ。
「言ったはずだ、このふたり組が皇帝の勅書を以て北上してきたとな。皇帝陛下の息子は現在、バカンスをしている『という事になっている』」
「簡単に言え、金は出す」
「つまり、そこにいる双子は紛れもなく皇帝陛下の実子だ。途中でランナバウト子爵家の招きに応じた時、勅書を奪われ、命からがら逃げ出した。後は聞くは涙、語るは欠伸の物語だ」
 皇子たる絢爛豪華な衣装で軍馬に跨って出ていても、出逢う頃にはボロボロのマント一枚という訳である。
「そこまで聞けば話は無用! バラン行きますよ!」
「見よ! わしの筋肉を」
 バランとグイードがフォスを捕縛しようと歩み出る。
 通常の装備に戻したフォスだが───。
「わしの背中の広背筋にかけて! 貴様の悪事、洗いざらいしゃべってもらうんじゃー!」
 聖女暗殺の主謀者フォス・バレンタインを、グイードと協力してとっ捕まえる。
「しゃべるか死か、聖女様を傷つけるものをわしが許すと思うな!」
「耳障りな!」
 しかし、一対一では無敵を誇るフォスだが、二対一では分が悪い。躱しの業を持たず、受けのみに特化した為、ふたりの攻撃を受けきれないのだ。
 バランは捕まえたら、ヘビーアックスで瀕死まで追い込んで容赦なしに尋問するつもりだ。
「特に背後関係を重点的に聞き出す!
 公の場で証人として全てを告白した場合のみ、命だけは助ける。
 さもなければ、そいつ好みの異端審問のあと、市中引き回しの上、磔、獄門、車裂き、さらし首の刑。
 異端審問その1!
 簀巻きにして重しをつけて川に沈める。浮かんできたら有罪!!
 異端審問その2!!!
 心臓に杭を打って、生きてたら有罪!!!!
 異‥‥」
「莫迦、待ちなさいって! それじゃあこの神父と言ってる事は同じじゃない?」
 と復帰一声のジャンヌの言葉。
「あー死ぬかと思った。人間って結構頑丈に聖なる母がお作りになったのね」
「あのフォス神父がどなたかに向かって書き物をしているのを見た事があります」
 と、ノエル。
「黒幕はそいつじゃ! 我が筋肉にて粉砕してくれる!」
「私は自分の教区の領主に向かって旅の報告をしていただけですよ。もっとも、旅から旅なので、お互いの所在どこか判らないので、今では手紙を出してはいませんが」
「とりえあえず、ノエルくんから話は聞いたわ。双子の証言との食い違いの理由を暴力的じゃない方法で解明して。クレルモンは迂回しましょう。ふたりは皇子さま? と呼ぶべきかしらね? は、このままついてきて、そして何かあったら、社会戦を頼むわ」
「‥‥レオとヒエロニムスでいいです」
「はっはっは、稼ぎが少なくなるが、聖女さまのお沙汰には逆らえないのである。まあ、クレルモン相手に攻城戦を考えていたが、具体的な思案がなかったのでちょうどいいのである」
 とヤングヴラドが締めたのであった。

 そんな騒動も知らずに、どこに行くかさえ決めていない秦美鈴(ec0185)は寄る辺を無くしたルイスと出逢う事となる。
「お困りですか? 何か手助けになる事は?」

 デウス・アマデウス(ec0145)は自分の定宿にカルブンクルスアニマを討ち取り、教皇庁内部での序列を上げようとする“同志”を集めて、難しい顔をしていた。
「『然る御方』と教皇庁内部で接触を取ったが、カルブンクルスアニマ退治は我々が自力でやれという事との、教皇猊下の御聖断があったそうだ。例えば選帝候家と協力体勢を取り、討伐に挑めば功績は選帝候家の方に行き、我々は試練に失敗したと見なされ、テンプルナイト、ビショップへの道は遠のく事になる。もちろん、民衆に協力を仰ぐのも同様と見ていいだろう。これは『我々の試練』だ」
 その言葉に腕を組んだシリウス・ゲイル(ec0163)はおもむろに───。
「では、十字軍の結成も、も試練の助力と見なされるという事だね」
 それ以前にカルブンクルスアニマ退治とあって、協力を申し出た教会がひとつがいない事も納得できる。これはテンプルナイトやビショップを選抜する為の試練であって、カルブンクルスアニマを倒すのは結果に過ぎないのだ。
 噂に上った皇帝主催の仮面舞踏会が催されるという事にシリウスは一縷の望みを託していたが、それは先月に既に行われており、次の開催は未定だという。
 どちらにしろ皇帝陛下から兵を借りれば、業績は皇帝陛下のものとなるだろう。
 ディアーナ・ユーリウス(ec0234)と連名で手紙を出し、ローマ市内に居を構えるタラント侯爵と既に接触を持っていたディアルト・ヘレス(ea2181)は、助力をする気がない事を明言され、半ば事態を諦観している事に半ば腹を立てていた。
 ジュゼッペ・ペデルツィーニ(ec0207)は様々な学者にアポイントメント無しで無理矢理にドラゴン関係の話を聞き出そうとしたが、自分が非礼を承知とはいえ、学者から非礼故に断られ続けるのは精神的にダメージが大きかった。
「───ひょっとしたら、ローマで出来る事は、もうないのかもしれない」
 カルブンクルスアニマを倒すのが目的ならば、日限を切られていない身、自由に動ける。
 逆にテンプルナイト、ビショップになって、それぞれが持つ理想を果たそうとするならば、外部に助力を仰ぐのは愚の骨頂と言えた。
 これは自分たちの試練なのだから。
 その頃、アウグスト家のローマ別邸では、レオンハルト・リヒテンクラーク(ec1922)は四十を越えたばかりのアウグスト家当主“グライス・アウグスト”の前の椅子に腰掛けていた。
「こちらの意図は言わずもがなですが、現状の選帝侯の力関係を推察すると、マルモンロイドが最も強い影響力を有していると思われます。
 それに対する勢力で、一番大きな力を有しているのがアウグストなのでしょう。
───しかし、残念ながら、若干、マルモンロイドの力の方が大きいように感じられます」
「成る程それが君の現状認識という事だね」
「私は、現在の神聖ローマの有り様をとても危険だと考えています。
 終わることのない紛争。治安の悪化や難民の問題もさることながら、マルモンロイドの進める『ローマ文化復旧法』にも何か危ういものを感じています」
「皇帝陛下にもその直言を気に入れられて、皇帝騎士に選んだのだろうね」
「お褒めに預かり恐悦至極。しかし、政治に関わる上で、どうしても避けて通る事のできない障害として、マルモンロイドの存在があるなら、おのずと選択肢は限られてきます。
 マルモンロイドを味方に付けるか───マルモンロイドに迫れるだけの力を得るかです。
 しかし、残念ながら今の私は、マルモンロイドを取引の席に着かせるほどの有効なカードを持ち合わせていません。
 ならば、マルモンロイドに対抗する力を得るしかない。
 こちらの意図はそんな所です。
 隠し立てしても意味がないので、率直にこちらの意図を話します。
 貴族間の結婚は両家の縁を結ぶもの。
 結婚に際して、何か条件等があれば承ります」
「成る程、皇帝騎士に選ばれるだけ合って弁舌も達者なものだ。私の話を聞いても───驚かなければ‥‥」
「納得はしても驚かないでしょうね」
 レオンハルトは強い意志を露わにする。
「成る程、娘の素性を聞いても驚かなければ」
「娘? 姪ではなく」
「あれは私が妹を抱いて産ませた子だよ。アウグスト家の中でもっともアウグスト家らしい純血の存在として───」
「娘さんとの結婚を認めて下されれば構いません。あなたという後ろ盾の為には、純血であろうとなかろうと構いません」
「───その言葉、期待していたよ」
「ところで娘さんは何とお呼びすればいいのでしょう?」
「公的な場では姪。内輪だけの時は好きな様に呼び給え」
「いえ、名前の方を───伺っていなかったもので」
「リズだよ」

「リズさん、ご両親に、貴女との結婚を申し込みました。
 私は全身全霊を以って貴女を愛し護るつもりです。
 ですから、どうか私に、貴女の人生を託して下さい。
‥‥必ず、貴女を幸せにすると約束します」
「サー・レオンハルト。私の幸せが何か判って?」
 リズはそうとだけレオンハルトに返した。
 翌日、神父を含んだアウグスト家からの正式な使者がリヒテンクラーク家を訪れ、婚約の受け入れの認め状と、持参金として金貨500枚を渡していった。
 神聖ローマでは自由市民以上の階級を持っていれば、嫁ぎ先に年齢に応じた持参金を渡すのが慣例となっている。
 その金貨を見てレオンハルトは───。
「持参金が先日の仮面舞踏会で得た義援金と同額なのは嫌味か? 偶然か? ま、相場ではあるだろうが」
 皇帝直下の皇帝騎士と選帝候家の結婚ともなれば神聖ローマ内部で大宴会をも催す必要が出てくるだろう。
「祭事を司るのは当主の父親になるだろうな。大司教として、アビニョンで俗事を離れて暮らしていると聞くが」
 その頃、夜陰に乗じては、奴隷の枷を断ち切る、ひとりの女傑の噂が登っていた。
 猫の様に密やかに忍び込み、ジャイアントソードを振るい、奴隷も何が何だか判らない内に姿を消す。
 トゥルエノ・ラシーロ(ec0246)であったが、無責任に枷を斬ってもローマから出る前にその奴隷は衛兵達に拘束されてしまう。
 結局は何も残らない、自己充足的な行動であった。
 一方、ジョヴァンニ・セラータ(ec0232)は奴隷証人襲撃のため組織のメンバーに協力を求める。人遁の術者を一人、弓使いを数名。
 集めた情報を元に奴隷商を叩く。
 最近奴隷となった者を商品として扱っている商人を襲撃先に。
 奴隷の輸送中を襲撃。
 スタッキングで間合いを詰め、護衛が軽装なら峰打ちにしようとするが、そうは上手く行かなかった様だ。
 クレメンスの援護射撃もあり、先頭の馬車の真下で地面がめくれ上がり、馬を包み込む。圧縮と同時に雷光と冷気が湧いて出て、動きを止める。
 もっとも、クレメンスはこの魔法で一時的に精霊魔法を使う力を失う。スクロールもアイテムもだ。
 地風水の三属性を合成した魔法『フィーストオブランタン』と後にジョヴァンニは聞く事になる。
 ともあれ、護衛を皆殺しにし、路頭に迷った彼らにジョヴァンニは選択肢を与える。
・残って奴隷に戻るか?
・ついて来て隠れ里に向かうか?
・国外に逃げるか?
・一月分程度の生活費を貰って難民に混じって逃げるか?
 しかし、大半のものはどれも選べず、故郷に戻りたいというだけであった。彼らは難民が殆どで、一番近い難民に混じって逃げるか、という選択肢はどこに逃げるか? そして、国外に逃げるという選択肢は言葉も通じない異郷へ、帝国を縦断してノルマンなりビザンツへ脱出する事を意味し(しかもジョヴァンニ自身も受け入れ先がどうなっているか判らない)、隠れ里を選ぶのが多数であり、僅かな脚萎えの者達は奴隷で居る事を選択した。

●次回予告:5話、我ら挫けず、友ありや嬉しからん

次回舞台となる予定の都市
1)ローマ(竜を狩る者、奴隷『制度』関係)
2)フィレンツェ(奴隷解放関係)
3)クレルモン(聖女関係)
4)タラント(非推奨)
5)トゥールズ(非推奨)
6)クレメンスの隠れ里

A)得物に物を言わせる
B)舌先三寸
C)情報集め
D)人集め
E)教える/教えられる
F)フリー

※1.行動はアルファベットと数字を組み合わせる事、アルファベットは幾つつけても構わないが、その分描写は薄くなる。
※2.宗教やクラスチェンジの希望などはしたいな〜、ではなく。クラスチェンジしたい、宗旨変したいと明言する事。あくまでロールプレイとして迷っている描写が欲しければその旨書き添えること。
 但し、教皇に認められるなどのクラスチェンジの条件を満たしている事は肝要である。

今回のクロストーク

No.1:(2007-04-26まで)
  皇帝の誕生日(ローマにいる全貴族が招聘される規模のパーティーあり)はいつ頃がいいですか?(ローマ関係者向け)

No.2:(2007-05-01まで)
  レオンハルトがどうしてジャンヌを魔女だと思い込んだのか推測できますか?(聖女関係者向け)

No.3:(2007-04-26まで)
  あなたにはどうしても出来ない、やってはいけないと考えている事がありますか? あるなら、それは何?

No.4:(2007-04-28まで)
  ずばりフォス神父に質問です。ヒエロニムス少年が、聖女は悪魔が化けた魔女だから、滅ぼす様に、との指示を受けて、弟が実行したと言っています。切り返しをどうぞ。

No.5:(2007-04-30まで)
  カルブンクルスアニマが今まで退治されなかったのは何故だと思いますか?(ローマ市向け)